次の日、僕は秋葉原駅にいた。やっぱりこの街は雰囲気が違う。なんというか異常なんだ。電気街口から出た正面にはUDXという巨大なビルが建っているのだが、その壁面に設置された巨大スクリーンに映し出されているのは、企業の宣伝映像なんてものではない。アニメだ。スクリーン一杯に踊っているのはアイドル声優と呼ばれる女達だ。アイドルなのか声優なのかはっきりしてほしい。
そして、僕の傍を通りすぎて行く男達も正直言ってよく分からない。
アニメのキャラがデカデカとプリントされたシャツを恥ずかし気もなく着て、街を闊歩しているのだ。何歳ですか、と尋ねてしまいそうだ。加えて、必ずと言っていいほどに、こちらを一瞥してくるのは一体どういう事だろうか。
キャラがプリントされたシャツじゃなければいけないのだろうか。だとすれば、やっぱり僕の日常とはかけ離れた街だった。
どうしよう、すごく帰りたい。
右手に見えるガンダムカフェでもいい、とにかく人目につきたくない。そう思い、僕が足を伸ばそうとした時、不意に声を掛けられた。
「悪い、待ったか?」
章一だ。僕は、遅い、と悪態をついてみせる。やはり、悪びれた様子もない。
「君がいないと場所が分からないんだ。早く案内してくれよ、正直、もう帰りたい気分なんだから」
「まあ、そういうなよ!すぐだからさ」
僕は章一の背中に着いていく。UDX前のエスカレーターに乗り、歩行者デッキを横切る。その際に左手のビルの隙間から垣間見えたのは、やはりアニメの広告だった。どこもかしこもアニメアニメ、本当に帰りたい。
マクドナルドの前を通り抜ける直前に僕は訊いた。
「その場所って遠いの?」
「ん?そんな事ないぜ?実際、秋葉原はそんなに広くないしな。あと5分くらいか」
ケラケラと章一は愉快そうに笑った。居心地が悪くて死にそうだ。
とにかく行くなら早く行こうと章一の背中を押しながら到着したのは秋葉原ドンキホーテの真向かいにある雑居ビルだった。大通りに出ていた女の子が奇抜な格好で(メイドというのが嫌だ)チラシを配っているのだ。嫌でも目に入る。
章一が話し掛けると女の子は一礼していった。
「お疲れ様です。ご主人様」
※※※ ※※※
気分は最悪だった。あの後、チラシを配っていた女の子が肩に掛けたインカムで店内に連絡をとりながら、案内されたのはビルの入口にあたる箇所に設置された古いエレベーターだ。短い会話を章一は交わしていたが、僕の心中では初めてソープランドに行った時に抱いた感情と、全く同じ気持ちが広がっていた。
多分、メイド喫茶行った事ある人は同じ気持ちになったんじゃないかなあ?
俺、完全にそうだったからなw