灰色創世Ⅰ(グレイジェネシス)ー禁忌の遺産を継ぐ者ー 作:絶撃@
承認されたことで、何かが終わった気がした
同時に、何も始まっていないという事実だけが重く残る
知るべきことから目を逸らし、欲しい未来だけを掴もうとする
それがどれほど甘い幻想か、薄々わかっていながら
彼女に辿り着くためなら、代価には目をつぶれる――
そう思ってしまった時点で、すでに取引は始まっていた
これは選択の物語ではない
逃げと覚悟の境界が、静かに踏み越えられる瞬間の記録だ
灰色創世Ⅰ(グレイジェネシス)ー禁忌の遺産を継ぐ者ー
Ⅰ 08
甘い幻想
そして・・・・Graveは宣言する
【As of this moment, Takahiro has been approved as First-Generation Takahiro.】
(現時刻を以て、タカヒロは【第一世代タカヒロ】として承認されました)
その直後から、それまで感じていた重みのようなものが少し軽くなった気がする
それと同じ位・・・・僕は、腰が引けていた
この、【第一世代タカヒロ】として承認というのは、まぁ有体に言うとGraveの【保留】がかなり緩和された状態だと言える
言い方を変えれば、《ただ、それだけ》である
色々と気になる事も多いし聞きたい事も山ほどある。だけどそれは今でなくてもいい
今は、僕とAtnaltAとの因果を引き寄せあうための知恵を貸してくれればそれでいい。僕はそう思っている
わかっている・・・これは・・・《逃げ》だ
抜き差しならない所に足を踏み入れた感覚が尋常ではなくなっている
有体に言うと、これ以上深入りはしたくないという本音が首をもたげていた
なんだけど、Graveは妙な提示をしてきた
【Grave demands a price for his efforts in facilitating the encounter and connection with AtnaltA】(however, this demand carries no coercive force).
(GraveはAtnaltAとの邂逅とえにしのために尽力する対価を要求する(但し強制力はない))
「・・・・・・・・・・・・・・」
それを聞いた時の僕の印象は次の一言に尽きる
「・・・なぁ、Grave・・・ひょっとしてだけど、僕以外には適当な人材がいないのかなもしかして?」
【Response to the question: Withheld for now.】(質問への回答:保留)
《・・・やっぱりそうか・・・》
言った傍から・・・僕の中で、また《重み》が心臓に寄りかかる
動悸が・・・少しだけ早くなる
僕は、Graveの真価について未だ問いただしていない
だから《彼》になにができるのかハッキリした事は未だわからない・・・・・いや・・・・
わかりたくない・・・のだと思う
僕のこの心理を、Graveは突いているつもりのようだが・・・
・・・いや、これはわざとだな
《強制力はない》と言っているけど、無論これは詭弁だ
強制力に抗う事が出来るなら、そもそもこのような断りを入れる必要がない
Graveが手を貸してくれていたおかげで、こういうカラクリが透けて見えるというのは皮肉なものだ
アドバイスに従い行動する事でAtnaltAへつながるのだとしたら
《Graveに従い行動する事そのものが【対価】になっている》と容易に想像がつく
踏み出せば、否応なしに巻き込まれる決断をしてしまう・・・恐らくそうなるだろう
仮に僕がAtnaltAとの邂逅に必要なだけしかGraveを使わない事にしたとしよう
それ以上は知らない方がいいというスタンスを決め込んだ場合
果たしてGraveは僕に力を貸してくれるだろうか?
これは僕の直感・・・というよりは論理的な帰結だ
Graveは・・・AtnaltAを餌に、僕に何かをやらせようとしている・・・・
それだけじゃない
恐らくGraveは・・・僕を・・・・・
まぁいい・・・
ならば僕は《餌》だけをいただくように振舞ってみる
Graveには原則、深入りしないと宣言してみよう
そうしたら・・・・Graveはどのような反応をするだろうか・・・・
「・・さてと」
「Graveに問う。AtnaltAと出逢い、彼女を嫁にするそのために・・・差し当たり僕は何をすればいい?」
単刀直入に、僕にとっての《本題》に切り込む
《彼女を嫁に》という強い言葉を選んだのは、Graveの強制しない《強制力》を試す事になる
果たして・・・
この僕の問いに対し、Graveは―――
こう、答えた
【Answer:Abandon the sweet illusion of making AtnaltA your bride without knowing Grave.】
(Graveを知らずにAtnaltAを嫁にするという甘い幻想を捨てる事)
《・・・やっぱり・・・ね・・・》
重みが一気に僕の心臓を押しつぶす
動悸が・・・収まらない程に激しく打ちつける・・・
Graveは――――容赦のない現実を突き付けてきたのである
《・・・Graveの奴・・・・僕を・・・試している・・・・》
この時の僕はまだ・・・Graveの掌の上で転がされているだけの存在だった・・・