※この作品はR-18です。

ワルキューレの迷宮騎行   作:葵翠

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最終回 人間

 何だここは?

 

 町の英雄?を称えた銅像が広場中央に聳え立ち、町を睥睨している。

 

 何処か見覚えが有る。

 

 オーゾの町だ。

 忌むべき町。俺のミミとテテを虐めた憎い民の棲む町だ。

 

 こんな所に用は無い。間違っても訪れる事なんて無い。と思っていた。

 

 いや、間違えた?ちゃんとワープする時、キザマ村ヘ。って唱えた・・・?

 本当に唱えたか?MPの減少を感じたか?

 何か違和感が有った。

 ゲートの出現するタイミングがいつもと違っていた気がする。

 既にゲートは閉じられている。

 何より、自分の意思でゲートを閉じたか?

 

 勝手にゲートが開かなかったか?

 勝手にゲートが閉じなかったか?

 

 俺達は謀られた。嵌められたんだ!

 罠ならここに居るのはマズイ。兎に角、ここを離れるんだ。

 

 何?魔力が結実しない!?

 AMF(アンチマジックフィールド)だと?ESPジャマーか?

 この世界にもそんなモノが有るのか!?

 冗談じゃないぞ!

 ワープもオーバードライブも使えないじゃないか!

 

「兄様!?」

 

 隣に居るレナもこの異変に気付いた様だ。

 

「恐らく、ここはオーゾだ!スキルが使えない!気を付けろ!?」

 

「キャッ‼️」

 

「レナ!?」

 

 レナが倒れた!

 レナの頭に石が当たったのだ!

 別方角から飛来した石礫に気を取られ、避け損なったんだ。

 

 額、鬼人族の角の横の辺りから血が流れ出してきた。

 

 くそっ、アイテムボックスも開かないから薬も取り出せないし、“手当て”も発動しない!!

 

 

*********************

 

 兄様の開いたワープゲートからキザマ村へ。

 

 確か、兄様はキザマ村へ。と呟いた筈だ。

 もう何処へも立ち寄る所は無いし、用事は全て済んだはず。

 

 ここはどう見てもキザマ村ではない。

 

 恐らくオーゾの町だ。

 フィナちゃんが元居た、研究所?が有る、嫌な町だ。

 

 こんな所、早く出たい。

 

 町の中央、何かを称えた像が屹立する広場だ。

 

 兄様自身、自分の意思とは違う所へ出た。ってお顔をされている。

 

 何か違和感が有った。

 ゲートの出現するタイミングがいつもと違っていた気がする。

 既にゲートは閉じられている。

 何より、兄様はご自分の意思でゲートを閉じた様に見えた?

 

 勝手にゲートが開かなかった?

 勝手にゲートが閉じなかった?

 

 私達は謀られた。嵌められた?!

 罠ならここに居るのはマズイ。兎に角、ここを離れないと。

 

 なに?魔力が結実しない!?

 全体手当ても漸次大回復も発動しない?

 

「兄様!?」

 

 隣に居る兄様もこの異変に気付いた様ね。

 

 兄様が、

「恐らく、ここはオーゾだ!スキルが使えない!気を付けろ!?」

 

「キャッ‼️」

 兄様の方ばかり注意がいって、反対側から自分の額に石が当たった。

 

「レナ!?」

 

 私はその場に倒れこんだ。

 

 額、私の角の横の辺りから血が流れ出してきた。

 

 ああ、武器は兄様のアイテムボックスだ。薬もだ。さっきと同じく“手当て”も発動しない!!

 

 

*********************

 

 意識も朦朧としてきた。

 

 ああ、私が兄様の盾となり、お守りすべきだと言うのに、何も出来ないなんて・・・。

 出掛ける前にフィナちゃんからも気を付けてね?って言われたのに。

 私はいつもそうだ。

 愚図で愚鈍な馬鹿妹。

 兄様の盾にすら、なれないなんて・・・。

 

 テテさんなら、敵に接近すら、させないだろう。

 ミミちゃんなら、兄様を小脇に抱えて逃げられるだろう。

 フィナちゃんなら、常に剣を帯刀している。

 アイ姉様なら、フィールドウォークの罠に気付いただろう。

 

 私の愚かさが、兄様を窮地に追いやってしまったんだ。

 

 私の兄様。

 いつも優しく私を包み込んでくれる兄様。

 

 私は何を間違えたんだろう?

