※この作品はR-18です。

ホムンクルスの花弁〜戦争需要で粗製乱造されちゃった性欲つよつよモブ兵隊ホムンクルス少女がsenkaをする側になっちゃった話〜   作:もにもに+マウンテンヘッド

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本編

 

ーー

 

 

 

 

「なぁ、どうなんだ?」

 

 

 ん?

 

 

ホムンクルスの量産人造兵士たるわたしたちが原物をさわれたり持つことは、貴重かつ希少で稀とされている紙のカードの絵札遊び。

 

それを分隊のみなと遊んでいたら、

同族の一人がそう話の水を向けてきた。 

 

 

揺動に揺れる、飛空輸送艦の船倉内での会話だ。

 

 

「ウチラに、ああしてくれて、こう気を利かせてくれてるんだ。

 ひょっとしたら、…チャンスがあるかもぉっ!!」

 

「馬鹿言わないで。上がり」

 

「! ぬぁー!?」

 

繊細な美少女の造作そのものの、私たちの顔。だけどこの同族は興奮にその細く小さな鼻の穴を目一杯はしたなく膨らませていて、正直見苦しくてみっともない。

なのでわたしがそのように絵札遊びの宣告を突きつけると、たまらない、というように!

絵札を放って投げ散らして、

 

……直後、このわたしの同期の同族は、

私たちよりも先輩に当たる生産ロットの目上の同族に、脳天に鉄拳を叩き込まれた。

 

“絵札が傷んだらどうする!貴重なんだぞ!!”

 

というのがその旨である。 

 

それだけであったら笑い話として良かったのだが、涼やかに笑いをこぼしかけていたわたしの眉間にも、続いて裏拳がどつきこまれたのであった。

 

“連帯責任!オマエの分隊の同族だろう!”

 

とは突きつけられたのだが、

やはり今となっても、そのことには納得できない。

 

 

 

 

 

………

 

 

 

この度の戦いの経緯自体はどうしようもないものとして、少なくとも私にとっては物笑いの種にできるのであったが、

戦争の激化というのは笑いようにできる話では非ず、

その必要性にかられて、生体奉仕機材、つまるところのわれわれホムンクルスというもの、

それを戦時省力急造…

…本来であれば必要とされる工程や過程を省き、必要最低限の仕様で、軍事兵器の人造兵士としての投入に間に合わせ、直面している国難の解決を図る…

 

とりあえずのところとして、わたしたちを生産し、今も同族の製造調達を続けるセンタリア国の言い分としては、まあそうだ。

 

 

 

 

 

果たして、わたしという個体がこの現世に発生させられてから、まだ三ヶ月も立っていない。

 

 

けれど、あらゆる意味と次元における都度の杜撰さと行き渡らなさは、標準的な同族と同じく情緒発生の未熟なわたしにすらも、いまのこのブラックユーモア的な感受性と感性というのを催来させ宿らせるに十分だったくらいらしく、

つまるところ、そうしたままならない体験の連続というのは、今このいっときにおいても逃れえることは出来ていない。

 

 

元が奉仕のための生体機材なので、有り体に言えばこの一種の生理代謝的な……催すものが誤魔化しようがないのだ。

 

けれど、

性欲発散の自慰のための共用の糸紡ぎ棒が用意されてればマシな方。

 

我慢しきれなくなった同族は、

教練用の模擬装備の木剣や木銃、銃砲類のクリーニングロッド、

ホウキやデッキブラシの柄の先など……つまりは、棒であれば何でも良いのだ。

それはもう、目を覆いたくなるほどの痴態ぶりだが、ただわたしだって理解できる。あれはとてもいいものだ。

けれど、このことがたたって、戦力準備としての待機期間中での駐留キャンプの用具入れやその備品は、

なにをしたらこうなるんだ、というばかりの汚損と損壊と、どろどろ、べたべた、ぺとぺと、とろとろ、ぬめぬめ、かぴかぴ、じめじめ、しっとり、という嫌な触感と悪臭に苦しめられたものだが…

 

 

はい、そうでしょう。なんなのでしょう? え?

培養槽からでたばかりだろうというのに、その乱れよう。一週間どころか3日もたっていないで直にそうなる。一体なんなのだというのでしょう?

されど、肉の身体としてこの世に宿り落ちたには、ホムンクルスという存在の本質根本の性質からして、もはやそうしたこみ上げる性衝動と欲情の奮発というのは、やらない限りにはきがくるいそうになる。⋯⋯わたしもそうなのです。

そうすると? まあまあまあ、⋯⋯

穴兄弟ならぬ竿姉妹。

挿れたくてかき回したくて挿れたり挿したりしたくて⋯⋯と、おのれの股のそれをいぢめるうちに、われらホムンクルスとその同族というのは、いつの間にか“我”めいたなにかを大小強弱程度は個体差あれど得るに至る。⋯⋯とされる。

そうして一括大量製造された量産型品のわれわれホムンクルスがまず手癖として覚える各々の“個性の有り様”というのは、そうして己とおのれの恥部と膣孔の肉管を慰める、そうした“テクニック”とその経験値拾得として、まず表れるわけだ。

ただ、他のやつの粘液やらまみれになったそれを、ほかのやつがなにをなにしてどうしたのか名目わからんそれを用いて、それで心おきなく憂うものなく楽しめるのか、と。

ばっちい、ばっちくなったそれで。

わたしは、正直いやでした。⋯⋯できればなら。

まあ⋯⋯汚れてようがどうやらでも、どのみち多少どうかやったくらいでホムンクルスはどうにもならないのだけど、まあわたしは、少なくともそういう性癖ではないつもりだ。

そうして極力だれかの竿姉妹になりかねないことを気にしながら、お気に入りにしていた用具がどこかの誰かの同族によって“上書き”されたり汚させられたりはたまた壊されたりなんかもあって、

いまのわたしはこんなヒネた性格になっているのです、はい。

 

 

とにかく、願ったわけでも頼んだわけでもないのに宿り落とされたこの世の現世は地獄であった。

正規運用ホムンクルス配置部隊ですら、大多数ではそんな処遇すら望めないのだ。

それがこのセンタリア国軍の大部分での一般の通常である。

 

そうであるところを、なんと、この輸送艦には!

よくある貧弱なものではなく、多少より頑丈で少々太くて長く大ぶりな、

まあ悪くないような糸紡ぎ棒が、多数、支度をしてくれていた。

 

なんと快い、すばらしい思いやりなのだろう!

ふだん、他者を誉めそやすことにかけてはある種の吝嗇家の類であろうわたしとてそう喝采したのだ。

(ただ、乗艦してからずっと機会を伺っていたが、同族たちの狂乱狂喜ともいえる奪い合いに、わたしは勝ち抜けないまま、今日までに辿りついてしまった……)

昼頃のあの同族はそれを指しての言だったことだろう。

つまり、“われわれに気を利かせてしまうことがあり得たほどの奇特な、ホムンクルス趣味だろうから、チャンスがありうる”⋯と。

 

 

けれども、因果の実際は逆だ。

ホムンクルスは怪力といえる臂力を発揮し得、

特にわたしたち“粗悪品”のホムンクルスは意図的にプロセスの省略⋯⋯手を抜いて製造されているため、

基礎的情緒倫理プロテクトの刷り込み⋯インプリンティング⋯

これというのが、軍事戦闘用に発注製造されたから、というのもあるだろうが、

それを差し引いても、まあ緩い。

 

 

そうなると使役主である人間に反抗したり危害を加えるということもあり得るわけだが、そこにわれわれホムンクルスの特性が加味されると、人間の牡、それへのあからさまな欲情という形で発露がなされる⋯そして⋯

 

今までにも多数、いろんな問題の例があったようだ。

事案として噂になっているのを伝え聞く限りではあるが、なるほど、人間の兵員からしたら、家畜未満の使役機材相手にさえこんな特別な配慮でもしないと、敵軍と戦う前に己等の今日の命があぶない、と。

 

たしかにね。

輸送艦というある種の密室の中でどうかされたら、わたしたちホムンクルスがどうかなったら、人間種族市民や兵士による叛乱や暴動よりも手が付けられないのだろう。

まあ、件のあの同族はあのあと輸送艦のクルーにちょっかいを出そうとしたらしく⋯

そのまま艦の独房にぶち込まれる寸前までいった。

 

そこで非当事者の傍観者として笑い種にできえたらよかったところ、またしても不幸だったのは、

目上の同族が、わたしや分隊のみなに頭を下げさせて、⋯⋯それでも考課には記入がなされるということだった。⋯一律に、分隊全員のに!⋯

嗚呼、なんでなのか。わたしという個体の生まれの星が悪かったとでも言うのだろうか?

でもそうしたら同じロットで宿り落ちたのであるからあの奴と共通なのでそれは真を得ているということになるからなんだか納得できないし、

そもそもとして、わたしたちホムンクルスに易学上での星座というのがあるかは、概念の実在以前に知識としてアーカイブにインプットが与えられていないからどのみちわからないが。

 

 

 

さて、ホムンクルスは人間種の上玉の美少女相当としての造作とつくりは外見上はなっているということで、

一時期、人間の貴族や富めるものたちは、実用可能な美術調度品、としてわれわれの類をステータスシンボルとしていたくらいだったそうだ。

いっときは、限定品であったり一点ものから少数などでの特注品、オーダーメイドやオートクチュールのホムンクルスというのが、大変にもてはやされたらしい。

(しかしホムンクルスが妊めて産む仔は胤がどうあってもホムンクルスそのものになってしまうので、人間種の播種という意味では“実用性”というのは早々に但し書きが添えられることとなっただとかが現在での一般的観念だ)

 

 

だから、人間がわれわれに欲情し得ない…かは、まあそれでも、どうなのだろうか。

 

わたしは、軍の中から出たことがないから、わが国の一般の、銃後や後方での社会の雰囲気だったりがどうなのかは、体験がない。だから、一番手近で身近な牡は、自ずと軍の兵員兵士、ということになる。

けども、その部隊の人間の牡も、

新兵だったりホムンクルス慣れしていない奴の場合なら、

最初の頃は、こちらたちからの誘い様によってはまあいい思いは出来たこともある我々の同族のやつは居ただろうというけど、

暫くもしないうちに、

ひっきりなしにねちっこく欲求してくる、居並ぶ我々同族に、向こうの方が食傷したのか、あるいはホムンクルス相手にはもう御免となったのか、

滅多なことでは吐き捨ての相手役にも選ばれることはなくなった。

 

それでもしつこく、身の鎮めの慰めを願って求めた同族がいて、

余りに抑えの利かなくなったために

とうとう具体的な内容としてやらかした同族のやつも複数出た結果…

 

結果、今はそういうことは

軍規定による懲罰の対象となってしまった。

 

 

由来としてはそういうことだった。

故にして、本物の牡の人間の剛直にありつけたわれわれの同輩は、いなくはないだろうからよほどの幸運者だろうし、

ないしは、その多数はすべからく前科者ということとなる。

 

 

だから、そうなると、毎日の欲求の解消はどうせざるをえないかというと、

 

 

 

「あ、ぁ、う、ん…」

 

 

「ゆび…が…、もっと…、、、」

 

「ぁ、ああ!」

 

「嗚呼、嗚呼、はぁぅっはあぁっはっ」

 

「ふー、ふー、ふーぅ、すゔっ、ぁ、」

 

「⋯ ⋯ 、 ⋯⋯ 、。⋯⋯⋯ ぅっ。」

 

「はあっはぁっはっあっあっあっああぁあぁ」

 

「あっ、あ、あああっ」

 

「…っ…っ……っ……ぃ……」

 

 

まったく、きたない花園というやつでありますよ。

 

本来であればこの飛空輸送艦の遮蔽船倉内は、

高高度巡航の為の必須的な与圧はされているが空調設備というわけてはない輸送艦の機材周りの関係で、

ただでさえ換気は悪く、空気は籠りがちで、

そのうえ薄暗く、寒いのか艦の魔導発動機関からの伝導熱で暑いのかも、その入り混じりなのかもわからない。

元々の内部の環境としてはまごう事なく劣悪の類であろう。

 

けれども、上記の通りだ。

わたしたちの汗と呼気の充満と飛び振り散る体分泌液類の揮発で、ホムンクルスの体液と体臭特有の蒸れた甘ったるさの帯びたそれによって、

ジメジメしていてなまぬるい、

不快な湿度と温度に、目眩をきたす綺麗じゃない感覚感触と醸される実体的な臭いに淀んで満ちきった、そんな空間となっていた。

 

 

わたしたちのこの光景を人間が見ることがあるなら、その異常さに、ギョッとなるだろう。

……白い肉の肌の作り物の人形めいた少女どもが、盛り合って、乳繰り合い、互い同士に乱雑に重なり合いながら慰め合っている。

その中のひとり、もちろんわたしです。

 

 

なにをやっているかって?

