「僕は……僕はなんだってこんなことを……」
世界中へ向けて公開アナルセックスを散々楽しんだ日の夜中。
相変わらず廃ビルの中、粗雑なマットレスの上で寝ていたらそんな悲しげな呟きによって目が覚めた。
「最初は、八重ちゃんを独り占めできると思ってた……こんな肉便器みたいな変態で怒りもした……でも、でも……ッ、僕は八重ちゃんをこんな風にしたくて監禁したわけじゃあ……」
監禁されてる身からすると何言ってんだコイツ、である。
お前が始めた物語だろ。
責任持って最後まで監禁調教をやり遂げろよ。
その身朽ち果てようとも最高のドSご主人様としてハッピーエンドを目指せよ。
「大丈夫。大丈夫ですよ、ご主人様……」
仕方ねぇなぁ。
俺は背後からブヒ山を抱きしめる。
お互い裸だからか、むにょん♡ と形が良くて柔らかいおっぱいが背中に当たるが当ててんのよ。
このまま監禁調教ハッピー⭐︎ライフが終わるのはあまりに惜しい。
あまり気は進まないが、今回だけいちゃラブ甘々えっちで慰めてやるか。
「……っ、八重ちゃん、ごめん、ごめん……っ。僕は、君を……」
情けなく鼻を啜りながら、ガタガタと震えるブヒ山の広い背中。
このまま放置すれば、明日の朝には「自首してくる」なんて言い出しかねない勢いだ。そうなれば、この最高の飼育環境(廃ビル生活)も、刺激的なコンテンツ制作もすべておじゃんになってしまう。
それは困る。非常に困る。
「しーっ……。謝らないでください、ご主人様。私は、今とっても幸せなんですよ?」
俺は背中から回した腕に力を込め、さらに豊満な胸を彼の背に押し当てた。
男の熱を帯びた背中に、女特有の柔らかい感触が「むにゅん」と形を変えて溶け合っていく。
「ほら、こっちを向いて……?」
耳元で、蕩けるような甘い声(当社比)を吹き込んでやる。
促されるまま、のろのろと振り返ったブヒ山の顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。情けない。だが、その弱さが今は愛おしい。
「……八重、ちゃん……」
「そう、ご主人様の八重ですよ。今日は、あんなに……世界中が見てる前で、私を可愛がってくれたじゃないですか。あれ、すっごく気持ちよかったんですよ?」
嘘ではない。羞恥の極致で味わったあの快楽は、今思い出しても下腹部がじんわりと熱くなるほどだ。
俺は震える彼の手に、自分の手を重ねた。指を絡め、恋人同士のように恋人繋ぎにする。
「嫌なことは全部忘れましょう? 今は、私と……貴方だけ」
俺は彼の上に跨り、そっと唇を重ねた。
先ほどまでの公開アナルセックスで見せていた「陵辱」の雰囲気は一切ない。ただ、お互いの体温を確かめ合うような、静かで深いキス。
「んっ……、ちゅ……っ、ふぅ……」
触れ合う唇から、彼の困惑と、そして隠しきれない情欲が伝わってくる。
ブヒ山の腕が、おずおずと俺の腰に回された。
「……あ、あぁ……。八重ちゃん……、柔らかい……温かいよ……」
そうだよ、ご主人様。この身体は、全部貴方のものなんだから。
俺は彼の首筋に顔を埋め、わざとらしく熱い吐息を漏らす。
「ねぇ、もっと……優しく、愛してください。さっきみたいに道具としてじゃなくて……女の子として、可愛がって?」
俺がそう囁くと、ブヒ山の瞳に再び「支配者」の光が……いや、もっと執着心の強い、暗い熱が灯るのが見えた。
「……あぁ、わかった。愛してるよ、八重ちゃん。僕が、君を……誰よりも幸せにするから……っ」
ガツガツと、飢えた獣のように唇を貪り合う。
廃ビルの冷たい空気の中で、そこだけが異常な熱を帯びていく。
監禁、調教、そして公開羞恥。
そんな歪な関係の果てに辿り着いた、あまりにも「純愛」な情事。
これだよ、これ。
この「壊れかけの主」を、自分の身体ひとつで繋ぎ止めているという支配欲。
これこそが、監禁生活の醍醐味ってやつだ。
絡み合う舌と舌。ヌチャッ、という湿った音が、静まり返ったビル内に響く。
ブヒ山のキスは、強引でありながらどこか怯えているようでもあった。俺の唇を、そしてその奥にある喉を奪うことで、自分の罪を上書きしようとしているかのような必死さ。
「んっ、ふぅ……あ、はっ……ご主人様、もっと……♡」
俺はわざとらしく腰をくねらせ、彼の巨大な体を誘う。
男だった頃の俺なら、こんな脂ぎった巨漢に抱きしめられるなんて吐き気がしただろう。だが、この「八重」という美少女の身体は、快楽に対してあまりに正直だった。ブヒ山の汗の匂いも、荒い鼻息も、すべてが神経を昂ぶらせるスパイスに変わる。
