堪能しすぎて、すっかり出来上がった章一に肩をかしながら 僕らが店を出たのは、すっかり陽が傾いている時間だった。
やっぱり夕方の秋葉原は人が多く、中には観光客であろう外国人も見掛ける。あの後、彼女は席を立つ際に、僕へ名刺を差し出してきた。アスカという名前と、店のオリジナルキャラと紹介された大きな瞳が特徴の女の子が猫耳メイド姿で描かれている事以外は、サラリーマンなんかも使っていそうな紙と変わらないだろう。
僕にとって重要なのは、その裏に書かれた文章だ。
「さっきの話し、もっと深く知りたければ、20時にこの公園まで」
下には御丁寧に地図まで描いてある。この通りにいくならば、ビルを出て右に直進するだけで指定された公園まで行けるみたいだ。
咄嗟に受けとったプレゼント箱の中で、時限式の爆弾が時を刻む音を聞いた場合、こんな気持ちになるのかもしれない。それほどの不安に駆られているのは、多分、彼女のコロコロと代わっていく表情が原因だろう。
眉が読めないという言葉があるけれど、それはまさしく彼女の為に作られたんじゃないかとすら思え、僕は生まれて初めて、女性に対して恐怖というものを感じた。
背後でエレベーターが閉じ、僕はそこで一気に外の空気を肺一杯に吸い込む。
ようやく、長い生き地獄から解放された気分だ。
僕は、メインストリートを歩くサラリーマン達を横目に、隣にある喫煙所へ入ると、二階へ登り、奥の背もたれがあるシートに章一を座らせ、カップ式の自販機でコーヒーを二つ買った。
一つを章一に手渡し、僕も一口飲んだ。ビールで冷えた舌がほどよい温かさを取戻していく。
「……さて、どうするかな」
手の中にある名刺を見る。もしも、僕が行かなければ彼女はいつまでも待つことになるのだろうか。今は春になったばかりで凍死の心配はないだろうけど、それでもやっぱり、放置してしまえば後味が悪いのは間違いない。
別にもう二度と会うことはないのだから、気にすることでもないのだろうけど、どうしても彼女の表情が頭から離れないのも事実だ。あの冷え切った顔に、僕は悪寒すら覚えそうになっていた。そうかと思えば、笑顔になる。本当に掴み所のない性格をしているようだ。
僕は、章一の隣に腰を下ろし煙草に火を点けた。今は考えても仕方が無い。当面の問題はこの酔っ払いをどうやって家まで帰すかだけに全力を注ごう。それからでも遅くはない。まだ、時間はたっぷりと残っている。
煙草の薄い煙を目で追いながら、章一の肩を揺すった。
あの……素で更新してるって勘違いしてました……
順番間違えてますねw