御主人様…使役主…の人間の、その牡がどう仕組んでも相手してくれないのだから、なら、自分たち同士で、自分たちのシモの始末のつけようは取らざるを得ないのだから。

 

サカっている同族のなかには、各々の知り得て使い得る各種の性戯や“貝合わせ”だけ以外にも、先述の糸紡ぎ棒で直結して繋がりあえて…淑やかにであったり、潤み合いながらやってたり、はげしくやったり、果て合っているのも多数いるようだが、

 

…わたしは勇気がわかない…

 

 

「ねぇええ、やろうよ、やらせてよぉお」

 

「嫌だ。何度言ったら…ぁ、ん、うぅ、う、ぉぁ…ゆび…止めないで…」

 

「なら、ならぁもっとおお、あ、…

 あっおっ、ほ、おホォ、あぅあ、んッ」

 

 

わたしが今やり合ってる相手は、またしてもの件の同族てある。

おもえばだいぶ前からこんな関係である。

どうにも腐れ縁と言えるのであるらしい……

 

こいつはなにかしらの硬いなにかでわたしのと同士で直結したがっている節があるが、

わたしにはそんなつもりはないので、

せいぜい、掻きさせ棄てをやりあうのを互い同士の了承として取ったはずなのがだいぶ前なのだが、

それでも、ことあることにこのようにねだり倒してくる⋯⋯

 

まあ、こいつの指使いは、悪くはな⋯いや、正直上等の類だろう。

おかげで、今日もわたしは後腐れなく気持ち良くなれている。

 

 

(わたしは同期にこうしてやりあうのを基本としているつもりだが、でも目下のやつ相手に、どいつもこいつも“御姉さま”になりたがるのはなぜだろうな。

 わたしもそうした目上から誘われることはあるのはそうなのだが、迂闊に目上のやつに義理なんてものを作ったら、後でどういう貸し剥がしにあうか!

 たしかに先に宿ったロットの者たちなら、性戯だとかのその技の腕前は良いものだとはつねづね伝え聞いている。

けれどすくなくとも、わたしたちは戦場で戦う戦士の役割をさせられているがために、その代金の収穫が片方のその生命に関わらないことだとは、保証しえれるものはないということは、わたしが知り得るものだけでも文字通り笑いようがない話ばかりだった。

⋯⋯わたしは慎重かつ思慮深いホムンクルスとしてたりえることを心がけているのだ)

 

 

 

それなのでわたしは、だから⋯⋯

 

 

「ん、ンんっ。⋯ぁ⋯ッ」

 

 

⋯⋯失礼。

 

 

基本としては、

同族同士の手の指位が、

最大級に贅沢な…恋人になってくれてる。

 

 

宿ったばかりの初めの頃はいいとすれ、

おのれを快感を触れるのが

なにがしらの自分自身の体の部位のみでは、やがて快感が足りない。やがてそうなる。

 

故に、こうなのだ。

愛撫も、いたぶるのも、虐めることも、

それが、他人によるその感触となると、なかかどうして!

 

手っ取り早く快楽を感じたいがために、 

激しく、乱雑に、粗暴に、手荒く…

どんなにがさつに己の性器を苛めても、 

数時間もしないうちに、ホムンクルスの生理代謝能力により他の身体部位と同じく生殖器や腟内が再生してしまうため、

何度やってても破瓜の流血が出てしまう

 

 

 

甘ったるい汗と体液の匂いに、ホムンクルスの血の微かな鉄臭さも僅かに織り混ざって、不浄な湿度の密閉が、呼気として嫌でも吸入してしまう⋯

酒の類は服用したことはないが、それでも、酔ってしまいそうではあった。

このフネのたった今が高速飛空航行中でなければ、涼みも兼ねてデッキに出てしばらく清潔で新鮮な空気を吸っていたい気分にもなりかけていた。

だけど、

 

(⋯⋯。)

 

けれどこの牝の性器には、

⋯⋯人間の男の拳が入る、というのを、

だれが置いたのかも遺したのかもわからない、待機キャンプの共用書棚にあったノベルの類で見たことがある…今でも覚えている。ちなみにけっこーお気に入りの慰めネタである…

 

肉棒の挿入の想像も良いものだ。

こんなに小さく細くキツくて狭い孔と、その肉管の中に、剛直が入れられて、そして⋯

 

こんな未熟な代物が、

破壊されてしまうのか、

かたちを受け入れて自分の性器が鞘としてふさわしく中の作りと形が不可逆に変形させられて変わり、作り変えられ、本当に適合してしまえるというのか、

味を覚え、形状を覚え、そう出来たら、そうなれたら、そんなことがあるというなら、そうしたら、そうしたら⋯⋯

 

 

どんなのだろう、見てみたい、

⋯体感してみたい⋯

 

 

⋯⋯⋯貫通されたい⋯⋯⋯

 

 

そんな淡いささやかで淫らな妄想をしながらの、

同族の白く細く小さな長い指でかき回されながら、

欲求の不満を堪えるように薄く震えながら我慢していた。

 

 

 

***

 

 

 

輸送飛空艦の船倉の中の、

硬い冷えた床に自分たちの着替えやらを撒き散らして敷物代わりにし、無理やり性欲の解消を試みた結果、

 

翌朝の現地到着時には、

如何に強靭かつ頑健な生体特性をもつホムンクルスといえども、多少は堪えた⋯

 

互いに乳繰り合いながら

散々にかき回しあったあとにグースカと寝て、

それからの早朝である。

 

 

朝日が昇っていた。

その直下の原野じみた平原のただ中に、われわれが配達された前線駐屯地はあった。

 

簡易に整地されただけの野戦駐機ヤードに着陸しペイロードランプを降ろした飛空輸送艦から、

髪と着衣の乱れを最低限整えただけのわたし達ホムンクルスの兵士たちが、

前線キャンプの土塊の地面を踏み歩きながら、

そうしてわたしたちは、集合場所であるキャンプ内・野外大グラウンドへと移動した。

 

 

降り注ぐ陽光が、目に痛い⋯

地面に落ちる影は、朝の日光ということも合って、その色の帯びは群青色に仄かに青みがかっている。

着替えや靴下、下着などの最低限の私物を入れたずた袋をおのおのの姿勢の取り方で肩に掛けて、あるいは抱き、携え、その紐を短く手繰って握りながら、

ズラズラと移動するおのれら同族たちのその地面の影と足取りの、その足運びを追いかけるようにしながら、そうして視点は俯き、地を這わせながら⋯⋯少なくとも目線を上げるつもりにはならなかった。

 

すん、……

着衣の匂いが…くさい。

まあ当然かもね。昨日のあれで、汗だけに留まらず諸々の体液の滲みとふりかかりにまみれたのだ。

己だけのでない、乱交の痴態によって、他の同族のそれにも染みた後の、である。

敷物代わりにしてしまったズタ袋の中身もそうなったのだ……つまり、清潔な状態の代えもない。

加えて身体の方も……三日に一度を心がけていた清拭さえ忘れていて出来てなかったので、わたしのこの全身には、むず痒さと汗の揮発と潮気めいた匂いと強張りつつも渇き切っていない感触が、まとわりついて、篭っていて、帯びていて。

挙句の果てには、この場にいるホムンクルスのだいたい全員は皆そうだったのだから、歩く臭気の集団と化していたのが今の我々なのであった、嗚呼。

 

 

グラウンドに到着した。

⋯⋯屈強そうな人間の牡の、兵士や軍人たち。

おそらく正規の兵員であろう。

その人影がいくつか立っていた。

 

 

今回のデリバリー⋯⋯配達⋯⋯ 

その内訳は、戦時急造省力生産ホムンクルス、100体とその予備。

さあ、これで、この地にたどり着けたのだというわたしたちはどんな御役目をもてなしてくれるというのか。

 

 

“地付き”の兵員の牡のなかで、ひときわ屈強で体格のいい、壮年の男が前に出た。

階級は⋯野戦上級士官、つまり部隊長クラス。

つまりは指揮官。

傍らには神経質そうな副官だろう士官や、

顔の造作や体形やら体格やら髪型でそれぞれ個性の表れている若かったり年を食っていたりの他数人の、人間種の牡の先任下士官たちが控えている。

 

作戦部隊の命令人材たちが、この人間の牡たちだろう。

 

それを一覧して、感じる。

ただでさえホムンクルスの上にロットごとの大量生産品であるわれわれとは違って、

生物やそのなかでも人間というのは、

こうして個々個別の特徴というのが自然に生まれてるというのが、わたしにとっては興味深く関心が持てる。

 

⋯⋯下心というつもりは、無いわけではない。

たったこれですら、飢えきったおのれらには得難い贅沢なご馳走だ。

その詳細と隅々までを忘れることなく目に焼き付けておいて、あとは、就寝前や移動中や、余暇などに折を見て、身と心の鎮めと慰めに使わせてもらうつもりだった。

わたしに限らず大勢のホムンクルスが、粘ついたいやらしい目で、自らたちおのれらの爛々とした視線を、熱を帯びた爛れた感情をこのおのれら自ら自身どもの阿呆面に取り繕うことすらせずに晒し、そうしながら彼ら人間の牡の全身を舐め回し⋯⋯ありていに言えば視姦というわけだ。

 

中にはいるのだ。自身の髪を触ったり指で弄んだりしてなんとかして誤魔化そうというのが。はっきり言ってカマトトというのが過ぎている。

ただ、過ぎたるは及ばざるが……いやどうなんだこの場合。

なかには己の股座のそれに、手をまさぐらせたり握りこぶしを押し当てて腿に力を入れたり、あるいは直接刺激をさせ始めてたり、そうでなくとも、自らの胸やその先端やらその乳房を揉みしだきはじめている同族もいて……あっ、いま副官さんが注意を叫んだ。

 

さて、わたしたちという野蛮な蛮族たちから一方的にそうされている人間の兵員の牡たちは、嫌な気配と予感を感じているのか、

その佇まいを居心地悪そうに身動ぎさせたりしている。指揮官の牡の壮年以外は皆一様に、顔の表情は青ざめていた。

 

 

そんな経過は、続きながら。 

 

⋯⋯

集合と整列を整えるのでもなくそれらは簡潔に済ませて、

部隊長の、その壮年の人間の牡が、訓示を始める。

 

 

 

曰く、このキャンプは近隣に立地する敵の勢力⋯ひいてはその根拠地たるラフトバルト市地方市街への攻略作戦のために設営がされたものであり、しかし、その作戦の経過が長引いているということ。

 

“戦力主体”たる人間種主体の部隊も損失がかさんでいるが、 

“支援補助”のための多複数個のホムンクルス部隊がこれまでに何次にも渡って投入されて、いずれも壊滅していること。

 

そして⋯⋯

 

たった今現時刻をもって、壊滅したホムンクルス部隊のそのうちの3つが

わたしたち⋯いま来たばかりのわれわれによって補充再編成がされ、

確認点呼と装備品の配給が済まされた後、

キャンプ所属の兵員輸送用の陸上艇型モービルラフト各艇に分乗し、速やかに現地へと出発。

なお、点呼確認は今この通り実施し終えたので、

装備品の配給を続けて行い、

完了し次第、たった今から部隊としての活性化がなされたものとして、直ちに移動の開始がされること。

 

 

 

「ええ⋯⋯?!」

 

「きゅ、休息をとる猶予も無いのでありますか?」

 

「柔らかいお布団の上で寝たいよーっ……」

 

「清拭の時間か、湯浴みだけでも……どうか……」

 

 

「おまえども、ホムンクルスのくせして減らず口が多いぞ!!?」

 

 

怒号とはいわずとも巻き上がったわれわれの困惑の声に、

たまらず、副官が絶叫する。

 

 

 

そのとき、部隊長が刮目して言葉を発し、

 

 

 

 

「貴様ら。

 

 

⋯⋯股の穴のほじりは済んだだろ!⋯⋯」

 

 

 

 不意を突かれる暴言に、ざわめきは止められた。

 

 だけど、なぜそのことを?

 疑問による戸惑いと不思議への困惑。

 

 わたしたちのこの硬直へのその答えというものとして、巻末を置かずに部隊長のこの牡は発言を続け、

 

 

「どうだ、俺の手配であれは支度させておいた。

 顔のツラからして、玩びのおもちゃにはできたようだな、お前たちは。

 いいじゃないか。上等だろう。」

 

 

 

 理解したことによって、ホムンクルスであるわたしたち皆の阿呆面が、さらに間抜けなものになった。遅れて、ゆらりとした劣情の催来とその好色にわれわれの各々の顔はそれぞれの度合いで歪み、……場はにわかに色めきだつ。

 

 心を打たれる意味での唖然とした衝撃だった。

 輸送艦のあの特別な棒はこの牡の計らいによることだという。

 そうと聞いて、わたしたちは、畏敬と感動に近い気持ちで、慕情の芽生えのそれが地殻変動同然にまたさらに高く隆起して、なにより心が震える感触を止められなかった。

 

 

「だが? お前たちは、満足はしていないらしい⋯⋯なら、」

 

 

 

 なら?

