モール裏の立体駐車場。
二階へ上がるスロープの途中で、俺は足を止めた。
コンクリートの天井。
むき出しの蛍光灯。
半分が消えている。
残っている非常灯が赤く点滅していた。
……カチ、……カチ。
電源の不安定な音が響く。
外より暗い。
だが壁がある。
視界も遮れる。
俺は振り返る。
「ここで休む」
スロープの脇には管理用の小さなスペースがあった。
黄色いペンキの柱。
壊れた料金精算機。
その横に、白い軽バンが放置されている。
シノンが周囲を見渡す。
銃口がゆっくり動く。
「見通しは悪くない」
小声。
「階段も近い」
スロープの先には非常階段がある。
逃げ道は二つ。
悪くない場所だ。
斑鳩は何も言わず、軽バンの影に入った。
背中をコンクリート柱に預ける。
ワイシャツが風で揺れる。
俺とシノンも座り込んだ。
コンクリートは冷たい。
上の階から、どこか遠くで物音がする。
……ゴン。
何かが倒れたような音。
三人とも視線を上げる。
静寂。
それ以上の音はない。
シノンがマガジンを外す。
カチ。
弾を確認。
「残り十二発」
小さく言う。
俺はナイフの刃を拭いた。
乾いた血が布に移る。
風が駐車場を抜ける。
ビニール袋が転がる。
カサカサ。
斑鳩は腕を組んでいた。
背筋はまっすぐ。
呼吸も静かだ。
……。
その時。
「……」
小さく息が漏れた。
斑鳩だ。
ほんの一瞬。
すぐに呼吸が戻る。
俺はそちらを見る。
「どうした」
斑鳩は首を振った。
「問題ありません」
声はいつも通りだ。
だが。
少しだけ息が深い。
シノンもそれを見ていた。
銃を膝に置く。
ゆっくり立ち上がる。
軽バンの影へ近づく。
「肩」
短い言葉。
斑鳩が視線を上げる。
「なんでしょう」
シノンの目は鋭い。
「さっき、掴まれてた」
沈黙。
上の階から風が降りてくる。
斑鳩は一瞬だけ目を伏せた。
「大したものではありません」
袖を少し上げる。
ワイシャツの白が動く。
見えた。
歯型。
皮膚が裂けている。
赤い傷。
……。
シノンが止まる。
しゃがみ込む。
傷を見る。
数秒。
何も言わない。
駐車場の非常灯が点滅する。
赤い光が三人を照らす。
そして。
シノンが小さく言う。
「……噛まれてる」
言葉が落ちる。
俺の喉が乾く。
「……は?」
立ち上がる。
斑鳩は腕を下ろした。
ワイシャツが傷を隠す。
「浅いです」
落ち着いた声。
「問題ありません」
シノンが顔を上げる。
その目は変わっていた。
「いつ」
短い質問。
「先ほど」
「痛み」
「軽度」
「寒気」
斑鳩の呼吸が一瞬止まる。
「……少し」
シノンの表情が固まる。
「熱は?」
斑鳩は答えない。
沈黙。
遠くでシャッターが揺れる音。
ガタン。
俺の心臓が強く鳴る。
「感染……するのか」
誰に言ったのか分からない。
シノンがゆっくり立ち上がる。
駐車場の赤い光が彼女の顔を染める。
そして言った。
「普通なら」
空気が凍る。
斑鳩は壁に背を預けたまま。
表情は変わらない。
だが。
呼吸だけが、少しずつ重くなっていた。
立体駐車場の二階。
非常灯の赤い光の中で。
三人の影だけが、長く床に伸びていた。
「…初期段階よね。噛まれたばかりだから」
シノンの言葉が静かに落ちる。
コンクリートの上を這うように広がった。
斑鳩はワイシャツの袖を元に戻していた。
「そう思います」
「…そうだとしたら、まだ間に合うかもしれないわね」
と、シノンが顔を赤くしながら言う。
