【ToLOVEる外伝】リトと美柑の秘められた日常 ―禁断の果実を食む兄妹― 作:芝刈り山
小学校の校庭には、朝の清々しい空気とは裏腹に、出発を控えた児童たちの熱気が充満していた。色とりどりのリュックサックやボストンバッグが地面に並べられ、その周囲で子供たちがはしゃぎ回っている。美柑は自分の大きなカバンを足元に置くと、駆け寄ってきた幸恵と真美に向き合った。
「美柑、おはよう! 昨日はちゃんと眠れた? 私は楽しみすぎて全然眠れなかったよ」
真美が目を輝かせながら言うと、隣の幸恵も大きく頷いた。
「私も。おやつもたくさん買っちゃったし、新幹線の中で食べるのが今から楽しみ。美柑は何を持ってきたの?」
二人の無邪気な問いかけに、美柑はいつものように落ち着いた微笑みを返した。
「おはよう。私はリトと一緒に選んだクッキーとか、少し持ってきたわ。眠れなかったのは……そうね、少しだけ、家のことが心配だったからかもしれないけれど」
(本当は、リトとあんなに激しくしちゃったから、まだ体が少し火照っているのだけれど)
そんなことは露ほども見せず、美柑は優等生らしい口調で答えた。彼女の内側には、今もなおリトの熱い感覚が居座っている。さらに、足元のカバンの底には、先ほどまで自分の股間を包んでいた、リトの精液で汚れた白い綿パンツが潜んでいるのだ。その事実が、美柑の心に奇妙な優越感と、ひりつくような興奮を与えていた。
「やっぱり美柑はしっかりしてるよね。お兄さんのこと大好きだもんね」
幸恵が感心したように言う。その言葉を聞くたび、美柑の胸の奥では黒く、それでいて真っ白な情念が渦を巻く。
「ええ。大好きよ。だから、離れている間もしっかり思い出を持ってきたわ」
美柑の言葉の真意を、友人たちが知る由もない。やがて、担任の教師の笛が鳴り響き、出発式が始まった。校長先生の長い挨拶や、旅行中の諸注意が続く。美柑はその間も、カバンの重みを足首に感じながら、リトの匂いを想像していた。
「……最後に、忘れ物はないかもう一度確認すること。特に、自分の持ち物にはすべて名前が書いてあるな? 万が一落とし物があっても、名前がないと返せないからな。これは学校との約束だ」
教師のその言葉に、美柑はふと嫌な予感を覚えた。
(名前……。昨日の夜、全部確認したはずだけど)
美柑は自分の完璧主義な性格を信じていた。旅のしおりに従い、衣類から小物に至るまで、黒の油性マジックで「ミカン」と記名したはずだ。しかし、一箇所だけ、記憶が曖昧な部分があった。
(……今、履いているこのパンツ。これには書いたかしら?)
今朝、リトとの行為を終えた後、美柑は慌てて新しいパンツに履き替えた。それは数枚セットで新しく卸したばかりの、真っ白な綿パンツだった。昨夜の準備の際、予備のパンツにはすべて名前を書いた記憶があるが、最後に履く一足にまでマジックを走らせたかどうか、確信が持てない。
(もし書いていなかったら……。いえ、でも、履いているものを落とすなんてありえないわね)
そう自分に言い聞かせたものの、一度気になると止まらないのが美柑の性分だった。もし、何かの拍子に、この無記名の真っ白な下着が他人の目に触れるようなことがあれば。結城家の家事を完璧にこなす「しっかり者の美柑」という皮が、一枚剥がれてしまうような、そんな落ち着かない気分になった。
「それじゃあ、クラスごとにバスへ移動! 遅れるなよ!」
教師の誘導で、児童たちが一斉に動き出した。美柑は幸恵たちと一緒に、指定された観光バスへと向かう。
「美柑、どうしたの? ぼーっとして」
真美が不思議そうに覗き込んできた。
「……いえ、なんでもないわ。ちょっとお手洗いに行ってくるから、先にバスに乗っていて。すぐ追いつくわ」
「えー、もうすぐ出発だよ? 急いでね!」
美柑は友人たちに背を向け、校舎一階のトイレへと早足で向かった。バスが出るまであと数分しかない。彼女は個室に飛び込むと、鍵をかけ、手早くスカートを捲り上げた。