 とどめに、なら、というのに、わたしも含めたわれわれは、さらに面食らった。

続きがある? あれだけじゃない? それが本当だというのか。

 

 

 一連の野卑なコミュニケーションと、

 わたしたち自身の自己に問いかけられるということが、特にシモの催しというのを。それも、ニンゲンの牡から、

 そんなこと、今までに水向けされたこともなかったためだからだ。

 

 

 言葉を待った。

 

 

 

⋯⋯

 部隊長の牡が、宣言をした。

 

 

 

 

「貴様ら、雄の味を知りたいか?」

 

 

 

息を呑んだ。

 

ごくり、と唾を飲むしか無かった。

文字通りの垂涎、ということでもあった。  

 

 

 

明らかにグラウンドの大気とその温度が変わり始めていた。

それは昇っていきすっかり空の中で高くなり始めた日光が、わたしたちとこのグラウンドに燦々と降り注いでるから、それにより熱し始められたからのでもあっただろう。

 

 

だが、ホムンクルスの下心をくすぐられるのには、先程の思わせぶりなたった数言だけで十分だった。

 

どうしよう。浮かされる様な熱の伝わりが、

己の下腹部のなかで脈動し始めた。

胎の中で練られるように分泌されたねとつく感覚が、股の下へと降り始めてきている。

 

 

グラウンドの土塊の地面に、ぽたぽた、と雫が落ちる。はしたない、とも取り繕ってられない。

糸を引きながら垂れる⋯

グラウンドの地面をみていただけでも、少なからぬ同族がそうだった。

目線を上げて注意を向けると、何人かは、身動ぎしながら、欲情を堪えて震えている同族がいた。

感極まってなにごとかの嘯きや呪文の詠唱かのような譫言、あるいはなにかの高ぶりを叫び始めたやつや、

己の半身を自分自身で羽交い締めるように抱きしめたやつも、少なくない。

 

 

 

「功労者には褒美もないのは嫌というつもりだ。

 以上だ。」

 

 

 

これがトドメとなって、わたしたちはざわめき立つ。

 

 

「静粛!静粛にしろ! 繰り返す!」

 

 

副官の下士官らしきやつが、声を荒げて叫ぶ。

 

 

けれど、わたしたちのあたまと身体は、そうであろうと思いたい、そのあらぬことへの期待と待望で止めようがなく高鳴っていた。

そしてまるで淑やかな人間の乙女にでもなれたのか、というように、

わたしも自分のみぞおちに、握った手のこぶしを抱きしめるように添えて、そのまま、力を込める。 

そうして、もう片方の手のひらで、祈りを捧げるつもりで、そのこぶしに重ねて、願うように包んだ。

 

 

 

 

⋯⋯でも⋯⋯

 

如何に簡略省略化されたインプリンティング工程しか受けずにロールアウトがされたおのれら戦時省力生産仕様の急造ホムンクルスといえども、

無論、過度にわきまえていないというつもりでもないのだから、  

夢をみているだとか思い上がっているということでも、

ましてや、期待しすぎていると言うつもりでもない。

 

 

ただ、ホムンクルスというのはその程度のものだ。

 

訓示が終わった時、

小隊長の去り際の私たちへの流し見のその目は、まるでがらくたや出来損ないの不要物の群れをみるような感情でのものだった。

一山いくらの、いくらでも補充の効く消耗品。

おまけに粗悪品で品質は論外。

実際がそうなので、抗弁のしようは、ない。

 

そして、おそらくはその“褒賞”の役をそうなったらやらされたり手伝わされることなのだろう、副官の人間の牡たちも、

これからの己等の負担とその不幸に顔の色を沈ませながら、わたしたちを、気味が悪いか気色の悪いか⋯⋯とにかく理解のしがたい何かなのだと見なしているという感情が、その顔には表れていて表情として張り付いていた。

 

 

⋯⋯

でも、それでもいい。

 

 

 

 

船舶用魔導機関の発動音が打ち響き始めたのがその時だった。

 

わたしたちを運んできた輸送艦が、野外駐機場のヤードから発進したのだ。

機関始動の轟音とともに発進して浮上し、

その出力が巡航へと高められていくとともに徐々にゆっくりと高度を上げていき、

飛空艦としての飛翔をしていくのが、背後の蒼い空に翻る。

そうしてその青空のさらにうえの向こうの陽光の光を越しに、シルエットとその影となって、わたしたちとこのグラウンドに、大きく降り落ちてかざされる。

 

 

ピストン輸送というやつだった。

たぶんとしなくても、

わたしたちと同じように、

わたしたちの同族たる乱造ホムンクルスを、

工場や待機キャンプなどのいくつかの後方の拠点から、またここにへと運んでくるのだろう。

 

まだ、今朝早くに到着したわたしたちの、出立もまだだというのに。

その必要が見越されているということは、つまり、則ちは。

 

⋯⋯センタリアは逼迫していた。

戦況もまたそうだ。だから、私たちは生産され続けている。配備配置され続けている。前線へと送り込み続けられている。

 

各正面や広大な戦域の各地で、このような出来事とその連鎖は日々続いているという。

わたしたちは粗製乱造されつづけ、増やされた数の順からまとまりごとに出荷がされ、

そして各地の戦場に、不法投棄同然に投下され、そうして自らの側の自国の正規市民権をもつ人間の兵士を死なせないための戦力として、磨り潰すように投入されるのだ。

 

 

傍観するわたしの中のある部分は、まるで他人事のようにそうモノローグする。

そんなとき、わたしのあたまのその脳内は⋯⋯

 

 

 

(慰めてもらえる⋯かも⋯

もしかしたら、⋯ぁ⋯愛してもらえるかもしれない!)

 

 

ホムンクルスの兵隊というのは、単純なものだ。

 

 

 

例に漏れることはなく、わたしもその一人だ。

 

 

 

 

***

 

 

 

駆けていた。

 

 

 

「てやぁぁ!!!!」

 

 

魔導小銃の筒を構えて、駆け出して、⋯⋯

相手の影へと。

突っ走ってぶちあった刹那、

己の軽い躰を質量と慣性任せにして威力を稼ぎ、敵兵の心臓へ、

小銃の先端の銃剣を突き立てる。

 

 

「ーーこれでぇっ、どうだぁっ!」

 

 

引き金を引き放つ。そのまま何回かの発砲を、連続させる。

押し倒して突き飛ばし、刺し傷から抜いた銃剣のその小銃で、

至近距離からの無射程射撃により、

完膚なきまでにこの相手を破壊する。

 

⋯仕留められた!

肩で息をしながら、呼吸を整えて。

ホムンクルスのフィジカルは、一般通常の人間のそれをはるかに超越している。なので、すぐに息遣いはもとに戻る。

 

足元には、ごらんの通りの肉塊が転がった。

吹き飛んだ肉片、撒き散らした紅⋯

血の色をみると己の中の何かの感受性が加速するのを感じる。

これも、戦闘用ホムンクルスとしてのインプリンティングと最適化の賜物なのだろうか。

 

とはいえ、だいぶ上手く行けているだろう。いまこの戦闘の推移は。

少なくとも、わたしたちのこの分隊のわれわれとその同族は。

 

短く魔導通信を報告しようと、口の中を唾液と舌で湿らせて、口を小さくひらく。

 

 

「⋯⋯G進路クリア、当分隊はL地点を確保に成功。次の指示を⋯」

 

 

⋯「やった!露払いはやっぱりホムンクルスなんかのための役目だな。第三分隊は前進する!」⋯

 

⋯⋯「一番槍は五分隊のだ、手柄は渡さん。

 五分隊は最高速での突撃を開始する!

 ほら、ホムンクルスは突入しろ!休むなあ!」⋯⋯

 

“「ホムンクルス部隊、遊撃を続けろ。

 中断や停止は命令していない。

 敵の正面に突破の穴を作れ⋯損害は幾ら出してもいい! 貴様どもの中からならな」”

 

 

⋯⋯

 

⋯⋯まあ、こんなものだ。

 

 

「⋯分隊、各員は警戒。やられた同族はいる?」

 

「わたしたちは損害はありません。ほかの分隊の班からは、やられたのが何人か出たとは」

 

「⋯警戒を続けましょう」

 

今、現にこうして、

銃撃の音は止むことはない。

そして敵軍の部隊を追い込むことが出来ている。

あとは、よほどの予測しえない変数だとかなんかが現れなければ…

 

 

そう思った、次の刹那、

 

 

ーー ………! ーー 

 

 

 

 無視のしようはないほどの規模。

 そんなけたたましい魔導の炸裂が、わたしたちの分隊のこの班からしばらく離れたところで、発現した。

 

 

 

「6班、6班はどうした! 第三分隊はどうなった?!

……消滅した? ……!」

 

 

「嗚呼、神様あ!」

 

「えいせいへいを、衛生兵を…」「バラバラに焼けた挽肉しか残ってないぞ!!」

 

 

続けざまに、炸裂が連続。

振動と閃光、それからやや遅れて、耳をつんざく爆音。

そして、もうもうとした黒煙が上がる。

⋯効果的に、

先走るかたちで突出していたこちらの人間種部隊を、的確に撃滅していっていた。

 

 

「各ホムンクルス分隊、目標脅威の排除を命令する。

 損害はどれだけ出しても考慮とはしない」

 

 

人間たちの部隊班は、撤収を許可された。

わたしたちは⋯ 

 

 

「ホムンクルス隊、突入せよ。

 繰り返す、突入を再開しろ!」

 

 

 

ふたたび、炸裂が連続していった。

 

 

⋯⋯まずい、わたしたちの身を隠すのに使っていた建物の瓦礫が崩れてしまいそうだ。

移動を、ーー

 

 

ふたたびの炸裂。

 

 

降り落ちる瓦礫の欠片の塵と埃が、顔に掛かる。……いきてる。……

目を見開いたまま、立ちすくんでしまっていた。

やや遅れての地響きのような振動により、地面は揺れて、それが止んだ頃に。あの魔法により排出され巻き上げられたのであろう、余りにもの高威力でガラス化しかかって砂めいた、灰が微かに降る。

一瞬で消し飛ばされてしんだものとおもって硬直してしまって固まってしまっていたのがこのときのわたしたちだった。

遅れて、ようやく悟った。今の魔法砲撃は、障害物排除の為に、わたしたちの位置するこの地点とは別の位置へと向けられたものだった。そのことを。

……おのれの気管が息の吸入で、まるで笛のように音が鳴る。……

どっ、と脂っぽい冷えた汗が、震える全身から湧くように込み上がる。

脚とひざが、ふらつきながらガクつく。

 

⋯⋯音が止んだ。静止したかのように。

 

しかし、それは安堵できうることを意味してはいなかった。

なぜなら間逆だった。

やや静まったこの市街の中で、それが移動している。⋯⋯比較して巨大な、絶大なプレッシャー。

まるでヌシが現れたかのようだ。あるいはこの戦場と化した市街というダンジョンの番人、ボスともいうべきか。

そしてそのヌシの気配を、ほかの同族や、特にわたしは、異物の腫瘍が己の身体のなかに突然現れたかのような巨大な力覚を、

自分たちの魔導のセンスで感知し得ていたのだ。

 

 

身体ががくつく。怯えかけて、震えている。みながそうだった。

震える腕と指のジェスチャーで、わたしたちは、互いに皆と判断と指示を飛ばし共有する。

慌てかけながら、必死に、わたしたちは自らたちの内包魔力のボルテージとセンスを、隠蔽するようにボリュームのチューニングレベルを絞り、一時的にでも下げて過小にしていく⋯

 

 

⋯⋯ヌシは、魔導のプレッシャーの力を維持している。

伝わってくるその力覚テンションからして、臨戦態勢の即応を維持し続けているのがたしかだ。

 

しかも、そのヌシはゆっくりと移動しながら、

それが、⋯近づいてくる。

 

……

いや? 通り過ぎようと……相手らが目的としているのは、明快にあるらしい。

少なくとも……相手達が目指しているのは、こちらセンタリア軍の本営方向と思しきようだった。

 

 

(……どうする。……)

 

どのみちホムンクルスは、とくにわたしたちは消耗品として使いつぶされる。

低級な街娼の売るのだという造花よりも価値の安いであろう、顧みられることのない、かりそめ同然の存在。

モノとしての耐久寿命はその限りではないが、わたしたち末端のホムンクルス兵は、そのまま使い捨ての儚い命だ。

刹那の間しか咲くことができない、ホムンクルスという花弁、それがわたしたちだ。

交わって種粒も残せないうちにその花弁は散るというのは宿命づけられてはいるのだろうが、それでも、花びらの落ちるまでの慈悲と猶予は持ちたいのが正直な本音だった。

 

でも、

さりとて、相手は強力すぎて……

けれど、

……このままでは、この市街内におけるこちらセンタリアのすべての戦力の消滅と、その本営の、撃破と壊滅すら考え得られた。

 

(……まずいよ、これ!……)

 

(わかってる、わかってる……けど……)

 

(わたしたちはいいけど……隊長殿が、ころされてしまうよぉ!)