「…雄介、あんたがその気なら、斑鳩を助けられるかもしれないわよ」
「まさか…」
「セックスよ…わかってるなら、言わせないでよ」
「おい、冗談だろ? シノン、お前自分が何を言ってるのかわかってんのか?」
「冗談じゃないわよ。あんた、それで私の感染を防いでくれたでしょ?」
「あれは……あの時とは状況が違うだろ」
「同じよ。あんたにはそういう力があるんだってば」
「力?そんなこと……」
「私を治してくれたんだから、斑鳩だって治せるはずよ」
「でも……」
「じゃあこのまま見捨てて良いの?」
俺は答えられなかった。
シノンはさらに続ける。
「あんたはまた人を見殺しにするつもりなの?」
「……それは……」
「それとも……やっぱり私は特別だったのかしら?」
俺は頭を抱えてコンクリートに突っ伏した。
「……あーっ……クソ!やればいいんだろ」
シノンは小さく微笑む。
「ふふ、素直じゃないんだから」
斑鳩は黙って頷く。
「…お願いします」
俺はため息をつきながら立ち上がった。
「やるしかないのか……」
三人は軽バンの陰に身を寄せる。
月明かりがぼんやりと差し込んでいた。
シノンは見ないようにそっぽ向きながら周囲を警戒する。
斑鳩は少し緊張した様子で立っていた。
俺は意を決して彼女に向かい合った。
「……それじゃあ、行くぞ」
「はい」
斑鳩は小さく頷く。
その瞳には微かな震えがあったが、覚悟を決めた目だった。
俺は深く息を吸って、斑鳩にキスをした。
舌を絡め、唾液を交換する。
甘い匂いが漂い始める。
最初はぎこちなく体を固めていた斑鳩も徐々にリラックスし、自ら進んで俺を受け入れ始めた。
俺はゆっくりと彼女の胸に手を伸ばす。
ブラウス越しでも分かる柔らかさ。
指先でその感触を確かめると、斑鳩の吐息が少し乱れた。
「んっ……」
小さな声が漏れ、俺の背中にゾクリとした快感が走る。
俺はさらに強く抱き寄せながら、斑鳩の首筋に唇を這わせていく。
すると、彼女の身体から甘い匂いがさらに強くなり、それが俺の理性を狂わせた。
服を脱がせ、白い肌に触れると、斑鳩の体温がじわりと伝わってくる。
斑鳩の体は華奢だった。
薄い肉付きの中に芯のある骨格が感じられる。
「…綺麗だ」
俺の指先が鎖骨を滑り、乳房の形を確かめるように包み込む。
柔らかく、温かい。
「……っ」
斑鳩の指が俺のシャツを握った。
触れるごとに反応が変わる。
喉の奥で押し殺した声が、唇から漏れる。
「ん……っ」
普段は冷静な斑鳩の、こんな声。
胸を撫でただけなのに、すでに息が乱れている。
俺はそのまま下へと手を滑らせ、ショーツの縁をなぞった。
「っ……!」
腰がわずかに引ける。
だが逃げはしない。
逃げる余裕すら奪われている。
秘部に触れた瞬間、熱を持った液体が指先に滲んだ。
「もう濡れてるな」
「……それは……あなたが」
「俺のせい?」
「……そうです」
指を浅く埋めると、粘膜が絡みつく。
斑鳩の脚が震える。
それでも抵抗はしない。
彼女の体温が上がってゆくのがわかる。
胸元に顔を近づけ、舌で乳首を転がす。
「んぅ……っ」
甘い吐息。
乳輪を円を描くように舐めると、斑鳩の体がびくりと跳ねた。
「ここが弱いのか?」
「……知りません」
「教えてくれよ」
反対側の胸にも手を添え、同時につまむ。
「ぁ……っ」
高い声。
普段の無感情な斑鳩からは想像できない、甘く崩れた声。
俺はもっと聞きたくなる。
ショーツを引き下ろし、太腿の内側を撫でる。
恥じらいながらも脚を開く斑鳩。
