一通り泣いた櫛田は目元を赤くしながらも今まで通りの元気を取り戻したようで、明らかに良くなった顔色と瞳には迷子のような怯えがさっぱりとなくなっていた。これならもう大丈夫だろう。次の月曜に登校するかどうかはわからんが、さすがに自棄を起こす理由もメリットもなくなったはずだ。
今は涙で失った水分を補給しているところで、ちびちびとコップを煽りながらどこでもないところを眺めている。
「ねえ」
「うん?」
時間の許す限り居させてやろうと考えていると不意に声をかけられた。なんだ、水分だけでは足りなく腹でも減ったのか。
しかし、俺を見やる櫛田の眼にははっきりとした意思が宿っていて何を言うかを察した。
「柊が最低な奴なのは分かったけど、それでも他の奴らと違うって信じられない。だから、証明してよ。あんたなんか裏切って捨ててもいい人間なんだっこと」
櫛田の言っていることはつまりまぁ、そうことなんだろう。病人よりだった顔色も今は少し調子が悪いくらいにしか見えないし、今の櫛田なら食指が動かんこともない。
だけどなぁ、あまり乗り気なれないのが正直なところだ。
俺は肌を重ね、温もりを交換することに意味を見いだしている。そこには大きさの違いはあれどお互いに通じ合っている気持ちがあるから何度だって求めてしまうし、わざわざ他人と繋がるのだ。
その考えでいくと今の櫛田を抱くのは、向け合う感情が一方的過ぎて一人遊びと変わらない。それに最初くらい、気持ちの通じ合ったものの方にしてやりたいというのもある。
抱くのはいいが今日この日ではなくいていい俺と、今手をつけられて安心を得たい櫛田。彼女の意思にも応えてやりたいし悩ましいな、どうにか落としどころがないものか。
まぁ、この程度どうにかしてあげるのも男の器量というものだな。
「櫛田、手出して」
「……」
机を挟んで伸ばされた小さな手に指先から触れて、優しく指を絡めていく。触れた瞬間彼女が反射的に強張るを理解しながら、時間をかけて柔肌を滑る俺の指を櫛田はずっと見つめていて、やがて恋人のように絡まり繋がった。
「これがなんなのよ」
「今から俺の言うことに何も考えず、素直な言葉で口にするんだ。いいな?」
不信な眼を向けてくる櫛田の手を優しく握りながら返答を待っていると、少しの間を置いてこくりと頷く。
今からやるのはただの事実確認だ。櫛田が誰と、どのように繋がり、受け入れるのか。肌で温度を重ねながら理解を深めていく作業。
「俺の手はどんな感じがする?」
「……」
彼女は正直に答えるのか、或いは学校の櫛田のように持ち上げるのか逡巡しているようだった。そして、答えを決めたのか唇を開く。
「……私のより大きくて、固くて、少しかさついてる感じがしてあとはなんか、凸凹してる」
「それだけか?」
「?……思ったより指が長いし、爪が綺麗にしてある。けど、ちょっと荒れてて……なにこれ、マメ?のあとが結構あるんだ」
恋人繋ぎにされた手をしげしげと観察する櫛田は意外そうな声色を混ぜながら、次々に感想を述べる。うん、情報としては充分だな。
「それを常に頭に入れておくんだ。集中して覚える必要はないけど、忘れるのも駄目。じゃあ、次に行こう。この手は、櫛田をどうすると思う?」
「どうって……ヤることやるんじゃないの」
「それだけ?本当に?」
確かに櫛田にとって恥ずかしいことをするし、泣かせるかもしれない。だけどそれだけじゃないことを彼女自身が理解しているはずだ。けれど、櫛田の方から口にしてしまった手前、それ以外のことを口にするのは抵抗があるようだ。
「なら櫛田の願望でもいいぞ。この繋がった手がお前をどうするか、もしくは何をして欲しいのか。ちゃんと口にするんだ。出来るなら具体的に」
「……やっぱり最低で変態じゃん」
「櫛田のためだ。仕方ないだろ?大丈夫だ。櫛田の理想を笑ったり貶めたりしないし、傷つけたりもしない」
しっかりと眼を見据えながら真剣に言うと、少し面食らったのか顔を赤くして眼を逸らした。俺と繋げられた手を交互に見やりながら、ゆっくりと口を開く。
「多分どうもしないと、思う。無神経に触ってこないし、駄目っていったら止めると思うし、でも許してる間はずっと触ってる。スキンシップが好き、なんでしょ。だから、許してると擽るみたいにずっと触ってると思う」
