冒険者はつらいよ 冒険者歴10年選手の日常とエロス 作:みなぽん
◆ アル・ディーン
• 種族/年齢:人間/30歳
• 立場:本編主人公・パーティーリーダー
• 経歴:冒険者歴10年/等級シルバー
• 戦闘・技能:片手剣+丸盾、半弓サバイバル、罠解除簡単な魔法
• 人物像:
万能だが突出しない“器用貧乏”。堅実で生存第一主義の現実派。
◆ ミレーヌ・エルフェンリート
• 種族/年齢:雪族/45歳(外見はティーン)
• 立場:副リーダー
• 戦闘・技能:
• 魔法剣士 愛刀《雪月花》による超一流の剣技攻撃魔法も扱うオールラウンダー
• 人物像:
清楚で優しい常識人に見えて、戦闘では苛烈。アルとは古い付き合い。
「アルったら、もっと私を頼っていいんだからね」
「断ち切れ絶刀!雪月花!」
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◆ セルシア・ミストラル
• 種族/年齢:エルフ/81歳
• 戦闘・技能:弓術(百発百中)
• 人物像:
小柄な弓の達人だが、自己肯定感が極端に低い。すぐ卑屈になる。
「私の矢には正義を貫く力がある」
「私はお荷物ですから……」
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◆ メイベル・リングベル
• 種族/年齢:人間/20歳
• 立場:リーキスト教団・聖導女
• 戦闘・技能:回復・補助魔法
• 人物像:
心優しい癒し系。戒律に忠実だが、アルへの恋心に罪悪感を抱く。
「慈悲深き地母神よ、この者に癒しの光を!」
「ああ女神よ……私はまた淫で邪な感情を……」
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◆ ヴァレリア・ラース
• 種族/年齢:獣人種(魔狼)/31歳
• 戦闘・技能:
• 巨大鉄盾+ツヴァイヘンダー
• 重装歩兵
• 人物像:
フェンリルの血を引く食いしん坊。感情が高ぶるほど強くなる。
「お腹いっぱい!私は今とっても元気だゾ!」
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◆ リュミエール・ノクスフィリア
• 種族/年齢:人間/22歳
• 職能:魔法使い・予知能力者
• 経歴:元リシリオン王国・宮廷魔法使い
• 人物像:
不完全な未来視の悩み 仲間を守るため心配しがち
「そは裁きの鉄槌、赤く燃える業火を纏い我が敵を滅せよ!メテオール!」
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◆ マルシル・チェル
• 年齢:15歳
• 立場:雑用係
• 人物像:
リュミエールに拾われた孤児。亡き妹マーガレットに似ている。
「この命、リュミエール様のために捧げます」
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■ 冒険者ギルド関係者
◆ リディア・マーカス
• 職業:冒険者ギルド受付嬢
• 人物像:
清楚で真面目、冒険者たちのアイドル的存在。
• 台詞:
「無事のご帰還をお祈りしています」
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◆ エリゼ・バスクチュアル
• 職業:鑑定担当ギルド嬢
• 人物像:
素材鑑定の腕は一流。その一言で冒険者の明暗が分かれる。
• 台詞:
「この状態なら、この価格で……」
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■ フリーバーズ
◆ ハヤブサのゲイツ・オルソン
• 立場:フリーバーズ・リーダー
• 人物像:
冴えない中年だが実力は確か。妻想い。親父ギャグ担当。
◆ シラサギのアリステラ(キュッキィ)
• 職能:白魔導士
• 人物像:
ゲイツを支える健気な幼妻。
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⸻
◆ ツバクロのユージーン・ハリス
• 種族:小人族
• 職能:偵察・罠解除
• 人物像:
器用だが戦闘力は低め。夫婦のイチャイチャに辟易。
◆ 鳳(おおとり)のサドラ・ミストラル
• 種族:エルフ族
• 立場:フリーバーズ・メンバー
• 戦闘・技能弓術の達人 月属性の精霊術(現在は封印中)
• 人物像:
淫乱で自堕落、酒と怠惰を愛するポンコツエルフ。
