皇都。
みんなの武器強化、防具も一揃え出来たので、6人デートだ。
納税も無事、済んだし、後はカナキ氏がエリクシールを買えれば、無事、借金も完済かな?
後でキザマ刀だけじゃ足りない、とか言わないよね?
以前、肉団子を買った、あの河岸に来ていた。
『あれか?』
『はい』
『やるか?』
『ここではマズイです。・・・アソコへ、誘導します』
「あら、こないだの」
肉団子を売っていた屋台のおばちゃんに声を掛けられた。
「やぁ、こんにちは」
「いいですねぇ、両手に花どころか、5輪も」
「ハハハ。お恥ずかしい」
「もう少し川下に行けば、綺麗な景色が観れる場所が在りますよ?」
「へえ、そんな所が?」
「すぐそこですよ」
「そうですか、行ってみようか?」
「「「「「はい」」」」」
しばらく歩いた。
確かに、川が合流する所?で、綺麗かつ雰囲気のある場所に出た。
俺、ミミ、フィナははしゃいで、
「わあ、ねぇねぇ兄々、凄いキレイだね~」
「本当。お兄ちゃん、こんな所、在ったんだね?」
「そうだな。知らなかったな~」
まあまあ大きな河に、少し小さめな川が合流する。
河川敷も整備され、ベンチなんかもある。
まだ少し寒いが、空気が澄んでいるせいもあり、景色は綺麗だ。
ちょうど合流する真上に橋が掛けられており、観光地整備もされている。
しかし、何かオカシイ。
人が少ない。
俺達以外、観光客らしき人物がいない。
いや、明らかに現地人らしくない人が何人かは居る。
この辺りは家の達並みからすれば、住宅街である事は明らかだ。
そして、そんな異変に最初に気付いたのはテテだった。
「旦那様、おかしいです」
「どうした?」
「誰もいません、何かこの景色にそぐわない連中以外、誰も居ないんです」
どういう事だ?
突然、大声で怒鳴られた。
「ここは皇都よ!こんな所に下賤の者が姿を見せるなど、思い上がりも甚だしいわ!」
今のはうちの娘達に対する暴言ですか?
後ろを振り返り、声の主を手繰る。
エルフだ。
随分あとで分かったのだが、以前、オークションで売られ、80万ナールで売却されたエルフの女だった。
この時はお互い全く知らない者同士だった。
相手は6人。いかんな。つい鑑定してしまう。
《鑑定》
イカサ・ミカサ ♀ 21歳 エルフ族
魔法使いLv25
装備 スタッフ アルバ 皮のミトン ハイヒール 身代わりのミサンガ
全身を被うマントを着ているが、鑑定で装備は丸見えだ。
その装備はちぐはぐだった。レベル25にしては少々貧弱である。
どれも最低ラインの物ばかり。なのに、身代わりのミサンガは持っている。
街を歩くだけならいいのかも知れないが、喧嘩を吹っ掛けるにしては、少し足りなくないですか?
エルフと言えば、何かと他の種族を見下す。と聞いた事がある。
とはいえ、別に彼らに対して何か迷惑を掛けた事なんて無い。
何か嫌がらせを受けるだけの事をした覚えも無い。
何なんだ、一体!?
「下賤の者というのは、もしかして、我々の事でしょうか?」
「お前達以外に人の姿が見えるのですか?奴隷達は卑しい者揃い、その主人は愚かな人間族。お似合いね。アハハ」
「貴女の首には隷属の証し。鎖に繋がれた人間の言う事か?」
「わっはっは。ちげぇねぇ」
女の隣に立つ男からチャチャが入る。
「お前ぇは正真正銘、俺達の奴隷。卑しい者だよな~?」
つまり、この見るからに品のない奴らの下僕だ。
こんな奴らにエルフを買えるだけの大金が用意出来るとは思えない。
スポンサーが居て、こいつらを操っている奴が居るんだ。
「種族が問題なんです!ダークエルフ、鬼人族に、訳の分からない獣人。主人が頭の悪い人間なんて滑稽だわ!」
そして、恐らくこの女はスポンサーの事も、自分が何者かの掌の上で操られている事も、分かっていないのだろう。
「いい加減、その辺にして貰いたい。こちらも少々、気分が悪いのでね」
「そのスカした態度も腹立たしい。そこのダークエルフ、私と決闘なさい。貴女が勝てば謝罪してあげますわ。こちらが勝てばお前達全員の武器と装備を置いて、二度と皇都に来ない事を誓約しなさい!」
無茶苦茶だ。勝利報酬のバランスも取れていないし、何より、全くこちらに旨味が無い。結局は追い剥ぎかよ?
