日が落ち、東京の街が煌びやかなネオンに彩られる頃。
丈はタクシーの後部座席に深く身を沈め、車窓を流れる景色をぼんやりと眺めていた。
手にはまだ、あの生意気な総帥の肌の感触と、微かな甘い香りが残っている気がした。
(……やれやれ、手のかかる子供だったな)
口元に苦笑が浮かぶ。
ラプラス・ダークネス。彼女は予想以上に脆く、そして予想以上に愛おしい存在だった。
精神的な鎧を剥ぎ取り、ただの少女に戻してやる過程は、記者としての好奇心と、男としての征服欲を存分に満たしてくれた。
しかし、丈の心にはまだ埋まらない穴があった。
それは、どれだけ他の女性(ターゲット)を攻略しても埋まることのない、根源的な渇望。
「帰るべき場所」への強烈な帰巣本能だ。
タクシーが目的のマンションの前で停まる。
丈は料金を支払い、慣れた足取りでエントランスをくぐった。
エレベーターで上層階へ。廊下を歩く足音が、静寂に響く。
ある扉の前で立ち止まり、合鍵を取り出す。
カチャリ、と重厚な金属音がして、ロックが解除された。
「……ただいま戻りました」
扉を開けると、ふわりと香る、甘く芳醇な香り。
それは高級なルームフレグランスと、彼女自身の持つフェロモンが混じり合った、丈にとっての「安らぎ」の匂いだった。
リビングのソファには、一人の女性が優雅に足を組んで座っていた。
宝鐘マリン。
彼女は手に持っていたファッション誌を閉じると、ゆっくりと丈の方へ顔を向けた。
「――おかえり。ずいぶんと遅かったじゃない」
その声色は、怒っているわけでも、拗ねているわけでもない。
ただ全てを察し、受け入れている「本妻」のような余裕と、隠しきれない独占欲が滲んでいた。
「申し訳ありません。総帥がなかなか手強くて」
「ふーん……。その割には、随分と満足そうな顔してるけど?」
マリンは立ち上がり、ゆっくりと丈に近づいてくる。
そして、彼のシャツの襟元に鼻を近づけ、クンクンと匂いを嗅いだ。
「……臭うわね。あのガキの、甘ったるいお菓子の匂いがする」
嫉妬。しかしそれは、ドロドロとした醜いものではなく、二人の関係をより燃え上がらせるスパイスのようなものだった。
丈は苦笑しながら、彼女の腰に手を回した。
「匂い、移りましたか?」
「ええ、プンプンよ。……早く洗い流さないと」
彼女は妖艶に微笑むと、丈のネクタイに指をかけ、グイと自分の方へ引き寄せた。
至近距離で見つめ合う瞳。
その深紅の瞳が、静かに、しかし熱烈に問いかけてくる。
「ねえ、丈」
彼女は甘い吐息と共に、核心を突く言葉を囁いた。
「……結構、今、溜まってるでしょ?」
その言葉は、単なる性欲の確認ではない。
他の女を抱いた後でも、一番の情熱を注ぐべき相手は誰なのか。それを体で証明してみせろという、女王からの命令だった。
丈は背筋がゾクリとするような興奮を覚えた。
やはり、この人には敵わない。
どれだけ外で遊んでも、結局はこの港に戻ってきてしまうのだ。
「……ええ。パンパンですよ」
「ふふっ、素直でよろしい。じゃあ……証明して見せてよ」
マリンは丈の手を引き、寝室へと誘う。
そこは、二人だけの密室であり、法廷であり、そして祭壇だった。
「アンタがどんなに他の星を旅してきても、最後に帰ってくる港はこの船長の体だけなんだってこと……骨の髄まで分からせてあげる」
ベッドに押し倒されたのは、丈ではなくマリンの方だった。
しかし、その場の支配権を握っているのは明らかに彼女だ。
丈は彼女の衣服を剥ぎ取りながら、その白くなめらかな肢体を「マングリ返し」の体勢に固定する。
露わになった秘所。そこはすでに、主人の帰還を待ちわびて、じわりと蜜を溢れさせていた。
「準備万端ですね、船長」
「当たり前でしょ……。アンタが浮気してる間、ずっとここで待ってたんだから……」
丈はポケットから、取材道具として持ち歩いているローターとバイブを取り出した。
冷たい機械が、彼女の熱い肌に触れる。
「ひゃっ……! そ、それ使うの……?」
「ええ。罰であり、ご褒美です」
左右の乳首にローターをクリップで固定し、アナルにはバイブを挿入する。
スイッチを入れると、ブブブブという低い振動音が部屋に満ちた。
「あ、あぁっ……! んんっ……!♡」
三方向からの機械的な刺激に、マリンの体が弓なりに反る。
快感に歪むその顔を見下ろしながら、丈は自らの熱く滾った楔を、彼女の濡れそぼった秘裂に宛てがった。
「ただいま、マリンさん」
「……んっ、おかえり……バカ記者……っ♡」
ズプリ、と肉を穿つ音と共に、二人の体が一つに繋がる。
それは単なる交わりではない。
漂流した魂が、あるべき場所へと戻る、帰港の儀式だった。