しかしその正体は、かつて伝説の勇者パーティーに名を連ねた
《月の勇者 サドラムーンライト》。
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■ Roseliaタウン周辺
◆ ノエル・ペンテシレイア
• 種族/年齢:アマゾネス/34歳
• 異名:「殺戮の旋風」
• 人物像:
息子を守るため王国を脱走。現在は酪農で生計を立てる母。
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◆ カイン・ペンテシレイア
• 年齢:15歳
• 職能:魔法戦士志望
• 人物像:
マザコン気質。剣も魔法も中途半端だが成長途上。
◆ マリー・シノーダ
• 種族/年齢:アマゾネス/26歳
• 地位:AKB第八席
• 異名:《サディスティック・マリー》
• 戦闘・技能:雷光剣
アマゾネスを脱走、サファリアのヒモになる。
「サファリア、お腹すいたぁ、サファリア、小遣いくれよー」
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◆ サファリア・イル=ナハル
• 出身:アズライール教《ル=ザイード》
• 職能:舞闘女・暗殺者
• 人物像:
日常ではポンコツなお姉さんだが、裏では“魂に触れる者”。
• 台詞:
「汝、死を忘れるな」「また失敗しちゃいました❤️」
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◆ グリムニル・フレアハート(グリム)
• 種族/年齢:ドワーフ/42歳
• 職業:鍛治師
• 武装:炎鍛槍《ブレイズ・アンヴィル》
• 人物像:
名鍛治師の一人娘。姉御肌でアルを気にかける。
• 台詞:
「あたしはお前の鍛治師だよ」
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冒険者パーティ ファイティング ラクーン〔闘う狸)
蒼き僧兵 アリス ゾロキア 24歳
見た目は真面目に見えるが色欲の罪で聖導女を首になった聖槍の使い手。ー
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紅のレイピア使い クレア ランバート 20歳、
セクハラ貴族を殴って騎士団をクビになったお転婆娘!両刀のレイピアの突きは音速を超える
【挿絵表示】
レンジャー レン ハルフォード 18歳
人生の落伍者クレアとアリスの妹分、二人に出会う前はゾンビパンデミックで家族を失った浮浪児
頭の回転が速く、気遣いもできる優しい娘。
【挿絵表示】
アウレリア=ヴァル=ルシリオ。
元ルシリオン王国第三王女にして聖騎士。ルシリオン王国は宰相ベルクカッツェの起こした革命で滅亡しており、彼女は逃げ伸びて、Roseliaタウンで冒険者として再出発している。
「落魄れたとはいえこのような辱めを!無礼だぞ!」「私の誇りにかけて成し遂げてみせよう!」
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サリア ラキューズ ハーフサキュバス 23歳
魔法都市カルディナの錬金術師、魔法大学校の教授である。サンジェルマン伯爵の愛弟子。ハーフサキュバスと言う生い立ちのために、差別の中に育つが、サンジェルマンに保護されて、一流の錬金術師となる。
普段は真面目な優等生だが、師匠の為ならば、サキュバスの能力を使うことも厭わない。
事件の後は、全てを失った。サンジェルマン伯爵とともにRoseliaタウンで錬金術のサンジェルマン工房を開店する
【挿絵表示】
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夜のRoseliaタウンは静かだった。
昼間は怒鳴り声と酒臭い笑い声で満ちている冒険者通りも、今は石畳を撫でる風の音しか聞こえない。遠くで犬が吠え、どこかの酒場から酔っ払いの歌が微かに漏れてくる程度だ。
リーキスト教団の小さな孤児院では、ひとつだけ灯りが残っていた。
台所で鍋をかき混ぜている少女――メイベル・リングベルは、額の汗を袖でぬぐい、小さく息を吐いた。
「うん……これなら大丈夫でしょうか」
鍋の中では野菜のスープがぐつぐつと煮えている。高級な肉など入っていない。市場で値切って買った硬い根菜と、肉屋から安く譲ってもらった端切れ肉だけだ。
けれど、腹を空かせた子供たちには十分なご馳走だった。
