※この作品はR-18です。

とある死喰い人の犯罪記録   作:神魂

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【子世代】と【トレローニーの新たな予言】

【新たな希望】

 

 

1994年9月15日 13:35 

ホグワーツ ハッフルパフ寮

 

 

「エクスペクト・パトローナム!」

 

少年【デイビッド・スミス】の力強い澄んだ声が静寂を破った。

杖の先から眩い銀色の光が噴出し、やがて二つの角を持つ馬——バイコーンの姿となって実体化した。

寮内の他の生徒達も驚いている。

 

「素晴らしい!」

 

スプラウト教授は目を細めた。

 

「完璧な守護霊です!3年生でこれだけの事ができるとは……っ!」

 

銀色のバイコーンは嘶き、デイビッドの周りを一周すると光の粒子となって霧散した。

少年は額の汗を拭いながら満足げに微笑んだ。

 

「ありがとうございます、スプラウト先生」

 

「ハッフルパフに20点!」

 

教授は嬉しそうに宣言した。

 

「あなたの努力と粘り強さは真にハッフルパフの精神を体現しています」

 

デイビッドは頬を赤らめた。

 

「ところで」

 

スプラウト教授は杖先を軽く動かし、本棚を整理しながら言った。

 

「守護霊を作るとき、何を考えているんです?」

 

「ええと……母さんと叔母さん……」

 

デイビッドは言葉を選んだ。

 

「家族の事です。それと……亡くなった父さんの事も」

 

スプラウト教授の手が一瞬止まった。

彼女は優しく微笑んだ。

 

「そう……貴方のお父様も優秀な魔法使いだったのですよ」

 

「知ってるんですか?」

 

「ええ」

 

教授は窓の外を見た。

 

「貴方のお父様はかつて……今の貴方と同じように、ここで学んでいました」

 

デイビッドは驚いて目を見開いた。

 

「父さんもハッフルパフだったんですか?」

 

「そうですよ」

 

スプラウト教授は頷いた。

 

「彼も私の大切な教え子でした」

 

「母さんからは……父さんが魔法使いだったって事しか聞いてなくて……」

 

デイビッドは考え込みながら言った。

 

「母さんはマグルだから……」

 

「そうなのですか?」

 

教授は少し意外そうに尋ねた。

 

「はい」

 

デイビッドは笑顔で答えた。

 

「マンチェスターで小さなパブをやってるんです。僕を女手一つで育ててくれました」

 

教授は何かを噛みしめるように頷いた。

 

「素晴らしい母親ですね」

 

「はい」

 

デイビッドは誇らしげに言った。

 

「僕が魔法使いだって分かった時、すごく喜んでくれました。『お父さんと同じね』って」

 

その言葉にスプラウト教授の表情が一瞬曇った。

 

「……そうですか」

 

「あの……」

 

デイビッドが遠慮がちに尋ねた。

 

「先生は……なぜ入学以来、ずっと僕の事を気にかけてくださるんですか?」

 

スプラウト教授は少し遠くを見るような目をして答えた。

 

「……私はもう後悔したくないのですよ」

 

デイビッドは首を傾げたが、質問を重ねることはしなかった。

 

「あっ!すみません」

 

少年は急に思い出して言った。

 

「僕、もう行かないと。ネビル先輩と温室で待ち合わせてるんです」

 

「ロングボトムと?」

 

スプラウト教授は意外そうな表情をした後、微笑んだ。

 

「彼と仲が良いのですね」

 

「はい!珍しい魔法植物を見せてくれるって約束してくれたんです」

 

教授は嬉しそうに頷いた。

 

「良き友人がいる事は幸せな事です」

 

「では失礼します」

 

デイビッドは深々と頭を下げ、ハッフルパフ寮から退室した。

その背中を見送りながら、スプラウト教授の目に涙が滲んでいた。

かつて救えなかった教え子が愛する家族を得て、その血を次の世代に継いでいるという事実に、彼女は深い感慨を抱いていた。

 

 

---

 

 

【異なる道を歩む血族】

 

 

【デイビッド・スミス - 心優しきハッフルパフ生】

 

 

ハッフルパフ寮の談話室で、デイビッドは薬草学の宿題に取り組んでいた。

午後の日光が差し込む柔らかな光の中、彼の黒髪の巻き毛が揺れている。

顔立ちは父親譲りの東洋人の血筋を思わせるものを持ちながらも、目元には母親譲りの温かみがあった。

 

「デイビッド!」

 

同じ寮の女子生徒が駆け寄ってきた。

 

