【IFルート:新たな教師】はジョンが魔法省に顔を割られなかった世界線で、この世界線ではダンブルドアが用意した闇陣営へのスパイの一人です。(スネイプと同じ)
【白い世界】
????年 ?月?日
キングス・クロス駅?
ハリーが己の運命に決着をつける為に、帰って行った後。
白い世界の【キングス・クロス駅】にて、ダンブルドアの穏やかな声が白い空間に響いた。
その声には皮肉とも諦念ともつかない独特の温かさがあった。
「……さて、次はお主の番じゃな」
「お主のような男と会話を交わす日が来ようとは思わなんだよ」
柱の陰から姿を現した男【ジョン・スズキ・スミス】は薄笑いを浮かべていた。
ホグワーツ時代の記憶では決して笑う事のなかった男が。
彼の姿は生前の記憶そのままだったが、その周りには微かに灰の匂いが漂っていた。
「魔法界の英雄殿とご一緒できるとは光栄だな」
ジョンは肩をすくめた。
「死んでからようやく会話をする機会が得られるとは……皮肉なものだ」
ダンブルドアは杖も持たず、ただ立っていた。
「そうかもしれんな。生きておった時は互いの道が交わらなかった。お主は影に潜み、ワシは表舞台に立ち続けた」
「俺は影が性に合ってたのさ」
ジョンは軽く首を振った。
「ところで……ホグワーツの校長殿はどうやって俺を見つけた?ここは死者の待合室だろう?」
ダンブルドアの青い瞳が深く澄んでいた。
「お主も死んだのじゃろう?」
「ああ」
ジョンは素っ気なく認めた。
「死喰い人の俺がヴォルデモートに逆らって、何人かの死喰い人共は道連れにしたが、最後はヴォルデモート本人に殺された……馬鹿げた最後だったな」
彼は自嘲気味に笑った。
二人の視線の先には、端の方に蹲る影があった。
かつて【ヴォルデモート卿】と呼ばれた者の魂の破片だ。
傷ついた赤ん坊のような姿だが、その表情は憎悪と狂気に満ちていた。
「お久しぶりですね、我が君」
ジョンは皮肉めいた敬意を込めて頭を下げた。
「随分と変わり果てた姿になりましたね」
影が呻いた。
その声は意味を成さなかったが、明らかな怒りを孕んでいた。
「ハリーにも言ったが……」
ダンブルドアが静かに言った。
「ワシらには救えぬものじゃよ」
ジョンは遠くを見つめるような目で魂の破片を見た。
「ああ、俺も救おうとは思わん」
「なぜじゃ?」
ジョンは珍しく真剣な表情になった。
「救う価値がないからだ」
彼は短く言った。
「奴は自分で破滅への道を選び取った。その結果を受け入れるべきだ」
ダンブルドアは【賢者の石】のような青い目で彼を見つめた。
「お主自身もまた救いを拒むのか?」
「俺の話は関係ない」
ジョンは冷たく言い放った。
「俺には家族がいる……妻と子供達だ」
彼の声に感情が籠もった。
「俺に……子供がいると知ったのは、俺が死んでからだが……俺はあの子達に、父親らしい事を何一つしてやれなかった……」
彼の目に微かな光が宿った。
「だから……この白い世界で……せめて願う事だけは許してくれ……あの子達が幸せでありますように……」
ダンブルドアは静かに頷いた。
「願う事は自由じゃよ。だが覚えておくがよい。お主の存在はもう現世には影響を与える事はない。彼らの行く末は、彼ら自身の選択によって決まる」
「わかっている」
ジョンは苦笑した。
「だが……願わずにはいられない……」
その時、列車の汽笛が遠くで鳴った。
白い空間に小さな揺れが走る。
「そろそろ時間のようじゃな」
ダンブルドアが言った。
「お主も行き先を選ぶ時が来たようじゃ」
ジョンはゆっくりと立ち上がった。
「行く先?俺に選択肢があると?」
「白い世界にも秩序がある」
ダンブルドアは教え諭すように言った。
「ここで許された者は新たな旅立ちができる。だが許されぬ者は……」
「永久に彷徨うわけか」
ジョンは自嘲気味に笑った。
「俺はどちらになると思う?」
ダンブルドアは微笑んだ。
「それを決めるのはワシではない。お主自身じゃよ」
ジョンはしばらく沈黙した後、ゆっくりと頷いた。
「そうか……なら行ってみるか……」
彼の視線がヴォルデモートの魂の破片に向けられた。
「最後にもう一度だけ……我が君」
彼は軽く礼をした。
「あんたは最期まで自分だけの世界に閉じこもった。他人を支配しようとしたが……結局誰も理解しようとしなかった」
ヴォルデモートの魂の破片がさらに激しく蠢いた。
だがジョンはすでに背を向けていた。
「ダンブルドア先生」
彼は最後に言った。
「もし俺の子供達と話す機会があれば……伝えてほしい。『愛している』と」
言葉とともに彼の姿が霞んでいった。
白い世界に溶け込むように。
ダンブルドアはただ見送った。
「言葉より行動で示すべきじゃよ」
老人は静かに呟いた。
「だが……お主にはそれが難しかったのかもしれんな……」
白い世界に残された老人は深い思索に沈んだ。
この出会いは偶然だったのか必然だったのか。
その答えを見つけるのはまだ時間がかかるであろう……
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【IFルート:新たな教師】
1995年9月1日 18:03
ホグワーツ城 大広間
蝋燭の柔らかな光が大理石の天井に映り込み、各寮の長テーブルには色とりどりの料理と黄金の皿が積まれていた。
しかし今夜の大広間は例年とは異なる緊張感に包まれていた。