「メイベル姉ちゃん! お腹空いたー!」
「はいはい、今できますからね」
振り返った彼女は、いつものように柔らかく笑った。
聖印の刻まれた杖を壁に立てかけ、白い修道服の袖をまくった姿は、聖導女というより世話焼きの姉そのものだった。
食卓へ皿を並べる。
子供たちは歓声を上げた。
「今日は肉入ってる!」
「ほんとだー!」
「アルさんたちと依頼に行きましたからね。少しだけ奮発です」
そう言うと、子供たちは目を輝かせる。
「アルって強い剣士のお兄ちゃん!?」
「うんうん! メイベル姉ちゃん好きなんでしょ!」
「ぶっ――!」
メイベルは盛大にむせた。
「な、な、何を言っているのですかあなたたちは!?」
顔が真っ赤になる。
しかし子供たちはにやにやしている。
「だってアルさんの話すると嬉しそうだもん」
「今日も帰り道ずっと笑ってたー」
「あうぅ……!」
メイベルは頭を抱えた。
そんなにわかりやすかっただろうか。
今日の依頼は森の薬草採集と小型魔獣の駆除だった。危険は少なかったが、その分、仲間たちと穏やかな時間を過ごせた。
アル・ディーンは相変わらず不器用で。
荷物をさりげなく持ってくれたり、転びそうになった自分を支えてくれたり。
何気ない優しさが胸に刺さる。
「……ああ女神よ」
思わず天を仰いだ。
だがその直後、別の女性の姿が脳裏をよぎる。
ミレーヌ。
アルの隣で自然に笑う、美しく気高い雪族の魔法剣士。
長年共に旅をしてきた、特別な相棒。
メイベルは知っている。
自分が入り込めない時間が二人にはあることを。
「メイベル姉ちゃん、泣いてる?」
「えっ」
気づけば目元が熱かった。
慌てて笑顔を作る。
「ち、違いますよ。玉ねぎです。玉ねぎがですね」
「スープに玉ねぎ入ってないよ?」
「…………」
子供は時として残酷だった。
夕食が終わると、今度は洗濯と寝かしつけだ。
小さな子の髪を乾かし、毛布をかけ、眠るまで子守歌を歌う。
孤児たちはみな事情を抱えている。
魔物に村を滅ぼされた子。
親に捨てられた子。
戦争で家族を失った子。
この街は、そういう人間が流れ着く場所だった。
「メイベル姉ちゃん」
眠そうな少女が、毛布を掴みながら言った。
「いつもありがとう」
その一言に、メイベルは胸が熱くなる。
「……こちらこそ、ありがとう」
優しく頭を撫でる。
やがて寝息が静かに部屋を満たした。
孤児院に静寂が訪れる。
深夜。
礼拝堂には、たった一人だけ跪く影があった。
蝋燭の灯りが揺れる。
メイベルは胸元で指を組み、静かに祈りを捧げていた。
「慈悲深き地母神よ……今日も子供たちを守ってくださり感謝します」
小さな声。
静かな祈り。
だが次第に、その声は震え始める。
「そして……どうか、お許しください」
俯く。
金色の髪が肩から零れ落ちた。
「私はまた……邪な想いを抱いてしまいました」
アルの顔が浮かぶ。
剣を握る大きな手。
疲れた時に見せる苦笑い。
自分を気遣う優しい声。
思い出すたび胸が締め付けられる。
「彼には……大切な人がいるのに」
ミレーヌの姿が脳裏をよぎる。
美しく、強く、隣に並ぶのが似合う女性。
比べること自体がおこがましい。
なのに。
それでも。
彼が好きだった。
「女神よ……私は弱い人間です」
ぽつりと涙が落ちる。
聖導女でありながら。
救いを説く立場でありながら。
こんなにも独占欲に苦しんでいる。
それが情けなくて仕方なかった。
だが。
ふと今日の光景を思い出す。
孤児たちの笑顔。
美味しいと喜んでくれたスープ。
「ありがとう」と言ってくれた小さな手。
そして。
危険な依頼の帰り道、アルが何気なく言った言葉。
『お前がいて助かったよ、メイベル』
胸が熱くなる。
それだけで、明日も頑張れると思ってしまう。
「……本当に、困った人です」
涙を拭き、彼女は少しだけ笑った。
恋心は罪かもしれない。
報われない想いなのかもしれない。
それでも。
誰かを好きになる心まで、否定したくはなかった。
だからメイベル・リングベルは明日も祈る。
子供たちのために。
仲間たちのために。
そして、密かに想い続ける一人の冒険者の無事を願って。
⭐️クエスト
地下迷宮《灰哭きの地下墓廟》――。
湿った石壁を、青白い燐光苔がぼんやり照らしていた。
腐臭。
血の匂い。
そして、どこか甘ったるい香り。
吸精鬼《サキュバレイス》。
生者の生命力を啜る魔性種。
その巣を討伐する依頼は、本来なら中堅以上の冒険者向けだった。
だが。
「右から二体来ます!」
メイベルの声と同時に、アルが丸盾を叩きつけた。
ガァン!!
