※この作品はR-18です。

冒険者はつらいよ 冒険者歴10年選手の日常とエロス   作:みなぽん

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■ Roseliaサバイヴァーズ

◆ アル・ディーン
• 種族/年齢:人間/30歳
• 立場:本編主人公・パーティーリーダー
• 経歴:冒険者歴10年/等級シルバー
• 戦闘・技能:片手剣+丸盾、半弓サバイバル、罠解除簡単な魔法
• 人物像:
万能だが突出しない“器用貧乏”。堅実で生存第一主義の現実派。

◆ ミレーヌ・エルフェンリート
• 種族/年齢:雪族/45歳(外見はティーン)
• 立場:副リーダー
• 戦闘・技能:
• 魔法剣士 愛刀《雪月花》による超一流の剣技攻撃魔法も扱うオールラウンダー
• 人物像:
清楚で優しい常識人に見えて、戦闘では苛烈。アルとは古い付き合い。
「アルったら、もっと私を頼っていいんだからね」
「断ち切れ絶刀!雪月花!」

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◆ セルシア・ミストラル
• 種族/年齢:エルフ/81歳
• 戦闘・技能:弓術(百発百中)
• 人物像:
小柄な弓の達人だが、自己肯定感が極端に低い。すぐ卑屈になる。
「私の矢には正義を貫く力がある」
「私はお荷物ですから……」

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◆ メイベル・リングベル
• 種族/年齢:人間/20歳
• 立場:リーキスト教団・聖導女
• 戦闘・技能:回復・補助魔法
• 人物像:
心優しい癒し系。戒律に忠実だが、アルへの恋心に罪悪感を抱く。
「慈悲深き地母神よ、この者に癒しの光を!」
「ああ女神よ……私はまた淫で邪な感情を……」

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◆ ヴァレリア・ラース
• 種族/年齢:獣人種(魔狼)/31歳
• 戦闘・技能:
• 巨大鉄盾+ツヴァイヘンダー
• 重装歩兵
• 人物像:
フェンリルの血を引く食いしん坊。感情が高ぶるほど強くなる。
「お腹いっぱい!私は今とっても元気だゾ!」

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◆ リュミエール・ノクスフィリア
• 種族/年齢:人間/22歳
• 職能:魔法使い・予知能力者
• 経歴:元リシリオン王国・宮廷魔法使い
• 人物像:
不完全な未来視の悩み 仲間を守るため心配しがち
「そは裁きの鉄槌、赤く燃える業火を纏い我が敵を滅せよ!メテオール!」

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◆ マルシル・チェル
• 年齢:15歳
• 立場:雑用係
• 人物像:
リュミエールに拾われた孤児。亡き妹マーガレットに似ている。
「この命、リュミエール様のために捧げます」

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■ 冒険者ギルド関係者

◆ リディア・マーカス
• 職業:冒険者ギルド受付嬢
• 人物像:
清楚で真面目、冒険者たちのアイドル的存在。
• 台詞:
「無事のご帰還をお祈りしています」

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◆ エリゼ・バスクチュアル
• 職業:鑑定担当ギルド嬢
• 人物像:
素材鑑定の腕は一流。その一言で冒険者の明暗が分かれる。
• 台詞:
「この状態なら、この価格で……」

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■ フリーバーズ

◆ ハヤブサのゲイツ・オルソン
• 立場:フリーバーズ・リーダー
• 人物像:
冴えない中年だが実力は確か。妻想い。親父ギャグ担当。

◆ シラサギのアリステラ(キュッキィ)
• 職能:白魔導士
• 人物像:
ゲイツを支える健気な幼妻。

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◆ ツバクロのユージーン・ハリス
• 種族:小人族
• 職能:偵察・罠解除
• 人物像:
器用だが戦闘力は低め。夫婦のイチャイチャに辟易。

◆ 鳳(おおとり)のサドラ・ミストラル
• 種族:エルフ族
• 立場:フリーバーズ・メンバー
• 戦闘・技能弓術の達人 月属性の精霊術(現在は封印中)
• 人物像:
淫乱で自堕落、酒と怠惰を愛するポンコツエルフ。
しかしその正体は、かつて伝説の勇者パーティーに名を連ねた
《月の勇者 サドラムーンライト》。

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■ Roseliaタウン周辺

◆ ノエル・ペンテシレイア
• 種族/年齢:アマゾネス/34歳
• 異名:「殺戮の旋風」
• 人物像:
息子を守るため王国を脱走。現在は酪農で生計を立てる母。

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◆ カイン・ペンテシレイア
• 年齢:15歳
• 職能:魔法戦士志望
• 人物像:
マザコン気質。剣も魔法も中途半端だが成長途上。

◆ マリー・シノーダ
• 種族/年齢:アマゾネス/26歳
• 地位:AKB第八席
• 異名:《サディスティック・マリー》
• 戦闘・技能:雷光剣
アマゾネスを脱走、サファリアのヒモになる。
「サファリア、お腹すいたぁ、サファリア、小遣いくれよー」

