【ToLOVEる外伝】リトと美柑の秘められた日常 ―禁断の果実を食む兄妹― 作:芝刈り山
浴室の湿った熱気が、脱衣所の鏡を白く曇らせていた。
美柑はバスタオル一枚を体に巻き、上気した肌を落ち着かせるように一つ、深い息をついた。視線は自然と、ランドリーバスケット――洗濯籠の最上段へと向けられた。
そこには、彼女がリトに託した「今しがた脱ぎたての白」が戻っていた。
しかし、その様子はどこか不自然だった。美柑がそっと上のパンツをめくると、その下には数日前から行方不明になっていた「前回の白」が、変わり果てた姿で横たわっていた。
「……っ」
美柑はそれを、細い指先でつまみ上げた。
純白だったはずの綿の布地には、ところどころに乾燥しかけた、白濁したシミが点在している。鼻を近づけずとも、そこから立ち上る独特の、青臭くも甘い芳香が美柑の感覚を支配した。
保健の授業で聞いた、男性が放つ「生」の証。
初めて直接触れるその匂い。しかし、美柑の胸に去来したのは嫌悪感ではなく、驚くほどの安らぎだった。
(……不思議。全然、嫌じゃない。……むしろ、ずっと嗅いでいたい。……リトの、匂いなんだ)
それは懐かしく、そして自分を包み込んでくれるような安心感。美柑の脳内には、この匂いこそが自分を最も高揚させ、かつ深く癒やすものであるという情報が、抗いようのない事実として刻み込まれた。
「リト、お風呂空いたよ」
美柑は廊下に向かって声をかけた。
「あ、ああ、分かった。……ありがとな」
リトの少し上ずった声が返ってくる。二人は入れ違いになるようにして、リトが浴室へ、美柑がリビングへと向かうはずだった。
だが、シャワーの音が鳴り響き始めたのを確認すると、美柑は吸い寄せられるように再び脱衣所へと引き返した。
(……お互い様、だよね)
美柑の狙いは、洗濯籠の隅に無造作に放り込まれた、リトの黒いボクサーパンツだった。
今、主の体温と匂いを宿した「使用済み」として、特別な存在感を放っている。美柑はそれを手に取り、自分の鼻先へと持っていった。
「――っ、……はぁ」
さっき自分のパンツに付着していた、あのリトの匂い。それが、この布地全体からさらに力強く、野生的に立ち上っている。美柑はこの匂いを嗅いでいるだけで、自分の心臓の鼓動が早まり、下腹部がじりじりと熱くなっていくのを感じた。
美柑はリトのパンツを抱えたまま、リビングのソファへと移動した。
風呂上がりで清潔なはずの指が、自然と下半身へと降りていく。まだバスタオルしか纏っていない彼女の秘部は、自分でも驚くほど、すでに熱い湿り気に支配されていた。
美柑にとって、自慰は初めてではない。だが、これまではどこか冷めた自分がいた。しかし今、その禁忌こそが彼女の指を突き動かす最大のエネルギーとなっていた。
(リトを……、こんな風に思うなんて……っ)
その背徳的な事実が、快感を何倍にも増幅させる。美柑はリトのパンツを顔に強く押し当て、彼の匂いを肺いっぱいに吸い込みながら、もう片方の指を秘部の割れ目へと滑り込ませた。
「ん……、っ……! リト……、リト……っ」
指先がヌルリと、自分の溢れ出した情熱を捉える。
リトの匂いに包まれながら、自分の身体を愛撫する。その行為を通じて、今まさに浴室にいるリトと、魂の深い場所で繋がっているような錯覚。
鏡越しに見た、まだ平坦な胸元と華奢な肩のライン。その未発達な少女の身体が、兄の匂いによって淫らに疼く。
(もっと……、もっと私を、汚していいんだよ……リト……っ)
思考が白濁していく。美柑の腰は大きく波打ち、バスタオルが床に滑り落ちた。完全に裸となった彼女は、兄のパンツに顔を埋め、声にならない吐息を漏らしながら、かつてないほど強烈な絶頂の波に飲み込まれた。
しばらくして、美柑は乱れた呼吸を整え、我に返った。
彼女はそっと立ち上がると、リトのパンツを元の洗濯籠へと戻した。自分の蜜が少しだけ付着してしまったが、リトはきっと、美柑がこれを使ったことなど夢にも思わないだろう。彼女は鏡に映った上気した自分の顔を見て、悪戯っぽく微笑んだ。
脱衣所の入り口へ戻ると、曇りガラス越しに、シャワーを浴びているリトの裸のシルエットが見えた。成長した兄の体。その逞しいライン。
美柑の胸の膨らみが気になりだし、恥じらいを覚え始めた頃から、いつの間にか二人は一緒にお風呂に入ることをやめてしまった。当たり前だと思っていた距離。
「……ねえ、リト」
美柑は小さな声で、閉ざされた扉に語りかけた。
あんなにエッチなことをし合って、お互いのパンツを汚し合って。そんな二人なら、もう隠すことなんて何もないはずだ。
(……また、一緒に入りたいな。リトと……)
美柑は自分の未熟な胸をそっと抱きしめ、浴室から聞こえる水の音を子守唄のように聞きながら、結城家の新しく、そしてより深い「日常」の始まりを予感して、静かにその場を去っていった。