黒い影が吹き飛ぶ。
「ミレーヌ! 左通路!」
「断ち切れ――《雪月花》!」
氷刃の斬撃が闇を裂き、吸精鬼の首が宙を舞った。
戦況は優勢だった。
少なくとも――その瞬間までは。
地下墓廟が揺れる。
古い魔法陣が赤黒く発光した。
「転移罠!?」
リュミエールが叫ぶ。
次の瞬間、アルとメイベルの足元が崩れ落ちた。
「アル!!」
仲間たちの声が遠ざかる。
暗闇。
浮遊感。
そして――。
ドサリ、と。
アルは石床に叩きつけられた。
「ぐっ……!」
「ア、アルさん……!」
すぐ隣にメイベルが倒れていた。
どうやら二人だけ別区画へ飛ばされたらしい。
狭い円形の霊廟。
逃げ道はない。
そして。
玉座のような石棺の上で、“それ”は笑っていた。
長い銀髪。
妖艶な女の貌。
だが脚は黒い霧となり、巨大な蝙蝠翼が背から広がっている。
吸精鬼の女王種。
「クク……上質な生命力……特にその聖導女……実に甘美だ……」
メイベルが震える。
「ボ、ボス個体……!」
アルは剣を抜いた。
「やるしかないな」
言葉は軽い。
だが額には汗が浮いている。
相手は明らかに格上だった。
戦闘が始まった。
吸精鬼は空間を滑るように移動し、爪撃を放つ。
アルが盾で受ける。
衝撃。
腕が痺れる。
「ぐっ……!」
「アルさん!」
メイベルの治癒光が飛ぶ。
「慈悲深き地母神よ、この者に癒しの光を!」
温かな光。
だが敵は止まらない。
闇霧が奔り、無数の幻影が二人を包囲する。
「幻惑です!」
「わかってる!」
アルは床の燭台を蹴り飛ばした。
炎が広がる。
幻影が揺らぐ。
本体を見抜いたアルが突進。
剣閃。
だが敵は笑う。
「愚かな」
黒爪がアルの脇腹を裂いた。
鮮血。
メイベルの顔が青ざめる。
「アルさん!!」
「まだだ……!」
彼は踏み込んだ。
盾で顎を打ち上げ、至近距離から短剣を突き立てる。
吸精鬼が絶叫した。
しかし。
その瞬間だった。
吸精鬼の腕がアルの胸を掴む。
紫黒の光。
「――《生命吸収》」
ドクン、と。
アルの身体から何かが抜け落ちた。
「が……ぁ……!」
膝をつく。
視界が霞む。
手足から力が消える。
「アルさん!?」
メイベルが駆け寄る。
アルの肌は急速に青白くなっていた。
生命力を吸われたのだ。
吸精鬼は崩れ落ちながらも笑っていた。
「もう……助からぬ……その男は……干からびて死ぬ……」
次の瞬間。
アルが最後の力で剣を振るった。
首が飛ぶ。
吸精鬼は灰となって崩れ去った。
静寂。
だがアルも倒れる。
「アルさん!!」
メイベルは必死に治癒魔法をかける。
だが回復しない。
「どうして……!」
生命力そのものが足りない。
普通の治癒では戻せない。
ならば。
必要なのは――生命エネルギーの分与。
つまり、自分の生命力を直接渡すしかなかった。
メイベルの頬が赤く染まる。
聖導女にとって、それは極めて親密な行為だった。
鼓動がうるさい。
だが。
彼を失うことの方が、ずっと怖かった。
「ああ……女神よ……お許しください……」
彼女は震える手でアルを抱き寄せた。
華奢な身体を密着させる。
ぬくもり。
男の体温。
メイベルの顔が真っ赤になる。
「わ、私は……聖導女なのに……こんな……」
それでも、離れない。
彼女は聖印の杖を握り、静かに聖句を唱え始めた。
「命の灯火は巡り……魂は寄り添い……慈しみは血肉を越えて繋がる……」
淡い金光が溢れる。
メイベルの生命力が、アルへ流れ込んでいく。
胸が熱い。
身体の奥が痺れる。
密着した感触が、否応なく意識されてしまう。
「んっ……」
小さな吐息が漏れ、メイベルはさらに顔を赤くした。
「アルさんの鼓動……近い……」
彼の腕が、無意識に彼女の背へ回る。
「ひゃ……っ」
心臓が跳ねる。
エナジー交換は男を回復させると同時に激しく興奮させる副作用がある。そこに
鼓動がうるさい。
身体の奥が熱く疼き、視界が白濁していく。
メイベルの生命力が流れ込む感覚は、まるで温かい蜜に浸されるようで――同時に、アルの理性を焼き尽くす猛烈な熱を伴っていた。
吸精鬼の毒と、生命エネルギーの分与が交差し、彼の内側で暴風のように渦巻く。
それは渇望だった。
生への渇望。
そして、目の前の聖なる乙女に対する、どうしようもない雄の欲望。
「くっ……あぁ……!」
アルの腕に力がこもる。
華奢なメイベルの背を、引き寄せるように強く抱きしめた。
「ひゃぅ……っ!? アル、さん……?」
密着した胸の感触。甘い体臭。柔らかい肌。
理性が弾け飛ぶ音がした。
「メイベル……ッ」
掠れた声は、苦悶と欲望に歪んでいた。
「俺は……最低だ……。お前が、助けてくれているのに……」
荒い吐息が彼女の耳元を掠める。
「お前に……欲情している……ッ!」
メイベルの肩がビクリと跳ねた。
瞳が潤み、唇がわなないた。
彼の苦しみが、自分への情欲に起因していると知った瞬間、聖導女としての戒律と、一人の女としての秘めた想いが激突した。
しかし。
「……いいのです」
震える声で、しかしはっきりと彼女は告げた。
「心のままに……むさぼってください」
顔を真っ赤に染めながらも、彼女はアルの胸に顔を埋める。