熱い部分を直接擦ると、愛液がさらに溢れた。
「こんなに濡れて……」
「言わないでください……」
指を一本差し入れると、狭いながらも奥へと飲み込まれていく。
膣内の脈動を感じるたびに、斑鳩の眉が寄る。
「痛いか?」
「大丈夫です……続けてください」
二本目の指を入れると、明らかに息遣いが荒くなった。
膣壁を優しく擦るだけで、腰が勝手に動いている。
「あっ……あぁ……っ」
その反応が可愛くて、つい激しくしてしまう。
三本目の指を入れた時には、斑鳩の脚が大きく開いてしまっていた。
愛液が滴り、地面に小さな水溜まりを作る。
「挿れるぞ……」
「……はい」
十分すぎるほど解れたそこへ、硬くなったものを押し当てる。
斑鳩の目が潤んでいる。
先端が触れた瞬間、彼女の口から細い喘ぎが漏れた。
「ん……っ」
ゆっくりと腰を進めると、狭い入口がミチミチと広がっていく。
根元まで入り切った時には、斑鳩の全身が汗ばんでいた。
「全部入った」
「……熱い……です」
動き出すと、斑鳩の声が高くなっていく。
初めは控えめだったのに、次第に我慢できなくなっていった。
「あっ……んぅ……っ…!」
抽送を繰り返すたびに、結合部から愛液が飛び散る。
斑鳩の手が俺の背中に回り、爪を立てた。
快楽から逃げられないという証拠。
「気持ちいいか?」
「……恥ずかしいので、聞かないでください……」
その言葉を無視して、さらに強く打ち付ける。
子宮口を突くたびに、斑鳩の体がびくんと跳ねた。
「んっ……あっ……あぁっ……!」
絶頂が近いのだろう。
膣内が収縮し、射精を促してくる。
「出すぞ……」
「来て……ください……!」
最後の突きとともに、大量の精液が放たれた。
斑鳩の中がそれを全て受け止め、痙攣する。
余韻に浸る暇もなく、俺は再び動き出した。
「まだ終わりじゃないぞ」
「ちょ、ちょっと待って……!」
拒否されても止まらない。
二回戦が始まった瞬間、斑鳩の目から涙がこぼれた。
それは苦しさではなく、喜びによるものだと俺には分かった。
三回戦。
四回戦。
五回戦。
果てるまで続く獣のような行為。
終わったとき、斑鳩の意識は朦朧としていた。
唇の端から涎が垂れ、焦点の合わない目をしている。
俺は彼女の髪を撫でながら言った。
「よく耐えたな」
斑鳩は小さく笑う。
「……こんなにされたのは初めてです」
その声には満足感が含まれていた。
翌朝。
俺は軽バンの影で目を覚ました。
体は鉛のように重い。
しかし、隣に寝ている斑鳩の顔を見て驚いた。
血色が戻っている。
呼吸も安定している。
「……成功か?」
彼女の額に手を当てると、平熱だった。
完全に感染は抑えられている。良かった。
朝陽がコンクリートの床を照らす中、俺たちは休息を取ることにした。
遠くから聞こえる街の騒音に耳を澄ませながら、俺は自分の力について考える。
一体、何者なんだ俺は?
あの日の記憶が蘇る。
「神の力の一部」という言葉。
本当にそうなのか?
それとも、何か別の……
思考は中断された。
「起きてください」
斑鳩の声で現実に引き戻される。
俺はゆっくりと起き上がった。
「調子はどうだ?」
「良好です」
斑鳩は既にワイシャツのボタンを留めながら、体を動かす。
「行きましょう」
俺は頷いて立ち上がる。
疲労は残っているが、体は動く。
シノンも準備万端といった様子でこちらを見ていたがどこか赤い。まさか性行為を見ていたのか?
「さ、行くわよ」
三人で荷物をまとめ、立体駐車場を後にする。