「良く言えたな。じゃあそれをもっと深掘りしていこう」
「もっと……?」
「あぁ、今は繋がってるけど、櫛田の肩に触れたらどうすると思う?」
「っ……これ、何の意味があんの?」
「櫛田、逃げたら駄目だ、ちゃんと考えて。今、目の前にある手は櫛田を傷つけないし、何もしない。櫛田が感じて頭に浮かんだことしかしない、そんな都合のいい物なんだ。だから逃げたら駄目、いいな?」
自分の願望を口にして聞かせるのに抵抗があるのは当然の反応だ。しかし、ここで櫛田が俺に何を求めているかを明確に自覚しないと前には進めないのだ。安心を求めることがどういうことなのか。異性に触れられ、無防備になる時に自分はどうありたいのか。彼女自身が理解して、納得しないといけない。
「肩だけじゃない。脚、背中、腕。普段なら触られないところに触れた時、この手がどうすると思ったのか、素直に口にして」
声にして聞かせることで想像させ思考を働かせてやれば、根負けした彼女は顔に赤みを残したまま、唇を波打たせ言いずらそうにしながらも喉を鳴らす。
「変わんないでしょ、どこ触っても同じ感じで……でも、肩とか背中とかは丁寧に触れてくれて、楽しそうだけど大切にしてくれるのが分かる、触れ方だと思う」
「うん、じゃあ次は……」
羞恥で眼を泳がせながらも言いきった櫛田の瞳を見つめて、空いたもう片方の手を伸ばす。それを彼女は顔の横を通っても眺め続けていて、入学してから幾分か伸びた髪に隠れた耳に触れた。
「櫛田の耳に触ったら、どうすると思う?」
「……」
指先が触れる程度の触り方を櫛田は何も言わず受け入れていて、顔を赤くする熱には仄かな艶やかさが混ざっている。視線を向けて考えている間、繋がった手を意識させ続けるために優しく握り肌を擦らせて何故大丈夫なのか刷り込ませていた。
「……後ろ側を擽るみたいに撫でて、指で耳たぶを挟んだり骨に沿ってなぞったりして、擽ったいのに止めて欲しくない触り方を、ずっとしてくれると思う」
指を動かし櫛田の言葉通りに耳を愛でていく。指の腹が触れてどう動いているのか分かるほど触れる面積が増えても、彼女は反射的に身体を強張らせただけで拒否しようとしない。
絡まって握り続けていた手をいつの間にか櫛田の方からも握り返していて、無意識なのか意識的なのか分からないくらい自然的で繋がった手がお互いを握り合っている。
暫く耳を愛でていた指を滑らせ、櫛田の頬へと着地させると手のひらをその頬へと添える。今度の彼女は反射的に身体を強張らせることなく、むしろ眼を細めて待っているかのように手の動きを追っていた。
「頬はどうだ?この状態でどうすると思う?」
「……ん」
櫛田は何も言わず、手のひらへと自分から頬を擦りたけた。子供のように、眠たげに細められた瞳は完全に彼女が警戒心を解いたことを示していて、手が近い方の瞼を閉じきっている。
櫛田は情報を通して触れ続ける手が、己に対して危険なものではないことを理解して、実感したのだ。視覚と、聴覚と、触覚に送られ続けた温もりが緊張と警戒心を解きほぐして、高まっていた警戒心の反動で思考をふわつかせている。
「ほら櫛田、ちゃんと口にしないと。できるだろ?」
寝起きの悪い子供に言いつけるように言えば、完全にリラックスした身体の櫛田が薄まった瞳で俺を見て、また頬を擦りつけてきた。
「撫でて?私のことももっと見てよ……」
それこそが櫛田桔梗の願望で、安心に足るときに求めるものなのだろう。人を見下し利用して、悪意にまみれて晒してきたからこそ、きっとそのすべてを取っ払った関係を求めているのだ。それをわざわざ口にする必要はなく、その可愛いらしいお願いに応えてやる。
暫く撫でてやり、最後の工程を終えるため頬から手を滑らせる。
寂しそうな視線を隠さず櫛田は肌を滑る手を眺めていて、俺もちゃんと追えるようなゆっくりな早さで少しずつ下にずらしていく。そして、下に降り続けた手は衣服を押し上げる豊かな乳房にたどり着いた。
「……」
動かしたりはせずただ、胸の上に置いただけ。呼吸によって上下する胸と一緒に動くそれを彼女はなんでもないように数秒眺めていて、