「覚悟は……できています……っ」
メイベルは震える指で、白い修道服の留め具にかけた。
カチャリ、と金属音が響き、胸元が大きく開かれる。
蝋燭の灯りに照らし出されたのは、吸い付くように白く、ふっくらとした双丘と、その頂に咲く淡い色の蕾だった。
「……ッ」
羞恥に身を焦がしながらも、彼女は目を固く閉じ、アルのハケ口となるべく身を差し出した。
「メイベル……ッ!」
アルの自制が切れた。
荒々しく修道服を肩から剥ぎ取られる。
布擦れの音。
冷たい空気が肌を這う感覚に、メイベルは縮み上がった。
「あぁっ……」
無防備になった白い肌に、アルの灼けた唇が落ちる。
首筋。鎖骨。そして、豊かな膨らみへ。
男に愛撫されることなどなかった肌が、熱を持って疼く。
「んっ……はぁ……あっ……」
アルの舌が、執拗に這い回る。
まるで渇きを癒すように、彼女の体温や香りを貪るように。
柔らかな肉を掌で揉みしだかれ、敏感な蕾を口に含まれると、電流のような快感が背骨を駆け上がった。
「ひゃぅ……そこ、だめ……っ! アルさん……ッ」
聖導女として守り続けた純潔が、今、目の前の男によって無造作に解かれていく。
恥ずかしい。恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
それなのに、身体の芯は溶けるように熱く、アルのなすがままになっている自分がいる。
「あぁ……女神よ……私は……っ」
祈りさえも甘い喘ぎに変わる。
彼の髪を掻き抱きながら、メイベルは必死に声を殺して耐えた。
これが彼を救うことなのだと。これが自分の選んだ道なのだと、自分に言い聞かせながら。
しかし、肌を這う熱い舌の感触と、自身を貪る男の激しい息遣いに、心の奥底で燻っていた恋心がどうしようもなく満たされていくのを止められなかった
アルの乱暴な求愛を受け入れながらも、メイベルの指先は祈りを紡いでいた。
治癒魔法ではない。ただ懸命に女神へ赦しを請う呟きが、熱い吐息と共に途切れがちに零れる。
「……ああ……我らが母なる神よ……我が行いをお赦しください……」
彼女の言葉とは裏腹に、肢体はアルに絡みつき、しっとりと濡れた肌が応えを求めている。
腰紐が解かれると、下着越しに熱く蠢く楔の存在を意識してしまい、メイベルは睫毛を震わせて震えた。
(……私の中に……)
想像しただけで子宮が甘く締め付けられる。恐怖よりも期待が勝っていることに自己嫌悪さえ覚えた。
「……はぁ……っ…アルさん……早く……楽になって……ください……」
聖導女の清廉な声音と媚態が混在する奇妙なコントラストの中で、アルは更に追い詰められていく。
彼女の太腿を押し広げるや否や、薄布一枚隔てただけの秘処に猛る雄槍が押し当てられた。
「ひぅ……っ…ダメ……っ…そのままじゃ……」
制止の声は弱々しく、抵抗もほとんど無い。アルの理性の欠片がそれを理解し、「ごめん」とだけ呟くと一気に布を取り払う。
外気に晒された桃色の粘膜が震え、初めて異性に曝された羞恥でメイベルは全身を紅潮させた。
「あぁぁ……見ちゃイヤ……っ…」
しかし次の瞬間―――ぬぷりという水音と共に侵入してきた灼熱に全てが塗り潰される。
「―――ッ……はぁ……あああ……っ!?」
引き裂かれるような痛み。巨根で強引に貫かれた衝撃。
メイベルは背を弓なりに反らせ、喉をさらして悲鳴を迸らせた。
「痛……いぃ……アル……さ…っ」
涙がぱたぱたと落ちる。愛液が石床を濡らす。
けれど不思議と憎しみは湧かない。これはアルを救うための行為なのだと必死に己に言い聞かせる。
一方でアルもまた限界を迎えていた。
吸精鬼の毒素は未だ体内で暴れ狂い、獣性を煽り続ける。愛する妹を犯している事実を認識しながらも止まれない。
「ごめんな……メイベル……ッ」
荒い息と共に謝罪を繰り返すが動きは一向に緩まず、むしろ激しさを増していく。
「ひぁあっ!? 待って……お願い……そんないきなり……激しくしな……い…でぇ……」
拒絶の言葉と裏腹に膣襞は甘く蠢き、搾乳機のように彼を締め上げてくる。
それが堪らない愉悦となってアルの脳髄を焼くのだ。
パンッと肉同士がぶつかり合い、結合部からは卑猥な音色が奏でられている。
そのたびメイベルは切羽詰まった嬌声をあげて悶え狂った。
やがて何度目かの抽挿の末に到達点が訪れる予感を感じ取り、アルは本能的に腰を打ち付ける速度を上げていく。
「あ゛……っ……もぉダメ……やだぁ……気持ち良すぎてヘンになっちゃ……アルさん……アルぅ……」
蕩けきった表情で縋りつくメイベルに口づけを落とし、そのまま最奥へと注ぎ込む準備をするべく亀頭を子宮口に押しつけるよう固定する。
「んぅ〜~〜!!!」
あまりの質量に怯えながらも健気に受け入れようと必死に力を抜こうとする健気な様子を見せつつも決壊寸前であることは火を見るよりも明らかであった。
そしてついに―――
「出すぞ……全部受け止めてくれ……!」
低く唸るような宣言とともに大量のスペルマが放出された。
ドビュッドビュッドビュッ灼熱の奔流が容赦なく胎内を蹂躙し始める!