 

 常に兄様に感謝し、

 常に兄様を目で追い、

 常に兄様を感じていた筈なのに。

 

 兄様はいつもカッコ良かった。

 兄様はいつも私を、皆を見てくれていた。

 兄様はいつも楽しかった。

 

 兄様はいつも誠実だった。

 

 そんな兄様が一度だけ私に、皆に、ウソを吐いた。

 

 全員に身代わりのミサンガを渡すと言って、自分だけ後回しにしたのだ。

 もし知っていたなら、あの事件は起きなかったかも知れない。

 チョーカーの件は姉様と私は気付いていた。

 

 でも、それは兄様がみんなを思っての事だった。

 

 

*********************

 

 レナの瞳が力無く、閉じられていく。

 

 君を守ると誓ったのに。

 

 誰にも、“死“にさえも渡さないと心に誓ったのに。

 

 俺はいつもそうだ。

 

 弱く、愚かで、何も分かってない。

 

 テテなら、敵の接近に気付いただろう。

 ミミなら、俺を放り投げてでも逃がすだろう。

 フィナなら、常に剣を帯刀している。

 アイなら、フィールドウォークの罠に気付いただろう。

 レナなら、何者に襲われても負けないだろう。

 

 俺の軟弱がレナをこんな目に合わせた。

 

 俺のレナ。

 いつも優しく俺の傍で、俺を支えてくれるレナ。

 

 俺は何を間違えたんだろう?

 

 常にレナに感謝し、

 常にレナを目で追い、

 常にレナを感じていた筈なのに。

 

 レナはいつもカワイかった。

 レナはいつも俺を見てくれていた。

 レナはいつも微笑んでくれた。

 

 レナは決してウソは吐かなかった。

 

 そんなレナに、皆に、俺はウソを吐いた。

 

 全員に身代わりのミサンガを渡すと言って、自分だけ後回しにしたのだ。

 もし知っていたなら、あの事件は起きなかったかも知れない。

 

 みんなを思って?

 本当にそうだろうか?

 単なる虚栄心、自己満足なんじゃないのか?

 

 美しい恋人、愛らしい妹、綺麗な愛人に囲まれて、有頂天になっていたんじゃないのか?

 

 何を勘違いしたらそうなるんだか、お笑い草だ。

 

 

*********************

 

 ほんの少し、走馬灯を追いかけただけで、俺の体をすり抜けてレナの体に槍が刺さる。無数の石が当たる。

 

 レナを救う方法が見つからない。

 もう、何も思い付かない。

 

 ああ、何も出来ない。

 

 もっとアイと腕を組んで歩きたかった。

 もっとフィナと見つめ合いたかった。

 もっとテテに膝枕して貰いたかった。

 もっとミミと手を繋いで歩きたかった。

 もっとレナとキスをしたかった。

 

 でももう、良いだろう。

 幸せな夢もここまでだ。

 

 十分、楽しかったよ。

 最後まで夢かゲームか分からなかったけど、俺には本物の人生、世界だったよ。

 何にせよ、間違い無く、何者かの意思が介在していたと思うが、断じてこれだけは言える。

 

 俺はここで生きていたし、彼女達も生きていた。

 

 それで十分だ。

 

 

 だが。

 

 どうしても、これだけは捨て置けない。

 

 この、醜い悪魔(にんげん)どもだ。

 

 こいつらだけは絶対に許さない!

 

 残されるアイ、フィナ、ミミ、テテの為にも絶対道連れに連れて行く。

 

 結局、人の敵は人間。と言う事か。

 

 せめて、彼女達には・・・・・・。

 

 ああ、遺言残して無かった。

 あの娘たちもいずれ、亡くなってしまうんだっけ?

 

 どこまでも間抜けだな、俺は。

 

 

 そして、これも試した事無いから、成功するかどうか分からない。

 フゥ。愚鈍の極みだ。

 

 だが、可能性があるとしたら、もうこれぐらいだろうか?

 

 キャラクター再設定の時に、始めにチェックを入れて以降、存在すら、忘れていた。

 

 

 腕の中のレナは、呼吸すら感じられない。

 

 俺は力強くレナを抱きしめて、外の全ての悪意から彼女を隔絶した。

 

 最後に、レナに、呟いた。

 

「レナ。夢で逢おうな・・・」

 

 

 そして俺たちは光に包まれた。

 

 

 

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