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◆ サファリア・イル=ナハル
• 出身:アズライール教《ル=ザイード》
• 職能:舞闘女・暗殺者
• 人物像:
日常ではポンコツなお姉さんだが、裏では“魂に触れる者”。
• 台詞:
「汝、死を忘れるな」「また失敗しちゃいました❤️」

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◆ グリムニル・フレアハート(グリム)
• 種族/年齢:ドワーフ/42歳
• 職業:鍛治師
• 武装:炎鍛槍《ブレイズ・アンヴィル》
• 人物像:
名鍛治師の一人娘。姉御肌でアルを気にかける。
• 台詞:
「あたしはお前の鍛治師だよ」

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セルシアの帰郷 エルフの里《シルヴァナ=リース》

エルフの里《シルヴァナ=リース》が見えた瞬間、セルシア・ミストラルは無意識に歩みを止めていた。

 

 高く伸びる白樺の林。その奥に、枝と葉を編み上げたような樹上都市が広がっている。幼い頃から見慣れていたはずの景色なのに、今はまるで他人の家を覗き見るような居心地の悪さが胸にまとわりつく。

 

「……帰ってきちゃいましたね」

 

 独り言は、吐息と一緒に森に溶けた。

 

 百年近く生きるエルフにとって、数十年の不在は大したものではない。だが、セルシアにとってこの里は、逃げ出した場所だった。

 

 月の勇者――サドラムーンライト。

 叔母サドラ・ミストラルの名は、里のどこにいても耳に入った。

 

「サドラ様の姪なのに」

「どうしてあんなに出来が違うのか」

「弓は当たるけれど、魂が弱い」

 

 誰も彼女を殴らなかった。誰も怒鳴らなかった。

 ただ、失望と比較だけが、静かに積もり続けた。

 

 だからセルシアは里を出た。

 自分を知らない場所へ。期待も失望もない場所へ。

 

 そして――アル・ディーンたちと出会った。

 

「セルシア、無理はするなよ」

 

 背後からかけられた声に、セルシアは小さく肩を跳ねさせた。

 振り返れば、片手剣と丸盾を携えたアルが、いつもの穏やかな顔で立っている。

 

「い、いえ……大丈夫です。私なんて、お荷物ですし……」

「またそれか」

 

 アルは苦笑して頭を掻いた。

 

「百発百中の弓兵が荷物なら、俺たちはとっくに野垂れ死にだ」

「……でも」

 

「セルシアが気になると言うから来てみただけだ。寄らずに帰ってもそれでいい」

ギルドで聴いた故郷の街がワーウルフの襲撃に怯えているという情報、特に正式の依頼が来ているわけではない。

 

 アルの言葉が、胸に染みた。

 

 樹上の見張り台に近づくと、案の定、視線が突き刺さった。

 エルフたちの囁きが、風に乗って届く。

 

「出来損ないが戻ってきたぞ」

「サドラ様の名を汚す者が」

「今さら何の用だ」

 

 セルシアは俯いた。

 胸の奥で、自己否定がざわめく。

実家に顔を出すこともなく、逃げるように宿屋に駆け込んだ。

アル達も心配そうに宿から出ることなく、彼女の周りにいた。

(やっぱり……私は、ここでは――)

 

 その時だった。

 

 ――遠吠え。

 

 森を震わせる、獣の咆哮。

 空気が一瞬で張り詰める。

 

「ワーウルフだ!」

「群れだぞ、数が多い!」

 

 エルフの天敵。

 魔王の加護を受ける狼型魔獣――ワーウルフ。

 

 戦士たちは弓を構えたが、森の奥から現れた影の数に、明らかに怯みが走った。

 

「……無理だ」

「この数では、被害が出る」

 

 長老が、苦渋の表情で口を開く。

 

「……古き掟に従う」

「まさか……」

 

「三人だ!ダークエルフの娘たちを、捧げよ」

 

 ざわめきの中心で、年端もいかぬダークエルフの少女たちが、震えながら集められていく。エルフの街では、ダークエルフを1段下に見て、奴隷のようにこき使う習慣がある。

彼らにとっては家畜を差し出すような気分で、彼女たちを犠牲にしようと考えたのだ。

 

 

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 涙も声も殺し、ただ恐怖だけを宿した目。

「お前たちが我慢をすれば、街ののみんなが救われるんだ!」

ダークエルフのキュレネとジェンリー、幼いミュレイが城壁の外に放り出された。

 

ワーウルフの赤い瞳が闇の中で光る。涎を垂らしながら近づく巨体の前に、三人の少女は硬直していた。最も年長と思われるキュレネが震える手で他の二人を背後に庇う。銀髪が乱れ、涙で濡れた褐色の肌が月明かりに照らされている。

