【ToLOVEる外伝】リトと美柑の秘められた日常 ―禁断の果実を食む兄妹― 作:芝刈り山
写真部での「幻の撮影会」を終えた美柑は、魔法少女の衣装を脱ぎ捨て、再びパステルピンクのタンクトップと紫のフリルミニスカートに身を包んでいた。しかし、科学部で浴びた媚薬ミストの効果は依然として彼女の肢体を蝕んでおり、歩くたびに太もも同士が擦れ、その摩擦さえもが甘い火種となって彼女の脳髄を焦がしていた。
「はぁ、はぁ……リト、どこ……? 早く見つけて、私を……」
朦朧とする意識の中、彼女が辿り着いたのは、校舎の北側にある薄暗い空き教室だった。そこには紫のカーテンが引かれ、不気味な香炉の煙が立ち昇っている。「オカルト研究部・あなたの本能を呼び覚ます催眠の儀」という、手書きの看板が怪しく揺れていた。
「……あら、可愛いお客さん。あなた、何かに飢えているわね?」
奥から現れたのは、深いフードの付いた黒いローブを羽織った女子部員だった。彼女の瞳は水晶のように透き通り、どこか現実離れした威圧感を持って美柑を迎え入れた。
「私、……なんだか、身体が変なの。落ち着かなくて……」
「それはあなたの心が『本当の姿』を求めているからよ。さあ、この箱の中から、運命の一枚を選びなさい」
女子部員が差し出したのは、古びた木製の箱だった。美柑は震える指先を箱の中に滑り込ませ、一枚の小さな羊皮紙を取り出した。そこには、歪な文字でこう記されていた。
『服を着ていない』
「……えっ?」
美柑が声を上げる間もなかった。
「その言葉こそが、今のあなたの真実。――レディ、ゴー」
女子部員が、パチンと乾いた音を立てて指を鳴らした。
その瞬間、美柑の世界が一変した。
「……っ!? あ、ああああ……っ!」
美柑は悲鳴を上げて、その場にうずくまった。彼女の主観において、今しがたまで肌を包んでいたタンクトップも、ミニスカートも、そしてリトとの思い出が詰まった白い綿パンツさえもが、砂のように崩れ去り、消失してしまったのだ。
「あ、だめ……っ! 何これ、服が……ない! 私、裸になっちゃった……っ!」
実際には、彼女は依然としてパステルピンクの服を着ている。しかし、催眠の力は彼女の触覚を完全に書き換えていた。空気の揺らぎが、剥き出しになった乳首を冷たく撫で、廊下を吹き抜ける風が、無防備な秘部の筋を直接刺激する。
「お、おい……ちょっと、かかりすぎじゃない?」
「ええ、凄まじい適合率だわ……」
ローブを羽織った部員たちは、顔を青ざめさせて顔を見合わせた。美柑は自分の両腕で胸を隠し、腰をくねらせながら、全裸(と本人が思い込んでいる姿)で教室を飛び出していったのだ。
「危ないわ、あの子! このままだとパニックで怪我をするかも。そっと後を追いましょう!」
オカルト研究部の部員たちは、安全のために美柑の数メートル後ろを、影のように追尾し始めた。
美柑にとって、文化祭の廊下は地獄のような、それでいて至高の悦楽に満ちた「晒し台」へと変貌していた。
「きゃっ……! 見ないで、そんなに見ないで……っ!」
美柑は壁に背中を押し付けながら、カニ歩きで廊下を進む。すれ違う男子生徒たちは、当然ながら「可愛い小学生が歩いている」としか思っていない。しかし、美柑の瞳には、彼らの視線がすべて自分のピンク色の乳首を射抜き、無垢な股間の割れ目を執拗に舐め回す「欲望の光線」として映っていた。
「あ、ん、っ……! 男の人の目が、私の……私の中にまで、入ってくる……っ!」
媚薬の効果が、催眠による羞恥心をさらに増幅させていた。服を着ているはずなのに、感覚は完全な全裸。それどころか、視線を感じるたびに、見えない無数の指で全身を愛撫されているような錯覚に陥る。
「だめ……リト、助けて……っ。私、こんなにたくさんの男の人に、裸を見られちゃってるよ……っ!」
美柑は涙を浮かべながら、リトの姿を探した。
廊下の男子生徒が自分を振り返るたび、彼女はその視線が自分の「パンツを履いていない場所」を貫通していると錯覚し、失禁寸前の興奮で腰を砕けさせた。
「あ、はぁ……っ、あぁあああっ!」
美柑はついに耐えきれず、階段の踊り場で膝をついた。彼女の脳内では、もはや全裸である自分と、それを貪り尽くす大勢の視線が一つになり、絶頂の波が幾度も押し寄せていた。
「……もう、限界ね。あの子、意識が飛んじゃうわ」
後ろをつけていたオカルト研究部の女子部員が、意を決して美柑の前に歩み出た。
「――現実に帰りなさい」
再び、パチンと小気味よい音が響いた。
「……はぁっ!?」
美柑は大きく肩で息をしながら、ガバッと顔を上げた。
視界に飛び込んできたのは、自分の腕を包むパステルピンクのタンクトップ。そして、紫のフリルミニスカート。
「……服、着てる。私、ちゃんと……履いてる……」
美柑は自分のスカートの裾をめくり、その奥にある「白い綿パンツ」を指先で確かめた。そこには確かな布の感触があり、彼女の尊厳は守られていた。
驚くべきことに、催眠が解けたと同時に、あんなに執拗に彼女を苦しめていた科学部の媚薬効果も、霧が晴れるように消え去っていた。極度の緊張と精神的ショックが、肉体的な薬剤の効果を上書きし、脳を正常な状態へと強制リセットしたのだ。
「大丈夫? かなり深く入っちゃったみたいだけど……」
オカルト研究部の部員が、心配そうに美柑の肩を抱いた。
「……ううん、大丈夫です。……なんだか、憑き物が落ちたみたいに、身体が軽くなったわ」
美柑は立ち上がり、清々しい表情で部員を見つめた。
「そう。よかった。……実は、私たちの催眠術がここまで完璧に決まったのは初めてなの。科学的な『媚薬』という不純物を、私たちの『オカルト』が打ち負かした……素晴らしい研究成果だわ!」
部員たちは、美柑を媒介にして「非科学が科学に勝った」事実に、興奮を隠せない様子で手を取り合って喜んだ。
「私も、助かったわ。あのままだったら、私、本当におかしくなってたかもしれないから。……オカルト研究部の皆さんのおかげです。本当にありがとうございました」
美柑は丁寧にお辞儀をした。
科学部のミストという「物理的な攻撃」を、催眠術という「精神的な盾」が弾き返した。美柑の心と身体は、再びリトを真っ直ぐに愛するための、清らかな状態へと戻っていた。
「さあ、今度こそ……リトのところに行かなきゃ」
美柑はもう一度、自分の服の感触を確かめ、確かな足取りで文化祭の喧騒の中へと戻っていった。彼女の背中を見送りながら、オカルト研究部の部員たちは、その神秘的な後ろ姿をいつまでも眩しそうに見つめ続けるのだった。