「さて、皆の者」
校長の【アルバス・ダンブルドア】が杖で盃を鳴らすと、食堂は静寂に包まれた。
「新たな教師を紹介しよう。魔法省から派遣された……」
「エヘンッ!エヘンッ!」
わざとらしい咳払いをし、壇上に上がった女性を見て、生徒たちの間から小さなざわめきが起こった。
四十代半ばと思われる小太りの女性——潰れた鼻と歪んだ口元と目が、まるでガマガエルの様だ。
「ドローレス・アンブリッジ先生じゃ」
ダンブルドアが紹介したが、拍手は起こらなかった。
アンブリッジは一礼すると、ダンブルドアからマイクを受け取り、作った様な甘ったるい声で話し始めた。
「皆様、はじめまして。これから『闇の魔術に対する防衛術』の授業を担当させていただく【ドローレス・アンブリッジ】といいますわ」
彼女は生徒たちを見回し、特にスリザリンのテーブルに視線を向けた。
「この一年で世界情勢は大きく変わりました。しかし誤解しないでください————例のあの人など存在しませんし、ましてや復活など致しません。そのような噂は単なる陰謀論であり、恐れることは何もありません」
彼女の言葉に、グリフィンドール寮の席に座っている【ハリー・ポッター】が拳を握り締めるのが見えた。
「魔法省はこれ以上生徒たちを恐怖にさらすわけにはいかないと判断し、厳格な秩序と管理が必要であると考えています。そのため、わたくしは魔法省の代表としてここに赴任することになりました」
アンブリッジは杖を取り出し、空中に魔法省の紋章を描いた。
「皆さんの学習環境を改善し、より効率的で規律ある教育を提供するために全力を尽くすつもりです」
教師席からは不満げな咳払いが聞こえた。
特に【ミネルバ・マクゴナガル】教授の唇が硬く結ばれている。
「以上です」
アンブリッジは締めくくり、ダンブルドアにマイクを返した。
「実に啓蒙的なお話でしたな」
ダンブルドアは微笑みながら言ったが、その目は笑っていなかった。
「さて……」
彼は懐中時計を取り出し、少し首を傾げた。
「さて……生徒の皆も早く目の前のご馳走を食べたいと思っていると思うが……もう一言二言、ワシから言わせてもらう事があってのう」
「まずは残念な知らせじゃ、今年から3年生以上は今まで選択科目だった【マグル学】が全員必修となった事」
「そして、今までマグル学を担当なさっていた【チャリティ・バーベッジ】先生が一身上の都合により退職なさる事」
「そして……喜ばしい知らせは……来た様じゃの」
大広間の扉が開き、一人の長身の東洋系の顔立ちをした黒いスーツ姿の男性が入って来た。
年は40歳前後だろうか。
整った容姿の中に鋭い眼光を湛えている。
「!」
ハッフルパフのテーブルから声にならないどよめきが上がった。
ハッフルパフの4年生【デイビッド・スミス】が隣の女子生徒に凝視されている。
「あの人……デイビッドに凄く似てる……」
「……えっ?そんな……まさか、父さんは死んだって……母さんが……」
グリフィンドールのテーブルでも同様に騒ぎが起きていた。
「アイツは……っ!あの男は……っ!」
グリフィンドールの4年生【ジョン・スミス・ジュニア】が拳を握りしめ、歯ぎしりをする音さえ聞こえてきそうだった。
そしてスリザリンのテーブルで静かに座っていたスリザリンの4年生【マリア・コナー】の目が大きく見開かれた。
「お母さんが持っていた写真の……」
壇上に上がった男はダンブルドアと固く握手を交わし、一礼した。
「ジョン・スミス先生じゃ。今年からマグル学を担当してくださる」
教師席に衝撃が走った。
特にハッフルパフの寮監ポモーナ・スプラウトはコップを落としそうになった。
「スミス……?」
彼女は口の中で呟いた。
「フム」
ダンブルドアは穏やかに微笑んだ。
「驚くのも無理はない。彼はかつて我が校の生徒であり、ハッフルパフに所属しておった。卒業後はまあ……色々あった様なのじゃが、この度めでたく教職に就かれたという訳じゃな」
彼は悪戯っぽくウインクした。
アンブリッチの顔が一瞬強張ったのを、ほとんどの者は見逃さなかった。
ジョンは壇上からゆっくりと視線を巡らせた。
その目がハリー・ポッターと数人の生徒達に留まる。
「……」
わずかな沈黙の後、彼は口を開いた。
「初めまして、諸君。ジョン・スミスだ。マグル学と言っても難しく考える必要はない。要は世界を広く見る訓練だと思ってほしい」
彼の声は低く落ち着いていたが、どこか威圧感があった。
「魔法が使えない人々の社会は、実は我々の想像以上に複雑で興味深い。それを理解することは……君たちの未来の為にもきっと役立つだろう」
【ミネルバ・マクゴナガル】教授が小さく溜息をつくのが見えた。
【フィリウス・フリットウィック】教授は興味深そうに眉を上げている。
そして【セブルス・スネイプ】教授は、ほとんど表情を変えなかったものの、ジョンを一瞥した目に微かな警戒の色が浮かんでいた。
「さて、長く待たせたの」
ダンブルドアが再び壇上に立った。
「今宵は宴じゃ。思う存分……搔っ込め」
彼が杖を振り上げると、天井いっぱいに星々が輝き始め、テーブルには多くのご馳走が並んだ。
大広間には歓声と笑い声が広がった。
しかし誰の目にも明らかな緊張感が漂っていた。
アンブリッジ、ジョン・スミス。
そして何よりダンブルドアの不敵な笑み。
この新しい学年の幕開けに、誰もが確信していた。
今年も平穏無事では終わらないと。