※この作品はR-18です。

とある死喰い人の犯罪記録   作:神魂

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投稿です。今回の話は、前回の【IFルート:新たな教師】と同じ世界線の話です。
楽しんで頂けたら嬉しく思います。


【IFルート:3人との再会】

【IFルート:3人との再会】

 

 

【再会のクリスマス】

 

 

1995年12月24日 16:12

ロンドン南部の古びたアパートメント

 

 

夕暮れの柔らかな光が台所の窓から差し込み、ローストビーフを焼く匂いと香草の香りが混ざり合う。

【アリア】はオーブンを覗き込みながら鼻歌を歌っていた。

今日は特別な日。

息子の【ジョン・スミス・ジュニア】がホグワーツから帰ってくる日だ。

 

「あと少しかな……」

 

彼女が木製のスプーンでグレイビーソースをかき混ぜたとき、突然のチャイムが響いた。

 

「ジュニアが帰ってきたのかしら?」

 

アリアはエプロンで手を拭きながら玄関へ向かった。

鍵を回し、ドアを開ける。

 

目の前に立っていたのは息子ではなかった。

 

「ジョン……?」

 

時間さえも止まったように思えた。

あの日と同じ黒いコート。

少し老けたが変わらない笑顔。

彼女の心臓が痛いほど鼓動を早めた。

 

「久し振り、アリア」

 

彼の声は15年分の重みを帯びていた。

 

彼は視線を右に向けた。

玄関脇の棚の上には、小さな木彫りの雪だるまが置かれている。

1978年のクリスマスイブに2人で買った記念品だ。

 

「この雪だるま……まだ残してくれてたんだ」

 

彼は指先で雪だるまの鼻先に触れた。

 

「ジョンっ!」

 

アリアの喉から絞り出される声は震えていた。

 

「会いたかった!」

 

彼女は両腕を広げ、15年の空白を埋めるように飛び込んだ。

ジョンはしっかりと受け止めた。

その温もりと匂いは昔と変わらず懐かしい——

 

「必ず貴方は戻って来るって信じてた!」

 

アリアは彼の胸に顔を埋め、涙でシャツを濡らした。

 

「ああっ……ジョン……っ!」

 

「心配かけてしまって、本当にゴメン……」

 

ジョンは彼女の髪を優しく撫でた。

その時、外廊下から声が聞こえた。

 

「何でお前がここに居やがる……っ!」

 

息子のジュニアだった。

14歳の少年は怒りに燃える目で玄関に立っていた。

制服姿に羽根飾りの帽子をかぶり、ホグワーツからの帰路のままの格好だ。

 

「今はクリスマス休暇だからな」

 

ジョンは冷静に答えた。

 

「ホグワーツの教師だって休みさ」

 

「教師?」

 

アリアが言った。

 

「ああ。今の俺はホグワーツ……ジュニアの通う学校で教師をしているんだ」

 

ジョンが説明した。

彼の肩書は【マグル学】講師だった。

 

「今更、何の用だっ!」

 

ジュニアの声は廊下に響いた。

 

「お前のせいで、ママがどれだけ苦労したと思っている……っ!」

 

アリアは息子の方を向いて言った。

 

「コラッ!ジュニアっ!パパになんて口の聞き方なのっ!」

 

「それとパパがホグワーツの先生だって事、ママ聞いて無いわよっ!」

 

ジョンは苦笑した。

 

「……いや、いいんだアリア。この子の怒りはもっともだ」

 

アリアは首を横に振った。

 

「ううん、貴方が戻って来てくれただけで十分だわ……」

 

彼女の目に涙が光る。

その表情には深い安堵と幸福感が溢れていた。

 

ジュニアはその光景を見て歯を食いしばった。

 

「……勝手にしろっ!」

 

彼は踵を返し、階段を駆け下りていった。

ドアが激しく閉まる音がした。

 

「待って、ジュニア!」

 

アリアが声をかけたが、息子は既に姿を消していた。

 

ジョンは重々しくため息をついた。

 

「……当然の反応だな」

 

アリアは彼の袖を掴んだ。

 

「行かないで。せめてもう少しだけこうさせて……」

 

彼女の懇願に、ジョンは困った様に微笑んだ。

15年ぶりの温かな笑顔だった。

 

