彼女の部屋に着くと、僕は早速カーテンを開けた。今日もあいつが見ているのなら、こうして僕の存在を示すことが重要なファクターになるかもしれない。雨に濡れた身体で、吹き抜ける夜風が冷たかったけれど、今の僕にはどうでも良いことだった。
「寒いでしょ?シャワー浴びてくる?」
彼女のうなじへと滴る水滴は僕の中にあるものを掻き立てるには充分な程に魅力的だった。 だからこそ、今から情事を行うような口調に強く首を振った。
「いや、大丈夫だ。すぐに乾くよ」
「そう?なら、あたしは浴びてくる」
バスタオルを肩に掛けて、彼女はバスルームに消え、その数分後に聞こえてきたシャワーの音を、なんだか聞いたらいけないような気がして、耳を塞ぐ意味で、僕は昨日、彼女から薦められた小説を手に取った。
「未成年」なんて彼女が持つには、随分と皮肉なタイトルだ。
内容は、平凡な少年と野球少年が、障害者の少年と出会う所から始まり、不良に絡まれているところを助けたヤクザが主人公の元同級生だった、なんていうストーリーだ。そこから様々な展開があるのだろうが、そこまで読んだ所で、彼女がシャワーを終え、バスルームから出てきた。下着をつけていないようで、乳首がタンクトップの先を尖らせていた。
いくらなんでも、無警戒すぎるんじゃないだろうか。
「あ、その本」
彼女と目を合わせ辛かった僕は、手にしていた本へ視線を落とした。
「ごめん、勝手に……」
「ううん、良いよ。気に入ってくれた?」
無遠慮に歩いてくる。今になって章一の言葉を、僕は頭の中で反芻していた。
そのせいだろうか、昨日の彼女よりも、今の彼女のほうが、より僕を魅了してきていると思えた。彼女にその気がない所か、僕を信頼してくれているからこその格好なんだ。それを裏切る訳にはいかない。だが、警戒心すらない彼女は、本を覗きこみ、風呂上がりで濡れた髪の匂いを近付けてくる。
桜のような馥郁たる香りが鼻腔を刺激してきた。言うなれば、隙だらけ。だから、ストーカーなんかに狙われるんだ。
一つ教えてやろうか、無防備すぎるというのがどういう事態を招くのか。
言い繕うように胸中で呟いた僕は、彼女を抱き締めると、そのままベッドへ押し倒した。スプリングが縮む音が、生々しさをもって僕の耳に侵入する。
「何?どうしたの?」
彼女を抱きしめた余韻が残る腕が、気持ちよかった。僕の下にいる彼女が、戸惑ったように瞬きを繰り返していた。だが、すぐに意図を察したのか、唇を吊り上げて言った。
「昨日と言ってることが違うんじゃない?レイプは殺人……じゃなかったかな?」
「……昨夜、君は僕に抱かれたかったんだろ。だからこれはレイプじゃない。それに、友達に心配をかける訳にはいかないからね」
「心配?ああ、昨日の人?女と一晩いて何もしないなんておかしいとか言われたの?」
「その通りだ。それに、この状況、誘ってきたのは君だ」
そう言って、胸のしこりを取るように、彼女の胸をきつく揉み始めた。徐々に柔らかさを取り戻していくのと比例するように、ペニスにドクドクと血が集まっていくのがわかる。
本気になるな。これは警告だ。彼女に教えてやって警戒心をださせてやるためにやることなんだ。
僕は、胸にある手を止めずに、彼女の首筋に口をゆっくりと下ろしていき、同時に残った腕を下半身へと伸ばしていった。
眠いねえ……