クリスマスの二十五日から三日経った。
二学期はすでに終わっているので、必然的に家にいる。
この三日は、エッチ三昧だった。
特にやることもないので。ヤることにしたのだ。
俺の性欲は留まることを知らない。
朝起きてから昼まで命と恵に相手をしてもらって、昼ご飯を食べたら暇してる澄乃さんを捕まえてベッドに戻り夕飯まで出てこない。夕食食べたらまた命と恵に相手をしてもらう。
命と恵のお腹は妊娠しているみたいに膨れてしまった。
そんな生活をしていると綾乃さんに部屋に呼ばれてしまった
「隼人さん」
綾乃さんが言う。
「少しだけ、こちらへ」
「うん」
「座ってください」
綾乃さんは湯呑みを置いた。
「冷えます」
「ありがと」
「最近」
綾乃さんは言う。
「性に乱れた生活をしていると聞きました」
「爛れ切った生活には私も覚えがありますが、体にいいものではありません。特に命と恵さんには負担がかかってると思います」
「はい……そうですね、最近は一日中してしまっているので、確かに負担をかけてしまってると思います」
そこで少し間をあける。
「……そこで、代わりに私が相手をいたします」
「でも綾乃母さんは妊婦です。体に負担はかけられません」
「確かに激しい行為はできません、ですがやりようはあります」
「口を使います。私の口ならいくらでも使ってください」
「どうしてそこまで?」
「最近二人きりの時間が取れていませんでしたね?」
まあ、妊娠してからは二人きりになる時間があまりなかった。
エッチができないのは仕方がないとしても、もう少し時間を作るべきだったかもしれない。
「正直に言います。……欲求不満です」
「私は元から性欲が強い方です。私も娘たちやお母さんのように毎日エッチなことがしたいのです」
「娘たちがハヤトさんと一日中しているなんて、正直ハンカチを噛む思いです」
「ですので、せめて口だけでもさせてください」
「じゃあお願いしてもいいですか?」
「ええ任せてください」
その後二人きりの時間を楽しむ。
濃密な時間だった。
だからだろうノックの音に気が付かなかったのは。
一人の女性が入ってくる。
「お母様ただいま戻り――まぁ……大きい……」
陽菜乃さんだった。
陽菜乃さんに思いっきり見られてしまった。
服を着なおしてる間、陽菜乃さんには廊下で待ってもらった。
「もう入ってきて良いですよ」
綾乃さんが声をかける。
陽菜乃さんは入ってくると、深く頭を下げた。
「先程は、大変失礼いたしました」
頭を上げずに、言葉を続ける。
「お二人の……その、親密な場面を、目撃してしまいました。扉を開けるべきではありませんでした。返事を待たず入室した私の不注意です」
「陽菜乃。顔を上げなさい」
陽菜乃さんがゆっくり顔を上げる。きちんとした表情に戻そうとしているのに、目だけが少しだけ揺れている。
「……はい」
「謝る必要はないわ。あなたが悪いんじゃない。こちらが配慮を欠いていたの」
綾乃さんは落ち着いた声で言い切った。
「鍵も、掛けるべきだった。あなたに気まずい思いをさせたのは、私の方よ」
陽菜乃さんは一拍置いて、丁寧に言った。
「……お母様がそうおっしゃってくださるなら、救われます。ただ、ハヤトさんにも、きちんとお詫びを」
陽菜乃さんは俺に向き直って、もう一度だけ頭を下げた。
「本当に、申し訳ありませんでした」
俺は言葉を選ぶ必要もなかった。
「気にしないでください、見られて恥ずかしい体はしていません」
そう答えると陽菜乃さんの目が丸くなる。
「……はい」
「ハヤト君もこう言ってることだし、気にしないでちょうだい」
「承知しました」
陽菜乃さんはきちんと頷いたあと、少しだけ表情を和らげた。
「……改めて。帰省の挨拶が遅れました。お母様、ハヤトさん。戻りました」
綾乃さんが微笑む。
「おかえり、陽菜乃」
俺も短く返した。
「おかえりなさい」
陽菜乃さんは胸の奥のつかえが落ちたみたいに、ほんの少しだけ息を吐いた。
「ありがとうございます」
陽菜乃さんは靴を揃え直して、姿勢を整える。
「皆さまにも、ご挨拶をしてもよろしいでしょうか」
「もちろん」
綾乃さんが頷く。
「みんな、リビングにいると思うわ」
「承知しました」
陽菜乃さんは小さく頭を下げて、先に歩いた。
俺は一歩遅れてついていく。
リビングに入ると、千佳がすぐ顔を上げた。
「えっ」
千佳が言う。
「陽菜乃姉!」
「ただいま帰りました」
陽菜乃さんが言う。
「千佳。元気そうで安心しました」
「元気!」
千佳が頷く。
「……元気です!」
澄乃さんが楽しそうに笑った。
「帰ってきたのねえ」
「ご無沙汰しております」
陽菜乃さんが言う。
「お婆様。お変わりありませんか」
「変わりないわ」
澄乃さんが言う。
「おかえり」
由紀子姉さんが淡々と言った。
「ただいま戻りました」
命が少し遅れて口を開く。
「……おかえりなさい」
「命」
陽菜乃さんが言う。
「ただいま」
「元気そうで、安心しました」
「……はい」
命が小さく頷いた。
陽菜乃さんは一拍置いて、部屋の中にいる“初めての気配”に目を向けた。
恵だ。
「お母様」
陽菜乃さんが言う。
「あちらの方は……」
「九条家の恵さんよ」
綾乃さんが言う。
「ハヤト君の婚約者で今は一緒に暮らしています」
陽菜乃さんは部屋の中を一度だけ見渡して、恵に視線を留めた。
「お母様」
陽菜乃さんが言う。
「九条家の恵さんで、お間違いありませんか」
「ええ」
綾乃さんが頷く。
「恵さんは、今この家で一緒に暮らしています」
「あなたにも、連絡は入れていましたね」
「はい」
陽菜乃さんが言う。
「承知しております」
陽菜乃さんが言う。
「ただ、直接のご挨拶はまだでしたので」
陽菜乃さんは恵へ向き直る。
姿勢がさらに整う。
「恵さん」
陽菜乃さんが言う。
「はじめまして、御堂陽菜乃と申します。」
「お話はかねてより伺っております。以後、よろしくお願いいたします」
「陽菜乃様」
恵が上品に微笑む。
「こちらこそ、はじめましてですわ」
「九条恵と申します」
「お母様からも、陽菜乃さんのことは伺っております」
「よろしくお願いいたしますわ」
綾乃さんが陽菜乃さんへ視線を戻す。
「荷物、置いてきなさい」
「落ち着いたら、お茶にしましょう」
「ありがとうございます」
陽菜乃さんが言う。
「すぐ戻ります」
陽菜乃さんが一度、全員に頭を下げる。
「皆さま」
「改めて、後ほど」
その丁寧さが、家の空気をきちんと整える。