折角男子に転生したので思いっきり美少年BLを楽しむ 作:もしもボックスがあったら絶対これにする
可憐な花を見た。
誇らしげに広々と葉を広げ、広い草原の中でその花だけがキリッと背筋を伸ばして咲いている。
人をその美しさで魅了するのに、摘まれるのを拒むような高潔な印象を与える。
もし、彼を花に例えるとちょうど、こういう冷たくも凛々しい花になっただろう。
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それは、大物ーーギルドで、近場に出現した巨大な魔獣をこういうことがあるーー狩りに向けた下準備のため、バクルクネスーーカインがいる都市、魔国との国境沿いにあるーーから離れた山深くに入った時のことである。
この山々はタタルス山脈と言い、魔国との国境をも作っている。うず高く聳え立つ山の峰が物理的な障壁になるのに加えて、山の中には高頻度で巨大な魔獣が姿を現すためである。
魔素密度が高く、魔物があっという間に成長してしまうらしい。
バクルクネスは前哨基地として魔国の動向を監視するのに加えて、都市周辺の人里に魔獣が降りてこないように監視している。少なくとも、そういう風に機能するよう期待されている。
最近、「結晶を背負う鈍重な魔獣」が発見されたという。生活圏が人里に近いため、念のため討伐、ないし山深くまで追い立てることが求められた。
カインは目撃情報からどう攻略しようか考えながら山を進んでいると、ふとピカっと山頂付近が光った気がした。
自分以外にこのクエストを受けた人もいない。冒険者といえど、そう簡単には山には入らない。では、魔族であろうか。魔族の中には腕試しのために山で狩りをする者もいるらしい。奇特な趣味だとは思うが、向こうでは力こそが正義なのであろう。
光った場所に近づいてみると、風の流れに乗って声が幾つか聞こえてきた。
多くは女性の低めの声。その中に、透き通るような声でありながら、強い芯があることを感じさせる男子の声が聞こえてきた。
(こんなところに男子が?)
草陰から顔を出してのぞいたとき、カイルの体に痺れるような電撃が走った。
そこには、凛と咲いた花の如き美しい男子がいた。
黒い外套を身にまとい、下に真っ白い衣装を着こなした魔族の男子がいた。
白く透き通った肌、意志の強さを感じさせるキリッとした目元、燃えるように赤い瞳。
長く黒い外套から伸ばされた腕の白さがはっきりとしたコントラストを生み、なおのこと美しさと異質さを際立たせる。
倒れ伏した結晶の魔物を前に、彼はテキパキと指示を飛ばしていた。
魔族の中でも珍しい、男子の指揮官であった。
(かわいすぎる!!)
カインは目をぱぁと輝かせた。
今までカインが見てきたのは、おしとやかだったりかわいらしい子が多かった。あのようなクールで、ともすれば棘を感じる男子は今まで会ったことはなかった。
おそらく、彼は今まで周りの女性魔族にも体を許したことはないのだろう。
彼が快楽を知った時、どう体が震えるんだろう?あのクールな表情が溶ける様はどんなものだろう?私に屈してくれた時はどう奉仕してくれるのだろうか?
カインは酷薄な笑みを浮かべた。
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後日、魔国の国境沿いの街の居酒屋に顔を出した。
目深にフードを被り、認識阻害の魔法により魔族のふりをする。相当な実力者でなければ判別できないだろう。
街の中で居酒屋は決まって情報が集まる。隅の席に座り、近くで飲んだくれている魔族にそれとなく男性魔族の指揮官のことについて聞いてみた。
それによると、彼はこの地域の方面軍の大将らしい。
地位が高そうだなとは思っていたが、なんとトップであったとは驚きである。
魔族も女子の方が数が多く力が強い世界であることには変わりない。その中で出世するのだから相当な実力者であっただろう。あれだけ自信に満ち溢れた顔をしていたのも納得である。
もう一つ、収穫があった。方面軍としては、バクルクネスとその周辺の都市を攻撃するという噂があった。戦争の前には前線となる土地で兵士を徴収したり食糧を調達したり、先立って大きな変化が訪れる。そこはかとなく、街の魔族たちも戦争が起こることを察していた。結晶の魔物が討伐されていたのも、侵攻に邪魔だったから排除しようとした結果なのかもしれない。
魔国では人間よりもさらに男が生まれづらい。少ない男を使い潰しても多くの魔族には精が行き渡らないので、こうして時々人の国に戦争を仕掛けて男を収奪するのだ。バクルクネスはしばしばその侵攻の対象になっている。人里におりてきた魔物くらいは追い払えるが、都市を包囲されると戦うまでもなく魔族の要求をのむことが多かった。食料や平民の男子を差し出すだけなので、領主も大金をはたいて傭兵や兵士を動員するまでもないと考えているのだろう。情けない話だ。
しかし、前回の侵攻からそこまで時間はたっていない気がする。カインが小さいころの話なので記憶は朝高ではないが、もしかしたら方面軍長としての功績作りで焦っている可能性もあるか。