心臓の鼓動が耳元でうるさく響く。美柑は震える指先で、真っ白な綿パンツのゴムを掴み、ゆっくりと膝まで下ろした。
(お願い、書いてあって……)
彼女はパンツの後ろ側、腰のラインにある白いタグを指で探った。しかし、指先に触れたのは、何も書かれていない、さらさらとした布の質感だけだった。
「……やっぱり、書いてない」
タグには、メーカーのロゴと洗濯表示があるだけで、名前を記すべき余白は真っ白なままだった。美柑は小さく舌を打った。今朝の、あの甘く淫らな時間のせいで、最後の最後で注意力が散漫になっていたのだ。リトに抱かれ、彼に注がれることばかりを考えていた代償が、この小さな「不備」となって現れていた。
今すぐマジックを取り出して書きたかったが、カバンはすでにバスの荷物台へと運ばれている。手元にあるのはハンカチとティッシュだけだ。
「美柑ー! 早くー! 出発しちゃうよー!」
外から幸恵の声が聞こえた。美柑は焦り、慌ててパンツを引き上げた。
その拍子に、美柑の秘部が、名前のない真っ白な布地と強く擦れた。
「んっ……」
今朝のリトとの感触が、摩擦によって鮮烈に蘇る。名前が書かれていないという「校則違反」の状態にある下着。それが、自分の最もデリケートな部分に密着している。その背徳的な状況が、美柑の体を不自然に熱くさせた。
「……いいわ。落とさなければいいだけのこと」
美柑は自分を落ち着かせるように呟き、個室を出た。
しかし、そう決意した美柑の脳裏に、カバンの底に隠した「あのパンツ」の存在が浮かんだ。リトの白濁液が染み付いた、世界で一番大切な汚れ物。それと一緒に、名前のないこのパンツを仕舞い込むこと。あるいは、この名無しのパンツさえも、リトとの思い出の欠片として、何か特別な意味を持ってしまうのではないか。
美柑は火照る顔を冷たい水で洗い、急いでバスへと走った。
「間に合ったわ。ごめんなさい、待たせちゃって」
バスの入り口で待っていた幸恵と真美の元へ駆け寄る。
「大丈夫だよ、さあ乗ろう! 美柑の席、窓側にしておいたからね」
「ありがとう、二人とも」
美柑はバスのタラップを一段ずつ登った。そのたびに、太ももの付け根で、名前のない白い綿パンツが密やかに動く。ゴムの締め付け、クロッチの柔らかな感触。名前を書き忘れたという、たったそれだけのことが、美柑には自分が「リトだけの所有物」として、社会のルールから少しだけはみ出しているような、甘美な感覚をもたらしていた。
バスはゆっくりと動き出した。校門で手を振る下級生や先生たちの姿が遠ざかっていく。
「新幹線、楽しみだね! おやつ、何から食べる?」
隣の席で真美がはしゃいでいるが、美柑の意識は、座席に押し付けられた自分の臀部と、そこに介在する「名無しの白」に集中していた。
(新幹線の駅までは、一時間くらい……)
バスの振動が、美柑の体に伝わる。エンジンの低い唸りが、下腹部を微かに震わせる。美柑は深く座席に背中を預け、スカートをそっと押さえた。
このパンツには、私の名前は書いていない。けれど、ここにはリトとの朝の匂いが、まだ肌に残っている。学校のルールに従わない、私だけの、リトだけの秘密。
美柑は窓の外を見つめながら、これから向かう新幹線の駅、そしてその先の京都へと、想いを馳せた。カバンの中の汚れたパンツと、今履いている名無しのパンツ。二つの「白」を抱えたまま、美柑の修学旅行は、リトへの執着をより一層深めながら、加速していく。
新幹線が待つ駅までの道のり。バスの中の喧騒は、美柑にとっては遠い世界の出来事のようだった。彼女はただ、自身の秘部に触れる無記名の布地の感触を、リトの指先代わりに感じながら、静かに、けれど激しく、兄への独占欲を募らせていた。
(リト……。私、今、学校との約束を破ってるわよ。……ねえ、リトなら、なんて言うかしら)
そんなことを考えながら、美柑は京都へと向かう列車の到着を、熱い吐息とともに待ちわびるのだった。