章一の自宅は月島駅から、もんじゃ街の一帯を抜け、佃大橋を渡った先にある明石町に一人暮らし用のアパートを借りている。
僕と同じワンルームだが、こちらの方が一畳分は広い。家賃はあまり変わらないのに、何故だろう。日当たりも抜群。僕は、章一の尻ポケットから鍵を抜き、部屋に入り、ベッドに放った。
秋葉原の喫煙所から、ホーム、電車内、月島駅、約一時間近く、章一に肩を貸していたのだから、僕の腕はとっくに限界を迎えていた。もしも、駅にエレベーターが導入されていなければ、投げ出していただろう。
章一の部屋にある雑誌や漫画は、僕の趣味とは違い、格闘技に関するものや、女性の裸が掲載されている系統が多く、どうにも暇を持て余してしまう。どうしようかと手持ちぶたさになっていた僕の後ろで、少し身動ぎした章一は、うっすらと焦点が定まっていない目を開けた。
「酔いは覚めた?」
「いや、無理……多分、明日まで無理……」
「だろうね、見たらわかる」
キッチンでコップに水を汲み、章一に渡す。一口で飲み干すと枕に頭を沈めた。
「……ああ、頭いてえ」
「馬鹿みたいに呑むからだろ。しばらくは横になってれば良い、僕は帰るけどね」
夕陽が章一の部屋を照らしだした。カーテンを締めている最中、章一が苦しそうに言った。
「お前、名刺もらってたろ?」
「見てたんだ。君の分も貰ったから明日にでも渡すよ」
「ああ、悪いな。ありがとう」
それっきり、章一は静かな寝息をたて始めた。マイペースな奴だが、何故かソリが合うこの友人は、きっと明日の朝に自分の財布を開き愕然とするのだろう。高くついた金額に見合うだけの経験は出来たのだろうか。
僕は部屋を出ると、紅い光を反射させる隅田川に架かる佃大橋の欄干に凭れて煙草をくわえた。
日本の首都、大都会東京、日本中の若者が集まる街、ファッションの最前線、日本最大歓楽街、世界一の電気街、さまざまな呼び名があるこの土地で、僕は道を踏み外した。
いわゆるドロップアウト組みだ。
夢を抱いて上京してきた人に比べても、生まれた時から東京にいる僕は、正直、救いようがない気がする。だって、そういう人達は、そこに辿り着くまでに努力ってやつをしてきたのだから。
僕みたいに、何も考えずに大学に行くのとは訳が違う。
彼女から言われた一言で、もっとも印象に残ったのは、つまらない人生だと決めつけている、この言葉だ。あの時の僕は、彼女が発する雰囲気や口調に呑まれてしまっていた。離れてしまえば、急に悔しさが沸き上がってくる。
出会って間もない彼女に、どうしてそこまで見抜かれなければいけないんだ。
僕は、煙草を乱暴に地面に叩きつけ、月島駅へ歩き出す。秋葉原までは乗り換えて390円、僅か25分程の距離しかない。それだけで彼女に対し、この憤りをぶつけれるのなら安いものだ。
日が傾き、辺りが暗くなる時間、午後18時55分、僕は指定された公園に到着した。
なぜだ!行のはじめのスペースが空けれない!!
まさか呪いか!?w