 

「くるな……」

 

その呟きは、群れの中心に立つ巨大な雄狼の咆哮に掻き消された。牙を剥いた先頭の一匹がキュレネに飛びかかり、布切れのように押し倒す。ドレスが引き裂かれ、褐色の乳房が露わになる。

 

「いやぁっ!助けて!」

 

ジェンリーの悲鳴が夜空に響く。幼いミュレイは恐怖で泣きじゃくり、母親を探しているかのように腕を伸ばす。しかし城壁の上で固唾を飲むエルフたちには何もできない。長老が拳を握り締め、「これで……街が」と小声で呟いたのが聞こえた。

 

ワーウルフの爪がキュレネの太腿に食い込み、黒い血が流れ落ちる。

毛むくじゃらの鼻面が首筋を這い回り、獣臭が彼女の思考を麻痺させる。次の瞬間、灼熱の痛みが下腹部を貫いた。

「あぎゃああぁぁ!?」

肉が裂ける音と同時に、奇妙な痺れが腰を駆け抜ける。傷口から湧き上がる生温かい液体が、なぜか甘美に感じられる。ワーウルフの粘液が体内に浸透していく。

(痛いはず……なのに……何でこんなに……熱いの?)

二匹目がジェンリーを押し倒した。細い喉が甲高い嬌声を漏らす。初めて聞く自分の声に戸惑いながらも、彼女は本能的に両脚を開こうとする自分に気づく。幼い肉体が急激に熟していく不思議な感覚に支配されていた。

ミュレイの小さな身体は三匹に取り囲まれていた。純粋な恐怖が次第に恍惚へと変わり始めていることに本人さえも気づかない。

(お腹の奥が……ドキドキしてる……)

ワーウルフの尾が少女の敏感な部分を擦りあげる。

最初は痛みだけだったはずの刺激が、じんわりとした快感へと変貌する。魔物の分泌物が皮膚を通して脳を侵食していた。

恐ろしいはずの爪の感触さえ愛撫に思えてくる。

「ああ……んぅっ……そこぉ……もっと……」

キュレネの口から零れる喘ぎが森に響く。もう痛みはない。全身を支配するのは得体の知れない快楽だけだった。褐色の肌が汗で輝き、獣の動きに合わせて肢体が自ら動いている。

「だめぇ……わたひ……おかしくなりゅ……」

ジェンリーは自ら舌を出し、涎を滴らせながら相手を受け入れ始めていた。普段は知的そうな瞳が虚ろになり、焦点を失っている。獣の臭いに包まれた空間が天国のように感じる。

ミュレイの小さな指が無意識に自分の胸元を弄っていた。「気持ちいい……気持ちいいよぉ……」純真な声で呟く度に、ワーウルフたちの動きが加速する。

「ぐふふ……んひぃ……」「もっと……ちょうだい……あんっ……あんっ……」

三人の嬌声が重なり合う。月明かりの下で繰り広げられる淫靡な光景に城壁上のエルフたちも目を覆うことができなくなった。だがそれは恐怖からではなく、驚愕と、どこか異様な好奇心からだった。

キュレネの口元から泡混じりの唾液が垂れる。

「イグッ……イグゥウウッ!!」絶頂を迎えた褐色の体が反り返り、銀色の髪が地面に広がる。しかし休む間もなく次の獣が覆いかぶさる。

「ひゃはぁ……すごぃ……もう一回……もう一回……」

ジェンリーは自ら四つん這いになり尻を振る。かつての慎ましさなど微塵も残っていない。獣と一体化したような官能の踊りを見せていた。

ミュレイは地面に仰向けになり、脚を大きく開いて迎え入れる姿勢を取る。「みんな一緒にぃ……きてぇ……」

三匹同時に入り込む圧迫感に少女は歓喜の叫びを上げた。「くるぅ!すごいの来るぅ!」

うち続く狂宴。三人のダークエルフはもはや理性の欠片も残っていなかった。

キュレネは地面に伏せたまま快楽の余韻に浸り続ける。

ジェンリーは放心状態で天を見上げている。

ミュレイは無邪気に笑いながら自分の腹部を撫でている。

このままでは、ハミ袋として連れ去られてしまうだろう!

