【ToLOVEる外伝】リトと美柑の秘められた日常 ―禁断の果実を食む兄妹― 作:芝刈り山
バスが新横浜駅のロータリーに滑り込み、子供たちが一斉に降り立った。修学旅行専用の臨時列車が待つホームへと移動する間も、美柑の周囲は常に賑やかだった。大きなカバンを背負った小学生が列を作り、新幹線の白い車体が見えてくると、その興奮は最高潮に達する。
「美柑、新幹線だよ! 凄く速そう!」
幸恵が声を弾ませながら、美柑の腕を引く。
「そうね。これに乗れば、あっという間に京都だわ」
美柑は冷静に答えながらも、手荷物のボストンバッグを握る手に力を込めた。このカバンの底には、朝の淫らな熱を吸い込んだリトの白濁付きパンツが、ジッパー付きの袋に閉じ込められたまま眠っている。人混みの中で、自分だけが兄の濃厚な名残を持ち歩いているという事実は、美柑の胸を密かに昂ぶらせた。
新幹線の自動ドアが開くと、冷たいエアコンの風と共に、独特の機械的な匂いが鼻をくすぐる。美柑たちのクラスに割り当てられた車両は、あっという間に三人の座席を埋めるグループで埋め尽くされた。
「あ、美柑。私たちの席、ここだよ。あ、あれ……?」
真美が座席番号を確認しながら足を止めた。美柑と幸恵、真美の三人は同じ列の三連席に座る予定だったが、真美が指差した先には、すでに一人の男子が座っていた。同じクラスの佐藤だ。
佐藤は、いわゆる「陰キャ」と呼ばれる、大人しくて目立たないタイプの男子だ。彼は美柑と目が合うと、少し照れくさそうに、あるいは気まずそうに視線を外して窓の外を見た。
「ごめん美柑、私たちの席、二連席と三連席で分かれちゃったみたい。男子と隣になっちゃうけど大丈夫?」
「ええ、構わないわよ。座りましょう」
美柑は迷わず、佐藤の隣の席に腰を下ろした。真美と幸恵は通路を挟んだ反対側の席に座り、早くもお菓子の袋を開け始めている。
ガタン、と軽い振動と共に、新幹線がゆっくりとホームを離れた。徐々に速度を上げ、窓の外の景色が線となって流れていく。美柑の隣に座る佐藤は、すぐに眠くなってしまったのか、それとも美柑のような美少女の隣で緊張しているのか、早々にパーカーのフードを深く被り、腕を組んで目を閉じてしまった。
しばらくすると、規則的な寝息が聞こえ始める。美柑は横目で佐藤を確認した。彼は完全に熟睡しているようで、少しも動く気配がない。車両のあちこちでは友人たちがトランプをしたり大声で笑ったりしているが、美柑の周囲だけは、妙に静まり返ったエアポケットのような空間になっていた。
(リト……今頃、何してるかな)
ふいに、猛烈な寂しさと渇きが美柑を襲った。朝、家を出る直前にリトに抱き潰された時の感触。背中に回されたリトの腕の力強さ。耳元で囁かれた、切羽詰まったようなリトの吐息。それらが記憶の底から沸き上がり、美柑の肌を内側からチリチリと焼き焦がしていく。
三日間もリトに会えない。
その絶望的なまでの事実を埋めるために、美柑の右手は自然と、膝の上に置いていた薄手のカーディガンへと伸びた。彼女はそれをカモフラージュにするように、自身の太ももから股間にかけて、ふわりと掛けた。
「……んっ」
美柑は深く呼吸を整える。隣の佐藤は眠っている。通路向かいの幸恵たちは、動画共有サイトの話題で盛り上がっていて、こちらを見ていない。
美柑の右手は、カーディガンの下で、スカートの中へと滑り込んだ。
指先が、今朝履き替えたばかりの真っ白な綿パンツのクロッチに触れる。リトに散々弄られ、熱を孕まされた場所。そこはすでに、思い出だけでうっすらと湿り気を帯び始めていた。
(リト……)
美柑は脳内で兄の名前を呼び、瞳を閉じた。時速二百キロを超える高速移動の振動が、座席を通じて彼女の臀部に伝わる。その微細なバイブレーションが、彼女の秘部を刺激する心地よいスパイスとなった。
美柑は中指を立て、パンツの布越しに、自身の最も敏感な突起をそっと撫でた。
「ん、ふぅ……っ」
