なんだか、頭の痛くなる話だ。福原の一物が本当に頭を垂れる筈もない。亀頭辺りだけを注視でもしているのだろうか。男としても、それは、なんだか気恥ずかしい。下がった両目の先には、彼女の股間があり、更に僕の羞恥を煽ってくる。考えてみれば、僕が彼女に触れていない場所はそこだけだ。まるで、秘境の最奥にある宝石を守るような彼女の立姿が、淡い月明かりも手伝ってか、とても妖艶な美を携えているみたいだった。
「福原君は、きっとアタシに誰かを重ねてる。それが、アニメのキャラなのか、現実の誰かなのかは分からないけどね」
ふっ、と吸い込まれそうになっていた僕は、彼女の声に顔をあげた。今の話しは頭に入っていない。間抜けに相槌をすれば、お姫様は妖美に右手の親指を唇で弾ませた。
「ズボンの中でこんばんわ、だね」
自分でも、気づかなかった股間の膨らみを女の子に指摘されるのは、不思議と悪い気はしないけれど、やっぱり、少し腰を引いてしまう。仕方ないじゃないか、僕はこれでも健全な男子なのだから、触れた柔肌が、指に吸い付く感触を思い出す時だってある。それが、責任がない男にとっての正しいセックスの形だ。彼女は、ステップ一つで僕との距離を詰めると、僕の股間を中指で弾いて踵を返す。
「そろそろ、行こっか。福原君を待たせるのも悪いしね」
世界一の電気街の表通りには、昼間のような明るさを演出する街灯が並んでいる。しかし、彼女は、光を避けるみたいにわざと裏通りを歩いているような気がした。股間の先に残る小さな刺激こそが、その答えなのか、などと聞けはしない僕は、彼女の背中を追い掛けた。横文字混じりの汚いセックスなんて、勿論、僕も求めちゃいない。
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福原の自宅は、セキュリティーばっちりの一等マンションだった。外見は西洋混じりのゴシック調で窓が大きく、ホールには据えられたボタン式のパネルの先に扉がある。最初の関門を抜けて、ようやくエレベーターに乗れる流れだ。僕が、携帯で福原の連絡をすれば、すぐさま重い音をたてて、両側にスライドしていく。機械だって休みたい時くらいあるのかもしれない、そんな軽口を叩いた彼女が、先にエレベーターへ足を入れた。
六階のボタンを押すのは僕の役目なのか、とボヤけば、彼女は当然のように頷く。まるで、彼女の付き人みたいだ。それでも僕は、彼女よりも先にエレベーターを降りた。その理由は、すぐにでも分かってもらえると思う。