※この作品はR-18です。

男女比1対100の彼女たちの世界で   作:ののじん

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69話 澄乃さんと綾乃さんで高級焼き肉1

 指定された店名を見た瞬間、俺は少しだけ笑った。

 焼き肉。しかも高級。

 澄乃さんらしい。会う場所で、空気を支配してくる。

 

 俺は時間ぴったりに店へ入った。

 黒い石と木の内装。香りが上品で、油の匂いが刺さらない。

 案内されるのは個室だった。

 

 襖が開いた瞬間、まず澄乃さんが目に入る。

 和服じゃない。落ち着いた色のワンピースに、肩の力が抜けた笑み。

 隣には、澄乃さんより少し若い女性。姿勢が綺麗で、目が鋭い。

 

「来たわね、坊や」

「こんばんは、澄乃さん」

「ふふ。ちゃんと来る。偉い子」

 

 隣に、もう一人。

 美しい。正直かなりタイプだ。

 落ち着いた雰囲気の女性が座っている。姿勢が綺麗で、視線が静かに鋭い。それに、澄乃さんによく似ておっぱいが凄く大きい。

 娘と言っていたがかなり若く見える。

 

 澄乃さんがさらっと言った。

 

「紹介するわ。綾乃。今日はね、坊やに会ってみたいって」

 

 綾乃さんは一礼して、名乗るのはそれだけだった。

 

「綾乃です。今日は、来てくださってありがとうございます」

「ハヤトですよろしくお願いします」

 

 丁寧だけど、硬くない。むしろ少し楽しそうに見えるのが意外だった。

 澄乃さんがトングを取って、当然みたいに言う。

 

「坊やは座ってて。今日は私たちが焼いてあげる」

 

 綾乃も無言で火加減を見て、皿を整える。二人とも手際が良すぎる。こういう席を“用意する側”の人間だ。

 

 肉が網に置かれて、じゅっと音が立つ。

 澄乃さんはその音に紛れるみたいに、いきなり本題を投げた。

 

「坊や。今日の目的、言っていい?」

「どうぞ」

「この間言っていたでしょ? 娘の一人に子供を欲しがっている子がいるって、それがこの子よ」

「私みたいなおばさんと本当に子どもを作ってくれるのですか?」

「二人とも僕にとってはきれいなお姉さんですよ」

 

 澄乃さんが楽しそうに笑う。

 

「いい子。そういう返事ができるの、坊やの強みよ」

「母から、あなたの話は聞きました。年甲斐もなく恋をしてしまったと」

「実際に会ってみてその理由がわかる様な気がします」

 

 エッチの話もしたのだろうか?

 

「綾乃さんもパートナーになって欲しいんですよね?」

 

 澄乃さんが楽しそうに目を細める。

 

「ふふ、坊やは話が早いの」

 

 綾乃さんは一拍置いて、静かに頷いた。

 

「……ええ、そうなります」

「ええ。俺も、乗り気で来ました」

 

 言い切ると、綾乃さんの目がほんの少しだけ柔らかくなる。

 澄乃さんが、満足そうに笑った。

 

「ほら。そういうところよ、坊や」

 

 綾乃さんが落ち着いた声で続ける。

 

「では、私は遠慮なく話します。曖昧にするつもりはありません」

 

 綾乃さんがそう言って、背筋を少しだけ正した。

 姿勢が変わるだけで、空気が少し締まる。

 

 澄乃さんは楽しそうに笑いながら、トングで肉をひっくり返す。

 

「いいわねえ。綾乃、そういうところが好きよ。坊やも、こういう子は嫌いじゃないでしょう」

「嫌いじゃないです」

 

 俺が返すと、綾乃さんの目が一瞬だけ動く。

 肯定が早いのが意外だったのかもしれない。

 

 綾乃さんは俺を見たまま言う。

 

「まず、確認したいことがあります」

「何ですか」

「母は、あなたといると気が緩みます。……良い意味で」

 

 澄乃さんが横から軽く言う。

 

「緩むわよ。だって坊や、可愛いもの」

「可愛くないです」

「可愛いわ」

 

