つよつよオレっ娘格闘家、黄金獅子ライカちゃん、やべぇ巨女に目をつけられて愛玩犬に堕ちる。~イチャラブエッチを添えて~ 作:嫌われた勘のいいガキ
大陸の端、雲を突く霊峰で「拳聖」に師事したライカが、師匠から「もはや教えることは何もない。下界で己の型を磨け」とお墨付きを貰い、外界へ降り立ち旅を続けて一年。
ついに大陸最大の都市へとたどり着いた彼女の目的は、この広大な世界で己の拳がどこまで通用するのかを確かめることだった。
「――俺は黄金獅子のライカだッ! もっと骨のある奴はいねえのかよ!」
ライカの咆哮が、ギルドの訓練場に木霊する。
『黄金獅子』その二つ名は、彼女がこの一年で積み上げてきた圧倒的な勝利の軌跡そのものだった。 行く先々の街で名だたる手練れを叩き伏せ、そのたびに溢れ出す目も眩むような黄金の闘気。その苛烈な戦い様を目撃した者たちが、畏怖と敬意を込めていつしかそう呼ぶようになっていた。
今やライカにとって、その名は己の最強を証明する唯一無二のブランドであり、何にも代えがたい誇りとなっていたのだ。ライカの実力は、冒険者ランクで言えば既にAランクの中位以上に相当する。純粋な身体能力に、師直伝の闘気を上乗せした一撃は、鋼の鎧さえ紙細工のように引き裂くほどだ。
この街へやって来る以前から、ライカは旅先で数多の道場破りを繰り返してきたが、いまだ彼女の肌をかすめる者さえ現れない。負けを知らぬまま積み上げられた勝利は、彼女の不敵な自信を「増長」という名の傲慢さへと変質させていた。
「⋯⋯信じられん、あの小娘。街でも五指に入る重戦士を、一撃か」
「ああ。だが、少し調子に乗りすぎだ。この街には『アレ』がいるってのに⋯⋯」
観衆の戦慄と呆れを含んだ視線は、ライカにとっては称賛の勲章でしかなかった。短く刈り込んだ金髪を乱暴に掻き上げ、中性的な貌に凶悪な笑みを浮かべる。
「あーあ、期待外れだ。でっけぇ街の最高戦力ってのも、結局は型に嵌まったお利口さんばっかじゃねえか。⋯⋯おい、ギルドで一番強いのはどいつだよ? 俺がそいつをぶっ倒して、この街で一番強いことを証明してやる!」
自分が「最強」の階段を駆け上がっている。
その確信に酔いしれていたライカは群衆に向けて声を張り上げ、視線を一巡させようとした瞬間――背後から近づく圧倒的な存在感に全身の産毛が逆立った。
訓練場の入り口から流れ込んできたのは、冷気でも熱気でもない。「死」そのものが服を着て歩いてきたかのような、重圧感(プレッシャー)。
その巨躯が一歩踏み出すたび、甘く濃密な――嗅いだことのない蜜のような香りが、訓練場の空気を塗り替えるように広がっていった。
ライカは無意識に鼻をひくつかせた。瞬間、脳の奥がぼうっと霞み、膝の裏が理由もなく熱を帯び、下腹部がじわりと疼く。⋯⋯なんだ、これは。武者震いか? いや、違う。もっと内側から蕩けるような、得体の知れない感覚。
ライカはそれを「強敵への興奮」だと無理やり解釈し、奥歯を噛み締めて振り払った。
「⋯⋯あら。随分と騒がしい仔犬ね。噂を聞いて来てみれば、随分と活きのいいのが吠えているじゃない?」
その声が響いた瞬間、喧騒に包まれていた場内は一瞬で静まり返った。
ライカの黄金の闘気が、本能的な防衛反応として最大出力まで膨れ上がる。彼女は喉を鳴らし入り口を睨みつけた。
ライカは息を呑む。
そこにいたのは、燃えるような紅い長髪をなびかせた、二メートルを超える巨躯の女だった。
額からは漆黒の角が一角、天を突くように突き出している。
鬼人の強靭な骨格を受け継ぎながらも、その肉体はサキュバスの血が混ざり合っているせいか、暴力的なまでの色香を放っていた。はち切れんばかりの爆乳、引き締まったウエスト、そして丸太のように太く、それでいてしなやかな脚。
