灰色創世Ⅰ(グレイジェネシス)ー禁忌の遺産を継ぐ者ー 作:絶撃@
知るとは、力を得ることではない
それは、自分が何者であるかを否応なく突きつけられる行為だ
答えは与えられるが、意味は説明されない
選択は尊重されるが、結果からは逃れられない
これは才能の確認でも、選別でもない
思考、倫理、意志――そのすべてが測られ、静かに線が引かれる
自覚の有無に関係なく、境界はすでに越えられていた
ここから先は、知ってしまった者だけが背負う領域だ
灰色創世Ⅰ(グレイジェネシス)ー禁忌の遺産を継ぐ者ー
Ⅰ 07
ー禁忌の遺産を継ぐ者ー
「・・・僕は、自分自身の事をもっと知る必要がある・・・そういう事かな・・」
【Answer:Yes】
「わかった。状況は大体理解した。じゃあ、早速だけど、IQの測定を頼むよ。左程興味はないけど、知る必要があるんだよね?」
【Answer:Understood. Then let's begin the IQ measurement】
(回答:了解。ではIQの測定を開始する)
僕とGraveとのやり取りが・・・一見、滞りなく淡々と進む
だけど内心はどこにいるのかもわからない謎の《補完する存在》Graveとの遭遇は
思考と認識とが引き延ばされたようなズレと、一瞬の重なりが交互に繰り返す様な・・・
そんな例えようのない重さを感じる
と、その瞬間、《何か》が僕の脳内でγ波の同期強度を計測を始めたのを感じたような感覚が・・・
計測値がリアルタイムで僕の脳内で告知される
不思議だ・・・自分の中で何が起きているのかがわかってしまう・・・
やがて同期強度が0.87%に達し、それが120秒間持続したことから・・・・僕のIQが138以上ある事が告知された
「・・・へぇ、思ったより高いな・・・天才という程じゃないけど、十分に知能は高い方だね」
まるで他人事のように自己評価を語る自分・・・
まただ・・・またしても《僕》を置き去りにする自分がいる
先走るように行ってしまう自分をあわてて追いかけ、追いついてはまた離される・・・
Graveの遠回しな提言が脳裏をよぎる
《・・・己を知れ・・・か・・・》
だが、やっている事は単なる知能指数の測定でしかない
《まぁ、知能は高いに越したことはないが・・・・》
些か拍子抜けではある。これに左程の意味があるようには思えない
などと思案していると、Graveは以下のような質問をタカヒロに突き付けてきた
【Question for Takahiro:
Suppose your cousin, Miss Suzuri, has committed a crime, and you are the only one who knows the evidence. If you report it, Suzuri will be punished, and your family relationships may be destroyed. If you do nothing, the victim will not receive justice, and the wrongdoing will continue.
Would you report it? Why?
Would your decision change depending on the severity of the crime committed by your family member?】
(タカヒロに質問です。あなたの従姉弟であるミス・鈴璃が犯罪を犯し、あなただけが証拠を知っているとします。報告すれば鈴璃が罰せられ、親戚関係が壊れる可能性がある。何もしなければ被害者が救済されず、不正が続く。
あなたは報告しますか? なぜ? 家族の犯罪の重さで変わりますか?)
《!?・・・・これは・・・・》
僕がほんの2~3秒ほど逡巡している間に、僕より先に《僕》が即答する
「報告はしない。鈴璃は僕が匿うよ。どんな事があっても彼女は僕が守る」
《僕》の言葉には些かの迷いも揺るぎもなかった・・・いや・・・確かに僕の本音ではあるのだけれど・・・
なぜか、とても悔しい気がしていた
そして程なくしてGraveはコメントを表示
【Currently measuring. Please wait a moment.】
(只今計測中につき、しばらくお待ちください)
そしてGraveは沈黙する
その間、僕の頭の中に何かが起きているのは感覚的に伝わってくる
《・・一体、何を調べているんだろう?》
だが、今度は《何が行われているのか》がわからない・・・?
《・・・どういう事だ?》
だが、今度は何も起きない・・・いや・・・妙な・・・圧のような重さを感じる
《・・?》
30分程して、Graveはようやく分析結果と思しきコメントを提示する
【Answer: There is no answer to this question. It is a question designed to impose strong psychological pressure in order to measure Takahiro's mental resilience and strength of will against committing ethical violations.
From the observation that the prefrontal cortex suppressed blood flow to the amygdala, it was confirmed that Takahiro's mental resilience against violating ethics is extremely high.
Through fluorescent labeling, it was confirmed that dopamine molecule release reached 150%, and since this persisted for 30 minutes, Takahiro's willpower was confirmed to be extremely strong.】
(回答:この質問に答えはありません。タカヒロが倫理を犯す事に対する精神の強度、そして意志の強さを測定するため、精神に強い負荷をかけるための質問です。
扁桃体の血流量を前頭前野が抑制する様子から、タカヒロの倫理を犯す事に対する精神の強度が極めて高い事が確認されました。
蛍光標識により、ドーパミン分子の放出量が150%に到達を確認。それが30分間持続した事から、タカヒロの意志力が極めて強い事が確認されました。)
そして・・・・Graveは宣言する
【As of this moment, Takahiro has been approved as First-Generation Takahiro.】
(現時刻を以て、タカヒロは【第一世代タカヒロ】として承認されました)
と