折角男子に転生したので思いっきり美少年BLを楽しむ 作:もしもボックスがあったら絶対これにする
「ほんとうに、男の子同士だとこんなに簡単に行けるんだ……」
ベッドに横たわる少年カインは、目の前ですやすやと寝息を立てて眠る可愛らしい少年をじっと眺めながら、しみじみとつぶやいた。なお、二人とも半裸であり、目の前の少年の体には愛された印が至る所につけられている。
カインは元女性の転生者である。前世の世界は男女比が狂っていた世界であった。男子より女子の方が多く、精子バンクの利用が一般化したために一夫多妻制も崩れ、そもそも男子が恋愛しようとも結婚しようともしなくなっていた。そんな世界にあっては当然、性愛から疎外される女性が多く出てくるし、処女をだいぶ拗らせる連中も出てくる。
彼女もご多分に漏れず、なぜ自分に幼馴染の可愛い男子がいないのか、なぜ会社の開発部署には男子が一人もいないのか、相当な恨み言を漏らしていた。甥っ子がいたので、彼が成人するのを待って交際を申し込む気でいたが、それをめざとく察した妹はさっさと彼を上京させて、連絡先も隠してしまった。折角あれだけお年玉をあげていたのに!全くのムダ金であった。
ついぞ男子と交わることなく、不摂生が祟って潰えた短い人生であった。ツンデレ男子を堕とすのも、奥ゆかしいメガネっ子にセクハラして赤面させるのも、全ては夢の中の夢であった。
絶望に打ちひしがれた人生の末路であったが、それを神様がみかねたのか次なるチャンスとしてここ中世ファンタジー風の世界に転生した。神様に会ってないので実際のところはわからない。
転生したこの世界も男子の方がかなり少ないが、一つ前世と違うのは、彼女は男子になったということだ。男子が少ないと男子同士でつるむことが多くなり、自然と仲良くなりやすい。しかもこの世界では、前世ではまるでおとぎ話のように思っていたBL展開が往々にして訪れるという、神のような世界である。
性別一つでこうも生きやすさが変わるのかと驚愕する一方、せっかくならと気に入った男子に手を出すことにした。
一つ学んだことは、彼らはリードされたがっているということだ。しかしながら、世の女子は粗野で乱暴であるか、自信なさげでへらへらしているかの二つに一つしかない。世の男子たちにとってはとてもではないが恋愛対象にはならないのであり、この世界でもお見合いで結婚しなければならない子たちを除けば、女子とできるだけ付き合いたくないという男子がいるのも不思議ではなかった。そういう子たちは仲良く同性で輪を作っていることが多く、そして前世の感覚から言えば恋人と言えるほど親密な間柄になることもままあった。
カインは恵まれた魔法適性と優れた剣術によって名声を高め、柄の悪い女に絡まれてる男子を助ける形で関係を始めた。その後、一緒にクエストに行ったり街中デートをしたりして親交を深めているうちに、向こうから手を繋いでくるのだ。
カッコいいから、安心するから、ドキドキするから、と。
こんなにも簡単だったのか
なぜ前世ではあんなにも難しかったのかと、むしろ肩透かしを喰らった気分だったが、前世ではそもそも出会いすらなかったのでむべなることである。
その後、無事に全部ヤった。クエストが終わった日の夜はベッドの上で第二ラウンドをしたことも何回もある。一夜を共に過ごした男子の数は片手に収まり切れないほどだ。
目の前で寝ている少年はその一人だ。ただ、同棲するほどに他の子よりも仲はいい。
今日はいくつかのクエストを終わらせた打ち上げとして二人で飲んだら、そのままやってしまった日である。やっていた時は多幸感でいっぱいであったが、一晩開けてみるとあまりにうまくいきすぎてつまらなくなってしまった。
確かに目の前の男子は可愛いし、前世なら垂涎ものであっただろう。
それは今でも確かに同じであるはずなのだ。しかしなんだろうか、この虚無感は……。
「なんか難しい顔してる。どうしたの?」
いつの間にか起きていた彼ーーアルベルト、いつもはアルと呼んでいるーーが、そう尋ねた。『なんでもない』と言いながら誤魔化すようにキスする。
(あ、やっぱこれいいわ。好き、無限にできる。もっとしよ……)
「ん〜、いつまでするのぉ」
アルは顔を背けながらむすっとしたように形のいい眉をひそめて見せる。
(やっぱり可愛い)
「アルに励ましてもらわないと一日が始まらないからね」
「そう言ってまた他の男子のとこにも行くんでしょ?」
「……ダメ?」
「ん〜〜〜」
唸りながらアルは布団の中に潜り込んで、カインの腕を掴む。
「今日は一日宿に居ようよ。溜まってたクエストも全部終わったんだしさ」
布団の中から顔だけちょこんと出して、上目遣いになるようにしてアルはカインを見やる。
(……萌え死させる気か?)
