魔王と勇者の物語~飢えた忌み子に命を分け与えたら、暴君女帝に育ってしまった~ 作:猫屋敷てん
バレーシアの一等地にあるその宿は、この寂れた都市を思わせないほどに豪華であった。
それは確かに一流宿であるというのもあるが、フレイヤが訪れることを理解していた故の歓迎だろう。
この地を治める貴族も、フレイヤをもてなすために宿屋へ援助を行っていた。
豪勢な食事、綺麗な部屋、しかしアレクが心の底から喜ぶことはなかった。
もちろん表面的には取り繕っている。いつものアレクのようにふるまっている。しかしフレイヤはわかっているのだ。
ずっとアレクは闇の中にいると。
「…………」
高級宿屋の最上階。スイートルームを貸し切って、二人だけで夜を過ごしていた。
そんな夜に、アレクは窓の外を見つめていた。
その視界に映るのは父と母が死んだ都市。そしてフレイヤによって壊れた都市。
その罪を見つめている。
「アレク。……大丈夫か?」
「ん? もちろんだ。今日のご飯は最高だったし、この部屋も凄い豪華だし、いい気分だ」
フレイヤが話しかければ、アレクは笑って答えてくれた。その屈託のない笑みは、いつものアレクのものみたい。
でもフレイヤにはわかっているのだ。
「アレク、今日はもう休もう。落ち着く香も焚く。眠れば、少しは……」
「……そうだな。寝るか。こんな宿屋で寝れるなんて、何かワクワクしてくるな」
そう言って、アレクはベッドへと歩む。
ふかふかとした巨大なベッドは、これだけで平民の目を飛び出させるほど高価なのだろう。
そんなベッドの上に、アレクは寝転がる。
「…………」
その一連の動作全てが痛ましく思った。普通に振舞おうとするのは、アレクの強さだ。
全部自分で抱え込んで、決して誰かに八つ当たりしようなんて考えていない。心配させないようにいつも通り振舞って、全部自分の中へ押し込んでいる。
その姿を見るたびに、フレイヤの胸は罪悪感で張り裂けそうになるのだ。
あのままでは、アレクが壊れてしまうと、そう思う。
八つ当たりをしてくれれば良かったのに。
お前が悪いのだと敵意をぶつけてくれれば、この胸にある罪悪感も晴れるだろう。
フレイヤもまた、そっとベッドへ近づき、そのヘリに腰かけた。
部屋は暖炉の火で温かいのに、フレイヤの指先は氷のように冷え切っていた。
ふかふかの枕に沈んだアレクの瞳には、豪華な天井が映っているだけで、その奥には何もなかった。
「のうアレク……」
「ん……今日は、もう寝ようか」
そう言って、アレクは目を瞑る。毎日のように体を重ねていたというのに、まるで突き放すようにアレクは言う。
わかっている。そんな気分じゃないのだろう。そんな気分になれるわけがない。
「……アレク。わらわを、使ってよいぞ」
けれどフレイヤは、そう言った。
「フレイヤ?」
「わらわは全て、アレクの物じゃ」
フレイヤは、震える手でドレスの肩紐に指をかけた。
フレイヤには、これしかわからなかった。
良き帝国にすることで償う? 賠償金を払う? 様々思いつくその全てが、空っぽで中身のない贖罪にしか思えない。
今までそれこそが償いであると思っていたのに、本当にそれが正しいのかアレクを見てわからなくなったのだ。
だからフレイヤは、この体を差し出す。
己をアレクに差し出し、道具のように扱ってもらうことで、一瞬でもアレクの中にある怒りや憎しみを紛らわせたい。
「……今日は、ごめんな」
「好きに、してくれて良い。殴っても、乱暴に扱っても、構わぬ。……わらわが、そうして欲しいのじゃ」
ドレスが滑り落ち、白い肌が暖炉の火に赤く照らされる。
「ごめんなさい。アレク」
フレイヤは、自分の身体をアレクに押し付けた。
それは償いにもならない、ただの身勝手な献身だ。
自分が楽になりたいから、贖罪となる何かがしたかった。
そしてこれしか、フレイヤはアレクにできる贖罪を思いつかなかった。
