灰色創世Ⅰ(グレイジェネシス)ー禁忌の遺産を継ぐ者ー 作:絶撃@
世界を救った英雄、Usumnak。彼女たちは神話となり、遠い過去の存在
――なのに
彼女を見た瞬間、胸の奥が軋んだ
理由はわからない。ただ、見えなくていいものが、見えすぎてしまった気がした
これは憧れでも尊敬でもない
ひとりの少年が、触れてはいけない存在に恋をしてしまった、その始まりであった
灰色創世Ⅰ(グレイジェネシス)ー禁忌の遺産を継ぐ者ー
Ⅰ 03
左斜め110度の熱視線
今より半世紀ほど前の祖父タカズミの時代のあの日―――
世界は、終わるはずだった
・・・・この地上に・・・
いや、世界中の海に・・・・
正体不明の異形の化け物《NakiesiaknihS》(ナキエシアクニス)たちが突如として現れたという大厄災・・・
日本にもその化け物たちが襲来した
アメリカ第七艦隊は壊滅させられ、その本部が置かれていた横須賀基地も消滅した
この結果を受け、ステーツ大統領は戦略核兵器による化け物たちの一掃を画策
だがステーツは敗北し、四方を海に囲まれた日本は、
瞬く間にその化け物たちに海上封鎖され孤立
絶体絶命のピンチを迎えていた
そこへ《Usumnak》(ウスムナク)と呼ばれる謎の異能を持つ女戦士達が出現し侵略者達を撃破した
それ以来彼女たちは僕ら人類の守護神としてこの世界に君臨している
これが・・・人類史上稀に見る大厄災、
《第一次NakiesiaknihS War》、
通称【N.S War】の顛末である
僕は、幼い頃に見た彼女たちの戦いの物語を見て、胸がざわついた
美しい女の姿をした彼女たちは、今は人間と交配しその血の半分は人間となった
そう・・・彼女たち《Usumnak》は・・・僕たち人間と同じ時間を生きる存在となっていた
そしてこの僕は、その異なる世界線に住む一人のUsumnaKに恋をした
彼女の名は《AtnaltA》(アトゥナルタ)
中学二年の冬休みに、彼女の記録映像を初めて見た時の衝撃は、今でも・・・
いや、いつまでも忘れられない
彼女は防空戦闘に特化したUsumnaKで、サンディエゴに赴任早々にその特異な才能を見せつけていた
AwoIをも凌ぐ圧倒的な防空官制能力は、世界中を見渡しても他に並ぶ者がいなかった
彼女を艦隊編成に加える事は、敵機からの空襲を受けない事とほぼ同義であった
その圧倒的火砲による迎撃は、現存する、他の如何なるUsumnaKの追随をも許さない
「・・・凄い・・」
僕みたいな素人が見てもわかる・・・・
防空に関しては、彼女は他のUsumnaKとは一線を画している
そんな離れ業を、AtnaltAはダルそうな表情で・・・
如何にもやる気なさそうに淡々とこなす
彼女の雄姿に見とれてしまい、暫く気付かなかったのだが
何度もビデオを見返している内に、映像の端に小さな文字で彼女の解説が表示されていた事に初めて気付く
【命中率50%、撃墜率47%の高い迎撃能力を有するAtnaltAは、
ミドルレンジからショートレンジの敵機を一度に16機を照準に捉え、
その未来位置をリアルタイムに捕捉し続け、瞬く間に全てを叩き落とすのである】
と表記されていた
なぜだろう・・・僕はこれを読むと
まるで自分の事のように誇らしく感じてしまう
なのに彼女はと言えば、
この精密な迎撃作業を不機嫌そうな表情で5inch砲弾をガンガン撃ちまくる
暴力的なまでに圧倒的な・・・
AtnaltAの対空砲火であった
UkaB-NakiesiaknihSの大部隊を蹴散らしながら悠々と航行するAtnaltA
さながら出エジプト記のモーセが杖を掲げたかのような分厚い弾幕が―――
大気中に放たれる
敵機の大編隊で埋め尽くされた黒雲のような空が―――
真っ二つに割られ、青空が覗く
まるで奇跡を見せられるような神々しい戦いぶりと佇まいを見ているだけで・・・
溜息が零れてしまう・・・
そしてそれと同じくらい、
彼女のビジュアルはあまりにも官能的で破壊力に満ち溢れていた
漆黒の夜空を思わせるそのミステリアスな瞳
いつだってご機嫌斜めのダウナー
そして普通にスマホが置ける程の爆乳ボディ
「・・・ヤバい・・・・脳がバグる・・・・」
彼女を構成するパーツの何もかもが、
目眩がする程に僕の好みのどストライクだった
そして・・・
PV撮影用ドローンが映す彼女の映像が左斜め110度の角度になった時
そのシルエットが・・・夢で見た【あの女性】とぴたりと重なる
「・・・・・・・・・あ・・・」
「ドクン」
動悸が・・・高まってゆくのを感じる
彼女から・・・・目が離せなくなる
その直後に、PV撮影中であるにもかかわらず、無頓着にメタな発言をするダウナーな声でぼそっと呟く
「・・・まだ撮影続けるの?・・・・まぁ・・・いいけど☆」
間違いない
夢の中に夜な夜な登場しては、僕をディスるあの女性・・・・
「・・・AtnaltA・・・」
そう気付いた瞬間に、僕の運命は・・・唐突に・・・・・そして力強く激しく回り始めた
僕は・・・・
AtnaltAに恋をした
皇紀2736年(西暦2076年)が・・・グレイジェネシス元年を刻んだ瞬間であった