彼女が歩を進めるたび、石畳がミシリと呻きを上げるかのごとく、その周辺が歪んで見える。
「な⋯⋯なんだ、アンタ⋯⋯ッ!?」
ライカは無意識に一歩、後ずさっていた。
闘気を最大まで高めているというのに、目の前の女から放たれる「密度」の違う魔力に、己の黄金が急速に色褪せていくのを感じる。
「Sランクのバルバラ様だ!」
「『紅蓮』のバルバラ様がおいでなさったぞ」
「聖騎士エルザに大魔導師ミレーヌまで⋯⋯」
「⋯⋯おい、誰か止めてやれよ」
周囲の冒険者たちが青ざめる中、ライカだけが怪訝に眉をひそめた。山育ちの彼女は、その名声を知らない。だが、本能が強烈な警鐘を鳴らしていた。
(聖騎士? 大魔導師だと? ⋯⋯なんだ、あの目は)
バルバラの背後に控える女たち。
聖騎士と呼ばれた女は、清廉な白銀の鎧を纏っているが、その首元には似つかわしくない無骨な革の首輪(チョーカー)が巻かれている。その瞳は虚ろで、主人の背中を陶酔しきった熱視線で見つめていた。
魔導師の女もまた、バルバラが動くたびに鼻をひくつかせ、主人の残り香を貪るような異常な仕草を見せている。
まるで魂を抜かれ、理性すら失った忠犬そのものだ。ライカは本能的な嫌悪感とともに、女たちの異常性に目を見張った。
「⋯⋯!」
バルバラと呼ばれた巨女は、いつのまにかライカの目の前に居た。さっきまで遠くにいたはずなのに、少し目をそらしただけで距離を詰められた――思わず気圧されそうになったライカは気取られぬよう力強く睨みつけようとする。
身長165センチのライカが視線を上げるだけでは足りない。顎を限界まで反らせてようやく、その紅い瞳と目が合った。
彼女の足元にいるだけで、巨大な岩陰に飲み込まれたような寒気を感じる。まるで子供と大人、あるいは捕食者と獲物のような圧倒的な生物としての格差。
「貴女、いい身体しているわね。⋯⋯牙はまだ生え揃っていないけれど、その毛並みは嫌いじゃないわ」
バルバラは、ライカの全身を値を踏むようにジロリと舐め回すと、背後の仲間に向かって妖艶に微笑んだ。
「⋯⋯ふふ。いいわね、その真っ直ぐな瞳。絶望で曇らせた時、どんな美しい色になるかしら。その高慢な魂を私の色に染め上げるのが楽しみだわ⋯⋯エルザ、ミレーヌ。新しい『家族』ができそうよ」
「はい、バルバラ様」
背後の女たちが、うっとりとした声で揃って返事をする。その異様な統率と不気味さに、ライカの背筋が粟立った。
「だ、誰が家族だ! 訳の分からねぇこと言ってんじゃねえ! 俺は、この街で一番強い奴を引きずり下ろすためにやってきたんだ。⋯⋯アンタがそうってんなら好都合、今すぐここで、そのデカい図体を俺の前に跪かせてやるよ!」
吠えるライカの頬を、一筋の冷や汗が伝う。
バルバラの瞳は、まるで底なしの沼のようだった。慈しみと、虐げ、そしてすべてを飲み込もうとする強欲な光。
バルバラはゆっくりと、ライカの顔を覗き込むように腰を屈めた。それを吸い込んだ残り香が、再びライカの感覚をわずかに揺らす。恐怖ではない。武者震いでもない。それでも、どこかで体が熱を孕むのを止められなかった。
「跪かせる? 私を? ⋯⋯ふふ、いいわ。なら、賭けをしましょうよ。退屈な模擬戦に華を添えるための、極上のルールをね」
「⋯⋯賭け、だと?」
ライカは低く唸り、拳を固めた。バルバラの巨躯から発せられるプレッシャーは、立っているだけで体力を削られるほどに重い。
だが、これまでの連勝で培われた傲慢さが、ライカに「引く」という選択肢を許さなかった。