 

!

……わたしの中の、なにかのプラグのスイッチが入った。

 

 

(そうだ。

わたしたちはどのみち消費される。使いつぶしの家畜未満だ。

 

 

だけど、指揮官どの……隊長殿が!?)

 

 

 

必死になって、手探りでもなにかのキーが得れないか、……おのれのセンスを、最大にして、センスからの魔導の表出は限りなく伏せながらのまま、ダウジングを図る。

 

 

……気付いた。

 

 

相手達は、まるで冒険者のパーティのように、最少人数の班で行動をしているらしい。

まるで、少数精鋭のつもりだとでもいうのか? まあ事実そうではあろうが。

 

ただ、ヌシと思しき感覚は、ひとつだけだ。

 

目で、アイコンタクトというのを行い、互いの瞳の光同士で意志とその確認を通じ合わせる。

それだけで意思疎通をし、わたしたちは互いのセンスの同調と同期を図る。

⋯⋯わたしたちは己たちのセンスをパッシブのモードとして知覚を試みる。

 

センスを低めて潜めているから出力をほぼリミットしているが、そのセンサーが複数いれば、センスの探知性能を相乗させることは可能だ。

なによりも、わたしたちは同じロットのホムンクルスだから、そのやりくちはなおさら、適正とより累乗可能できうる効果と作用がある。……

 

やがて、わかった。

 

数は⋯少なくとも、戦術魔道士がいち、護衛らしい随伴歩兵が複数。

 

 

 

(⋯こちらには、気づいてない?)

 

(迂闊ですね。それでも幸か不幸かはだれのどちらかのものではあるでしょうが)

 

(なりふり構ってないのは相手も同じか、あるいはこちらのことなんてどうとでもやり得れる雑把とみなしているのか⋯⋯、もっとしたら、我方の一般部隊のあの体たらくなら、今この時のうちに押し込めるつもりなんだと思います。)

 

 

(なら、私たちは、⋯もしも、奴が隙を見せた瞬間に)

 

(はい。⋯⋯それで行くしかないでしょう)

 

 

そうしなから、

わたしたちはさらに己等の魔導のセンスを潜めさせながら、段取りの組み立てを図る。

 

幸いにも、向こうは魔道士⋯⋯つまりこの好まかろうが好まなかろうが常に魔導のセンスを垂れ流しとしてならざるを得ない存在だが、わたしたちの持つ得物は、作動してなければ魔導の力感が露呈しにくい、半機械式魔導小銃というやつだ。

つまり、不意打ちのチャンスの主導権は、こちらにあるらしいということ。

 

そうしたら、⋯⋯

構えた魔導小銃の銃筒を立てて、接近可能な間合いを見計らいながら、

小銃の筒を揺らした途端、

その間際に⋯⋯その気配が点った。

 

 

瓦礫の物陰から、揺れた私たちの小銃の銃筒の先が、護衛の随伴歩兵に見つけられて、発見されたらしい。

相手が“すぐれたパーティ”として、チームプレーの成熟した護衛の随伴歩兵と戦闘魔導士のチームのチームワークとして、その行動の補完をなし始める。

そして⋯⋯ 

 

 

(! 捜索魔術の探知魔力を検知、不味くなってき⋯)

 

 

次の間際には殺気がほとばしった。

それを感じた。

凍りかけた冷水を背筋にかぶせられたかのような、

その冷感が警報となっておのれのすべてへアラームする。

 

 

魔導発射のパルスを残して、

小口径高速魔法弾の発振がこちらに向けられた感覚を、わたしたちは直感した。

 

 

(気付かれた!)

 

 

直後には弾がこちらをかすめていた。

 

魔法弾の擦過⋯

わたしたちの背後にあった建物の残骸が、

当たった刹那に、吹き飛ばされるというよりかは消し飛ぶかの如き威力スケールの異常さで、

そのまま炸裂が張り裂けた。

 

……

中口径以上の収束爆裂魔法弾の威力とその特徴だ。

小口径相当なのに、この威力?

最悪なことに、腕は悪くはないらしい。

けれど相手のこの初弾は、わたしたちへの直撃は果たせなかった。目標評定を急いでいたのか、だが、次弾においては?

強がりのつもりはなかった。少なくともわたしたちの処分処理通告状のサイン記入のペンは、相手が持っている。

これこそはわたしたちの不幸そのものだ。

 

 

今度こその直撃を狙ってなのか、

照準魔導力場のサーチとその評定が、こちらへと向けられようとするその感覚を、さらに精密に定めようとしているだろうその感触が、ぞわりと感じる。

……そうなったら……

 

 

そんなこの時に、

崩れた瓦礫の間から、わたしは相手の当人を目撃した。 

 

その姿は⋯⋯

 

 

(ーー白エルフか、小癪な!)

 

少女か、年若いのであろうか、

ロングの金髪と白肌の、らしさのある白エルフの外見特徴だった。

 

⋯エルフの戦闘魔導士⋯強力であろうポテンシャルの目標であろうことは明白だった。

なら、なら、⋯⋯

わたしたちに、打つ手はあるのか?

 

いや、ある。

事実としてだ。

そしてここまでに慌て通し焦り通しに見えるのであっただろうわたしたちだったろうけども、

⋯⋯実際にはひどく冷静だった。

ホムンクルスとしての設計とその特性の能力と性能がそうさせていた。 

 

宿り落ちてから日が浅く、教育にしろ実践にしろの学習値と経験値の蓄積が浅く薄いわたしたちだからこそ先程は大いに動揺してしまっていたが、

この時までには、すでに対魔導士用対処戦術の有効な参照先を、わたしたちは自分たち自身の肉体の脳髄にインプットされた戦術データバンクとそのアーカイブの中から、いくつかと数通りの候補を出して、それら同士の複数の掛け合わせパターンの案も演算するに至っていたからだ。

 

⋯なら。

 

 

⋯⋯取れる手段は用意してきている。

 

着衣の腰に吊り下げている各種グレネード類の中から選んだ、対魔導ジャマーグレネードの薬液の安全装置を解く。

 

ジャミング周波帯域の設定用物理ダイアルを、それぞれでずらしながら調整して、

 

 

そして、それを数個投げ散らし⋯

 

手立てのミソはここからだ。

そのジャマーグレネードに、ホムンクルスのセンスとポテンシャルの最大発揮による魔力場の照射を、ぶちあてる!

 

 

「!」

 

 

ジャマーグレネードは、その材料と生産に多額のコストを要する。

使ったこれらだけで、わたしたちホムンクルスなんてのの数体分のコストは上回る。

つまり、この今からの即席のイリュージョンだけでとっくに赤字の債務超過、というわけだ。

……されど、指揮官どのは、出立前の支給時に、これらを出し惜しみや勿体ぶることもせず、わたしたちのひとりひとりに、当てつけるわけでもなく、配給を渡させてくれる指示をしてくれていた……

 

 

ジャマーグレネードたちの内部での反応が、瞬時に沸騰する。それにより、多複数波長帯域かつ膨大な量の無指向性魔力が、このエリアの中に、焚かれるように沸き立ち、それが膨張する。

卓越した魔導のセンスを誇る種族たるエルフのひとりなんかからすれば、

いまのは目立つ花火を上げるかのようなことだろう⋯

 

だが、相手のその仕草は、こちらが撒いた戦法がいかに自らに不利を強いるのであろうのか、

その想定の最悪の結果の場合を直感し看破したようで、苛立ちを隠せていない。

 

それでもややラグを置いて、

一連のこちらの露出をみて、相手の戦闘エルフ魔道士は魔法弾を連続させようとしていた。

だが、⋯

魔導杖の発光から射出された小口径魔法弾は、されど空中にて⋯中途で小さな煙玉となって弾けた、そればかりとなった。

 

エルフが自らと、このシチュエーションへのとの、この上ない悪態を挙げる気配があった。

翻って捉えればなるほど、なんともわたしたちは、先のエルフの予感を正夢に出来たらしい。

こちらの思い通りに、カタに嵌めることができたようだ。

 

原理はこうだ。

高い密度と濃度で輻輳した魔力場は、これ自体が一瞬の対魔法術への緩衝材となりうる。

これはその原理の応用だ。

水槽の中で水の入ったアンプルを開けたとしても、その水槽の中にすでにある水の一部となるだけだ。

どんなに高い高さからだろうが、降り落ちる滝の水は、おおまかは滝壺の水にならざるを得ない。

⋯ということである。

 

しかし、

それでも諦めていないらしい。今度は、エルフはおのれの魔法弾を更に術を励起させながら強化し

一撃でのこちらの必殺を試みているようである。

 

 

「走れ!」

 

それを見計らっていたのだ。

わたしたちは、駆け出した。

 

 

ーー !!! ーー

 

 

エルフは、接近を開始したこちらに、肉薄の阻止を図るべく、自身の詠唱中だったこの術式のその中途な魔法弾を⋯

なんてこった、やつは正真正銘のバケモノだ。

薪を割るかのように、

ひとつの魔法弾を複数個に再分割して、ファランクス防護迎撃の弾丸とすることを試みたようだ。

その小口径魔法弾の光条の光跡が、こちらに降りかかろう⋯⋯としかけて⋯

 

途端、エルフの顔の表情が歪んだのが見えた。

なぜならこのエルフのその魔法弾は、あらぬ方向や方角に着弾していく。⋯明らかに、精密誘導ができていない。

 

おもわず、口元が笑んでしまう。わたしの判断は図星を得れたようだった。

この手品にはタネがある。

魔道場の乱放射とその輻輳は、

特に収束された魔導力やそれをもちいた術というのは、魔導力のそれが近似帯域の魔導力に放散して分散流動する性質があるという特性がある。

 

ましてや、あんな針みたいになった魔力弾丸なら、なおのこと。

針は折れるか砕けて、そもそも飛ばして投げたからといって刺さるわけではなくなった、ということ。

 

したがって、このような狙撃や火力攻撃というのは、役の用をなさせる為の難易度が上がる。

特に精密狙撃などの類に対抗するには、絶対というわけではないが有効なカウンター手法だ

 

くわえてこのように機動戦を掛けられた、ときたなら!

魔導士エルフは機動戦闘への対処が苦手なその傾向が多いと自分の脳内に初期学習された戦闘知識アーカイブにある故に、わたしはこの戦法をかけてみたのだ。

 

(これというのを、ホムンクルスであるわれわれは、量産製造時の培養過程におけるインプリンティングにより刷り込み学習がなされており、

したがって人間やらの一般の生き物に1から育成や軍事教育を施すのよりも、動員調達コストが圧倒的なメリットとして運用者にはもたらされるのであると言うのがわたしたちがこうして量産されるその動機と理由だ)

 

 

こうなればこっちのものだ。

 

射点の移動は成功した。

物陰から、今度はわたしが身を乗り出して、

⋯⋯

 

TAM!TAM!TAM!

 

小銃の連射で、滅多撃ちにする。

 

⋯⋯!?

一発は致命傷(ヘッドショット)を狙えたはずだが、しかし何かに遮られたらしい、当たっていないようだ。

それでも他の何発かにより

肩や脇腹に直撃弾を当てられたはずだが、

しかし恐ろしいことに、

その損傷や欠損などをした部位に高等治癒魔法を即座に己にかけて、

そのエルフは、自身の大きな消耗と疲弊をしながらも、単独の自力で再生復元を果たしていた。

 

 

ツクリモノのわたし(ホムンクルス)が言えることではないが。

バケモノだ。まごうことなき、本物の。

 

 

だがこうとまで追い込んだことで、

もはや戦闘続行が可能なほどの魔力残値量は残されていないようだったらしい。

 

 

なにやら急の迫った深刻な様相で⋯

己の護衛だろう随伴歩兵たちと喧々囂々をやり取りし⋯

護衛の随伴歩兵たちから、説得めいたことをされたらしい。 

当人は、納得しきっていないらしく、

涙をあふれさせたような感情を表出させながら、

自らの肩を震わせながら、

エルフは⋯無念さを滲ませながら、高価値戦力たる己単独のみでの後退の判断をしたらしい。

 

なるほど、戦術的後退というやつだ。

 

 

向こうの目論見というのは、われわれセンタリア軍の各小隊の駆逐と、その最前線本営への、いわば強襲によるカチコミであったとわたしは推察している。

なので、つまりはいわゆるミッションキル、これをわたしたちは誘発できたらしかった。

ただそうなれば、相手たちのその目論見は潰えて、

われわれセンタリアの部隊への脅威は撤収し、

少なくともこの市街のこの地点での優勢は、私たちが取れた、ということになる。

 

 

 

“⋯⋯まっていて、かならず、戻るから、戻って来るから⋯ 

 

あたしを、あたしなんかを庇ってくれたせいで⋯そんな⋯こんな⋯⋯そんな⋯⋯

 

あなたとの約束を果たせるまで、あたしはあなたは死なせない。だから⋯⋯

 

間に合わせるから、なんとかしてみせるから、

 

あなたを絶対生き残らせるから、だから、待っていて⋯⋯”

 

 

下がり際に、

そんな感動的な甘ったるいやりとりを、エルフは自らの護衛の随伴歩兵であったのだろう内のだれかに投げかけていたようだ。

 

なんだ???デキてるのか????