「馬鹿馬鹿しい。帰るぞ」
「ま、待ちなさい。私が相手してあげようと言うのですよ?逃げるのですか?」
この女は、自分が奴隷という身分に堕とされている現実も、受け入れられていない。
「俺達に何の利がある?やってられるかよ?」
「そんな、待って」
「お兄ちゃん、私にやらせて!」
「は?駄目だよ?絶対ダメだ!」
「私だけなら我慢出来るけど、お兄ちゃんやみんなの事をバカにするヤツは許せない!」
「そんな奴らイチイチ相手にしなくていい。無視しろ!」
「兄様。私からもお願いします。フィナちゃんはこんな奴らには絶対に負けません!」
「主様、相手に条件を認めさせればどうでしょうか?どちらかのミサンガが切れた時点で決闘は終了する。それを認めず攻撃を加えようとすれば、互いのメンバーの介入も許容する」
奴らは盗賊では無いものの、レベルはそこそこある。
アイには相手のレベルは分からないが、パーティー戦闘になったとしても負ける気がしないのだろう。
そして恐らく、それは間違い無いだろう。
だが、果たして、そんな事も分からない程、あいつらは阿呆だろうか?
何か引っ掛かる。
あいつらのあの余裕は何だ?何故あそこまで落ち着いていられる?
パーティー戦闘にならない自信が有るのか?
大金払って買った、魔法使いの奴隷が命の危機に陥っても、助けに行かない積もりなのか?
やはり、と言うか、奴らはその条件をあっさりと受け入れた。
「いいか、俺がもし危険と判断すれば、お前の意思に関係無く止めさせる。どんな事をしてでもだ」
「お兄ちゃん、私を信じて?」
「お前の事は信じているさ。信用出来ないのはあいつらの方だ。贔屓目に見てもアイツらに勝ち目は無い。なのに、あの余裕。何か隠し球を持っていると見ていいだろう」
「分かった。気を付ける。でも絶対負けない!」
どうにも不安を払拭出来ない。
とにかく、パーティー編成を解除しろ、とも言われていない。
決意の指輪を渡す。
パーティーライゼーションで少しでもフィナに有利に働くように、シックススジョブに英雄、神官を付け、敏捷を付けられるだけ付ける。
みんなの武器もそれぞれに渡し、俺はクラウ・ソラスを出しておく。
俺は自分達の装備、準備に気を回し過ぎて、相手を良く見ていなかった。
確かに相手は6人だったが、パーティーメンバーが6人だったかどうかはちゃんと確認していなかったのだ。
そう、相手は6人。しかし、同一パーティーには5人しか居なかったのだ。あと1人は5人の後ろに身を隠し、見えない位置に居た。
後で気付いた。魔法使いだった。
最後の1人は決闘が始まってしばらく後にパーティーに入ったのだろう。
もしかしたらずっと決闘の推移を見ながら、パーティー申請に対し了解する寸前で、待っていたのかも知れない。
魔法使いが居るかどうかなんて、鑑定の出来ない奴には、分からない筈なのに。
そして、決闘が始まってしまった。
相手は魔法使いだ。
当然、開始と同時にさっと飛び退き、距離を取る。
すぐに魔法スキルの詠唱に入るが、
フィナは、
「レヴァンティン!ボーゲンフォルム!貫通!」
弓状態にして、詠唱中断付きの魔法矢を放つ。
見事、相手のスタッフを弾いて詠唱を中断させた。
「賢しい真似を!」
そうは言っても魔法使いは魔法以外に攻撃の手段を持たない。
二度三度、魔法スキルを詠唱する度にキャンセルさせる。
まるで相手にならない。
フィナ初め、皆には常日頃、人は殺すなと言っている。
実際、どんな盗賊もトドメは俺が刺している。
俺の娘達は誰1人、人殺しはしていない。
当然、今回もそうなる筈だった。
「ぐあっ‼️」
「きゃあ!?」
突然、俺と、娘達全員に炎の嵐が舞った。
何故だ!?相手パーティーの魔法使いは今闘っている、イカサという女だけだった筈だ。
炎に耐えながらも、なんとか鑑定すると、もう1人、魔法使いが居た。
奴らの影に隠れて、それらしい男が居た。
気付かなかった?