 

セルシアの中で、何かが切れた。

宿屋を出て、城門のほうに向かって歩いて行く

「――やめさせてください」

その声は、驚くほどはっきりと響いた。

全員の視線が、彼女に集まる。

 

「無能な出来損ないが、口を出すな」

「勇者のサドラ様ならともかく、お前に何ができる」

 

 胸が痛い。

 逃げたい。

 でも――

 

 アルの言葉が、蘇る。

 

『俺たちはお前についていく、結果がどうなってもいい』

 

 セルシアは、弓を取った。

 震える手で、しかし確かに。

 

「私は……逃げてきました。比べられるのが怖くて、自分が嫌で」

 

 一歩、前に出る。

 

「でも……あの子たちのために、私は逃げない」

 

 矢を番える。

 森の奥、闇の中で光る赤い瞳を、正確に捉える。

 

「私は弱いかもしれない。だけど、私の矢には……正義を貫く力がある」

 

 ――放たれた。

 

 風を裂き、闇を貫き、ワーウルフの眉間を射抜く一矢。

 悲鳴と共に、最初の一体が倒れた。

「なっ……!」

「あの出来損ないがワーウルフに逆らったぞ!」

エルフ達がどよめく。

「続けます!」

 

 次々と矢が放たれる。

 百発百中。まるで月の勇者サドラの再来の如き勇姿だ。

 恐怖よりも、今は――守りたいという意志が勝っていた。

 

「アルさん!」

「任せろ!」

 

 アルが城門を出て前に出る。

「この犬畜生め!」

 ミレーヌの雪月花がワーウルフを両断する!

「切り裂け雪月花!」

 ヴァレリアが盾で群れを押し返す。

「うおおおおおん!フェンリルヴァレリア様のお通りだぞ!」

 リュミエールの風魔法の詠唱!

「回り回れ風神の刃、切り裂き踊れ、カマイタチ!」

無数の見えない刃がワーウルフの手足を切り飛ばす!

「聖なる地母神よ、このもの達に癒しと清めを!」

メイベルがダークエルフの娘達を癒しの魔法をかける

彼女たちの身も心も浄化されてゆく

 

群れの最後の一匹が倒れたとき、森は再び静寂を取り戻した。

セルシアは肩で息をしながら、跪いた。

ダークエルフの少女たちを抱き寄せ、背後に立つ。

「……これが、セルシア ミストラル 私の答えです!私が自分で選んだ道です」

エルフたちの間に、沈黙が流れる。

やがて一人の老エルフが、深く頭を下げた。

「セルシア・ミストラル……君は、紛れもなく月の勇者の血を受け継いでいるのだな。わしらは恥ずべき臆病者だった。」

その言葉が、胸に染みた。

叔母と比べられる存在ではなく、セルシア自身として認められた――そんな実感が、ようやく訪れたのだ。

夜空に浮かぶ月を見上げ、セルシアはそっと微笑んだ。

「アルさん……みんな……これからも、ずっと一緒に冒険させてください」

 

『森が祝う日――エルフの里のもてなし』

 

 ワーウルフの死体が森の奥へ運び去られ、血の匂いが朝露に洗われる頃。

 

 エルフの里《シルヴァナ=リース》には、これまでにないざわめきが満ちていた。

 

「英雄たちだ!」

「人間が……いや、あの弱虫のミストラル家の娘が!」

 

 セルシア・ミストラルは、状況を理解できずに立ち尽くしていた。

 

 ほんの数刻前まで、自分は出来損ないとして冷たい視線を浴びていたはずだ。

 それが今では――

 

「セルシア様! こちらへ!」

「その弓、すごかったです!」

 

「さ、様……?」

 

 思わずアルの方を見ると、彼は困ったように笑って肩をすくめた。

 

「……受け入れられるときは、案外あっさりだな」

「そ、そんな……私は……」

 

 セルシアは視線を泳がせる。

 褒められることに、まだ慣れていない。

 

 里の中央、大樹の広場では即席の宴が開かれた。

 

「これは《月露の実》だ。夜にしか熟さない」

「こっちは《苔蜜パン》。三日経っても腐らないぞ」

 

 エルフたちが次々と、珍しい食べ物を並べていく。

 

 淡く光る果実、香草を練り込んだ白いパン、透き通る酒。

 人間の街では見たこともないものばかりだ。

 

「わぁ……きれい……」

 メイベルは目を輝かせ、思わず祈りそうになるのを我慢している。

 

「これ、甘いゾ!」

 ヴァレリアは豪快に《苔蜜パン》をかじり、尻尾を振った。

「お腹いっぱいになると、幸せだな!」

 

「……消化できるのかしら、それ」

 ミレーヌは苦笑しつつも、酒を一口含み、目を細める。

「このお酒、悪くないわね。飲み過ぎちゃう❤️」

 

 セルシアは、懐かしい味に胸を締め付けられていた。

 

(……この匂い。子供の頃、母が作ってくれた……)

 

「セルシア」

 

 不意に呼ばれ、振り向く。

 

 そこに立っていたのは――

 年を重ねたエルフの男女。

 

 父と、母だった。

 

「……おかえり」

 

 短い一言。

 だが、それだけで十分だった。

 

「……ただいま」

 

 声が、震えた。

 

 その隣に立つアルを、母親はじっと見つめ――次の瞬間、目を輝かせた。

 

「まあ……!」

「セルシア、この方は?」

 

「え、えっと……その……仲間、です……」

 