「……!?!?」
目の前の光景で何が起きているのかようやく理解して、その場から飛び退いた。
「なっ、あっ、あんたっ、なにしてっ」
眼を白黒とし動揺するあまり口も回らない彼女はひどく顔を紅潮させ、俺を罵倒するため必死に思考を回しているように見える。けれど、いくら待っても罵倒の言葉は飛んで来ず、俺と自身の胸に瞳を行き来させていた。
それはそうだ。あの瞬間、櫛田は何が起こるか分かっていて、その上で受け入れていたのだ。あのまま押し倒したとしても櫛田は身体を自分の意志で許していただろう。その証拠に飛び退いた際、俺の手をはたき落とさなかったし動揺する瞳には嫌悪の一つも宿っていない。
慌てて退いたのは嫌悪や拒否反応からの行動ではない。怒りを爆発させないといけない状況であることを思い出したからでしかないのだ。ひどく慌てる櫛田は身体を隠すようにしているつもりでも、腕を交差させるわけでもなくむしろ強調させるように下から抱え込んでいる。
そんな未だに現実を受け止められていない櫛田の隣に、穏やかな笑みを作りながら座った。
「どう思った、胸に触れられた時」
「はっ、そんなのっ……っっ」
俺の質問に櫛田は声を荒げようとして何も浮かばないのか口を開いては閉じてを繰り返し、羞恥で真っ赤になった顔をしながら精一杯に睨んでくる。可愛いらしい姿に加虐心が刺激されるが、まだその時ではないので平静を保ちつつ櫛田の肩に手を置いた。
肩に触れた瞬間彼女は反応するものの、しかし先ほどのことがあったというのに抵抗してこない。
「櫛田、肌を重ねるっていうのは身体で繋がるってことなんだ。俺と櫛田の、一番神経が集まって敏感なところでお互いを感じとることなんだよ」
″分かるか?″そういって彼女のお腹に手を乗せる。
「んっ!?」
服の上からだというのに櫛田は見て分かるほど身体を反応させた。彼女の身体が敏感になっているわけではない。散々刷り込んだ安心できる存在を、櫛田の身体が求めているが故の反応だった。
「俺は櫛田を一番感じられるところで、一番深いところで繋がりたい。櫛田はどうだ?何で俺に抱くことを求める?」
「あんたっ、本当に……っ」
お腹に手を置いたまま、櫛田の亜麻色の髪にキスを送る。艶はなく乱れていて、しかし彼女を構成する一部を愛でるように。例え汚れていようとそれが櫛田の一つなら喜んで受け入れる。それを行動でも証明して、啄むように何度も口づけをした。
「最低っ……ほんとにっ、クズのなかのクズじゃんっ……」
「よく言われる。でも、俺が櫛田よりも最低な人間だってわかっただろ?だから櫛田もそのままでいいんだよ。お前の価値はお前が決めていいんだ」
依存する必要も固執する必要もない。搾るとこがなくなれば捨てていいし、利用できるならできなくなるまで利用すればいい。それを決めるのは櫛田自身だ。そして、離れるのも一緒にいるのも櫛田の意志でなければならない。
手に感じる櫛田の体温は明らかに高く、顔が見えないため羞恥のせいなのか感情の高ぶりのせいなのかは分からない。だが、彼女は口づけを受け入れ続けていて、それがもはや答えだった。
手を引っ張られる感覚がして彼女の顔を見ると、そこにいるのはどこにでもいる女の子だった。その女の子が潤んだ瞳を向けながら、何かを求めるように俺を見上げている。
焦らすような真似はせずお腹に置いていた手を頬に添えて、顔を寄せれば彼女は眼を閉じて受け入れた。
「ん」
口の中の酸素が隙間からこぼれて木霊する。一瞬よりも長く、じっくりというには短いキスで温もりを交換していく。
「あ……」
唇を離せば櫛田が思わずと言った風に残念そうな声を漏らした。それに微笑んで頭を優しく撫でてやり、そしてまた唇を重ねる。
「んむ……んふ、ふぅ……」
帰ってきた温度に櫛田の表情が溶けて、薄く閉じた瞳が伝わり合う熱に喜んでいる。唇の形が変わるくらいの強さで押しつけ、お互いに慣れるように唇がふにふにと波打った。
「ぷは……柊が、初めてなんて……」
「嫌だったか?」
「そんなこと言ってないっ……もっと、してよ……」
「勿論」
