【ToLOVEる外伝】リトと美柑の秘められた日常 ―禁断の果実を食む兄妹― 作:芝刈り山
太秦映画村の喧騒は、美柑たちの興奮をさらに煽っていた。江戸時代の町並みが再現されたエリアに入ると、そこにはタイムスリップしたかのような非日常的な光景が広がっている。
「ねえ美柑、見て! あそこ、着物の着付け体験ができるみたいよ!」
真美が指差した先には、色鮮やかな暖簾がかかった「貸衣装・変身処」があった。幸恵も「やりたい! 町娘になって写真撮ろうよ!」と大賛成だ。美柑も、普段は家庭的なエプロン姿が多い自分にとって、華やかな着物に袖を通すという提案は魅力的に感じられた。
「ええ、いいわね。リトが見たら、なんて言うかしら……」
三人は期待に胸を膨らませ、店内に足を踏み入れた。
店内で彼女たちを迎えたのは、二十代半ばほどの若い男性従業員、木村だった。彼はカメラマンも兼任しており、普段から多くの観光客を相手にしていたが、店に入ってきた美柑を一目見た瞬間、その指先が止まった。
(……なんだ、この美少女は)
小学生とは思えない整った顔立ち。それでいて、まだ幼さを残した白い肌。木村は、美柑の持つ純粋さと、どこか大人びた色香が混ざり合う不思議な魅力に、一瞬で釘付けになった。
「いらっしゃい。町娘の体験コースだね。こっちの着物の中から好きなのを選んでいいよ」
木村は努めて平静を装いながら、美柑に赤い花模様の可愛らしい着物を手渡した。美柑はその柔らかな生地に触れ、瞳を輝かせる。
「ありがとうございます。……あの、着る時に気をつけることはありますか?」
「そうだね……。着物は体のラインを綺麗に見せるのがコツだよ。あと、本格的に体験するなら、下着はないほうが形が崩れないって言われてるけどね。まあ、子供だし無理しなくていいよ」
木村は冗談めかして言ったが、美柑の脳裏には、修学旅行前に図書室で調べた「日本の伝統文化」の知識が蘇っていた。
(そういえば、本には『和装の際は下着を着用しないのが伝統的な嗜み』って書いてあったわ……)
美柑は、何事も完璧にこなしたい性格だ。せっかくの体験なら、伝統に則って本格的に楽しみたい。それに、今朝から自分の「白」を巡って、植松先生やバスでの出来事など、下着に意識が向きすぎていたこともあった。
(いっそ、脱いでしまったほうが……解放されるかしら)
広い試着室に入ると、幸恵と真美は既にはしゃぎながら服を脱ぎ始めていた。美柑は一呼吸置くと、決意を込めて服を脱ぎ捨てた。そして、最後の一枚――。
今朝、植松の部屋で履き直したばかりの、あの名前入りの真っ白な綿パンツ。
それを、迷うことなく脱ぎ捨てた。
鏡に映る自分の姿は、一糸まとわぬ無垢な小学生そのものだった。美柑は少しだけ自分の肌を抱きしめるように腕を回したが、すぐに手際よく肌襦袢をつけ、その上に赤い着物を羽織った。
「美柑、早いね! うわあ、すっごく似合ってる!」
「ありがとう。二人も、素敵よ」
三人は帯を締め、髪を整えてもらうと、楽しそうに店の外へと繰り出していった。美柑の足元では、着物の裾が揺れるたびに、今まで感じたことのない涼やかな風が秘部を撫でる。下着を履いていないという背徳感と解放感。それが美柑の表情に、これまでにない艶やかな輝きを与えていた。
一方、店内に残った木村は、客が立ち去った後の試着室の片付けに入った。
子供たちが脱ぎ捨てた服が、それぞれの籠にまとめられている。木村は何気なく美柑が使っていた籠に目をやった。
「……っ!」
そこには、私服に混じって、ぽつんと置かれた白い布切れがあった。
木村は周囲に誰もいないことを確認すると、吸い寄せられるようにその籠へと歩み寄った。震える手でその布を持ち上げる。
それは、まだ温もりが残っているかのような、真っ白な綿パンツだった。
(脱いでいったのか……。本当に……)
彼はタグを裏返した。そこには、マジックで「ミカン」と、整った文字で名前が書かれている。間違いなく、あの美少女の忘れ物だ。いや、彼女が「本格的」であるために、あえて置いていったもの。
木村は我慢できず、そのパンツを両手で包み込み、鼻を押し当てた。
「はぁ……っ……。なんていい匂いだ……」
石鹸の清潔な香りと、先ほどまで彼女の体温に触れていた場所から漂う、甘酸っぱく、どこか幼い生命の匂い。木村の頭の中は一瞬で美柑の肢体でいっぱいになった。
(あの着物の下は……今、真っ裸なのか。このパンツを履かずに、あの姿で外を歩いているのか……!)
木村は激しい衝動に駆られた。このままこの「証拠」をポケットに隠し、持ち帰ってしまいたい。自分のものにして、毎晩この匂いに溺れたい。
しかし、彼はプロの従業員だ。もしこれが紛失したとなれば、店の信用は失墜し、自分の立場も危うくなる。欲望と理性が、彼の中で激しく火花を散らした。
「……くそっ、ダメだ。今は、戻さなきゃ」
木村は断腸の思いで、そのパンツを元の籠へと戻した。名残惜しそうに、指先で最後にもう一度だけクロッチ部分をなぞる。そこには、彼女の存在を証明するような、微かな湿り気があるような気がした。
しかし、彼の欲望は形を変えた。
「持ち帰れないなら、今、この目で確認してやる」
木村は店長に「ロケハンのついでに、さっきの生徒たちの撮影フォローに行ってきます」と告げ、一眼レフカメラを肩に提げて店を飛び出した。
映画村のセットの中。赤い着物を翻し、ノーパンという秘密を抱えたまま、無邪気に笑う美柑。
その姿をファインダーに収めるため、木村は獲物を追う猟師のような目で、江戸の町へと走り出した。