 

 

揚句、そんな時に、さらに。

⋯⋯倒れ伏せたひとりのその戦士にへと

、屈んで膝を地に着けたエルフの魔道士は、

ただの一人の少女として、清き清純な乙女として、証の口吻を、交わしたらしい。

 

 

⋯⋯なにを見せられているんだ?わたしたちは。

 

瓦礫の壁やらの遮蔽物をいくつか隔てた先での遠巻きのその模様に、

分隊の他のホムンクルスたちも、呆然となったり、あるいは赤面していたり、戸惑いであったり⋯⋯おい、なんだそれは。

 

わたしは⋯⋯わたしの感情は⋯⋯

なんだというのだろう?

 

虚脱ではない、だが、なにかである。

なんだか腹が立ってくる。

なにそれ。むかつく。何なんだ。

 

 

ラヴ・ストーリーィ? ⋯⋯なんだよ、それ。

 

 

(⋯⋯こっちは、嘲りや玩びや情けのひとつであってすらも、牡からの愛だなんて交わしようもありつけようも、ないのが当然だってのに!)

 

おもわず、

立ちすくんでいた己の脚の軍靴の底を、打ち鳴らすように地面に突く。

 

嗚呼⋯⋯己の中の、殺意が、退いていくエルフのシルエットにかつてなく高まって湧き上がってきて、それを向けることが叶っているよ。

うらめしい事この上ない⋯やはりこの現世は、地獄よりも残酷だったのだな。思い出したよ。

思い出させてくれてありがとう、親愛なるクソッタレがよ。

殺し合いをしている戦争の戦場の中で。それ以上の抉られるような痛みを、痛烈に、分からされた。

そんなことがあるか? けども、味わったから思うが、これは兵器として十分だ。もうそれだけで戦争をしとけ。

こんなだったらなんのために、わたしたちやわたしは、うみだされて、たたかわされているのだろう。

 

……

 

まあ、あたりまえか。

そんな“アメ”というべき動機づけが無い限りでもないと、それでこうもあのエルフは敢闘を心がけているということ。

そのことに、ある種、それを不思議におもうのと、それから⋯ある種の関心というのを感じざるを得ないよね(無論、わたしの内心の悪感情をありったけ込めた、猛烈なつもりでの皮肉である。)

 

⋯⋯亜人への風当たりが強い人類種社会やそれが主流派の国家において、ましてやその軍事行動部隊においては、

 

如何に先の人魔大戦時の戦勝国陣営内の亜人種族だとかとはいえ、なにかしらの振る舞いをするだけでも相当な困難が伴うはずだ。

 

にも関わらず、白エルフやドワーフ、妖精などが人類社会や国家、その軍組織内などで比較的、地位と活躍と生活生存の権利をなし得たり残せているのは、

 

それだけ能力が高く認められていて実力も証明できているからであろうか。

 

⋯少なくとも、わたしの脳髄にセットされている、われわれの国、センタリアの常識と通念の知識においては、そうだ。

 

 

 

わたしたちセンタリアのホムンクルスも、例外ではない。

戦争が終わったら、幸運なのは予備役送りとして予備戦力編成か、あるいは軍の慰安所での従事か……“生命の生存とその生命活動の維持継続が保証される”、これらの場合はまずそうだ。

それに漏れた個体の同族は、

国民公共慰安所だとかでの各種奉仕やもろもろのキツイキタナイキケンの業務派遣で使い潰されるならまだ良いほうで、

最悪の想定は、……損傷させられたら修復治療魔法やクレネンクなどで治癒されることなく、廃棄ホムンクルスとして肥料や畜肉にされて、下等な部位は同族用の飼料や有機栄養液やペースト、フレークなどの原料となり、上等部位は精肉屋の流通で売られるとかであろう。

まあ、われわれのような粗悪品製造のホムンクルスの類は、そうしたまともな僥倖というやつには、預かれることはおそらく無いだろうが。

 

 

……うーっ。

 

 

嗚呼! せめて⋯⋯股座についているおのれのこれを一度でもちゃんと使わないことには。

そうじゃないと、わたしはまだ終われるつもりはない。

 

 

 

とはいえ、これで厄介なバケモノは追っ払えた。

 

 

援護支援の大砲役がいなくなったことで、

この戦場には人間族らしき数人の兵士⋯先程の護衛役の随伴歩兵⋯が取り残され、

最大の庇護の盾と最大の威力の矛からはぐれたことで、彼らはこれからへの恐怖を隠しきれていでいるような気配であった。

 

 

そんな奴らと、

わたしたちは、しばらく銃撃のやり取りを交わして、

 

 そうして、この地点を諦めたらしい。

 なにかを置いていくことへの、無念らしいその気配を残しつつ⋯⋯

ーー彼らは退却を図ろうとした。

 

 

 一体、そこまでしてどうしてここに留まろうとしたのだろう。

 

 

 

「捲ったぞ、ヤツラのケツを押せ!」

 

 

 

隊長殿だ!

今回の戦いにおいて最初からこの戦場の最前線の実現場で実指揮をしてくれていた。

その本人が、こうして最前線のこの最先鋒まで、実情視察の確認を執るのだということで、現れてくれていた。

そのうえ、人間種のみへの退避指示を無視して、自らの部下の他の人間種下士官にはそれを許可して逃しながら、自身のみはそれを続行。

人間じゃないホムンクルスであるわれわれやおのれからしても正気だとは思えなかったが、

けどそのことが、出立前の訓示の折の、あの言葉の信憑性を高めてくれる。

この指揮官への個人的信頼感は限度と上限の際限なく高ぶりきってそれは高まり続け、もはや心酔と言い切ってもいいくらいだ……わたしもそうだったし、同族の総員もみなすべてが、そうだった。

例外はないのであった。わたしやわれわれには。

 

(隊長どのぉ……♡)

 

最前線にて直接指揮を執ってくださるそのガッツとスピリットに、胸が躍り、

たまらず、目は熱くなって⋯⋯そしておのれの下腹部が、肉と器官には血が集まって、股は湿って熱くなる感触がある。

 

にへら、としたわたしの顔……

笑顔が漏れてしまう。

なにせこうも活躍をなし得れたのだよわたしは。

手柄を立てられていないほかの同族は押しやって、

一分とは言わず3分とは言わず、せめて5分、十分は、慰めの時間をしてほしい。

わたしに、情けを掛けて欲しい。

だから、だから、⋯⋯

 

身悶え混じりに目を伏せていたその時、

 

破裂音に目線を上げると。

 

その隊長の頭部が、割れて弾けていた。

 

 

「あ、え、?」

 

 

指揮官級であることを示す彼の階級の略章が記入されていた、

砕けた鉄鉢の欠片が空中に舞い上がるのが見えた。

そうして飛び散ったうちの血屑と脳漿の飛沫が、だいぶ距離があったはずの己の、その開きかけていた唇とその中にも飛び込んで入ってきた。

 

唾液によって、舌の上と乾いたくちびるの感触の狭間で、

隊長どのだったこの血肉の屑と脳漿の破片の味が乳酪(バター)みたいに蕩けた。

 

いままで世界が止まっていたかのように体勢をの原形を留めていた、

頭が吹き飛んだその肉体が、意思を失って、肉塊のラグドールとして崩れ落ちる。

 

 

一連を経たあと、わたしの口元が、ひくり、と鈍く痙攣する。

 

 

 

崩れ落ちた隊長殿の遺骸の、さらに、

その向こうの先に、元凶の奴がいた。

 

建物に隠れていた、ひとりの兵士だった。

 

奴の狙撃は、どうもわたしも標的として狙うことができた位置取りだった。

そして、まず、隊長を狙ったらしい。

 

 

 

 

「⋯⋯このぉおおおぉおおおぉおっーーー!」

 

 

 

 

怒りに任せて、やみくも任せで、

弾の消費? しったことか!

 

 

ーーわたしの、慰めてくれるはずだったひとなのに!

 

そうしてわたしは速射のバーストを放った。

撃った数発のうちの2発が、

下手人たる兵士の、その肩と脚に当たって、

兵士はそのまま、倒れ伏せて転がった。

 

 

わたしはそれでは終わるつもりはなかった。

崩れ落ちたその兵士に目掛けて駆け出し、

到達と同時に、

勢い任せに繰り出した己の脚で、

その兵士の頭部の鉄鉢⋯ヘルメット…を蹴り飛ばす。

 

 

そして、そのまま体術の姿勢で組み付き、

地面の上のこいつの、⋯⋯

まず、手首をへし折る、

そして、指を曲げ潰す。⋯⋯ホムンクルスの臂力の本領発揮だ。

 

 

金切り声のような絶叫が、何がしかの建物のエントランスらしき残骸の中の、この戦場で挙がった。

 

 

 

そうして、此奴は抵抗することも出来なく⋯

ふと観察してみたら、この兵士は片足が挫けているようで、そして⋯左の肩の付け根にも、3つ目、もしくは1つ目であったのだろう、その銃創があった。

 

わたしの魔導小銃からの弾丸であったらしいことが、弾丸が帯びている魔導力のその残滓が、銃創から感じ取れた。

 

なるほど? そうなのか。⋯⋯つまりは。

 

そして、なるほど、だからあの随伴歩兵たちは此奴を庇っていたのか。エルフも撤収したがらなかったのか。

そうするとこいつはあのエルフのフィアンセかなにかで、

そのうえあんなハートウォーミングな叙情劇と、アバンチュールなその愛の劇場を交わしあっていたのが、此奴なのでもあろうのか。

それでもって、わたしたちのわたしの隊長を、殺ったのか。

 

 

ふうん。⋯⋯

 

 

此奴の脚の銃創に、わたしはつま先の蹴りを鋭く入れる。

 

目を見開き、苦悶し、呻き、

悲痛の絶叫とともに跳ねるようになったこの兵士は、まるで金属バネのおもちゃの伸縮かのように⋯⋯しかしその体力は喪失していて負傷によりさらなる遮りがあるのだ、という動きで、あるいは身体のちぎれた芋虫かのようにのたうち回りながら地面の上を転がっていた。

 

 

そうして、⋯⋯

わたしはさらに動いた。

この牡の兵士の胸ぐらの着衣を掴むと、

そのまま胸ぐらをつかみながら、わたしはこいつに馬乗りになって覆いかぶさった。

 

 

 

 

見開かれたこの兵士の表情は戦慄に塗りつぶされていた。

 

 

 

 

⋯⋯さぁ⋯そうしたら⋯

 

 

 

わたし自身の息づきと、伏せられて制圧されたこの兵士の、息遣い。

それらのみが、静寂の中で漏れ震える…

 

このときまでに、わたしは決めていた。

わざと粗悪に量産されたわたしたちの個体は、

最低限ですらないごく最小限のデータセット数個以外には、軍事用途目的のと他多少ののインプリンティングしか施されていない。

つまり、通常のホムンクルス以上にどれだけでも凶暴にも残酷にもなれる、ということなのだ。

 

 

仇、…隊長殿の…

 

 

腰に吊り下げてた近接戦闘具・バトルナイフをホルダーからリリースし握って、こいつの首をふんづかみ、わたしは、こいつを顔の隅々から吟味を始める。

ただでは済まさない。シメてやる。とびきりのプロセスで。

まずはこいつの首と顔面をメッタ刺して、切り刻んで、肉の粗挽きにしてやって、それから…

そう機序の段取りを組み立てながら、

ナイフをこの兵士の顔上にかざした…兵士は青ざめて⋯⋯。

 

 

そのとき、

 

 

 

未知の感覚に、くらり、ときた。

 

 

 

? ⋯? ⋯⋯、⋯⋯。⋯⋯ぁあ。そうか。

 

混乱したが、すぐに要因であろうそれに思い当たった。

ひと思いにやってやろうと大きく吸い込んだ呼吸の際に、

この兵士の牡の体臭とそのフェロモンを、吸入してしまい、それで、生体活動が活性化しきって敏感になっていた火照ったわたしの肉体と内面情緒が反応し、

鋭敏となったセンサーがさらに増幅して励起したということが、わたしの中で作動したのだろうか。

 

 

ホムンクルスの、生体奉仕装置としての設計の深層と仕様がそうなるというのか、

あるいは、本能?  