嬉しいことを言ってくれる櫛田を思わずからかってしまうと不貞腐れながら、けれど切ない声色でおねだりしてきた。その素直なお願いに頷いてもう一度、唇が重なる。
「ん、んん、んぁ……?んむっ、んふ、ふ、ふぁ、ふむぅ……」
今度はただ重ねるだけじゃなく啄むような、重なっては離れるバードキスを送ってやる。温もりが失くなると櫛田は不思議そうな顔をして瞼を開き、重なると味わうように眼を瞑って確めようとする。唇を離した時に呆けたように唇を薄く開く彼女が幼く見えて可愛いらしかった。
「ふぅ……ふぅ……んむっ、ふっ、んふぅ」
息づかいが少し荒いものになったため小休止を挟もうとすれば、呼吸を荒くしたまま彼女の方から重ねてきて、離れていた分を取り戻すように押しつけてきた。俺の胸元に手を添えた櫛田が見上げながら温度を求めてくるのが堪らなく可愛いらしい。
そろそろ慣れてきただろうと思い、開いた唇の間に舌を差し込みその周りを弛くなぞる。
「ちゅ、んふ、ちろろ、ちゅぴ……」
口の中に差し込まれた粘膜を櫛田は抵抗なく受け入れ、自分の舌でもてなしてくれた。はじめはおっかなびっくりといった風に舌が触れ合い、少しずつ触れる面積を増やしていって、次第に大胆に絡まっていく。
「んふぁ……ちろろ、ちゅ、ちゅりゅ、むふっ……ちゅるるる、んん、んむっ、ちゅるるるる、れろ」
舌が交わり唾液が混ざり合うと櫛田の瞳も蕩けていって、粘膜の繋がりと温もりが混ざる感覚に夢中になっているのか甘い吐息がこぼれていた。俺を見つめ続ける薄まった瞳は、誰に何を許しているのかを実感しているようにも見える。
「んふぁぁぁ……ん、れろ……んっ、んく」
唇を離そうとするとひどく名残惜しそうな表情をしてきたため、唾液を垂らしてやれば生まれたばかりの雛のように舐めとって喉を鳴らした。
くしくしと櫛田を撫でながら、頬に添えていた手を目の前に持ってくる。リラックスして微睡むような表情の彼女はぼーっとしたように眼だけで追ってくる。視線がちゃんと向いてるのを確認して、また豊満な果実に触れた。
「んぁっ……」
幾重にも重なった服の上からでも櫛田は劇的とも言える反応を見せて、思わずといった風に小さく喘ぐ。俺が柔肉の大きさと柔らかさを感じているように、彼女も自分で口にしたどういった手が触れているのかを感じとっているのだ。
「大丈夫だよ、櫛田。ゆっくりしていくからな」
「ん……キスは、してくれないの……?」
子供のような、けれど艶やかな熱を宿した瞳が素直にしてきたおねだりに応えてやれば、櫛田の方から舌で迎えいれてくれる。
舌を絡ませることがどういうことなのか口の中で教えてやりながら唾液を啜り、送り合ってお互いの温度を交換していく。胸に置いた手は親指から一つずつ波のように優しく動かし、安心できる温もりだと伝えていった。
「んんっ、ちゅぴ、ちゅ、れろ、んふっ、あふっ、あふぁぁ、ひぅ……」
頭を撫でて、舌と口で交わって、心臓の近いところを愛撫していく。櫛田が俺を受け入れれば受け入れるほど肢体は反応を大きくさせ、キスが続けられなくなったのか可愛いらしい嬌声を上げた。
「は、はぅぅ、ひい、らぎ……もっと、さわってよ……」
隠しきれない快感に櫛田は堪えるような吐息を木霊させ、甘ったるい声でさらに求めてくれる。それに応えるために体勢を正面で向かい合う形に変えて、彼女の顔に口づけを送る。
「どこまで脱がしていい?俺のことは考えなくていいから今、櫛田の出来るラインを口にするんだ」
「……服までは大丈夫。でも、上だけで下着は、まだ無理、かも」
「じゃあそうしようか」
櫛田の許容範囲を彼女自身から聞いて、服の上からいろんなところを撫でていく。頭を撫でていた手を耳や肩、背中や腰に移していき、反対の手も腕やお腹を撫でて、これが素肌に触れるのだとその身体へ刷り込んでいく。
撫でている間も額や唇にキスを送り続けていると、櫛田の方からも返してきて段々と慣れてきているのが分かった。
するりと服の下に手を潜らせると櫛田は反射的に強張らせることもなくなって、擽ったそうに身を捩った。胸の下まで手を登らせゆっくりと服を捲りあげていけば、彼女は手伝うように万歳の姿勢になってくれたので、それにもちゃんとご褒美の口づけを送った。