「ああ、いいぜ。俺が勝ったら、アンタは俺の下僕になってもらう。⋯⋯いいのかよ、Sランク様が俺みたいな新人に跪くことになっても」
「ええ、構わないわ。もし貴女が勝てば、私は貴女の好きなようにされましょう。⋯⋯ただし」
バルバラの一歩が、訓練場の空気を一瞬で凍りつかせた。
「私が勝った時は――貴女は一ヶ月間、私と私のパーティー『紅蓮』の従僕になってもらうわ。私の命じること、私の求めること、すべてに『はい』と答えるだけの⋯⋯可愛い、可愛い牝犬としてね」
「⋯⋯っ、牝犬だと!? ふざけんじゃねえ、俺は男として⋯⋯戦士として鍛えてきたんだ!」
「うんうん、いいわね。その心意気よ。⋯⋯でも、実力差がありすぎては興醒めでしょう? だから私からハンデをあげるわ」
バルバラが背後の仲間たちに目配せをすると、意を組んだミレーヌが魔力でバルバラの周辺に円を描き――自身は右手を背中に回し、左手の一本だけを前に出した。
「私は『左手一本』しか使わない。さらに、この円から『一歩も動かない』わ。もし私が円の外に出るか、右手を使ったら貴女の勝ちでいい。⋯⋯どうかしら、これなら貴女のような子供でも、私にかすり傷の一つくらい付けられるんじゃない?」
「⋯⋯⋯⋯ッ!!」
ライカの黄金の闘気が、怒りによって赤黒く変色するほどに激化した。
200センチの鬼人が、片手で、動かずに相手をする。これ以上の屈辱はない。師匠から授かった自分の技が、これほどまでに舐められている。
「⋯⋯後悔させてやる。その余裕ごと、俺の拳で粉々に砕いてやるよッ!」
ライカは力強く吼える――が、周囲の空気は冷え切っていた。
観衆の誰一人として、ライカの勝利など期待していない。それどころか、ある者は目を伏せ、ある者は十字を切って祈っていた。
「⋯⋯可哀想に。あの子、まだ自分が何と戦おうとしてるのか分かってない」
「あーあ⋯⋯知らねえぞ。あの娘、『紅蓮』に目をつけられたら、もう⋯⋯」
「まだ若いのに。⋯⋯人間としての人生は今日で終わりだな」
そんな周囲の「哀れみ」の視線に、ライカだけが気づかない。
彼女の脳内では、勝利への方程式が組み上がっていたのだ。
(片手で一歩も動かない? ⋯⋯デカい奴は細かい動きが出来ないのが相場だ。ましてや、あの巨体で足も動かせないなら、ただの的じゃねぇか。俺のスピードで攪乱し、死角から一撃叩き込めば、絶対に避けられない。勝てる!)
だが、その思考を遮るような「音」が響いた。
――ジャラッ。
バルバラの背後に控える聖騎士エルザが、懐から何かを取り出したのだ。
それは真新しい黒革の首輪と鎖だった。
エルザは無表情のまま、まるでこれから散歩にでも行くかのような手際で、鎖の強度をパツンと鳴らして確かめる。
そして、値踏みするようにライカの無防備な首筋へと視線を這わせた。
「⋯⋯あ?」
ライカの動きが止まる。
まだ戦ってもいない。賭けが成立したばかりだ。なのに彼女たちは「ライカが負けること」を太陽が東から昇るのと同じ自然の摂理として確信している。
「準備はいいかしら? エルザも、新しい家族(ペット)を迎えるのが待ちきれないようよ」
バルバラは舌先で自身の唇をゆっくりと舐めた。その瞳は、もはやライカを対等な戦士として見てはいなかった。硬い殻を剥いて、中の甘い蜜をすするために狙いを定める――決して獲物を逃さない、捕食者の目そのものだった。
「さあ、始めましょうか。――『食事』の時間を」
観衆たちが恐怖と共に後ずさり、二人の周りにぽっかりと空間ができる。
ライカは屈辱に顔を歪め、全身の闘気を一点に集中させた。それがライカの人生で唯一にして、最も惨酷な「敗北」の始まりだった。