 セルシアがしどろもどろになる前に、母は両手を打ち合わせた。

 

「まあまあまあ! 婿ね!」

「……は?」

 

 アルの思考が、一瞬止まった。

 

「い、いえ、違います!」

「照れなくていいのよ、人間さん。ここにきたのは求婚の証でしょう?」

 

「え?」

「え?」

 

 セルシアとアルが同時に固まる。

 

 ミレーヌが、くすっと笑った。

「……エルフの習慣ね」

「え、説明して!?」

 

 父が真顔で頷く。

 

「成年したエルフが、外部の者を伴い里に戻る場合――」

「その者は、生涯の伴侶と見なされる」

 

「そんな習慣、聞いてません!」

「言う機会が……なかったです……」

 

 セルシアは、顔を真っ赤にして俯いた。

 

 周囲のエルフたちは、もう祝福モードだ。

 

「おめでとう!」

「混血の子も悪くないな」

「月の加護が強そうだ」

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 アルは慌てて手を振る。

「俺たちは、そういう関係じゃ――」

 

「今は、でしょ?」

 母はにっこり微笑んだ。

「エルフは、百年単位で考えるの」

 

 アルは、言葉を失った。

 

 宴の終わり、セルシアはアルの隣に腰を下ろした。

 

「……ごめんなさい」

「いや……文化の違いってやつだな」

 少しの沈黙。

「……でも」

 セルシアは、空を見上げる。

「アルさんが一緒じゃなかったら、私はここに戻れませんでした」

「俺は、ついてきただけだ」

「それでも」

 月明かりが、二人を照らす。

「エルフは、不思議な習慣が多いでしょう?」

「……そうだな」

 セルシアは、小さく笑った。

 それが何を意味するのか。

 アルは、あえて聞かなかった。

 宴のざわめきの中、里は久しぶりに笑っていた。

 そしてRoseliaサバイヴァーズは知る。

 エルフの森は、少しだけ――人間の常識が通じない場所だということを。

 

【閉ざされた寝室】

魔法の光が灯るベッドルーム。アルとセルシアは呆然と立ち尽くした。

 

「……母さまが……なにをしてるんですかっ!?」

 

セルシアの銀髪の耳がピクピク震え、頬は熟れたリンゴのように真っ赤になった。薄いレースカーテン越しに見える木造の窓枠が、まるで嘲笑っているように揺れている。

 

「落ち着けセルシア。扉には鍵がかかってるみたいだが──」

 

アルが慎重に扉に手を触れた途端、文字が浮かび上がった。

 

*【汝らが肉体を一つにするまで開かず】*

*──聖なる婚姻の儀式のための結界──*

 

「母様ったら……こんな古代エルフの秘術まで!?」

 

セルシアは拳を握りしめたが、その仕草は怒りというより恥じらいに近かった。長い睫毛が何度も震え、視線を床に落とす。

「アルさん……すみません。私が連れてきたのに、こんな……」

「謝る必要はない。それに……」

アルはセルシアの肩に手を置いた。彼女の華奢な体がびくりと跳ねる。

「緊張しなくていいセルシアのペースでいいんだ」

柔らかな声音に、セルシアの耳がさらに赤くなった。普段なら「当然ですっ」とツンと返すところだが、今夜は声が続かない。

 

 

「まずは座ろうか」

二人掛けのソファに腰を下ろすと、セルシアは膝をそろえて浅く座り直した。長いスカートの裾がふわりと揺れ、アルの視界に入る。細い足首に巻かれた銀糸のアンクレットが月光を反射して淡く光った。

「……きれいだな」

思わず漏れたアルの一言に、セルシアは飛び上がりそうになった。

「き、きれいって何ですか!? 足がですか!?」

「全部だよ」

「ぜっ───!?」

言葉が喉につまり、セルシアは口をぱくぱくさせた。耳が熱を帯びてぴんと立ち、耳輪の縁まで薄紅色に染まっていく。

「今日はいろいろあったし疲れてるだろ? 眠くなるまで話でも……」

「まっ、待ってください!」

セルシアが突然アルの袖をつかんだ。手は微かに震えているのに、翡翠の瞳は強い意志を宿していた。逃げるわけにはいきません。だって……私は……もう決めてますから」

アルは思わず息を飲んだ。いつもなら一歩引くセルシアが、今は真正面から見つめている。

「決めたって……?」

「だから……アルさんには、ちゃんと知ってほしい。私というエルフのすべてを……あなたの目に焼き付けてほしいんです」

囁くような告白に、アルの鼓動が早まる。彼はそっとセルシアの手を取った。ひんやりとした細い指が、すぐに熱を帯びてくる。

 

 