徐々に素肌が露になり可愛いらしくも扇情的な下着が見えて、完全に脱がせると彼女の肢体が目に広がる。染み一つのない綺麗で瑞々しい白磁の肌に、大きく豊かに実る果実がシンプルな薄緑のブラジャーに隠されていて、俺の本能を激しく揺さぶる。視線を上にずらすと完全に身を委ねている彼女は顔を赤らめながらも、俺を見つめる瞳に期待を宿していた。
この美しく、綺麗な櫛田は時間をかけたからこそ見れるもので、きっとあのまま抱いていたら一生拝めなかったに違いない。だからこそ、やはり肌を重ね身体で繋がるというのは、スキンシップにしかすぎないのだ。そのスキンシップに何を見いだすのかは本人次第。
「なにか、言ってくれないの……?」
「何を言ってほしい?」
「ここでも同じことやるとか、さいてい……柊の言葉がほしいの」
「綺麗だよ。全体のバランスが良くて、けど着痩せしてた胸の大きさのギャップに興奮する。肌も綺麗にしてあって、身体つきもいいんだから自信を持つのも頷けるな。それに恥ずかしそうだけど、受け入れてる櫛田の顔がすげえ可愛いよ。こんな表情してくれるのに打算だけで抱くのは勿体ない」
「……」
溶けた表情の櫛田は俺の言葉を咀嚼し、吟味するように視線を向けて来ながらゆっくりと瞬きを繰り返す。そして彼女が俺の手を掴みその豊満な果実へと押し当てた。
「んんっっ!ふっ、どう……?」
「柔らかくて、暖かくて、心臓の動きが分かるくらいドキドキしてるのが伝わってきてる」
「うん……私、こんなにドキドキして、恥ずかしいのに……んっ、ふっ、もっとみて、触ってほしいって思ってる」
そう言って櫛田は眼を瞑り可愛いらしく唇を突き出してきた。掴んでいた手が腕の方へと登ってくると弄ぶように絡まってきて、彼女のおねだりを表現していた。
唇を重ねると、指をゆっくりと柔肉へと沈めていった。
「んちゅ、ふぁ、あ、あふぅっ……ひいらぎのて、すごぃ……はぁ、ん、ちゅる、ちゅ、ちゅりゅ、んふ……れろ、こく、こく、んんっ……」
とろとろに蕩けた櫛田の表情を観察しながらゆっくりとゆっくりと、優しく優しく、あるはずのない固さを解すように指を沈めて下着越しでもわかる柔らかさを楽しんでいく。
指の動きに過剰に反応する肢体は小刻みに震えていて、体温が高まっているのが伝わってくる。擽ったいのか気持ちいいのか分からなそうにしていた彼女も、肢体の反応に慣れたのか、受け入れたのか息をしずらそうにしながらも心地よさそうに絡まった腕をすりすりと擦ってきていた。
唇を繋げながら温もりを伝え合うそれを、どれだけの時間していたのかも分からなくなるほどお互いに夢中になっていた。
「んへぁぁぁ……あっ、はっ、れう……んふ」
堪能し合った温もりを離そうとすると困り眉を作った彼女が離れる寸前まで舌を伸ばしてきたので、口の中に唾液を貯めて垂らしてやれば、瞳を蕩けさせて飲み干していく。
……お、押し倒してぇー!
今の櫛田なら全然問題ないどころか食指がうずいて仕方ない。言葉にもしてくれたし身体でも表現してきてるし、これに応えないのは男が廃るだろ。しかしそう思う反面、やはり体調の方が気がかりなのもまた事実。最後までやった結果、精神は良くても疲労で体調を悪化させたら元も子もない。
顔には出さず櫛田の表情と身体の様子を観察してどこまでいけるかを考えていると、きゅっと絡まっていた腕を掴まれる感覚した。唾液で反射する薄桃色の唇を半分ほど開いたままの彼女が俺を見つめている。期待と媚熱の孕んだ瞳で。
「もっと……続き、しないの……?」
櫛田の声色はどこか幼い甘さがあって、けれどその甘さにはどうしようもない艶やかさが溢れていた。子供のように安心できる存在に甘えて、女としても扱ってほしい。そんな、可愛いらしい我が儘を伝えてきているのだ。
……うん、どこまでいくかはやっぱり櫛田次第だな。息づかいと肌の様子を見てれば限界のラインもある程度は察せるし、俺が気を付けるべきだ。なによりも今は櫛田をとことん甘やかして満たしてやるのが、最優先だろう。
結論を出した俺は熱っぽく此方を見つめる彼女の額に口づけを落とすと、唇を重ねて櫛田のお願いに応えていくことにした。