絶叫する余裕すら与えられないまま連続絶頂を迎えてしまう。
「あああ、たしゅけて、、とぶ、ッ❤️とんじゃ、うう❤️犯されて、イくッ♡ イく、 」
股間からは夥しい量の液体が溢れている。間違いなく深いところまで届いているのであろうことは明白だった。
アルの熱い奔流を受け止めながら、メイベルは恍惚に震えていた。胎内で脈打つ存在が愛おしくて堪らない。聖導女にあるまじき背徳感に苛まれながらも幸福感が全身を満たしていく。
「アルさん……あったかい……いっぱい出てる……嬉しい……」
熱を持った身体が重なり合い互いの存在を確かめるように深く抱擁を交わす。
お互いの鼓動を感じ合いつつ幸せな気分を味わっていたのも束の間だったアルの陰茎が再び硬度を取り戻した。
「ま……また大きくなってます……」
驚愕するメイベルに対して申し訳なさそうに微笑みかけてくる彼を見て一層愛しさを募らせてしまった為か自然と言葉が漏れ出してしまう
「続けて……欲しいですか……?」
恥ずかしげに問いかける姿を見て思わず興奮
「続けて……欲しいですか……?」
恥ずかしげに問いかけるその姿に、アルの理性は再び沸点を超えた。
「ああ……頼む……」
掠れた声で答えると同時、彼はメイベルの華奢な身体を反転させた。
「ひゃぅっ!?」
不意の動きにバランスを崩し、彼女は四つん這いの姿勢を強いられる。
石床の冷たさが掌と膝に伝わるが、それよりも背後に控える男の熱気に肌が粟立った。
白く滑らかな背中が、薄暗い霊廟の中で妖しく浮かび上がる。
聖職者の証である修道服は腰のあたりで絡まり、意味を成さない布切れと化している。
ふるりと震える腰のラインは、まるで雄を誘うようにくびれ、豊かな双丘を強調していた。
「メイベル……」
背後から耳元に熱い吐息がかかる。
「んっ……」
首筋に唇が触れ、ぞくりとした快感が背骨を駆け下りた。
アルの大きな手が腰を掴む。
その力強さに、女としての本能が疼く。
「アルさん……あぁ……」
抗うことなど考えられない。
いや、抗いたいとも思わなかった。
彼を救えるなら、自分はどうなってもいい。
そう思っていたはずなのに、背後から覆い被される姿勢のなんという無防備さだろう。
視界には冷たい石壁しか映らず、背後の男の気配だけが支配的になる。
まるで、獲物を狙う獣の前に無力な小動物になったかのような、絶対的な従属感。
「挿れるぞ……」
「はい……どうぞ……っ」
許しの言葉と共に、ぬちゃりとした水音が響いた。
まだ先ほどの精液が残る秘裂に、再び熱い楔が押し入る。
「あぐっ……! んんぅ……!」
前よりも深く、容赦なく奥まで貫かれた。
後背位特有の角度で、最も敏感な場所を的確に擦り上げられる。
「ひぁっ! そこ、だめぇ……ッ! 深い……アルさんが奥まで来てる……ッ」
背中を反らし、シーツ代わりの修道服を握りしめる。
アルは構わず腰を打ち付けた。
パンッ! パンッ! パンッ!