「温室でスプラウト先生が探してたわよ!」

 

「ありがとう」

 

彼は微笑んで立ち上がった。

 

「すぐに向かうよ」

 

デイビッドには父親の記憶がない。

自分が生まれる前に亡くなったからだ。

母エヴァは決して多くを語らなかったが、「お父さんは素晴らしい魔法使いだった」とだけ教えてくれていた。

その言葉だけで充分だった。

 

---

 

【ジョン・スミス・ジュニア - 激情のグリフィンドール生】

 

 

一方、グリフィンドールの談話室では激しいクィディッチ討論が続いていた。

その中心にいたのが【ジョン・スミス・ジュニア】だった。

 

「クラムの動きは完璧だ!あれこそ本物のシーカーさ!」

 

彼は熱っぽく語った。顔立ちは母アリア譲りの端正さを持ちながら、鋭い目つきだけは父親から受け継いでいた。

 

「でもジュニア、お前の家族は全くクィディッチなんかしなかったんだろう?」

 

友人がからかう。

 

「うるさいな!」

 

彼は顔を赤くして叫んだ。

 

「父親の事なんて知るもんか!」

 

母アリアは未だに父との再会を夢見て、かつてのアパートで暮らし続けていた。

ジュニアはそんな母親に複雑な思いを抱いていた。

 

---

 

【マリア・コナー - 秘密を抱える美しきスリザリン生】

 

 

昼の図書館で一人、マリアは難しい魔術書に目を通していた。

母メアリー譲りの金髪の美しい少女は周囲の注目の的だった。

表向きには両親は魔法使いの夫妻とされているが、実際は両親ともマグルだった。

しかし、彼女自身は真相を薄々察していた。

自分は父の本当の娘ではないのでは無いかと……。

 

「マリア、スネイプ先生があなたを探していたわ」

 

静かに声をかけてきたのはスリザリンの同級生だった。

 

「ありがとう、すぐに行くわ」

 

彼女は本を閉じた。

聡明で冷静な彼女は自分の出生の秘密に気づきつつも、それについて深く考えないようにしていた。

目元に宿る父にも母にも似ていない異質な瞳が、時折彼女の心をかき乱すのを無視しながら……

 

 

【偶然の交差点】

 

 

その日の夕刻、三人は偶然中庭の石橋で出会った。

デイビッドは温室から戻る途中で、ジュニアは箒でのツーリングを終えて、マリアは図書館からの帰りだった。

 

「あっ」

 

デイビッドが思わず声を上げた。

 

「ジョンじゃないか。久しぶりだね」

 

「デイビッドか」

 

ジュニアは照れくさそうに笑った。

 

「最近は合同授業以外で会うのは珍しいな」

 

「こんにちは」

 

マリアが二人に会釈した。

 

「あれ?君は確かスリザリンの……」

 

デイビッドが考え込んだ。

 

「マリア・コナーと言いますわ」

 

彼女は優美に自己紹介した。

 

「初めまして、ハッフルパフとグリフィンドールの御二方」

 

ジュニアは二人を交互に見た。

奇妙な既視感があった。

自分と2人の顔に映る微かな似通った輪郭。

 

「……何か変じゃないか?」

 

「何が?」

 

デイビッドが尋ねた。

 

「いや、なんでもない」

 

ジュニアは首を振った。

 

「きっと気のせいだ」

 

マリアは二人の会話を静かに観察していた。

彼女の蒼色の瞳が夕日に照らされて不思議な光を放った。

 

こうして彼らの血の繋がりを知らずに日々は過ぎていく。

ホグワーツの壮大な建物の中で、運命の糸は静かに絡み合っていた。

 

 

---

 

 

【存在せぬ予言】

 

 

1981年6月1日 13:15

ホグワーツ 占い学教室

 

 

「教師としての最初の一年間はどうでしたかな、トレローニー先生」

 

ホグワーツ魔法魔術学校校長【アルバス・ダンブルドア】は穏やかな声で問いかけた。

窓から差し込む午後の光が、教室に並ぶ水晶球や占星術の道具をぼんやりと照らし出す。

占い学教授【シビル・トレローニー】は大きなフード付きの紫色のガウンに身を包み、神秘的な微笑みを浮かべて振り向いた。

 

「本来、内なる目を持った予言者は俗世に関わるべきでは無いのですが……」

 

彼女の声は不自然に高いが、自信に満ちていた。

ダンブルドアは彼女の言葉に小さく頷きながらも、その態度には明らかな不信感を抱いていた。

 

