メイドである以上メイドとして振る舞い先生をメイドとして支えるつもりであった。
だが、彼女は気づいてしまったのだ。
先生が、多くの女生徒から焦がれるようなまなざしで見つめられている事を。
多くの人から信頼と尊敬のまなざしでみつめられる「先生」が、けれど、そんな女生徒たちによこしまな感情を抱いてしまう瞬間がある事を。
――私が支える先生が先生でいられなくなるなら、私はメイドとして、先生でなくなった先生を支えなくては。
これは、そんな先生のわずかな隙を突いた、メイドになったつもりの少女のお話。
飛鳥馬 トキの運命は、もう決まっていたようなものだった。
全く、酷い男に騙されたようなもので。
運命そのものを捻じ曲げられたような、そんな出会い方をしていたのに、憎むことすらできはしなかった。
「……また、後ろからですか? 本当、先生はメイドを屈服させるのがお好きなんですね?」
ただ悪辣な男ならその方がよかった。
だけれど彼女の先輩たちも含め、どの生徒もその人を信頼に満ちたまなざしで見ているのを知っていた。
自分がからかっても、時に誘惑じみた事をして見せても、いたずらをした子供であるかのように優しい目で見て、そんな目で見られる度にトキは丸め込まれてしまいそうな感覚を覚えていた。
まるで、拾われた子犬が、よく知りもしない相手に懐くかのように。
「こういう姿勢、ドギースタイルって言うそうですね? 犬のようにメイドを四つん這いにさせて、後ろから……んっ」
先生と呼ばれながら、先生にあるまじき行いをするこの男が、まともな男のはずがなかった。
――全く、いったい何人の生徒をこんな風に弄んでいるのやら。
そう思いながらトキは口元をにぃ、と歪める。
そう、大人なんて、子供を平気で搾取するし、弄ぶもの。
いい人そうに見えて、優しくしてきて、懐かせて、心を癒されて……あったかくて。
「んっ、あ……っ、先、生? そんな風に激しくしても大丈夫なんですか?」
「はぅっ……そんなペース、では、私相手に、すぐに終わってしまいます、よ? 興奮、なさってるんですか? ふふっ」
「あっ……あっあっあっ……そんな、強く突いてきて、夢中に、なって……っ」
情けない人だった。
メイド一人、思うように犯せない。黙らせられない。
先生の周りには可愛い女の子が何人もいて、実際欲情してしまう事も少なからずあるはずなのに、先生は、どこまでも先生であることにこだわって、女の子を欲望のはけ口として『使えない』。
それが、トキにはおかしくて仕方なかった。
大人なのに。皆が尊敬する人なのに。皆が大好きな、独占したいと思う、きっと初恋の――
そう思いながら、懐いてしまった子犬は笑うのだ。
――ああ、そうか、私も。
「はっ、あはっ……しかた、ないですね。いいですよ? いくら、でも、この屈服させたメイドにぶつければ、いいじゃないですか?」
「どうせ私が相手をしてあげなければ、一人で情けなく済ませていたのでしょう? なら、私の膣内なら好きに使っても大丈夫、ですから」
「悪さをしたメイドをおしおきするって名目なら、何しても、問題、無いですから……っ」
――他の子を、そういう用途で使ってしまわないように。
この情けない大人を、けれど尊敬のまなざしで見つめる、数多くの人たちを失望させたくなんてなかった。
博愛的な理由なんかではなく、もっと浅ましく、利己的な理由で。
自分が使ってほしいと思った、そんな相手が、他の娘に失望されるのが、我慢ならなかったから。
「ほらっ、ほらっ、悪さをしたメイドに、沢山解らせてくださいっ!」
「メイドに思う様におしおきして、すべて吐き出して……また、『先生』に戻ればいいじゃないですか」
「私と二人きりの時だけ『ご主人様』と『メイド』で。他の人の前ではいつもの『先生』でいいでしょう? だから……っ」
――だから、全部私に叩きつけてほしい。
先生が先生でいられなくなってしまうくらいに激しい大人の情欲を、全部。
全部全部、私というメイドに吐き出して、そうしてまた、いつもの先生に戻れるような。
そんなくらいに、激しく犯してほしい。
そう思いながら、そう感じながら、少女は大人の激しい行為を受け止めようとしていた。
どれだけ酷い暴力にさらされても涼しい顔が出来たのに、その時ばかりは全く余裕なく、息を荒げながら。
「んぁ……あ、はっ♥」
思うままに激しく貫かれて、思う様に最奥を抉られて背筋をかけあがる強い快感に脳髄を焼かれそうになりながら。
一番深い場所で吐き捨てられていく体液を受け止めながら、トキは精一杯の強がりの笑みを浮かべた。
――また一つ、メイドとして役に立てました。
それが、メイドとしての自分の役割なのだと、勝手にそう思い込みながら。
「――ふぅ。随分たくさん出されましたね? 一体普段からどれだけ溜め込んでいたのやら」
「いいですか? メイドというのは確かにご主人様の性欲を満たすために使えますが、メイドにも役割というものがあるのです」
「ですから、決して他の……先輩方にはこんなことさせないでください。特にネル先輩に頼むと殺されますので」
「それと終わった後のアフターケアは必要ありません。先生は何も気になさらずお仕事に戻って……ふぁっ、そんな、拭いていただかなくても……んっ♥」
いつも予想外の事をしてくるこの大人に、トキはいつも乱されてばかりだった。
自分の細い指ですらその割れ目に這わせれば変な感覚を覚えてしまうのに、大人の、それも男の太い指で触れられれば、あられもない声が漏れてしまい。
「そんなっ、んっ♥ 終わったの、ですから……もう、それ、くらい、に……っ♥」
「んあっ♥ ひどい人、ですっ♥ 終わったのに♥ 終わったはずなのに、また……また……ぁっ♥」
終わってなどいなかったのだ。
そんな事すらトキはよく知らず、そして目の前の大人には見透かされていた。
意地悪するように割れ目をティッシュ越しにこすられて、どろどろとした、体液同士が混じり合った液体が溢れ零れ、トキは抑えきれない嬌声を漏らす。
「はぁっ、はぁっ♥ せんせ……♥ 何を、して――おいたは、駄目です♥」
「えっ? 『先生じゃなくてご主人様だからいいんでしょ?』って……それは……」
「……はい、ご主人様なら……♥」
――ご主人様がそう願うのでしたら。
弄られ過ぎてぼんやりとしてきた頭で、トキはもう、本音と建て前なんて忘れてしまいそうになってしまっていた。
そんななのに、これから二回戦が始まるのだ。
――ああ、なんて酷い人なのでしょう。きっとこの方は、私の気持ちすら見透かして――
そんな気持ちになりながら、もう憎まれ口すら言えなくなって。
それからはもう、メイドの嬌声だけが部屋に響くようになった。