 会話の温度を上げるのは澄乃さんの役目だ。

 綾乃はぶれない。

 

「その“緩み”は、母にとって大切です。だから私は、あなたに感謝しています」

 

 いきなり感謝されてしまった。

 警戒じゃなく、ちゃんと好意で入ってきてる。

 

「……ありがとうございます」

 

 俺がそう返すと、綾乃は小さく頷いた。

 

「ただ、感謝と別で、私は私の話をします」

「はい」

「私は、あなたのパートナーになりたい。今日は、その意思を伝えに来ました」

 

 言い切って、間が来る。

 綾乃の目線は逃げない。逃げないまま、待つ。

 

 俺はその待ち方が嫌じゃなかった。

 急かさないけど、引かない。

 

「分かりました」

 

 短く答えると、綾乃の肩がほんの少しだけ下がった。

 安心の息。

 

 澄乃さんが、間に入るように肉を俺の皿に置く。

 

「はい、坊や。話は食べながら。焼き肉は冷めると機嫌が悪くなる」

「肉が機嫌悪くなるんですか」

「なるの。大人と同じ」

 

 俺が笑いかけると、綾乃も一瞬だけ口元が緩む。

 すぐ戻すけど、今日で二回目だ。

 

 綾乃が続けた。

 

「私は、あなたに好かれたい、というより……きちんと関係を作りたいです」

「具体的には」

「時間を取ってください。短くていいので、定期的に」

 

 澄乃さんが頷く。

 

「そういうの大事よね」

 

 俺は素直に言う。

 

「分かりました。作ります」

 

 言っただけで、綾乃の目が少し柔らかくなる。

 約束の扱い方が上手い人だ。言葉を軽くしない。

 

「……ありがとうございます」

 

 澄乃さんが網の上を見て、上機嫌に言う。

 

「ねえ、坊や。綾乃はね、恋愛に“強い”っていうより……転んでも形を崩さないのよ」

 

 トングで肉を返す手つきが、やけに優雅だ。

 綾乃さんは否定も肯定もせず、ただ一拍置いて、淡々と言った。

 

「強いわけではありません。……逃げられた回数なら、五回あります」

 

 さらっと言う。重くもしない。

 

 澄乃さんが笑う。

 

「ほら、こういうところ。坊や、聞いた? 五回よ。普通なら、そこで荒れるか、諦めるか、どっちかになる」

 

「……荒れません。諦めもしません」

 

 綾乃さんは静かに続ける。

 

「逃げられた理由も、分かっています。私が“ちゃんとしすぎる”からです」

 

 俺は水を一口飲んでから、丁寧に言った。

 

「綾乃さんが悪いとは思いません。相手の器の問題もあります」

 

 綾乃さんの目が、ほんの少しだけ動く。

 評価じゃない。驚きに近い。

 

「……そう言われるのは、少し意外です」

「俺は、そう思いました」

 

 澄乃さんが嬉しそうに頷く。

 

「坊や、今の言い方。綾乃に効くわよ。こういう子はね、慰めより“筋の通った肯定”の方が好きなの」

 

 綾乃さんは小さく息を吐いて、背筋を整える。

 

「母の言い方は大げさです。でも、私が曖昧を嫌う理由は、その五回で十分です」

 

 それから、俺を見て言った。

 

「だから、私は最初から言います。私はあなたのパートナーになりたい」

 

 パートナーにいなりたいと素直に言える人は珍しい。

 俺は頷いて、同じ温度で返す。

 

「分かりました。俺も、綾乃さんとパートナーになりたいです」

 

 綾乃さんの肩が、ほんの少しだけ下がる。

 安心の形が小さい。だから分かりやすい。

 

 澄乃さんが上機嫌に言った。

 

「はい、今日の焼き肉はいい夜ね」

「ハヤト君ももっと食べてね」

 

 そう言って綾乃さんはお肉をよそってくれる

 

「はい、いただきます」

 

 せっかくの焼き肉だから遠慮せず沢山食べておこう。





【挿絵表示】

綾乃(ドレス)

【挿絵表示】

澄乃(ドレス)
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