元々、トレローニーを教師として雇ったのは彼女が意識せずに発する予言の価値ゆえであった。

特に「闇の帝王に関する予言」は非常に重要なもので、死喰い人たちから彼女を保護するためにホグワーツの教壇に据えたのだ。

だが、彼女が実際に教師として適任かどうかについては疑問符が付く。

今日も生徒たちは午後の授業に出ておらず、彼女の教室は空っぽだった。

 

「それでもあなたの存在は必要不可欠なのです」

 

ダンブルドアは形式的に述べた。

 

「これからもよろしくお願いします」

 

「勿論ですわ」

 

トレローニーは夢見るような眼差しで答えた。

 

「この学び舎には、まだ多くの運命が紡がれようとしていますもの」

 

ダンブルドアは静かに頷き、退出しようとした。

 

もう十分だ——その時だった。

 

突如として、トレローニーの様子が変わった。

彼女の瞳孔が収縮し、身体が硬直する。フードが床に滑り落ちた。

 

「何と……」

 

ダンブルドアは本能的に身構えた。

かつて彼女がヴォルデモートに関する重大な予言をした時と同じ兆候だった。

 

「不死鳥の英雄よ……」

 

トレローニーの口から発せられたのは別人の声だった。

低く野太い男性の声。

 

ダンブルドアはトレローニーの口から発せられるであろう予言を聞き漏らすまいと、真剣な表情で耳を傾ける。

 

彼女の意識は既に別の次元にあった。

両手が震え始め、水晶球が淡い光を放ち始めた。

 

「死を喰らう者の血を引く3人の新たな同胞達が……」

 

その声は教室中に響き渡った。

 

「それぞれ異なる母親から生まれる」

 

ダンブルドアの心臓が跳ねた。

死を喰らう者——死喰い人の事だろう。

 

「姉弟の内の1人は闇の帝王に印されなかった者と友になり……」

 

トレローニーの声は苦しげに続いた。

 

「やがて3人は……光と闇、秩序と混沌……そのどちらか、もしくは両方。またはそのどちらでも無いものを……このブリテンの地に齎すであろう……」

 

言葉が途切れると同時に、トレローニーの身体から力が抜けた。

水晶球の光も消え、彼女は意識を失って椅子に崩れ落ちた。

 

ダンブルドアは静かに歩み寄り、彼女の脈を確認した。

健康状態に問題はない。

単なるトランス状態からの解放であった。

 

「また新たな予言か……」

 

老校長は憂鬱な表情で天井を見上げた。

この数年だけで重大な予言がいくつ生まれた事か。

ヴォルデモートに関する予言。

そして今度は、死を喰らう者……死喰い人の血を引く者達に関する予言。

 

彼は懐から小さな羊皮紙を取り出し、予言の内容を書き留め始めた。

羽ペンの走る音だけが教室に響く。

 

「死喰い人の血を引く……母親の異なる……三姉弟……」

 

ダンブルドアは眉を寄せた。

 

「一体誰の事なのだ?」

 

彼の思考は急速に展開した。

死喰い人にも家族はある。

だが「血を引く者」が生まれるには時間がかかる。

最も可能性が高いのは……

 

「近年になって死喰い人となった者の子供達か」

 

彼は自問自答した。

特に気になるのは「闇の帝王に印されなかった者」との関係性だ。

それは明らかにポッター夫妻の子か、ロングボトム夫妻の子の事を指している。

現在、2組の家族は死喰い人陣営から身を守る為に【忠誠の術】で守られた場所にいる。

 

「秩序……混沌……そのどちらでも無い……」

 

ダンブルドアは呟いた。

 

「一体何を意味しているのか」

 

彼の表情は険しさを増していく。

この予言は何十年後に影響するのか?それともすでに始まっているのか?

 

「ジョン・スミス……」

 

不意にその名が唇から零れた。

 

「まさか……」

 

死喰い人でありながら、マグル社会でマグルとして生活していた男。

彼の子供たちが何らかの形で歴史に名を残す……その可能性は否定できなかった。

 

ダンブルドアは深く息を吸い込み、窓の外を見た。

黄昏時の陽光が、古城の輪郭を金色に染め上げている。

 

「運命の糸は複雑に絡み合うものだな」

 

彼は最後にそう呟き、トレローニーを安静にしておく為の簡単な呪文をかけた後、教室を後にした。

 

廊下に出ると、昼下がりの日の光が影を長く伸ばしていた。

彼の長い旅路はまだ終われない。

新たな予言によって、その道のりは更に複雑になったように思われた。

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