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「セルシア──」

アルが頬に手を添えると、セルシアはビクッとしながらも抵抗せず、むしろ軽く頬をすり寄せた。猫のような仕草にアルの心臓が跳ねる。

「ふわぁ……温かい……」

いつもの凛とした弓使いとは別人の、幼子のような呟き。

「セルシアの全てが見たい❤️」アルはセルシアの夜着を脱がした。ー

セルシアの薄桃色の唇が小さく開く。

「私も……アルさんに全部見せます。だから……」

最後の言葉は掠れ、声にならなかった。その代わりに、セルシアはゆっくりと立ち上がると、自らの細い指を襟元にかけた。白磁器のような鎖骨が月明かりに浮かび上がる。肩から滑り落ちる布の音さえ、部屋に甘く響いた。

アルは呼吸を忘れたように見入ってしまった。月下美人のように優雅な裸体が目の前にある。白い肌には無数の細かな傷跡が散らばっているが、どれも命の証にしか見えない。

「恥ずかしいです。でも……」

セルシアは恥ずかしそうに両腕で胸を隠しながらも、片足だけベッドにかけた。月光が照らす陰影が、完璧な曲線を描いている。

「優しくシテください」

その言葉を聞いた瞬間、アルの理性がぷつりと切れた。彼は素早く起き上がると、セルシアの腰を引き寄せた。柔らかな肌が直に触れ合い、互いの体温が交錯する。

「ぁ……っ!」

セルシアの喉から零れた声は、拒絶ではなく歓喜だった。長い耳が嬉しそうにぴくぴく震え、腕が自然とアルの首に回る。

「アルさん……」

熱い吐息がアルの耳元をくすぐった。唇同士が触れる寸前、セルシアは小さく囁いた。

「私が死ぬまで、あなただけを見ています」

「セルシア」

次の瞬間、二人の唇が重なった。最初は探るように浅く、しかしすぐに深い交わりへと変わっていく。セルシアの舌がアルの口腔をなぞると、彼女自身の背筋がぞくぞくと震えた。

「ふぁ……っ、んぅ……」

口づけの合間に漏れるセルシアの声が次第に甘く蕩けていく。アルの手がセルシアの背中に滑り込むと、彼女は全身を預けるように体重をかけた。腰のくびれからヒップラインまでの滑らかな曲線を、アルは確かめるように辿っていく。

「あぁ……ダメです……私…」

セルシアの体が小さく震えた。白い肌に紅潮が広がり、翡翠の瞳が潤んでいく。アルの手が太ももの内側に達すると、彼女は切なげに腰をくねらせた。

「アルさん……もっと……お願い……」

その懇願に応えるように、アルはセルシアをゆっくりとベッドに横たえた。白いシーツの上で弓なりに反る彼女の姿は、獲物を狩る直前の野生動物のような美しさと、全てを委ねる少女のような無防備さを併せ持っていた。

「全部見せてくれるんだろ?」

アルの低い声に、セルシアはこくりと頷いた。長い耳が恥ずかしそうに折れ曲がり、まるで彼女の恥じらいそのものを表しているようだった。

「はい……私の全部を……アルさんに捧げます」

その瞬間、セルシアの手がアルのシャツを掴んだ。ボタンを一つずつ外していく細い指が、途中で小さく震える。

「脱いでください……私も……あなたを……見たいです」

アルが上半身を露わにすると、セルシアは溜息をついた。戦いの傷跡が刻まれた筋肉質の肉体に、彼女の瞳が吸い寄せられる。

「素敵……アルさんの体、すごく逞しくて……」

セルシアの指が恐る恐るアルの胸板に触れた。指先に伝わる脈動に、彼女は息を呑む。

「私と全然違う……男の人って……こんなに温かいんですね」

アルがセルシアの髪を梳くと、彼女は目を細めた。猫が喉を鳴らすような仕草で、彼の指先を愛おしそうに嗅ぐ。

「アルさんの匂い……好きです。安心します」

その言葉と共に、セルシアは大胆にもアルの首筋に吸い付いた。小さな口が一生懸命に肌を吸い、やがて淡い花弁のような痕を残す。

「私のものです……アルさんは……」

独占欲を隠さない言葉に、アルの体が熱を帯びた。彼はセルシアの首筋に同じように痕をつけながら、彼女の胸元へと手を滑らせた。

「あぁっ……! そこは……敏感で……」

セルシアの背筋が弓なりに反った。白い丘陵の頂点で色づく蕾を指先で掠められただけで、彼女の体は電流が走ったように震える。

「だめ……変になります……こんな……」

困惑しながらも、セルシアの声には明らかな悦びが混じっていた。アルが丁寧に蕾を包み込み、時に転がし、時に摘み上げるたびに、彼女の腰が無意識に揺れる。

「セルシア、可愛いよ」

耳元で囁かれた言葉に、セルシアの瞳から涙が一粒零れた。

「本当に……? 私のこと……可愛いって……」

「ああ、。可愛い」

その一言で、セルシアの理性が完全に崩れた。彼女はアルの肩に手をかけ、自らの体重をかけて押し倒した。逆転した体勢に、二人の位置が入れ替わる。

「アルさん……今度は私にやらせてください」

セルシアの細い指がアルのズボンのベルトにかかる。手際よく外す様子は、まるで新しい弓を手に入れた時の彼女を思わせた。

「すごい……こんなに……」

解放された熱量に、セルシアは目を丸くした。好奇心と恥じらいの入り混じった表情で、彼女はおそるおそる手を伸ばす。

「痛くありませんか?」

「大丈夫だ」

アルの答えに安堵したセルシアは、慎重に指を絡ませた。冷たい指先と熱い剛直との温度差に、彼女自身も興奮を隠せない。初めは遠慮がちだった手つきが、次第に大胆になっていく。