自分を物のように、家畜のように扱ってくれれば、少しは救われるような気がした。
これも決してアレクのためではないのだろう。
フレイヤは自分のために、体を差し出している。
「ッフレイヤ!」
そんなフレイヤの望みを叶えるよう、起き上がったアレクはフレイヤを押し倒した。
その瞳に複雑でぐちゃぐちゃな感情を灯して、ならその全てをぶつけてやろうというように獰猛な雄の色を宿して居る。
「アレク……全てをわらわにぶつけるのじゃ。そなたの父と母を殺した最悪な女へ、全てをな」
そこでアレクにあった理性の糸は全て切られることになる。
◇
「ッ、アレク……!」
組み伏せられた衝撃で、豪華なベッドが大きく軋む。
覆いかぶさるアレクの瞳は、もはやフレイヤの知るものではなかった。
暗い感情と、やり場のない絶望が混ざり合い、獲物を仕留める野獣のような冷徹さと獰猛さが宿っている。
「……全てをぶつけろ、と言ったな。フレイヤ」
低く、震える声だ。アレクの手が、フレイヤの細い手首を掴んでベッドに縫い付けた。
その力は、フレイヤの柔らかな肌を容易く赤く変えていく。
痛みが走るが、フレイヤはその痛みこそが今自分が最も欲している罰であると感じていた。
「うむ。そうじゃアレク。わらわを……わらわのこの醜い身体を、そなたの好きにするがよい。叩いても、壊しても構わぬ。それがわらわの……罪の報いなのじゃから……」
「黙れ」
「んっ……」
アレクは、フレイヤの言葉を遮るように、乱暴に唇を奪った。
愛を交わすためのキスではない。もっと乱暴で、自分勝手なキス。フレイヤの舌を強引に引き出し、歯を立てて噛み切らんばかりに貪る。
「じゅっ……ん、ぅ♡ ちゅぅ、ちゅぷっ……♡ れろ、れろちゅぅ♡」
そんな乱暴なキスでも、フレイヤの体は熱くなった。
心が燃え上がり、蜜を分泌しているのがよくわかる。なんと浅ましいのだろうと、フレイヤの冷静な部分が自虐した。
「ぷはっ……こんな乱暴なキスで、舌絡めて、喜んでるのか?」
「す、すまぬ。アレクの好きにして良いのじゃ。ほら、わらわのことなど気にせず、道具のようにその思いをぶつけよ」
「っ……」
アレクの手が、言われるがままに露わになったフレイヤの白い肢体へと伸びる。
アレクは優しさなど一切捨て去っていた。豊満な胸を千切れんばかりに強く揉みしだき、指先を鋭く食い込ませる。
フレイヤが「ひぃ……っ♡」と短く悲鳴を上げるたびに、アレクの瞳にはさらに深い闇が宿っていく。
「デカすぎるッ……。このっ、このっ!」
「ん、もっと……もっとじゃアレク。わらわを、人間として扱わぬほどに、激しくしてくれっ!」
乱暴に胸を揉みしだかれるのが、何よりも心が満たされた。アレクの全てを受け止めているという、贖罪であるような気分になっていた。
そしてフレイヤは自然と、自らその脚を大きく割る。
その秘部はすでに、甘い蜜で濡れそぼっている。アレクはそれを一瞥すると、一言も発さず、自身の憤怒のように硬く勃起した肉棒を、何の予兆もなく一気に突き立てた。
「あ、がぁ、あぁあああッ!!!♡♡♡」
悲鳴ような嬌声が、スイートルームの天井に突き刺さる。
一切の愛撫がない、ただの暴力的な挿入。いつも丁寧に気遣ってくれるというのに、今回ばかりはまるでオナホへ挿入するかの如くもの。
フレイヤの身体は、その余りの衝撃に大きく跳ね、背中を弓なりに反らした。
「……っ、はぁ、はぁ、はぁ! 良いぞ、その調子じゃ。全部、全部、内にある全てをぶつけるのじゃ」
「言われなくてもっ、そうしてやる!」
アレクはフレイヤを逃さぬよう、その銀髪を乱暴に掴んで顔を固定させた。
アレクは、目の前の女を愛している。愛しているからこそ、今グチャグチャになっているのだ。
その愛を捨てるように、両親を奪った憎き女帝へ復讐するように、鋭い眼光を飛ばしている。
それこそが、フレイヤの望んだ贖罪だ。