 

【再会の2人】

 

 

1995年9月1日 13:00

マンチェスター パブ【The Badger's Golden Cup】

 

 

重い鉄製のドアノブを握ったとき、【エヴァ】の指先は汗ばんでいた。

息子【デイビッド・スミス】をホグワーツ特急に乗せたばかりで、まだ胸が高鳴っていた。

3年前、息子が初めて魔法学校——ホグワーツに行く日——母親として誇らしい反面、寂しさもあった。

 

「……今日はちゃんと下の店で飲んでるぞ、エヴァ」

 

聞き覚えのある声が店内に響いた。

カウンター席に腰掛けている男がグラスを傾けている。

彼の前には琥珀色の液体が揺れていた。

 

エヴァは息を呑んだ。

 

「あら……締め忘れたかしら?」

 

彼女は冗談めかして呟いた。

 

「泥棒かもしれないわね」

 

自分の声が震えていることに気づいた。

心臓の鼓動が聞こえる程、激しく鼓動している。

 

「この店のセキュリティは相変わらずザルだな」

 

男は笑いながら言った。

 

「もう少し用心したほうがいいぞ」

 

カウンター越しに振り返った男の顔を見て、エヴァは立ちすくんだ。

時が止まったような錯覚に陥った。

その名を口にするだけで涙が溢れそうになる。

エヴァは必死に堪えた。

彼女の足取りはゆっくりと男に近づいていく。

 

「久し振りだな……エヴァ」

 

「貴方もね……ジョン」

 

最後の言葉は嗚咽で途切れそうになった。

彼女の手が彼の肩に触れると、幻ではないことを確信できた。

 

ジョンは静かに立ち上がった。

長旅の跡が彼の服や髪に刻まれている。だが鋭い眼光と薄い笑みは変わらない。

 

エヴァは彼の胸に飛び込んだ。

15年ぶりの感触—コートの革の匂いと彼独特の懐かしい香りが混ざっている。

 

「エヴァ……待たせたな」

 

ジョンは彼女の背中に手を回した。

 

「遅かったじゃない……」

 

彼女の声は震えた。

 

「私……貴方があの後……死んだものだと……」

 

15年前に姿を消した時、ジョンの消息は途絶えていた。

当時魔法省による徹底的な捜索も行われたが、何の痕跡も見つからなかった。

 

「俺は死なない」

 

ジョンは優しく彼女を引き離し、額と額を合わせた。

 

「そう約束しただろう」

 

エヴァは目を閉じた。

 

「ええ……覚えてるわ」

 

彼女はジョンと初めて出会った日の事を思い出していた。

開店初日、この店でジョンに出した初めてのビール。

お互いの素性を調べる為に会話を楽しみつつ牽制しあっていた自分達。

それは後に愛し合う男女となり【デイビッド】と言う息子まで授かった事……

 

「もう二度と……」

 

エヴァは彼の頬に触れた。

 

「貴方を失わない……」

 

ジョンは微笑んだ。

 

「ああ、俺もだ……」

 

そしてそのまま、2人の唇が一つに重なった……

 

 

【過去の罪と謝罪】

 

 

1995年12月10日 15:00

ロンドン高級住宅街 コナー邸 

 

 

雪が舞い落ちる午後の窓辺で、【メアリー】は静かに編み物をしていた。

赤い毛糸玉が次第に形を成し始めている。

娘【マリア】へのクリスマスプレゼントだ。

 

「マークが帰ってきたら紅茶を淹れないといけないわね」

 

彼女は時計を見ながら呟いた。

 

玄関チャイムが鳴った時、彼女は立ち上がった。

今日は特に来客の予定はない。

郵便か何かだろうと思い、

メアリーは玄関へ向かった。

 

鍵を開ける前に、何故か一瞬だけ躊躇った。

何か予感のようなものがあった。

深呼吸をしてドアを開く。

 

そこに立っていたのは郵便配達員ではなく、黒いコートを着た男だった。

 

「……」

 

時間が止まったかのように、メアリーは動けなくなった。

目の前の人物の顔は変わっていなかった——いや、少し老けたがその瞳の奥にある光は同じだった。

 

「久し振りだな、メアリー」

 