 

 

…

 

……

 

 

逆手に握っていたナイフを、順手に取り直す。

そうして器用に使える状態にしたこのナイフを使って、切り取りやぶきながら。

そうして、

兵隊の牡の、その下半身の着衣を、脱がすか破るかのように乱暴に取り外す。

 

 

砲撃の音や銃声はもはや聞こえないか微かなものとなり、

着衣の布と革が切り離され分割されていく音が、ここにある唯一の物音だった。

 

 

牡の男は、わけがわからない、という表情をしている。

最初は救護手当をしてくれるのだろうか、と思っていたかのようで、薄く感動の涙をにじませながら、喜びと感謝と安堵の気配まであったくらいだ。

しかし、胡乱なわたしの気配とそのやり始めた作業の内容、なにより、被弾し負傷した箇所とはまるで見当違いの部位をこのようにし始めたというのだから困惑の度合いの色を深め始め、

やがて最後には何かを悟ったのか、しかしそれを信じられない、信じ切りたくない、わからない、わかりたくない、という正気さで糊塗しようとして、されど結局は、それらの入り混じった戦慄に行き着いたらしく、そして、その表出による凍りついた顔になり始めていた。

 

 

 

⋯⋯生まれてはじめてのプレゼントだ。

贈り物とはいいつつ、拾い物の。

わたしの、わたし自身への、

自分という個への、自分という個によるそれ。

 

わたしは衝動に衝き動かされていた。

わくわくとして、ウキウキともしていた。

爛々とした心は、底なしの動力となって、

わたしのからだを、情緒学習用絵本でしかわたしは知らない糸釣り人形のように操るかのようにさせていて……わたし自身は人形でしかないというのか、もはや自制というのが効かない。 

リズミカルに剥ぎ取り、

布の裂け切られる音のみが静かに聞こえる。

 

⋯⋯

そして剥ぎ取りおわり、必要のなくなったナイフをそのへんの傍らの地面に突き立てておく。

 

 

わたしは、にっとりと嬉(たの)しむことができていた。

 

なぜなら、

目の前に正対することが叶った、

まざまざと露出した、牡の人間の陰部。

 

 

 

 

露出したそれをみて、わたしは歓びに顔が歪んだとおもう。

 

 

(⋯⋯あった!あったんだ!

 

わたしだけのだ!わたしだけで愉しめるものだ!

 

他のやつと共有する必要も、

他のやつと分け合うことも、

他のやつから後回しにされることも、

そんな必要がないんだ。

 

他のやつの膣液に汚れてない、

わたしの膣液だけで、まみれさせながら味わう事ができる!⋯⋯)

 

 

 

ーーおまえの、おまえのでいい!

 

おまえので、わたしのを貫かせろ!

 

 

 

わたしが、自分の口と喉と声帯を振るわせてそう言えたのか、どうか、

……記憶と体感が確かでない。

 

けど、

そう宣告を突き付けた。

……この牡は、信じがたい、という表情だった。

 

体格の良い牡の大の若者の人間なのに、 

いかつい顔は恐怖と怯えにひるみきっていて、

それでもなにかを抗弁し始め、

 

 

「ほ、捕虜ならびに負傷兵への虐待だぞ!戦争法への抵触行為だ!!

 

や、やめ、

 

やめろ!

 

やめてくれ!」

 

 

 

慈悲と哀願を請いながら乞う、

この牡のその必死さにいまひとつピンとこなかったわたしだったが、やや遅れて、

 

わたしの傍らのこのナイフで、

損壊損傷的な毀損、いたぶりをされないか、

ましてや、曝け出させられたこの自己の陰茎や男性器を損傷させられたりはされないか…

 

つまりは、拷問。

そのことを恐怖しているのだ、という推測が建てられた。

 

 

 

なるほど? ……

 

 

 

傍らの土の地面に刺していたナイフを、より遠くの地面へと、放り投げ捨て……

 

 

息を呑んだこの人間の牡の、その顔の表情を、しばらく眺めたあと…

 

いちど体勢を倒して覆いかぶさるようにして、ゆっくりと……蠱惑的を気取ったようなつもりで、わたしは己の肢体の動きを取らせながら、

かるい口吻を、微かにこの人間の唇へと宛てて、

 

そして、もういちど馬乗りの体制へと戻し…

 

この牡の股間に顔を埋め、そうして、

陰茎を、舐めてみる。

 

 

 

 

「やめろ!」

 

 

 

恐怖に震えきった声が返事だった。

 

 

 

「この淫売、くそったれ!

 

たすけてくれ!エリザ!みんな!もどってきてくれ!

はやくきてくれ!!お願いだ!!!」

 

 

黙らせよう。

そう思って、ふたたび、口吻を強引に施す。

マーキング、上書き、、

 

無論、この牡とあのエルフとの相関は、実際がどうかは知りようがなかったから、わたしの邪推や空想、妄想でしかない。

それでもそれに基づいてのこの行為は、

わたしに新鮮かつ斬新な感受を与えた。

 

さあ?どうだ。救いのおひめさまはいないよ、騎士くん。

そして、お姫様(プリンセス)? あなたのナイトは、このとおりです。

 

もし、今を知覚できるかそれとも事後を分かり得たとしたならの、

あのエルフの悲嘆と絶望の顔をありありと想像できる。

 

そんな一抹を頭で思い描きながら、

わたしは、姫を守る騎士気取りであっただろうこの哀れな落伍兵の末路として、

しるしを着けてやるつもりでそうする。

 

⋯⋯

 

この牡は抵抗の涙をにじませ、苦しむように嫌がったあと、

自らの顔面から、わたしの顔とやわらかく薄く小さな唇が離された直後には、

唇と口の中をうがいのように漱いだ唾を、横に吹いて吐き出した。

わたしに向かって吐きつけたのではないことは

正直、関心してしまった。

ただ、嬉しかったし、そのことを褒めてやりたくはなりつつ、

けども、この牡はどこまでも、涙ながらの目とその表情だった。

 

 

 

「糞食らえだ、最悪だ。なんなんだ。

この、ホムンクルスの畜生が…!…ーー」

 

 

 

殴りつける。

 

 

 

「ァ、…ーーーーー…!…」

 

 

涙を流す水分量ももう残されていないらしい。

それでも片側の鼻の穴から貴重な体液の鼻血を漏らしながら、この兵士は、震えながら、それきり意味のある言葉を吐き出すことはなくなった。

 

 

 

 

 

それから数分間、わたしはこの牡の陰茎にむしゃぶりついた、

 

口で包み、味わい、舌で巻き、その舌の先て舐めて…

 

なるほど、陰茎の先端の鈴口という部位のつくりは面白いのだな。

 

味については…

正直、美味な食事というのはたまの特別食や増加食の支給くらいでしか経験せずに食味の粗悪な栄養補給のみしかしたことがないわたしには、比較対象を知らないのでなんとも言い難い。

 

だけども、奉仕生体であるホムンクルスとしての根本がそう感じさせるのか、

ひどく常習性のある食味だった。

少なくともそう感じられた。

まるで一種の中毒状態かのように、やみつきとなってこのときのわたしはしゃぶることに夢中になっていた。

 

 

淡々ということはなく、この時のわたしの興奮と欲情のうねりは、その波形は高く乱れ尽くしていた。

しゃぶるのが、なめるのが、あじわうのが、とまらなかったのだ。

 

 

しゃぶり、舐め、味わい尽くし…

 

 

けれど、けれど、

 

 

……

 

 

此奴の陰茎では、

全然、勃起という現象がおきない。

 

 

 

 

……

 

 

 

 

「ボッキ? させろ!」

 

 

「……」

 

 

 

……

 

 

 

 なので、うしろでわたしの背後に居るその同族の気配に、呼びつける。

 

 

「シェイリカ!てつだえ!」

 

 

「は、ぁ、は⋯」 

 

 

「シェイリカ、

やって。」   

 

 

「え⋯」

 

 

「やれ!」

 

 

 

 

 

⋯

 

 

 

部下の同族⋯シェイリカ、という識別名が与えられている⋯

人畜無害そうな普段の態度と性格なのに、

こいつは肛門がフェチディズムらしく、

よく己のアナもいじってるし、

なんなら昨晩みたいな乱痴気騒ぎのときなんかは、

同期や目下の尻の穴をほじくるだけに飽き足らず、

目上の尻穴もほじくろうとするし、

なんなら全員から己の尻穴をほじられたりいじめられたりすることをねだり倒してくる、とんでもないやつだ。

 

(ホムンクルスは内臓器的には泌尿器と排泄器官は別になっているが、その便の排泄物は鳥の糞のような特性をもったものとなっている)

 

だから、尻の穴については、こいつの独壇場のはずだ。…

 

 

 

 

「失礼、します……」

 

 

シェイリカは、

己が抱えていたそれから取り外した

魔導小銃の銃剣の柄を⋯

その柄の尻の先を、

 

ねじこんで、つきさす!

 

 

 

 

 

牡の兵士は、絶叫した。

 

 

 

 

そうすると…目論見通り。

屹立の始まったその陰茎⋯

 

 

(やっと…やっと……やっと…………っ)

もう、あとすぐだ。…

身悶えとともに己の肉体を身じろぎさせながら。熱くなってくるおのれの性感と準備を加速させつつあるおのれの生殖器の感触を感じながら、

わたしは、わたし自身の、下半身の着衣を脱ぎ降ろした。

 

 

すん、……

 

 

⋯⋯とたんに、匂いが鼻につく。

 

 

ここ数日間、ろくな湯浴みどころか水浴みや清拭も出来ていなかった。

 

ホムンクルスの生理代謝は通常の生き物のそれよりも薄く匂いは少ないとはいえ、⋯⋯

 

それでも、

汚れは汚れだ。

 

着衣を下ろした瞬間に広がった、己自身の体臭と蒸れた汗の蒸気と、老廃物、生理代謝物の匂いの入り混じった悪臭。

 

そのおのれ自身の性器とその付近箇所に付着した恥垢と、だけど今からのおのれのやってしまえれることへの期待と興奮でぬめるようにつきそぼった体分泌液。

このおのれの膣だとかいう生殖器の肉孔の孔の中から漏れてくる、膣孔の肉管の中を湿らせて潤ませながらその最奥から降りてくる、ぬめりと粘度を帯びた体液の垂れ落ちていく様とその体感。

それらや類種の分泌物で汚れきった下着の股間部位、

それが手で確かめることも、指の先で触れることも、目に飛び込んでくることも、

己自身で嫌にもなりながら思い知らされる。

 

 

でも、そこに、この今からの機会とあっては、むしろそれらはこの己の性欲をさらに強化するフレーバーにもなりえていた。

 

ぞくり、とした。

視点は彼の肉棒と己の恥部、そして己の下着の股布、その三点のどれをにも行ったり来たりしてしまう。

己の股。己の性器。己の生殖器。

 

⋯⋯見えている視界のすべてに重なって、そこに淫らなヴィジョンが脳の中に産まれる。

 

下着の股間部に

この牡の吐精物、それが降りかかる、

降り付いて付着する、

その上から、わたしの体液が降りてくる。

 

付着している己の愛液や分泌液とそれが、溶けて混ざり合う。

 

そして挿入されたらああなるだろうから

そうしたら、この混ざりあったそれが、己の股間から溢れて⋯この股布をドロドロに濡らすのであろうか、

さらに、

破瓜の血も垂れ落ちる様も重ね入り混じって想像して、

鮮やかな紅の入り混じったエキスととろみが零れた股布のそのヴィジョンに、処女喪失とその破瓜への微かに小さくうすやかな恐怖と、それを塗りつぶす欲情が、もはや止まりようがなくなっていて。

 

想像だけではもう、堪えられない!

⋯⋯もう己の中でこの衝動を留められる抵抗は、跡形もなく、なくなってしまった。

 

己の性器、生殖器、胎で孕むことができる体内器官。

 

 

この中を、牡の吐精物で受け入れることが、できる⋯

 

使ったことのない膣孔のその肉管をつらぬいて。

 

そのさらに奥の、同じく未使用の己の妊み袋はどう代謝がされ、もしかしたらば、どのような神秘が起こるのか?