全てをフレイヤのせいであるとし、こうして罰を与えて欲しい。その望み通り、アレクはフレイヤを組み敷いている。
「痛いか。フレイヤ」
「あ、はぁ……っ、い、痛い……痛いぞ、アレク! でも、いい……これで、いいのじゃっ!」
「ならもっと刻みつけてやる。お前が何をしたか。……この身体に、一生消えないくらいにな」
そう言ってアレクは、腰を荒々しく動かし始めた。
ドシュ、ドシュという、生々しく重苦しいピストン音が部屋に響く。肉と肉がぶつかり合う、原始的な雄と雌の音だ。
フレイヤの子宮を、アレクの硬いちんぽが容赦なく抉り抜いていく。
アレクはフレイヤのことなど一切考えず、導かれるままに、何度も何度も深く、最奥へとその怒りを打ち込んだ。
「はぁ、はぁ……ぅあっ♡♡♡」
フレイヤは、視界が白く点滅するほどの快楽と痛みに溺れていた。
アレクに上から覆いかぶされ、オナホに挿入するような種付けプレス。怒りのままに、精液をコキ捨てるだけに使われることが、何よりも嬉しいことだ。
そしてフレイヤは、己を組み敷くアレクの肩に必死に噛み付いた。
アレクが自分を滅茶苦茶にしてくれるように。
アレクが自分を、永遠にこの地獄へと繋ぎ止めてくれるように。
「アレク……! アレクぅ……!! 壊して。わらわを、中から、めちゃめちゃに壊しておくれ……っ♡♡」
フレイヤは絶頂を迎えながらも「ごめんなさい」と何度も繰り返した。
イキ潮を吹きながら、ベッドを汚して無様に謝る姿は滑稽にすら見えただろう。
アレクはその謝罪を飲み込むようにして、さらに腰を速めた。
最悪の女帝を倒すため、不死の勇者が最奥を突く。
「あ、あはぁッ♡♡ アレク、アレクぅ……ッ! そなたの、熱いのがぁ……っ♡♡」
フレイヤの身体が激しく痙攣し、限界に達したその瞬間。
アレクもまた、自分の中に溜まった黒いモノを吐き出すかのように、猛烈な勢いで腰を押し当てた。
「っ……、ぁあああああッ!!!」
――ドビュルルルルルルルルル!!!
アレクの咆哮と共に、フレイヤの子宮へと、熱い精液が注ぎ込まれる。
それはいつものように甘い精液ではない。もっとドロドロとして、どす黒い、けれど確かに愛によって生まれたザーメン。
それが子宮を満たし、結合部から漏れ出るほどの量放たれていた。
フレイヤは白目を剥き、よだれを垂らしながら、アレクの全てを呑み込んだ。
腹の奥が、焼けるように熱い。
その熱さがフレイヤにとっては、アレクから与えられた罰であり、救いであった。
射精が終わっても、アレクはフレイヤを離さなかった。
重なったまま、荒い息を吐き続ける。
二人の汗と涙が混ざり合い、すでにシーツはビチョビチョだ。
しかしまだ、夜は始まったばかりだ。
一度の絶頂では、二人の絶望は消えない。
アレクは自分の中にある闇が空っぽになるまで、この行為を終わらせるつもりはなかった。
「……まだだ。まだ、終わらせないぞ。フレイヤ」
アレクの冷たい声が、フレイヤの耳元で囁かれた。
フレイヤは少しの恐怖に震えながらも、大きな歓喜に満ちた表情で頷く。
「もちろんじゃ。もーっと、空っぽになるまで、わらわへとぶつけるのじゃ」
地獄のような、それでいてあまりにも純粋な、二人だけの夜が更けていく。
◇
室内は異常なほどの性臭に満たされていた。
もし清掃員が入れば、どのようなことをしたのだと困惑するほどの酷い臭いが満ちている。
そしてもちろん性臭だけではない。水音と、無様な女の声が響いていた。
「お゛♡ うぅ゛♡ は、げ、し゛、い゛♡♡♡♡」
バチュン、バチュンと乱暴に肉と肉がぶつかる音がする。
窓に手を付いたフレイヤと、それを後ろから乱暴に犯すアレク。
フレイヤは腹の底から響いてくる嬌声を上げながら、息も絶え絶えにアレクのオナホまんこになっていた。
もう何時間セックスしているかわからない。三時間は間違いなく経っている。もしかしたら五時間は経っているかもしれない。