「ところでお前さん、見ない顔だな。ここに来るのは初めてか?」
「うん。ボクは最近この町に引っ越してきてね。色々見て回っている途中さ」
「そうかい。それなら、歓楽街に行くと良い。人間の国に近くて、昔からよく人間の男が”卸されて”きたんだ。まだ若いのもたくさんいる、この町の名物さね」
「……そうなんだ。それは、とても良い場所なんだろうね」
「ああ。女なら、嫌いな奴はおらんだろうな」
女は『ははは』と軽快に笑った。
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「それは本当か!?」
ギルド長にこの事態を知らせると、驚愕で目を見開いた。
国境の守りや監視は普段からやっておけよと思わなくないが、いかんせんこの地方を治めている長はその気概がない。もしかしたら、「敵地で情報を集める」ことすら頭にないのだろう。
「おそらく、新しい方面軍長が功績作りに躍起になっているかもしれません」
その将軍が美しい男子であることは伏せておいた。
「そうか!教えてくれてありがとう!」
ギルド長がカインの手を取ろうと伸ばしたのを、カインは一歩引いてそれを避けた。ギルド長は『あっ』と情けない声を上げる。彼女の手はむなしく空を切った。
「もしかしたら、彼が一番の推進派なら彼だけを取り除けば侵攻がなくなるかもしれません。どちらにしろ、長を失った混乱で頓挫するでしょう」
魔族軍とは通例、軍の長がその個人的武勇でまとめ上げることが多い。魔族の軍は荒くれ者で、官僚的な統制とはかけ離れている。
……まぁ、それは傭兵に頼りがちなこの国の軍も似たようなものだが。
「しかし、『取り除く』と言ってもどうすれば……?」
「私に任せてください。あぁ、でも、撹乱要員にギルドのゴールド級パーティを幾らか用意してもらいたいのです」
「ゴールド級を、幾つかか……」
タタルス山脈の魔獣は強い分希少な資源を落とすので、バクルクネスには実力者が比較的多く揃っている。かくいうカインも、そのうちの一人だ。
しかし、彼らを動かすための報酬も嵩むため、ギルド長は渋っているのだ。ゴールド級のゴールドは、金の延べ棒でないと動かないことだと皮肉られることもあるほど。カインは節約しているのでその限りではないが、どちらにしろシルバー級までに比べれば報酬の水準は当然跳ね上がる。
渋い顔をしてこめかみをおさえるギルド長に対して、カインは呆れたように声を出す。
「……そんな時くらい、領主にお金を出させたらどうです?」
「……そうだなぁ。そうするしかないよなぁ」
カインは仕方ないとばかりに溜息をつく。
「……、はぁ。一緒にお願いしに行ってあげますから」
「……ほんとうに助かる」
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領主との越権が終わり宿に帰った時、食材を買ってきていたらしいアルが、キッチンで料理をしていた。ジャガイモとにんじん、豚肉を使ったシチューである。冬になるとこれがウィンナーになる。元日本人としてはたまにコメが食べたくなるが、愛おしいアルが使ってくれる料理にケチはつけない。
幾人か非常に親しくお付き合いしている男子はいるが、同居しているのはアルだけである。それだけ健気にカインに尽くしてくれるということであり、カインの求めに応じて嫌な顔せず体を許してくれるところも彼にとっては非常に好ましかった。
アルは男子の平均ほどには身長があるカインより少し小柄である。肩幅も狭く髪はセミロングで長い。料理をしている彼に背後から抱きつく。彼は『わっ!?』と驚いたような声を上げた。
「も、カイン危ないって」
「うーーん。吸わせて〜〜」
そう言ってカインはアルの首筋に鼻を近づけて、思いっきり息を吸い込んだ。カインの好みに合わせて、ハーブの爽やかな香水をつけている。街で買える香水は匂いが薄い割に高いので、アルが頑張って独力で身につけた生活魔法の賜物であった。
「また何か嫌なことがあったの?」
「……雌豚に体を触られた」
領主のことである。領主クエストとしてゴールド級を指定してギルドに依頼するように頼んだ時、『カイルくん、それは難しいカナ あ、でもカイルくんが応援してくれる のなら、オバさん 一肌脱ごうかな‼️ なんちゃって 』などと言いながら太ももあたりをそれはそれはねちっこく触ってきたのである。ストレスが溜まっても当然であろう。
カインは疲れた時などによく、アルの身体に顔をうずめて匂いを嗅ぐ。ストレスが溜まっている時ほど秘部に近くなり、おへそや太腿になる。特にアルが恥ずかしがる変態的な趣味だが、カインが慣れさせた。
「ひゃん♡」
アルの耳たぶを甘噛みすると、体をビクンと震えさせていい反応になる。
「火使ってるから危ないって」
アルが注意しても『うーん』とカインは唸るばかりで上の空である。しばらくすると、ふと思い出したように声をかけた。
「あ、ねぇ、アル。もう一人このお部屋に人を入れていい?ちょっと慣れないうちは反抗的な子かもしれないけど」
「人が増えるのは別にいいけど……。反抗的?」
「そう。一緒に躾しよ?」
そう呟くカイルの口は弧を描いていた。