アルはカインの質問には直接は答えない。重婚が当たり前の社会にあって、一人を独占するという感覚は薄い。とはいえそう言う感情が全くないわけではなく、このようにささやかな抵抗を見せるところもまた愛らしい。
彼は昔親切そうに声をかけてきた女に裏道で襲われたことがあるらしく、そのトラウマのために女性とは関係を持つことを避けてきたという。カインはギルドから出させる緊急クエストを処理する時に彼と一緒になり、彼にとって安心できる同性として親交を深めていくうちに、彼の寂しさや心の傷を癒す存在として深いつながりを持つようになった。
前世のころさんざん妄想してシミュレーションした、イケメン仕草が聞いたのかもしれないとカインは考えている。『アルの流れるような艶やかな髪が好きだ』とか『どんな女にも触らせたくないくらい純粋で可愛らしい』とか、彼を抱きしめながら囁く歯の浮くようなセリフの数々。王子様ロールプレイをしていなければ恥ずかしさのために噛み噛みであったことだろう。
「近いうちに大物狩りしようと思って。そのための下見しておこうって思ってる」
「……危なくない?」
アルが不安そうな顔をする。冒険者としての実力の差が大きいので、たまにアルを置いてカインが単独で、あるいは他のパーティと協力して高難易度クエストをこなすことがままある。
前に一度こっそりと着いてきたアルを見つけた時は肝を冷やして、それはそれはこってり絞った。それ以来ついてくることは無くなったが、あの時はなぜか少し嬉しそうですらあった。
「今日は見てくるだけ。ちょっと強すぎたら他のパーティにも手伝ってもらおうかなとは思ってる。安心して」
「ん……」
アルは憂いたように目を背ける。
(こ、これは……「僕がもっと強かったら一緒に行けるのに、なんでこんなに実力差があるんだろう。やだなぁ……」の顔!アニメで見た表情がここにッ!かわいすぎる!!)
「我慢ならん!」
「え!?」
カインはアルの上にガバッと覆い被さり、片手でアルの両腕を彼の頭の上で重ねて縫い止め、もう片方の手で胸板のかわいらしい蕾をいじり始める。それに合わせて深く溶け合うようなキスもする。
「んん〜〜!」
ぷはっと息継ぎをしたアルは、非難がましく『ちょっと、性欲強くない!?』と暴れようとするが、うるさい口はそのまま塞ぐ。
「んぅッ!?」
世の男子は総じて小柄で力が弱い。しかしカインは剣士として鍛えているし、魔法職として筋力バフもすぐにかけられるので、今の状況ではアルに逃れる術はない。
日が高く上るまで、嬌声は鳴り止まなかったという。
多分、『男の娘』同士が絡み合うのに適した舞台設定って何気に逆転ものだと思うんですよね。なんでそういう可愛らしい服や振る舞いが自然なのかも、お互いの距離が近くなるのかの説明もしやすいので。
なんというか、『腐る必要がない』みたいな感覚でしょうかね。
ま、まぁ、そのために遠回りな舞台設定が必要なのでコスパが悪いと言えばコスパが悪いかもしれないですが……。