 

 

この歓びに、己の口角が弧状にであろう形に吊り上がる感覚を、感じた。

そうしていたら⋯

 

つらり、と。

愛液の雫が流れ落ちる⋯

それから、

やや粘度のある白い分泌液、

普段己を慰めるときには、気持ちよくなりきれたころにようやく出てくるくらいのこれが、

いまのこれからに、本番もまだなのに、もう待ち切れないと言わんばかりに、とろり、つら、と垂れ落ちてきている⋯

 

 

もう、がまん、できない。

 

 

それがわたしの理性の断末魔であっただろう。

 

 

 

腰をかがめて、

この目の前の敵軍兵士の牡の股間に⋯

己の股の性器を、直結させようとした。

 

 

だったのだけど。⋯

 

 

 

ぐいぐい、ぐりぐり、ギュッ、ギュッ、 

きゅむぎゅむ⋯

 

 

挿れたい、だから、挿れようとする。

 

 

押し付ける、

押し当てる、

押し着ける。

 

⋯

 

⋯

 

鈴口の先を、亀頭の先端を、はめることすら、かなわない。

そもそも、わたしの膣孔が、小さい。

此奴の屹立させた陰茎と並べると、

薬師や魔女が薬草の類を摺るための乳棒と、針の先で開けた孔を比べるほどの対比だった。

 

なぜ。

愛液なら、

垂れ落ちるほどに、

溢れるほどに量はあるのに、まだ足りないのかな⋯なんで⋯なんで、……

 

 

それでも諦めきれずに、

試行錯誤してみる。

   

 

(はまらないなら、挿入られないなら⋯ッ 差さらないなら⋯⋯)

 

なら、こうしよう。

この陰茎を、わたしは、己の股のうぶ毛もない無毛のクレバスに、沿わすように、なめさせるように、這わすように、押しつけたり、押し当てたり、

そのまま、肉棒やわたしの股を動かして、摺ってみたり⋯

 

クリトリスとペニスの先端とで、キスまでもさせながら⋯

 

キスさせながら、押し当て、押し付けの力を、強める⋯

 

そのまま自分自身の指の先と腹も使いながら

己の陰核をほじり潰すかのように刺激させて、

 

 

「ぁあ、あ、ぁ、ァ……」

 

 

 たまらない⋯⋯牡の生殖器を、生のほんものを、わたしの生殖器のおもちゃに出来てる⋯⋯

 

 

あっ、嗚呼っ、ぁっ、あつ、。

 

 

 

だんだんと、熱と潤みで、柔らかくなってきた気がする、なので指を、その膣孔の肉管の中に入れて、⋯

 

 

ああああ、ぁぁあ、⋯

 

ここからは、自慰の手淫も同然となってしまった。はめるのを試みても挿入らないのだからしょうがない。

差しようのない、挿れるのに手間取っているこの目の前の神秘の秘宝を目の前にしながら、

わたしは目先のこらえきれない己の肉体の衝動の欲をどうにか慰めるべく、

目の前のこの牡の陰茎を、貫くように、

目に焼き付けるように視姦しながら

その陰茎が己の生殖器で受け入れた時に、歓びで吐精される様の妄想をたどたどしく脳内で描きながら、

……そうしながら、

わたしは己の肉孔の中に己自身の指を入れ、

かき回した。

 

⋯情けない⋯

自分自身に失望するしかなかった。

恥ずかしくなって、思わず俯いてしまう。

けれど、実際は、己の身体と性器はかつてなく興奮をしていた。…指の感触が震えたり触れるとともに、熱を増した肉管の中はうねり締め付けられ、わたしの火照った肉体と過熱する下腹部は跳ねて打ち震えた…

 

かきまわされる水音が、粘膜をいたぶる、粘着質な感触の気配も入り混じり始める。

 

そしてそのまま、

すっかり屹立していた己の乳首と、その乳頭の先端を、刺激する。

 

軍装の着衣の上からやっていたが、

もう布がうっとおしい!

なのでわたしは、着衣の前を、ちからまかせに破り千切るようにして、はだけさせて暴露をさせた。

 

⋯⋯もっとだ、もっと⋯⋯

譫言の嘯きのようにわたしのくちびるは震えながら薄く閉じては薄く開くのを繰り返す、

そうしながら、

己の胸の乳房を掴み、乱暴に揉みしだく。

ちいさく色の薄い、乳頭と乳首の先端を、尖らせながら、屹立させながら、それでも大したことにならないこの貧弱なおのれの突起を、いじり、苛め、虐めながら。

 

 

ぁっ、あつ、あっ、はぁはっ、

 

はぁ、はあ、は、⋯?

 

 

そのとき、わたしは目を疑った。

 

わたしが、自慰を及んでいる間に⋯

この牡の、股間は、

⋯勃起が、衰えてきている?!

 

 

みると、男は恐怖に基づいているのだろう必死の形相で、瞑ることも忘れて目とあたまの首を明後日の方へ逸らしている。

 

戸惑った。

わたしみたいな個体なんかでも、

すべてのホムンクルスの顔とからだのつくりの見た目は、

人間の並の美少女と同等以上には整っているんだぞ。 

 

この均整の取れた、最高級の造形や美術かのような⋯⋯でも、栄養不足で発育不良気味なんだよな…わたしたち⋯⋯

 

ただ、それでも不満であった。わたしは悲しかった。わたしたちには、わたしには、ホムンクルスとしてのこの肉体しか、個が己のものだとして持ち得れる持てる資産と財産が、ないのに。これしかないのに。

だからこそ、その痴態であろうわたしの発情の発露をこうも間近で見れているのに、

 

なのに、⋯

 

 

通常の生き物からしたら、ホムンクルスの全ては無価値同然。当たり前だ。

 

けれど、ホムンクルスとして生み出された故に、自己肯定と自尊の心理情緒というのはやはりもとより薄いか、なかったのは、私という個体もまた同然なのではあったのだろうが、

それでも、(わたしがいま、一方的な強姦暴力行為に及んでいるというのは頭から忘れていたまま)

己というものの根本を、拒絶されたのだ。否定されたのだ、嫌がられているのだ、嫌悪されているのだ、

だから、

この牡から主体的に私のことは愛してくれない、そうされることはない、あり得ない。

愛されない、愛されてないのだ、だということ、

そのことが、あまりにも絶望そのものだった。

たまらず、自分の顔がぐしゃぐしゃになったことがおのれの表情筋の感覚と感触で感じえる。

 

 

泣き喚きたくなりながら、⋯⋯されど、

 

 

ムラッ、とした。

 

 

そうだ。そうだよ。⋯⋯なら⋯⋯ 

 

その不満足の感情は逆上めいた衝動となって、噴出し、

間欠泉の如くのを開始したそれを、

そのおどろおどろしいぬめりついた欲情の奔流をこの牡のやつへと、いままで以上にぶちまけることとした。

 

 

 

ーー愛してくれないなら、無理やりにでも愛させてやろう。

思い知らせてやる!

 

まずは、

おまえの指に、わたしの心地を教えてやろう。

 

 

 

 

さっき、わたしが破壊したことで、

関節が潰れて折れてぐにゃぐにゃになったこの牡の、手の指。

 

その指をつかんでつまみ、無理やり私の孔の中へと、そのままその指をねじ込んで、入れた。

 

 

ぐにゃぐにゃになった当人の指をそう使われたことで牡は悲鳴を上げた。⋯

 

一方、わたしは、

今までに味わったことのない新しい感覚の絶頂が、このときでのひとつとして、まんべんなく堪能することができていた。

 

 

 

ーー牡の人間の、指。

こいつのこれは骨と関節が砕けているとはいえ、

ゴツゴツとしていて、硬くて、形状も、太くて大きい。

 

 

今日の今朝のあの小隊長の訓示。

あの手の指の感触を握り合うことが出来たなら、もしこんな事が出来ていたなら⋯⋯そんな夢想をすることができる。

 

本当だったら、約束のとおりだったなら、わたしが生き残ることができていれば、そうだったなら、今日の戦いが終わったらわたしを慰めていてくれただろうはずの、小隊長の、あの指。

 

そして、いま、私はこうしている。

けれど、一種の仇を取れたのと己の失ったチャンスをこうして回収することが叶ったつもりになれて、内心、わたしはさらに興奮した。

狂喜だ。

言わずともしれない込み上げる達成感も感じ取れていた。

 

二重、いや3重?の快感だった。

 

何より⋯

同族やわたし自身の細く白くて柔らかい指ではない、

わたしの股で受け入れたり味わったことのなかった、

はじめての指によるはじめての感触⋯

 

 

たまらない!

 

これが、牡の、男の指か。

世の幸せな人間族の女は、この感触を、求めるだけで味わう事ができるのか。

……羨ましい……

けど、いま、わたしはこうして、味わえていた。人間の婦女の、人並みのしあわせを!

 

己の身体を羽交い締めていた。

よだれが、垂れ落ちた。幸せすぎた。

私の身体も喜んでいる。股の孔と肉管の中の体液の分泌もさらに捗っているようらしく、

牡の指とわたしの指、そのそれぞれとそのまわりには付着の量と潤みの度合いがさらに増していく。

⋯⋯ふたたび、わたしは此奴の手指によるはとりあそびを再開させる。

そのまま、僅かに前後させたり、指を押し込める浅さを深く沈ませていきながら⋯

 

 

嗚呼、これだけでこんなにもしあわせで満ち足りることができるのなら。

 

 

でも、まだだ。

とっておきなのは、これからなんだ。

 

 

これで満足しては、こんなとびきりのチャンスなのに!

 

 

 

ついでに、思い知らせてやれた! と思って、

牡の顔を見る。

 

⋯両の目を、悪夢にうなされるのをこらえているがごとくに、強く固く閉じきっている。

 

 

わたしは最大の威力を込めて、牡の腹を殴り付けた。

牡はむせて咳き込んだ。

 

 

 

嗚呼、ああ、あぁ、ぁあ、ぁぁ、⋯⋯

 

 

 

 

「シェイリカ、もういちど、やって。

 

 

 

⋯シェイリカ?」

 

 

無言だったのがなにやらの気配をかんじた。

わたしは指の挿入の前後動や垂直運動をやり始めつつ、それを止めずに、傍目に背後を振り向く。

 

シェイリカ二等兵は、こちらを凝視しながら、

下ろした下半身着衣の狭間から指と手を入れ、

己自身の股間をいじり始めていた。

 

 

喘ぎ声も忘れたかのように、吐息と躰を震わせながら、立って直立したまま、恍惚とした目と表情のその爛々と光る眼光で、こちらを観ながらこの同族は己自身の自慰の手淫を開始していた。

 

よくみると、もう片方の手の指で、こいつは自分のアナルにその先を沈めているのでもある。

 

 

⋯⋯⋯

 

 

気にしないことにして、

わたしは肩のホルダーから取り外したバヨネットナイフ(銃剣)のその柄の部分を、もう一度この牡の肛門にねじ込んで、ひと思いに、突き入れる。

 

 

牡が絶叫を悲鳴するが、こんな不能、しったことか。

でもようやく伸展と屹立を取り戻した牡の股のそれに、

わたしは、腰をかがめて⋯またがって⋯

 

 

シェイリカはああだが、でも、この牡で絶頂するのは、わたしが先だ!

 

わたしの取り分なんだぞ。わたしのです。

わたしの、戦果なんだぞ!

 

 

正直、焦りながら

苛立って、そのムカつきとともに、

己の目に涙が滲むのも悔しく感じつつ、

ふたたびの挿入、それを開始、しようと、して⋯

 

こんどは入りの深さはもう僅か多少まで行けたが

どうにも、わたしの性器の膣孔の肉管は、発育が悪くて、小さすぎるらしい。

 

 

⋯⋯

 

いちど、わたしは腰を持ち上げて、身を起こして立ち上がる。

次の行動は直後のことだ。

まず、わたしはこの男の陰茎に、

ツバと唾液を吐きかけ、

塗りつけも半端に済ませつつ、

それを即席の潤滑液代わりに、

 

その剛直を、わたしの孔の中に、ふたたび体勢を取り、もういちど、こんどこそ、強引に、再度いざなわせた。⋯

 

 

 

はい、ら、な、⋯!!!ッ⋯

 

 

 

こつん、ぷつ、

 

 

全身の筋肉に力を入れて、

肉体の慣性とその質量を全力で掛けて、

ようやく入口までとその多少への挿入は、なんとか叶った⋯

 

そのときに、である。

 

中に入りかけた肉棒が、暴れた。

おもわず悲鳴にちかい嬌声を、あげてしまったのがわたしだ。

 

 

ーーなんだ!?

わたしを、あそんでくれるの?!

わたしのこと、楽しんでくれるの!??

 

 

⋯⋯期待したが、それは糠喜びだった。

 

 

どうにも、この牡は、断固として、わたしやわたしの肉孔とその管の中で快楽を感じ得たくは芥のかけらだったとしても無いのであるらしい。

 

牡は腰を暴れさせて、

なのだがそれは、

まごうことなき⋯わたしたちが無理やり屹立させた陰茎を、わたしの膣孔から、抜き出して逃れさせようとしたみたいだった。

 

 

 

わたしのこころの、よろこびの期待はこうして裏切られた。

 

 

⋯姑息な。

 

往生際が、わるい!