かすかな吐息が漏れる。彼女はそれを隠すように、少しだけ深く座席に沈み込んだ。隣の佐藤が寝返りを打ち、肩が美柑の腕に触れる。美柑はビクッと体を震わせたが、彼は目を覚ます様子もなく、再び深い眠りへと落ちていった。
他人の体温。その刺激が、逆に美柑を「リトへの背徳」へと加速させた。
もし今、隣の佐藤が目を覚まして、私のスカートの下で何が行われているか知ったら。
もしクラスメイトたちが、いつも完璧な美柑が新幹線の中で自慰をしていると気づいたら。
そんな想像が、美柑の背筋をゾクゾクとさせた。彼女は指の動きを少しずつ早めていく。布越しに伝わる自分の熱が、指先を湿らせていくのが分かる。
(リトに触れられたい……。リトの指で、もっと、奥まで……)
美柑の頭の中は、リトのことでいっぱいだった。朝、カバンに仕舞い込んだ「あのパンツ」の、鼻を突くような精液の匂いまでが幻覚のように漂ってくる。リトの愛液にまみれた自分を思い出し、美柑の腰は、座席の上で人知れず微かに浮き沈みを繰り返した。
高速で流れる景色の光が、美柑のまぶたの裏で白く明滅する。
彼女の指先は、さらに大胆になった。パンツのゴムの隙間から、熱を帯びた指を直接滑り込ませる。自身の溢れ出た雫で、指先はすぐにヌルリとした感触に包まれた。リトがいつも愛おしそうに、そして少し不器用にかき回してくれるその場所を、美柑は自分でなぞっていく。
「っ、はぁ……リト……リト……」
喉の奥で、兄の名前を繰り返す。自分をリトの色に染め上げたいという執着が、指先の動きに熱を込める。美柑の呼吸は次第に荒くなり、ブラウスの下で胸が激しく上下した。
幸恵たちの笑い声が聞こえるたびに、美柑の心臓は跳ね、感度はさらに増していく。他人の存在を感じる場所で、自分を慰める。それは美柑にとって、リトとの愛を再確認するための、最も純粋で淫らな方法だった。
指先が柔らかな肉のひだを割り、熱い蜜の源流へと辿り着く。美柑はそこを小さく円を描くように刺激し続けた。体中に電撃のような快感が走り、意識が白く、リトの色に塗りつぶされそうになる。
あと少し。あと少しで、あの朝の頂点に辿り着けるかもしれない。
美柑の腰が小さく痙攣し、足の指先が靴の中でギュッと丸まった。
その時だった。
『まもなく、京都です。京都を出ますと、次は新大阪に停まります――』
車内に響き渡った自動放送の声が、美柑の意識を現実へと引き戻した。
「はっ……!」
美柑は弾かれたように指を抜き、スカートの中から手を引き出した。同時に、隣の佐藤が「う、ん……」と声を漏らし、目を開けた。
「あ……着いた?」
佐藤は目を擦りながら、まだボーッとした様子で美柑を見た。美柑は必死に荒い呼吸を整え、額に滲んだ汗を手の甲で拭った。
「ええ、もうすぐ京都駅に着くみたいよ。降りる準備をしなきゃ」
美柑の声は、自分でも驚くほど冷徹で、いつも通りだった。しかし、スカートの下では、指先に残った粘り気のある熱が、自分の太ももを濡らしている。
「……おう。サンキュ、結城」
佐藤は欠伸をしながら立ち上がり、棚の荷物に手を伸ばした。
美柑は座席に座ったまま、スカートを整えた。指先がまだ熱い。股間の不快感という名の快感の余韻が、一歩踏み出すたびに自分を刺激するだろう。
「美柑! 京都着くよ! ほら、準備準備!」
通路の反対側から、幸恵が楽しそうに呼びかけてくる。
「分かっているわ。今行くわね」
美柑は立ち上がり、ボストンバッグのストラップを肩にかけた。バッグの底には、リトの匂い。そして今の自分には、リトを想って汚した自身の熱。
二つの「リトへの愛」を抱えたまま、美柑は新幹線のドアへと向かった。ホームに降り立つと、京都の湿り気を帯びた空気が彼女を包む。
結局、果てるまでには至らなかった。しかし、その中途半端に燻ぶった熱こそが、これから始まる京都の夜、彼女をさらなる狂おしい執着へと突き動かすことになる。
美柑は、少しだけ重くなった足取りで、修学旅行の旗を掲げる教師の元へと歩き出した。彼女の瞳には、観光地の華やかさなど一切映っていない。ただ、今夜再び独りになれる時間を、そしてリトの匂いに溺れられる瞬間を、彼女はただひたすらに渇望していた。