その時間の全てが贖罪の時。
フレイヤにとって、何よりも嬉しい時だった。
「……あ♡ ぁ♡ アレク……っ、アレクぅ……ッ♡♡」
窓に押し付けられたフレイヤの視界には、冷たく静まり返ったバレーシアの街並みが映っていた。
背後から容赦なく叩きつけられる衝撃。数時間を経てもなお衰えぬアレクの猛りは、フレイヤの奥の最も敏感な場所を、容赦なく抉り続けている。
もうすでにアレクは空っぽなのかもしれない。
フレイヤの身体も、すでに限界をとうに超えていた。
脚はガクガクと震え、窓を支える手には力が入らず、爪が窓枠をキリキリと掻きむしる。けれど、その肉体的な苦痛が深まれば深まるほど、フレイヤの心には「赦されている」という歪な安堵が染み渡っていく。
「いい、ぞ、アレク……。わらわを、もっと……もっと、ぐちゃぐちゃにするのじゃ。そなたがわらわへの怒りを忘れるほどに……っ、あ、はぁぁぁッ♡♡」
フレイヤが掠れた声で、縋るように懇願する。
その言葉が引き金となったのか、アレクはフレイヤの腰を両手で強く掴み、指が肉に食い込むほどの力で引き寄せた。
「っ……! あ、あぁああああああッ!!!」
アレクの喉から、獣のような咆哮が漏れる。
これまで溜め込んできた悲しみ。両親への後悔。
そして、仇である女を愛し、抱かずにはいられない自分への凄まじい嫌悪。
その全てを、この最後の一撃に込めるように、アレクは腰を深く、限界まで叩きつけた。
――ドビュルルルルッ、ドクッ、ドクゥッ!!
激しい痙攣と共に、フレイヤの胎内へと、今日一番の熱量を持った白濁液が爆発するように注ぎ込まれる。
溢れ出し、フレイヤの脚に、そして床へと滴り落ちるほどの大量。
アレクの最後の一撃ともなったそれは、フレイヤの子宮を満たし、全身を痺れさせた。
「ひ、ひぃぃいいいッ♡♡♡ ん、んんんんんんんんんッ!!!」
フレイヤは白目を剥き、意識が遠のくほどの絶頂に達していた。完全に頭が馬鹿になっている。
けれど何よりも、満たされている。
射精が終わっても、アレクは腰を離さず、フレイヤの背中に覆いかぶさるようにして荒い息を吐き続けた。
窓ガラスが白く曇り、二人の混ざり合った汗が滴り落ちる。
全てを出し切り、空っぽになった静寂の中で、アレクは初めてフレイヤの耳元で小さく泣きそうな声で呟いた。
「……フレイヤ。……ごめんな。ありがとう」
「アレ、ク……」
背後から、結合したまま、ぎゅぅぅとアレクは抱き着いて、礼を言った。
「す、ま、ぬ。わらわ、が、許されたいから、こうしたのじゃ。わらわ自身の、ためじゃ」
「フレイヤ……フレイヤは! …………いや、何でもない」
アレクはそれ以上何も言わなかった。
もうこれで良い。これで全部丸く収めよう。
「寝よう、フレイヤ」
「……うむ」
それ以上の言葉は必要ない。
先ほど抱えていた真っ黒なものは今、全てフレイヤの子宮に吐き出したのだから。
そして吐き出されることによって、フレイヤもまた赦されたように思う。
そのままふらふらと、二人は濡れたベッドに倒れこみ、隙間ないほどに強く抱き合った。
フレイヤの柔らかな体を抱いて、甘えるように、アレクはその銀髪に顔をうずめる。
父と母を殺した仇。やはりどこまで行っても、アレクはそう思えなかった。
フレイヤの罪を理解して、それが己の家族や故郷を滅ぼしたとしても、恨めなかった。
最悪な女帝となって、帝国が絶望に落ちたとしても、アレクは身勝手にも思いを貫く。
「フレイヤ……」
アレクがフレイヤを、愛してしまったからだ。
あの日、フレイヤを助けてしまった日から、ずっとずっと愛している。
たとえ十年北の果てへ追放されたとしても、忘れられずに戻ってくるほどに愛している。
たとえ世界と天秤にかけたとしても、フレイヤを選ぶほど愛している。
それがアレクの思いである。