肉と肉がぶつかり合う乾いた音が、狭い霊廟に反響する。
「はぁっ! あぁっ! あんっ! んんっ!」
メイベルの口から、意味をなさない嬌声が溢れ出した。
前からの愛撫とは違い、背後から犯される行為はより一層被虐的な快感をもたらした。
自分の意志で動くことも許されず、ただ彼の動きに合わせて揺さぶられるだけ。
豊かな乳房が揺れ、硬く尖った乳首が擦れるたびに甘い疼きが走る。
「くっ……相変わらずきついな……ッ」
アルの苦悶混じりの声が聞こえる。
彼もまた限界に近いのだろう。
毒素と興奮で目が充血し、荒い息遣いが背中にかかる。
「アルさん……もっと……もっと下さい……っ」
メイベルは自ら腰を振った。
彼を早く楽にさせてあげたい。
その一心だった。
しかし同時に、自分の奥底に眠っていた淫らな本性が目を覚ましつつあることにも気づいていた。
聖導女としての自分が崩れ去り、ただ一人の男に溺れる女に成り下がっていく。
「メイベル……!」
彼の動きがさらに激しくなる。
子宮口を小突くような激しい抽挿に、メイベルは白濁した思考の中でただ叫んだ。
「あぁっ! イきますっ! またイっちゃ……ッ! アルさん……愛してます……っ!」
最後の告白と共に、二人は果てた。
ドクンッ! ドクンッ! という脈動と共に、再び熱い飛沫が子宮を満たす。
「あぁぁぁ……♡」
メイベルは目を見開き、全身を痙攣させて絶頂の波に飲み込まれていった。
事後。
霊廟には荒い呼吸音だけが響いていた。
アルはメイベルの背中に覆い被さったまま、力なく動かない。
ようやく毒素が収まったのか、彼の意識は混濁していた。
「アルさん……?」
メイベルは恐る恐る声をかけた。
彼は答えない。ただ規則正しい寝息を立てているだけだった。
安堵の吐息が漏れる。
生きている。彼は助かったのだ。
だが同時に、身体を満たした背徳感が押し寄せてきた。
彼を救うために選んだ道だったが、結果として自分は彼の「ハケ口」として犯され、果てたのだ。
その事実に胸が締め付けられる。
けれど、不思議と後悔はなかった。
彼が生きていてくれるなら、それでよかった。
「……ごめんなさい、ミレーヌさん」
彼の特別な女性に心の中で謝る。
そして自分の不貞さを恥じた。
身体の奥にはまだ彼の熱が残っているというのに、少しだけ幸福を感じている自分がいたからだ。
メイベルは震える手で散らばった修道服を集めると、汚れた身体を拭い、彼に毛布を掛けた。
そして、冷たい石壁に寄り添い、彼の目覚めを待つことにした。
夜はまだ長い。
この先、彼とどう向き合えばいいのかわからない。
それでも今は、彼の無事な寝顔を見つめるだけでよかった。
⭐️救出
地下迷宮からの脱出は、奇跡的に迅速だった。
転移罠の起動を感知したリュミエールとミレーヌが、狂ったように魔法陣の解析と捜索を続けてくれたのだ。
崩落の危険がある中、数時間の探索を経て見つけた霊廟で、アルは昏々と眠り、メイベルは彼に寄り添うように座っていた。
仲間との合流を果たした時、ミレーヌは真っ先にアルのもとへ駆け寄った。
「アルッ! 無事なの!?」
雪族特有の冷たい青い瞳が潤み、彼の頬に手を添える。アルはまだ意識が混濁していたが、ミレーヌの声に微かに眉を動かした。
その光景を、メイベルは少し後ろで俯きながら見ていた。
Roseliaタウンに帰還したのは、夜明けの薄暗い時間帯だった。
アルはすぐに宿屋の個室へ運ばれ、リュミエールが解毒と治療を施した。命に別状はない。あとは休息を取れば回復するだろうという言葉に、メイベルは安堵のあまりその場に崩れ落ちそうになった。
だが、その安堵も束の間だった。
「メイベル・リングベル」
冷徹な声が、廊下の向こうから響いた。
ミレーヌだ。
雪族の白銀の髪が朝靄の中で揺れ、氷のように冷たい瞳がメイベルを射抜いていた。
「……今、時間あるわね」
否定を許さない圧力があった。
「……はい」とメイベルは小さく答え、彼女の後に従った。
二人が向かったのは、ギルドの裏手にある無人の資料室だった。
朝の冷気が充満する石造りの部屋。
ミレーヌは部屋に入るなり振り返り、靜かに、しかし刃物のように鋭く言い放った。
「説明しなさい」
その声は低く、抑圧された激情を孕んでいた。
「アルに何をしたの? あの霊廟で、何があったの?」
メイベルの心臓が跳ねた。
唇を震わせ、言葉を探す。
「……アルさんは、吸精鬼の……女王種の《生命吸収》を受けて……生命力を、根こそぎ持って行かれそうになっていたんです」
「それはリュミエールから聞いたわ。私が聞いているのはそこじゃない」
ミレーヌは一歩踏み出した。
「普通の治癒魔法では効かなかった。それなのに、アルの魔力残渣は……あなたのものと、強烈に混ざり合っていたわ。それも、ただの共有じゃない。肉体的な、極めて濃密な交わりの痕跡が残っていた」