いや、気付かない筈は無い。つまり、今、パーティーに入ったのだ。
気付かなかったのは俺の落ち度だが、決闘者以外からの横槍はルール違反だ。
そも、あいつらにルールを守る気など、全く無かっただろうが。
「お兄ちゃん?みんなぁ!」
!?イカサ自身も何が起きたのか、分からない様だった。
「キサマらぁ!よくも、よくもみんなをぉ!!」
「な、そんな、私は知らな!?」
レナが即座に全体手当て、漸次大回復を行う。
「レヴァンティン!シュランゲフォルム!捕縛!」
レヴァンティンの魔法の刃が、奴ら全員を一纏めにして縛りあげる。
俺もみんなに全体手当てを行った。
「ま、待って。私は本当に!?」
「この悪魔め!死ぬがいい‼️」
「やめろ!」
そう言って、俺は奴らとフィナの視界の間に割り込み、フィナを抱きしめながら、
「落ち着け!」
まだ、何か詠唱しかけたので、キスで詠唱を無理矢理止めた。
フィナの絶叫。
「ギャアアァぁ!」
フィナの体が変化していく。
ゴゴゴゴ!!!!
「お兄ちゃん!みんな!あああぁぁぁ!!」
フィナは天を仰いで視線はもう、この世界を見ていない。
美しい銀髪は全く光沢の無い黒色に変わり、健康的な褐色肌が色を失う。
瞳の白目部分は黒々とし、逆に黒目部分は白くなって精気が無い。
黒い血の涙を流している。
「みんな、みんなの力を貸してくれ。フィナを守るんだ!」
全員が俺とフィナを取り囲み、手を繋いで輪を作る。
「姉々、フィナ姉々!」
「フィナちゃん。フィナ!」
「「フィナちゃん!」」
「何処にも行くな!行かせない!帰ってきてくれ!!」
「「「「「フィナ!」」」」」
「お兄ぃ・・・ちゃん、お兄ちゃん?お兄ちゃん!!」
「フィナァぁ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「恐らく、フィナは堕天して魔神になり掛けていたんだと思う」
「それをみんなで抑えられた。と?」
「多分」
もう髪も肌色も元に戻っているが、かなり、憔悴している。
「しばらく、フィナは休んでてくれ」
ベンチにフィナを寝かせて、奴らの方へ向き直る。
「さあ、話して貰おうか?」
縛りあげられた野盗の1人がふざけた事を言い掛けた。
「はん、何を言ってやがんだ?」
相手にするのも面倒なので、クラウ・ソラスで一突きした。
決意の指輪も返して貰っている。
「次は誰だ?俺は余り気の長い方じゃないぞ?」
「そ、そんな脅し、」
「頭が悪い上に耳も悪いのか?」
2人目。
「ま、待て!」
3人目。
「ふぅ。同じ事を二度言うのが苦痛だと言っているのが分からないのか?もう全員殺すか?」
「まま、待って下さい。何でも全てお答えします。だからどうか、命だけは」
漸く話が出来そうだ。
「ではまず、お前達の雇い主は誰だ?」
「雇い主だって?そんなモノ・・・」
4人目。
「もう、本当に面倒になってきた。もういいか?」
「待って下さい。本当に分からないんです。何か巧妙に姿を隠して、表に出て来ないのです。俺達もその内にもうどうでも良くなってきて・・・」
確かに今、俺も何だかどうでも良く思えてきていた。
何だこれ、集団催眠か強力な暗示なのか?
