翌朝。
ホテルのカーテンの隙間から、眩しい朝日が差し込んでいた。
滅道が目を覚ますと、隣のベッドから聞き覚えのある、しかし普段より少しトーンの高い声が聞こえてきた。
「おはサカー! みんな元気ー? 沙花叉は昨日ぐっすり寝すぎて元気いっぱいだよー!」
PCに向かい、朝の雑談配信を行っているクロヱ。
その表情は完璧なアイドルそのものだったが、滅道は気づいていた。
彼女が座るゲーミングチェアの下、太ももの内側に、昨夜の情事の痕跡――赤いキスマークが残っていることを。
滅道は音もなくベッドを抜け出すと、配信に映り込まない死角から、彼女の足元へと忍び寄った。
そして、机の下に潜り込み、ショートパンツから伸びる彼女の素足に、そっと手を這わせた。
「――ッ!?」
配信中のクロヱの動きが一瞬止まる。
チャット欄が「どうした?」「ラグか?」とざわつく中、彼女は必死にポーカーフェイスを保とうとした。
「あ、いや、なんでもないよ! ちょっと足がつりそうで……あはは!」
滅道の手は止まらない。
太ももを撫で上げ、服の上から敏感になった部分を指先で刺激する。
昨夜の開発で感度が上がりきっている彼女の体は、わずかな刺激でも過敏に反応してしまう。
「そ、それでね……昨日の夢の話なんだけど……んぅっ!」
「今日の沙花叉、なんか声色っぽくない?」
「風邪か?」
コメント欄の反応に冷や汗を流しながら、クロヱは必死にトークを繋ごうとする。
しかし、机の下では滅道が、彼女が必死に隠そうとしている「昨夜の顔」を引きずり出そうとしていた。
「……ダメ、配信中……!」
マイクをミュートにする一瞬の隙に、彼女が懇願するような視線を送ってくる。
その瞳は潤み、頬は高揚し、アイドルとしての矜持と、女としての悦びの間で揺れ動いていた。
滅道は満足げに微笑むと、最後に一度だけ強く刺激して、手を離した。
クロヱは机に突っ伏し、荒い息を整えながら、震える声で配信を締めくくった。
「……と、いうわけで! 今日の配信はここまで! みんな、今日も一日頑張ろうね……!」
配信終了のボタンを押した瞬間、彼女はその場に崩れ落ちた。
滅道が机の下から這い出してくると、彼女は涙目で彼を睨みつけ、ポカポカと胸を叩いた。
「……鬼! 悪魔! 最低!」
「お疲れ様です。最高の演技でしたよ、沙花叉さん」
滅道が優しく抱きしめると、彼女の抵抗はすぐに止んだ。
その身体は、昨夜よりもずっと素直に、彼の体温を求めていた。
チェックアウトの時間。
ロビーで合流したマリンは、少し腫れぼったい目をしたクロヱと、すっきりとした顔の滅道を見て、全てを察したように溜息をついた。
「……まったく。若いっていいわね」
「せ、先輩!? 誤解です! 何もしてませんから!」
「はいはい。王様ゲームで夜更かししたんでしょ? 知ってるわよ」
マリンの助け舟に、クロヱは顔を真っ赤にして俯く。
その横で、滅道は静かに微笑んでいた。
掃除屋の休日は終わった。
しかし、彼女の中に刻まれた記憶と、三人の間に生まれた奇妙な絆は、決して消えることはない。
そして、記者の手帳には、次なるターゲットの名前が記されようとしていた。
――『用心棒』風真いろは。
物語は、次の章へと進んでいく。