雪族の魔法剣士は、対象の魔力を視ることに長けている。
メイベルは顔色を失った。
「どうやって彼を助けたのか、聞いているのよ。聖導女」
最後の四文字が、鞭のようにメイベルの心を打った。
「……生命力の、分与を……」
絞り出すような声で、メイベルは告白した。
「私の……生命エネルギーを、直接、彼に流し込むしか……助ける方法がなかったんです」
ミレーヌの瞳孔が収縮した。
「直接……? どうやって? ただ手を握ったり、祈ったりしただけじゃ、そんなに濃密な反応は残らないわよ」
「っ……それは……!」
メイベルはスカートの裾を握りしめた。
聖導女としてのプライド。守り続けた純潔。そして、彼を救えたという確信。
その全てが喉元で交錯し、言葉を詰まらせる。
「肌を、重ねて……! 体を、密着させて……渡さないと、間に合わなかったんです……!」
涙声になりながら、メイベルは必死に訴えた。
「不可抗力だったんです……! あそこで私がそうしなかったら、アルさんは死んでいました! 彼を助けたくて……他に方法がなくて……ッ」
「不可抗力?」
ミレーヌは鼻で笑った。
その笑みは、痛々しいほどに歪んでいた。
「あんた、それを言うの? あんたはずっと、アルを見てたじゃない。冒険者通りで、酒場で、いつもあんたの視線が彼を追っていたのを、私が気づかないとでも思った?」
「……っ」
「私には入り込めない時間があるって、諦めていたくせに。この機会に、あんたの下心を押し付けただけじゃないの!? 『彼を救うため』なんて大義名分を盾にして、自分の欲を満たしただけの卑しい女でしょう!?」
「違います……! そんなつもりじゃ……!」
「じゃあ何よ!」
ミレーヌは声を張り上げた。普段の冷靜さは崩壊し、嫉妬の炎が噴き出していた。
「何であんたが彼に触れるのよ! 何であんたが彼の中に刻まれるのよ! 彼は私の……長年一緒に旅をしてきた、私の……ッ!」
ミレーヌの言葉が詰まる。
彼女とて、アルを正式な恋人として束縛していたわけではない。共に戦い、共に過ごした時間は誰よりも長いが、言葉にして確かめたことはなかった。だからこそ、不意に割り込んできた聖導女への嫉妬が自分を狂わせていることが、彼女自身一番わかっていた。
「ミレーヌさん……ごめんなさい……ごめんなさい……ッ」
メイベルは涙を流しながら、何度も頭を下げた。
「彼女に謝られる筋合いはないわ」と言われそうだとわかっていた。自分が間違っているとわかっていた。それでも、謝らずにはいられなかった。
「私だって……こんなこと、したくなかった。でも、彼が死ぬのは……もっと嫌だったんです……ッ!」
「……ふざけないで」
ミレーヌの目から涙がこぼれた。
「謝罪で済むと思わないで。どれだけ謝っても、あんたが彼と交わった事実は消えないのよ」
バチンッ!!
乾いた音が、冷たい資料室に響いた。
ミレーヌの右手が振り切られ、メイベルの左頬が赤く染まる。
メイベルはよろめきながらも、決して目を逸らさなかった。
「……っ」
頬の熱痛に涙がにじむ。
しかし、その瞳の奥には、聖導女としての慈愛とは全く異なる、女としての強い光が宿っていた。
「……私を、軽蔑しても構いません」
メイベルは震える声で、しかしはっきりと言った。
「でも、彼を救えたことだけは……後悔していません」
「言わせておけば……!」
ミレーヌは再び手を振り上げた。
だが、メイベルはその手を避けなかった。ただ、真っ直ぐにミレーヌを見つめ返す。
「もし、また彼があんな目に遭ったら……私は、また同じ道を選びます。あなたに罵られようが、嫌われようが、彼が生きてくれるなら……私は、彼を救います」
「っ……!!」
ミレーヌの息が止まった。
目の前の聖導女は、今やただの女だった。
自分と同じように、一人の男を愛してやまない、ただの女。
妥協も諦念もない、純粋で、だからこそ恐ろしいほどの執着。
二人の視線が激突する。
雪族の青い瞳と、人間の琥珀色の瞳。
朝靄の差し込む部屋の中、女同士の火花が散っていた。
愛する男を守った女と、男に守られた自分に遅れをとった女。
謝罪と嫉妬、慈愛と独占欲。
どちらが正しくて、どちらが間違っているのか。
答えの出ない問いが、冷たい沈黙の中で反響していた。
「……二度と」
ミレーヌは絞り出すように言った。
「二度も、あんたに彼を渡さない。絶対に」
「……ええ。覚悟は、できています」
メイベルは赤くなった頬を押さえず、靜かに、しかし力強く答えた。
朝日が石畳を照らし始める。
Roseliaタウンが動き出す喧騒が、壁の向こうから微かに聞こえてきた。
だが、この部屋の中の冷たい空気だけは、まだ氷のように張り詰めたまま、溶ける気配はなかった。