「アルさん……気持ちいいですか?」

「ああ、最高だ」

その言葉に励まされたセルシアは、さらに積極的になった。片手で扱きながら、もう一方の手がアルの内腿を這う。エルフ特有の繊細なタッチが、アルの脳髄を痺れさせた。

「私にも……教えてください。どうしたらアルさんを喜ばせられるか……」

熱っぽい瞳で見上げるセルシアに、アルは理性の限界を感じた。彼はセルシアの腕を掴むと、再び体勢を入れ替えた。

「教えるのは俺の役目だな」

「えっ……? ひゃあんっ!」

セルシアの足が持ち上げられ、アルの眼前に秘所が晒された。既に濡れそぼったそこに、アルの息がかかり、セルシアは身悶える。

「み、見ないでください……恥ずかしいです……」

言葉とは裏腹に、セルシアの腰は自然と誘うように動いていた。アルの指が割れ目をなぞるたびに、蜜が溢れ出してシーツを濡らす。

「こんなに濡れてるのに、嫌なのか?」

「だって……変です……私の体……おかしくなっちゃいます……」

セルシアの翡翠の瞳からは涙がポロポロと零れ落ちた。それは羞恥の涙であり、悦びの涙でもあった。

「いいんだ、セルシア。俺に全部見せてくれ」

アルは優しく微笑むと、セルシアの最も敏感な突起に指を当てた。瞬間、セルシアの体が激しく跳ね上がる。

「ひゃぁっ! そ、そこ……っ!」

セルシアの声が甘く裏返った。アルの指先が小さな蕾を包み込み、時に強く、時に優しく刺激を与えるたびに、彼女の体は陸に上がった魚のように震える。

「いやぁっ……こんなの……知りません……」

セルシアの抗議は弱々しく、その声には明らかに陶酔が滲んでいた。腰が無意識にアルの手に擦りつけられ、更なる刺激を求めている。

「アルさん……私…もう……」

セルシアの言葉が切迫してきた瞬間、アルは彼女の耳元で囁いた。

「セルシア、一緒にイこう」

その言葉と同時に、アルはセルシアの中にイチモツを沈めた。彼女の熱い蜜壺は既に準備万端で、アルの指を歓迎するように締め付ける。

「あぁっ! 入って……きて……」

セルシアの顔が陶酔に歪んだ。彼女はアルの首にしがみつき、必死に息を整えようとする。

「セルシアの中、すごく熱いよ」

「だめぇ……そんなこと言わないで……」

アルのイチモツが内部を探るように動くたびに、セルシアの体は新たな快感に震えた。特に亀頭がある一点を掠めた瞬間、彼女の体が弓なりに反る。

「そこっ……! だめです……なんか……変に……」

セルシアの懇願を聞きながらも、アルは執拗にその箇所を攻め続けた。内側からの刺激と外側の突起への愛撫が重なり、セルシアの限界が近づいてくる。

「アルさん……私…もう……もう……っ!」

セルシアの体が硬直し、次の瞬間、強烈な痙攣が彼女を襲った。熱い蜜が噴き出し、アルのイチモツを濡らす。

「ああぁぁぁぁぁっ!」

悲鳴のような嬌声が部屋に響き渡った。セルシアの長い耳がぴんと立ち、全身が快感の波に翻弄される。アルは彼女が絶頂の余韻に浸る間も、優しく愛撫を続けた。

「セルシア、愛してる」アルは自らの欲望を彼女の中に解き放った!