まずいな。何だかとてもキナ臭い予感がするぞ。
「なら、このエルフの奴隷はどうやって手に入れた?その辺のチンピラの持ってる金で買えるモノではない筈だよな?」
「え?いや、こいつは・・・あれ?・・・ごふっ」
どうやら本格的に、訳が分からなくなってきている様だ。
気分が悪くなって吐きやがった。汚ぇな、おい。
女にも聞いてみた。
「なぁあんた。あんた、自分がどういう経緯で今ここに居るのか、説明出来るか?」
「え?貴方、一体何を言って・・・?え?えぇ?」
ダメだな。どういう事なんだろうか・・・?
「兄様、この者たち、如何致しますか?」
「あ、あんた、助けてくれ。俺はただ、誰かに操られていただけなんだ!」
5人目。
どこまでも口の聞き方の知らない奴め。
「ひ、ひいぃ。お、お許し下さい。剣士様。お願いします。何でも致します。どうか、どうか!」
そう言って、イカサという女はアルバを脱ぎ始めた。
さすがにこの女を抱きたいとは思っていなかったが、その姿を見て、驚愕した。
革のボンデージである。
ほぼ、全裸と変わり無い。
どちらかと言えば、拘束具である。
局部、上も下も防御する気が無い。どころか、隠す気も無い。
小さな痣が無数に存在する。
どんな扱いを受けてきたのか伺い知れよう。
それを思うと涙が出そうになってきた。
俺達への暴言は許せないが、所詮暴言。無視すればいいだけの事だ。
別の魔法使いにファイヤーストームを食らったが、そいつにはもう、報いを受けさせてやった。俺達の回復スキルは優秀だ。火傷痕も残らないだろう。
俺達には暴言など、はね除けるだけの周りのフォローが有る。
明日には忘れ去る自信もある。
「少し、落ち着いて話をしよう。まずはそのアルバをなおして。寒いでしょう?」
「あ、ありがとうございます」
そう言って彼女は衣服を正す。
「多分、ここから必要でしょう。私は桧上慎。自由民です。貴女と闘ったのは桧上風稲。あと、右からレナ、アイ、ミミ、テテです」
「私はイカサ・ミカサと申します。皇都に住むミカサ子爵の三女です」
「どうしてそんな貴族のお嬢様が、街のハグレ共に?」
「そこが私にもはっきりとしない所で・・・」
まだ、少し混乱している所だそうで・・・。
まとめると、ミシフの迷宮で探索を行っていた所、魔物との戦闘終了直後に背後から何者かに襲われ、気付けば自分1人。
そこで、どうしても顔を思い出せない誰かに、何かを吹き込まれ、気付けばオークション会場で売却は終了していた。
訳も分からないまま、見知らぬ男共に連れていかれ、いいように弄ばれる毎日。
何もかもどうでも良く思えてきた頃、1つの計画の話を聞かされた。
もう、どうでもいいと思う様になっていた女は、自分の役割のみ聞いて行動する様になっていた。
これだけ大掛かりな計画を実行する連中が、この女から情報が漏れる様な事をする筈も無い。
作戦が失敗すれば自殺させるぐらいの事はするだろう。
もしくはそもそも、そこまで情報を与えずに実行させるか。そちらか。
また、誰かから誰かへ、落札金が支払われているのかどうかも不明。
皇都のオークションは正式な皇国主催の物。捜索願の出ている人物が、取引される事は無い筈だ。
何か大きな闇を感じてしまうが、俺に出来る事は少ない。
可哀想な気もするが、皇都騎士団に引き取って貰う事ぐらいしか出来ない。
ここでお別れだが、その頃には、
「本当にご迷惑をお掛けしました。いずれまた、こちらからお礼に参ります。皇都へお越しの際には、是非我が家へお立ち寄り下さいね」
と、フィナと固く握手するまでになっていた。
フィナももう、正気を取り戻し、落ち着いている。
「みんな、帰ろう」
キザマ村。
もう、夕方も近い。
みんなで晩御飯を食べて、
みんなでゆっくり温泉に入った。
久し振りに1つの布団で寝た。
疲れていたのに、色魔を付けて頑張ってしまった。