こうやってみると彼女は白磁のように綺麗な肌をしていた。胸は僕の指を、なんら抵抗もせずに沈めていき、戻す時もふくよかに膨らんでいく。触り心地が良い身体に、僕は理性を保てるのか不安になってきた。すでに、リミッターてやつが外れてしまいそうだ。
彼女の首筋へ近付くほど、あの香りが強くなっていく。荒くなる呼吸は興奮ではなく、その香りを嗅がないために鼻を塞ごうとしているからだ。
僕は太股に股間を擦り付けるように腰を落とす。彼女が僅かに震えた。それが更に僕を焚き付けた。
もう駄目だった。きっと、僕は戻れない。昨日、あれほど彼女に対して疑惧していたというのに、ここまできただけで僕の中にある靄は、どこか彼方へ飛ばされているみたいだった。
唇が彼女の首筋へ触れる寸前、彼女は固くなった僕のペニスをズボン越しに触れた。
優しく包むような感触、僕の身体を電流が流れた。そして、布越しに伝わる指先の感触で、腰を痙攣させている僕に彼女が耳元で囁いた。
「あたしは、このセックスを客観的にしか見れないけど、それでも良い?」
彼女が吐いた音吐は、氷柱を腹に突き刺すような実感出来ない痛みと冷たさで、僕を巡っていた快感の波を、巨大な冷蔵庫に閉じ込められたような寒さに塗り替えた。堪らず、ベッドから飛び退いた僕を、変わらない笑顔で見下ろしていた彼女が言った。
「どうしたの?何か変な所があった?」
覚えがないだろうか。突発的に、予想だにしない時に、いきまり冷水を掛けられた時に息が詰まるように止まる。僕は今、あの状態だった。うまく呼吸が出来ない。
客観的なセックス、それは死姦だ。僕の中では殺人のあとに行われるセックスと同義だ。彼女は行為の最中、そこにはいないと僕にそう告げてきた。
変なんてものじゃない。彼女の首を締め、緩くなった膣に自身を出し入れする
様が頭に浮かんだ僕は、胃からせりあがってくるものを堪えて呟くように声を振り絞った。
「……危機感が足りない君に教えてやろうかと……本気じゃなかったんだ」
「本気じゃないのに、こんな事しちゃったら駄目だよ」
「本当にごめん……今日は帰るよ」
「傘、かそうか?危ないよ?」
「いや……少し頭を冷やしたい……」
僕は逃げるように大股で彼女の部屋から飛び出した。危ないのは僕の思考の方だった。ドロップ・アウト組みの中でも、彼女は極めて特殊なんだと理解した。
彼女は青春が出来なかったのではなく、無自覚に付かず離れずを繰り返し、その相手を悉く陥れていたのかもしれない。誰かを惹き付ける力があるが、壊してしまうのも本人となれば、人が距離をとるのも頷ける。他者に対して関心がなかった僕がこうして彼女に『会いに来てしまっている』事実がなによりの証拠に思えた。
僕はあの瞬間、いつか彼女に大切な何かを壊されてしまうんじゃないか、という不確かな憂苦に苛まれていたのだが、それでも、明日、僕は彼女に会ってしまうのだろう。
股間で感じた彼女の温もりは、確かに心地良かったのだから。
この時には、僕はもう堕ちてしまっていたのかもしれない。それは、まさしく彼女を狙うストーカーそのもののように。
眠い……誤字脱字あったら申し訳ありませんが教えてください……w