耳元での囁きに、セルシアの瞳から再び涙が溢れ出した。それは悦びの涙だった。

「私も……愛しています……アルさん」

絶頂の後の気怠さの中で、セルシアはアルに全てを委ねた。二人の肉体が密着し、体温が溶け合う。

「アルさん……私の体はどうでしたか?」

控えめな問いかけに、アルは笑みを浮かべた。

「最高だったよ。セルシアはどこもかしこも美しい」

その言葉に、セルシアの顔が夕焼けのように赤くなった。彼女は照れ隠しのようにアルの胸に顔を埋める。

「恥ずかしい……けど……嬉しいです」

「恥ずかしがらなくていい。セルシアは誰よりも魅力的だ」

アルの言葉は嘘偽りなく、真摯なものだった。彼はセルシアの背中を優しく撫でながら、彼女の全てを受け入れた充足感に浸っていた。

 

サイドストーリー

『月は語らず、森は知っている』

 

【挿絵表示】

 

 

 エルフの森がざわめいていた。

 

 ワーウルフの群れが動く夜は、空気が違う。

 風は重く、月は赤みを帯び、木々は音を殺す。

 

「……はぁ」

 

 大樹の枝の上。

 一人のエルフが、だらしなく寝転がっていた。

 

「めんどくさ……」

 

 鳳(おおとり)のサドラ・ミストラル。

 酒と怠惰と昼寝を愛する、どうしようもないポンコツエルフ――

 という顔を、今はしていない。

 

 金の瞳は鋭く、弓は静かに月光を集めている。

 

「……来てるね。しかも、面倒なのが」

 

 彼女の視線の先。

 群れを率いる巨大な影――

 通常のワーウルフとは明らかに異なる、禍々しい魔力。

 

「ボス個体。しかも魔改造型……エルフを食い荒らしに来たか?だが、運が悪いのは、そっちだな」

 

 声は、低く。

 月の勇者《サドラムーンライト》のそれだった。

 

 

 サドラは、無闇に矢を放たない。

 

 正確には――一射で終わらせるため、撃たない。

 

 月が雲から完全に顔を出す、その瞬間を待つ。

 

 ワーウルフの王が咆哮する。

圧倒的な強者の勝利の叫び!

 森が震え、群れが応える。

 

 だが次の瞬間。

 

 ――音は、なかった。

 

 放たれた矢は、光すら伴わない。

 月光そのものが、貫くように一直線に獣の心臓を貫いた。

 

 ボスは、吠えることすらできなかった。

 

 倒れた瞬間、群れの統率は失われる。

 残されたワーウルフたちはアル達の敵ではないだろう。

 

「……やれやれ」

 

 サドラは、弓を下ろす。

 

「セルシアの里帰りに水差すわけにもいかないしね」

 

 彼女の視線は、少しだけ優しかった。

 

(……あの子、ちゃんと立ち上がったかな)

 

 答えは、見に行かなくてもわかる。

 それでも――

 

「過保護かな。叔母としては」

 

 そう呟いて、サドラは姿を消した。

 

 

 翌朝。

 

 里の広場は、勝利と安堵の空気に包まれていた。

 

「いやぁ、昨夜は飲みすぎたわーワーウルフ? 怖い怖い」

 ふらりと現れたセルシアの元にサドラは、いつもの怠惰な笑みを浮かべている。

 

「……叔母さん?」

 セルシアが目を見開く。

 サドラは一瞬だけ、目を細め――

 次の瞬間、堂々と胸を張った。

 

「ふふん。聞いたわよ、セルシア里を守ったんですって?」

 

 月の勇者の登場にざわり、と周囲が静まる。

 

「私が来る前にワーウルフの群れを倒すなんて、さすが、私の姪、月の加護は、ちゃんと継がれてるじゃない」

 

 その姿は、まさしく――伝説の勇者だった。

 

 アルは、言葉を失っていた。

(……こいつ、いつも酒場で飲んだくれてるダメエルフだよな?)

 

 里の門。

 

「では、我はここまでだ」

 

 サドラは、厳かな声で言い放つ。

 

「月の勇者は、森に留まるものではない 平和を求める人々が、私を待っているのだ」

街の人々にさっそうと背を向ける

 

「……かっこいい」

 セルシアが、素直に呟く。

 

 サドラは、満足げに頷いた。

「セルシア!うむ。精進せよ」

 

 そして――門を一歩出て、里が見えなくなった瞬間。

 

「……つっかれたぁぁぁぁ!」

 

 その場に崩れ落ちた。

 

「ああ、久々に必殺のやっちゃったから腕と腰がいてぇ……一晩でボスは反則だって……」

 

「はいはい、お疲れさん」

 

 呆れ声で肩を貸したのは、ツバクロのユージーン・ハリスだった。

 

「月の勇者様も大変だな」

「うっさい」

 

 サドラは、完全にだらけた顔で舌を出す。

 

「セルシアには、内緒ね」

「言うわけないだろ。いい叔母だ」

 

 サドラは、一瞬だけ真顔になった。

 

「……あの子、自分で立った」

「それでいい」

 

 次の瞬間には、いつものポンコツに戻る。

 

「さーて、酒! 寝床! あと昼まで寝る!もう歩けないから、おんぶして❤️」

「はいはい」ユージーンが小さな体でポンコツエルフをおんぶした。

 

 月は、もう高く昇っていた。

 

 誰にも知られず。

 語られることもなく。

 

 だが、確かに――

 森は知っている。

 

 月の勇者は、今もそこにいるということを。

 

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