 

 

 

もう一度、突き着けるようにわたしは腰を沈ませ、ふたたびの挿入を試みる。

 

勢い良くやったつもりだけど、だめだ、

暴れる。

挿れようとする。

暴れる。

それでも挿れたい。

 

まだ暴れる。

今度こそ⋯またどうにか、まだどうにか、

シェイリカはまだ一人で虚しく自慰している⋯あっ、いまもっかいの絶頂をしたみたいだ。

わたしは牡を乗りこなそうとする。

それでも暴れて⋯

でも今度こそ、いや今度こそ、⋯あっ、

 

挿れた、入った、挿さった。入り口までだけだけど、はめることが出来た。

ちなみに牡の側はまだ腰を暴れさせて抵抗しているが、

もう、もう⋯⋯情け容赦なんて、そのつもりももう失せた。

 

 

ガタイの大きい牡の顔面の頬を、腕を思いっきり伸ばしきったわたしの手ではたきつける。

⋯⋯牡が締め上げられたような悲鳴を呻く。

それでも腰を、わたしは下ろし続け、

 

「ど⋯ぅ⋯わた、しの、いいで、しょ、う?」

 

 

牡は無言だった。

 

⋯⋯

 

わたしは、腰を降ろしていく。

わたしの膣中⋯

膣肉の孔と、肉の管、

これの中が蹂躙されるのを、肉棒の深まりによって

未開発で未体験の、

未貫通のわたしの性器が、

その肉管が、中の空芯から押し広げられていく、

この牡の屹立した陰茎の肉棒のその形状へと、かたちが締まりながらフィットして、変形していく。

密着の快感を得ながら、徐々に深く挿入を、さらに深く試みていきながら⋯⋯

 

 

 

わたしの、わたし自身の、

わたしは、わたしの、

その顔の筋肉は笑顔になっていただろうと思う、どうしようもない快感。この上ない悦びに歪み、呼気を漏らす己の口は開きながら口角が上がり、みっともなくよだれを垂らしながら震える。

 

そうしながら、確かな処女痛の破瓜の痛みと、

その流血とおなじ尊いものとして、わたしの両の目のまなじりからは、つらりとした涙が熱さと温かさを持った温度のまま、こぼれて垂れ落ちた雫が乳房の先端に落ちて付着したりしつつ流れ落ちる。

⋯⋯その性感が呼び水のように、鼻息と呼気のそれが、喘息患者の発作のように、わたしの身体で連続する。

 

途端に、嗤いがとまらなくなった。

だけどそれは喘息の息切れのように呼吸と吐息を断続的に繰り返し吐き出し漏らしつつ、

 

そうするとわたしの生殖器の内部の膣肉が痙攣しながら引き締まりと圧迫を繰り返して、

 

なおさらにわたしは己自身が快感を感じ、

おのれのこの躰の肉体が、この上なく喜んだこと、喜んでいることを、ありありとわからされていっていた。

まるで、己の内部の生殖器官のそれは、

別のいきものがわたしの胎内で暴れているかのように、

わたしは下腹部の中の蠱動し蠢く感触に突き刺されるように打ち震えるしかなかった。

 

  

 

 

そして、⋯⋯貫通しきった。

 

 

わたしの肉管の奥の末端まで到達しきり、突かせたその陰茎の肉棒の先端は、わたしの膣孔の底へと、確かに捉え着いていた。

 

 

陰茎の先端、そう、亀頭というのだっけか。

それの独特の感触を、わたしの肉管とその孔の底は、型取りするようにしながら、肉の互いのそれ同士で抱擁とキスを交わすことができていた。

 

…この感触を、味わい尽くしたい。

この世から消滅するまで、いや滅びきった後だとしても、証明として、覚え続けていたい⋯⋯記憶し続けていたい⋯⋯

そう感じた瞬間、わたしの子宮のその排出孔から、子宮の中に今の今まで溜まり切っていたのだろう体液と分泌液が、まるでジュースのように溢れて、

肉棒の感触をわたしの体温の温度の熱で、シャワーをさせてしまった。

 

その刹那、わたしの下腹部のなかで、

衝動と欲求が、渦の中心となるように熱を発し始めた。

 

 

抗えるはずがなかった。

 

 

 

「はっ、あ、⋯ぁっ⋯す、ふ、ふ、くふ、ふっ、…」

 

 

腰を乱雑にふる。 

…振り始めた。わたしは、己の腰を、下腹部を、股間を、股を、その中の生殖器を、震わせる。

 

前後、上下、

左右と斜めに、それらの組み合わさりでのすり鉢回転⋯⋯

 

 

ふたたび牡の兵士はうめきながら悲鳴していた。

でも、構うようなつもりはなかった。

わたしが乱暴をなおも粗雑に強引に続けながら、

わたしはわたし自身の快感の追求とその体感体験を貪っていた。そのことに集中していた。

わたしにはそれだけだった。それだけしかわたしにはなかった。その時はそうだった。

シェイリカは泥の上にへたり込みながらなおも自身の股を弄り倒している。この時までにシェイリカは自らの後ろの孔には中指の第一関節まで入っていた。

 

そうしていたら、いつしかこの牡は、嗚咽の泣きじゃくりを、すすり泣くように小さくあげはじめていたような気がする⋯

体格のいい、兵士らしい外観の逞しい成人の男性の若者だったのに、

まるで、それは小さな人間の幼児のような声色の涙声だった。 

 

 

わたしはさらに、そうして時間を続けた。

 

 

⋯⋯そうして、⋯⋯

 

 

そのときだった。

 

 

刹那の瞬間に、わたしの下腹部のその中で、ぷかり、⋯という吐入の感触が、たしかにおきた。

 

 

ぁ、⋯⋯

 

 

ほんとうの、ほんものの、射精だ!

 

わたしは、悦楽の潮のそれを感じた⋯

 

 

 

「あ、あ、ぁぁ、…ンッ」

 

 

己の生殖器の中で、おのれの内臓器官のそれが、

吐き出されたその吐精物を、

紛れもない贅沢品を味わうように堪能しているかのような、そんな体感が脈拍の体感のように突き抜ける⋯染みていく⋯

どくり、どくり、という脈動と、己自身のさらなる鼓動の高鳴り!

 

その相乗は、反比例のカーブグラフなのに、得られる満足性と達成感は、そのふたつが

螺旋の帯としてよじり合わされたかのように、

まるで大きなリボンケーブル状の具体感の完成品となって得ることが出来得ていた。

 

おもわず一瞬、虚空を喘ぎ見る、身体が弓のように展張する。ああ。ぁあ……

 

一拍をおいて、結合箇所の境目の中から、

精液が徐々に、漏れ出てくる。

わたしの体液と分泌液との混合だ。

なんならわたしの恥垢のかすも入り混じっている。

 

これが愛なのだ。ホムンクルスたるわたしが得れうる、最上級のしあわせ⋯

 

もう、頭は快感と快楽と充足感の奔流が閃光の連続となって、塗りつぶされたように真っ白になりきっていた。

何たる破滅だろう。

なんというべき暴力なのだろう。

だけど、わたしみたいな実力も幸運もないただの木っ端の兵士ホムンクルスからしたら、

今日のこれはこの上ない幸福だった!

 

 

老廃物と分泌物の混交であるが、その時のわたしにとっては、これはひとつの記念の証明物だった。

その愛の雫だろうそれを、わたしは指で掬って、己の口⋯舌⋯頬⋯乳房とその乳頭⋯股の中の陰核……

 

指と指の先と、その指の腹を、舐めながら、しゃぶりながら、咥えながら、舐めずって、

擦り付けて、染みさせながら、

なんども行ったり来たりを繰り返しながら、繰り返させながら、

なおも感じた。

この上ない歓びによって、生殖器の中から震えて、わたしは腰が痙攣した。

 

なんとも言えず、心地のいい。

下腹部のなかであたたかいとも熱いともいえる温度のコントラストが込められて発生していた。

なかで、蕩ける。なかで、とろけあう。

やや、もういちど…まだもっと…気持ちよくなれたら…

 

蕩けるような感覚と感触に促され始め、

 

そうして下半身を振りかけた、⋯まさにその時に、

 

 

そのまま、失禁までしてしまった。

 

 

溢れてこぼれる尿と、先程のその混交物は溶け出し合いながら、

わたしのまたぐらと牡の腰の上で、

まんべんなくその液体はぬるい温度を充満させていた。

 

 

尿に混じって溶け出していったこれら記念のあかしは、台無しになった。

だか、これ自体が、ひとつのモニュメントなのか。

⋯尿液を触ってその温度を得た指先で己の陰核をなぞり撫でながらわたしは自考していた。

 

 

ホムンクルスとしての先天的なつくりとして、

その排出尿液類は、汚臭はあまりしない。

 

だけど、この感触は相まって、この状態で更に刺激を得れたらどうなるのだろう?だとか、

 

なにより、この人間の牡の兵士の尊厳を破壊し毀損しつくして、

この牡を支配しえれたのだ、

それを為せた己が今の自分であるのだ。

ということの感触が、なんともいえない満ち溢れた感覚の感情となって、暗い充足感にわたしのふさわしい部分の情緒を満足させていた。

己の肉管の中に入った牡の肉棒のこの愛おしい手触りを下腹部の肉になぞるように当てて確かめながら、その下腹部にかたちの隆起として浮き出て現れたその輪郭を、その起伏を、手触りを、なんどもなんども、なぞって、なでて、手を宛てながら……その感触を私自身の指と掌の肉で感じ取りながら…………

 

 

そうだ、そうしたら、

 

 

 

 

「感謝しろよ、飼ってやる。

いまから何日くらいか、

わたしたちの棒として、使いつぶさせてもら…」

 

 

そう宣告しながら、これから捕虜としてなるこの牡の顔を見やった時、

 

 

その唇の端から、血が流れ出ていた。

 

 

舌を噛み切っていた。

 

涙を流れ落としながら。

怯んだ瞳はわたしの目に合わせられていて、その瞳孔は徐々に意識が遠のいていっているようで…

 

やがて、開き剥かれたその瞳は、真上の虚空を向ききった。

…自決したのだ。

 

 

 

 

呆然となるしかなかった。

 

わたしは、ひとつ取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。

⋯⋯そのことへの思い当たりが、このとき薄らぼんやりとおぼろげに、微かに考えれることができえた、その節はあった。

だけど、

それよりも、わたしはわたし自身の肉体的な息切れへの体力消耗による脱力と虚脱感の感覚が強く表れていたし、

体の中の蕩けはその温度とは逆になんだかわたしのことを相対的に冷し始めているかのようで、

けどその相関と相乗は、わたしのこころというものを、温度をなくさせて乾かせるのには十分だった。

 

 

 

牡の体温が冷えていく。

 

 

最期に遠のいているのだろう意識の中で、

この牡は、

わたしのことをなんのだと思ったのだろう。思えたのだろう。

 

 

悪魔か?それとも、もっと、おぞましく、汚らしい、まごうことなき邪悪な汚物のような存在だったのだろうか

 

 

 

⋯空には雨雲が覆い始めていた。

 

やがて、

雨粒が降ってきて…

 

戦闘服を開いてさらけ出していたわたしの乳房の先端に、その冷えた滴の一滴があたった。 

 

 

「?、!⋯ぁ⋯」

 

 

鋭敏だが微かな快感の身悶えにわたしの身体が踊りかけて、

さらに降ってきた雨粒が、わたしのなめらかな乳白色の柔らかく薄い肌の、その乳房だったりに張り付いていく。

雨の水分が、肌の奥へと、しみこんでいく……

 

 

⋯開いていた戦闘服の正面を、閉じかけて。

 

 

 

身震いがする。

その身震いに、もうひとつの身震いが重なった。

そのことにわたしは意表を突かれた。

 

そのときに、2回目の射精が、屍体となったはずのこの牡の兵士から込み上げた。

 

跳ねるような感覚。わたしは驚いた。

下腹部の中で、どろりとした粘度の高く、いままでよりさらに量の多い吐精のそれ。

熱い温度のそれの射注入によって、わたしの内臓の温度は一気にその温度で息づき始め、

わたしの心は湿潤が戻った。

 

戦闘服を閉じかけていた自分自身の手がそのとき跳ねて、自分の乳房を、乳首の先端を潰して虐めながら、反射的に掴みしだく。

 

またゆっくりと、

わたしの膣とこの牡の陰茎との結合挿入がなされている、その挿入された肉棒との境目から、

溢れてきた牡の精液が、とろり、と漏出する感覚。

 

 

吐息を漏らしながら⋯わたしは⋯

 

 

 

一瞬、期待と希望を持って、慌てて牡の顔と目を覗き込む。

 

 

⋯もう命が途絶えた、死に切った動かない表情だけが、そのすべてだった。

 

 

雨が、強くなるというわけではなく、

止むことというのでもなく。

 

 

 

天国を見つめるかのように、瞳孔が開き切っていて、それが死人の物として窪んでいく。

 

 

 

牡の身体は、快不快問わずに

死に切る前の最期に、射精を吐き出すことがあるというのが

生理代謝の仕組みとしてあるというのは、なにかのノベルで読んだことはあった。

ファンタジーだと思っていた。

 

 

 

わたしとの結合部から漏出した精液は、急速に温度が失われ、ドロリとした粘度もやがて溶けていきながら、冷えていった。

肉棒の膨張も失われていき、徐々に冷えていく。

 

その冷えた精液と胎と肉管の中の液体の温度のコントラストと混交に、わたしは遅れて、ひとつの生命の喪失というのを見せつけられているようだった。

 

 

 

冷え切った空の下で、わたしは嗚咽があふれてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後、ラフトバルト市街地での戦闘は終わった。

 

1週間後、わたしは受胎した体内の受精胚の、国家保有ホムンクルスの規約条項規定に定められていると通りの所定の手順の順守により、この仔を培養器生育工程へと明け渡すための排出処置を受けるために、原隊から一時離脱した。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

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