その声を聞いた瞬間、彼女の体中を稲妻が走ったような衝撃が襲った。

彼女は壁に手をついて身体を支えた。

彼女の鼓動は早くなり、冷や汗が額を伝う。

 

「どうして……?」

 

言葉が続かなかった。

15年間封印してきた記憶が一気に流れ込んでくる。

あの熱い夜。

裏切りの自覚。

夫と娘達への罪悪感。

そして……彼の子供を産んだ事実。

 

マリア。

 

彼女は既に14歳になり、今はホグワーツに通っている。

そしてその少女は……

 

「何故今更……」

 

その言葉は非難とも懇願とも取れる響きを持っていた。

メアリーの指先が震えている。

彼女は自分の感情を抑えようと必死だった。

 

「娘に……マリアに会ったよ」

 

彼は優しく微笑んだ。

 

「今、俺はホグワーツで教師をしていてね……君に似て、美しい子だったよ」

 

ジョンは彼女の反応を見つめながら続けた。

 

「……今、君の夫はいるのかい?」

 

メアリーは拳を握りしめた。

その言葉が彼女の心を抉るように聞こえた。

彼女は答えられず俯いた。

 

「私は……」

 

メアリーは掠れた声で言った。

 

「私は夫を愛しているわ」

 

嘘ではない。

少なくとも今はそう思っている。

だが完全な真実でもない。

 

ジョンは静かに彼女を見つめた。

 

「そうか……」

 

彼は軽く頷いた。

 

「俺の行動が原因で、君達夫婦の関係に亀裂を入れてしまったのは分かっているよ……すまなかった」

 

ジョンはメアリーに対して謝罪した。

 

「そんな事はありません……あの時は私自身が選んだのですから……」

 

メアリーはジョンの言葉を否定した。

 

「ところで、貴方は私の娘……マリアに会ったと言ってましたけど……マリアは貴方の事をなんて言ってましたか?」

 

メアリーはジョンに質問した。

 

「特には何も……あの子は……自分が本当は君と俺との子供だと言う事実を知らないと思う。学校では教師と1生徒に過ぎないし」

 

「そうですか……」

 

メアリーは何か安心したかの様に呟いた。

 

「ただ……」

 

ジョンは考える様に言った。

 

「学校での授業や大広間での食事の時、俺に対して……あの子から視線を感じる時がある」

 

「それは……どういう……?」

 

「恐らくだけど……あの子は薄々感づいているのかも知れないな。自分が本当は誰との子なのか……」

 

「えっ……」

 

メアリーはその可能性について考え始めていた。

 

「いずれあの子から、自身の出生について聞かれる事になるかも知れない……その時は君に迷惑はかけないようにするよ」

 

ジョンはメアリーに、そして自分自身に言い聞かせる様に言った。

 

「お願いします……夫には……」

 

メアリーは言いかける。

 

「分かっている……今更言えるわけがないさ……」

 

ジョンはメアリーの心配を汲み取った。

 

「ありがとう……」

 

メアリーはそう言い、ジョンに感謝した。

 

「あと……もしよければ教えて欲しいんですが……」

 

メアリーはジョンに尋ねた。

 

「ん?」

 

「あの子……マリアの学校での様子について」

 

「ああ……そうだな……」

 

ジョンは思い出しながら話した。

 

「あの子は……頭が良くて礼儀正しい子だ。周りの学生達からも慕われている……あの子は間違いなく君の娘だと思うよ」

 

「そうですか……ありがとうございます」

 

メアリーはジョンにお礼を言った。

 

「ところで……貴方はこれからどうするんですか……?」

 

メアリーは尋ねた。

 

「ああ……そうだな。俺としてもあまり君とは関わらない方がいいと思うが……時々マリアの様子について手紙とかで知らせるよ。あくまでもあの子の【教師】として」

 

ジョンは優しく微笑んだ。

 

「そう……ですか。ありがとう……ございます」

 

「じゃあ、俺はこれで……」

 

ジョンはコートを翻し、言った。

 

「マリアの事については今後も注意しておくよ」

 

「じゃあな……」

 

ジョンはそのまま玄関を出ていった。

メアリーはその後姿を、何とも言えない表情で静かに見つめていた……

 

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