俺の細い指が、彼の背中の肉に深く食い込む。
「……ああッ、八重ちゃん……! 君は、君はどうしてそんなに優しいんだ……! 僕は君を酷い目に遭わせた。世界中に、君のあんな……あんな恥ずかしい姿を晒したんだぞ……ッ!」
泣き言を言いながらも、彼の下半身は俺の太ももに熱い質量を押し当ててくる。
本当、男って生き物は度し難い。頭でどれだけ後悔していようが、モノは正直に反応してやがる。
「……いいんですよ。だって、私は貴方の『おもちゃ』なんですもん。おもちゃが、持ち主にどう使われようが……それは、幸せなことなんですよ?」
耳元で、甘ったるい毒を流し込んでやる。
この言葉こそ、ブヒ山にとって最大の「救い」であり「呪い」だ。俺が彼を許せば許すほど、彼の「純愛」は暴走し、俺への依存度は深まっていく。この廃ビルという楽園を維持するために、俺は聖母のフリをした悪魔を演じ続ける。
「八重ちゃん……ッ! あぁ、もう、我慢できない……っ! 愛してる、愛してるんだぁぁッ!」
彼が俺の足を左右に割り、その間へと潜り込む。
いつもなら、アナルにバイブを突っ込まれたり、無理やりな姿勢で辱められたりする。だが、今は違う。
「あ、はぁ……♡ あ……っ、やさしい……っ♡」
挿入の瞬間、彼は俺の顔をじっと見つめ、慈しむようにゆっくりと自身を沈めてきた。
ズル、と熱い塊が中を押し広げていく。アナルでの快楽が「破壊」に近いものだとしたら、こちらは「充填」だ。俺の空洞を、彼の執着が埋め尽くしていく。
「あ、んっ……♡ ごしゅ、じん……さまっ……奥、まできてる……っ♡」
お互いの裸体が密着し、皮膚と皮膚がこすれる音が粘り気を帯びてくる。
ブヒ山は、壊れ物を扱うように俺の髪を撫で、頬を摺り寄せながら、一回一回、噛み締めるように腰を動かした。
「八重ちゃん……僕の、八重ちゃん……。君を、一生離さない……。地獄まで、一緒だよ……」
「ええ……っ。ずっと、一緒です……♡ あ……あぅっ、そこ……っ、いいっ……♡」
廃ビルの窓から差し込む、冷たい月光。
その下で、歪な愛の形が完成していく。
俺はブヒ山の首に腕を回し、彼を強く抱き寄せた。彼の絶望も、情欲も、すべてを俺の身体で受け止める。快楽の波が何度も押し寄せ、俺の意識は白濁していく。
シコシコという、ピチャピチャという、肉がぶつかり合う音。
俺は、自分がかつて「俺」だったことすら忘れそうになるほど、この「女」としての絶頂に身を委ねた。
「っ……あ、あああああッ!!」
ブヒ山が俺の中で果てると同時に、俺の身体も弓なりに反り、これまでにないほど深く、甘い闇に堕ちていった。
情事のあと、俺は心地よい疲労感に包まれて、ブヒ山の腕の中で微睡んでいた。
このまま、明日も、明後日も。
世界中の人間が俺のあられもない姿をネットで見ていたとしても、このビルの壁の中にいれば、俺は無敵の「愛されヒロイン」でいられる。
「……八重ちゃん」
ブヒ山が静かに俺を呼んだ。
その声には、さっきまでの昂ぶりや混乱は一切なかった。氷のように冷たく、そして岩のように固い決意が宿っている。
「……はい、ご主人様?」
俺が寝ぼけ眼で見上げると、彼は俺をそっとベッド(マットレス)に横たえ、立ち上がった。
「……君は、自由になるべきだ」
「……えっ?」
耳を疑った。
自由? 何を言ってるんだ? そんなもの、今さら欲しくもない。
ブヒ山は、部屋の隅に置かれていた、ここにはおよそ不釣り合いなガーメントバッグを手に取った。
そして、その中から一着の「スーツ」を取り出したのだ。
それは彼が俺を監禁する前、おそらく「まっとうな社会人」だった頃に着ていたであろう、シワ一つない紺色のスーツだった。
「ご主人、様……? 何をして……」
「君を愛しているからこそ、僕は僕を許せないんだ。君を汚したまま、この暗いビルの中に閉じ込めておくことは……愛じゃない。ただの、エゴだった」
ブヒ山は、テキパキと服を着替え始めた。
肥満体ではあるが、スーツを着るその背中は、どこか気高い「罰を待つ者」のそれだった。
「ちょ、ちょっと待ってください! 私、今の生活が気に入ってるって言ったじゃないですか! あんなにエッチなこともしたし、世界中に……」
「それは、君の優しさだ。僕をこれ以上壊さないための、嘘だ」
違う、ガチなんだって!
俺は慌てて起き上がろうとするが、腰が抜けていてうまく力が入らない。さっきの濃厚な中出しえっちのダメージが、ここに来て仇となった。
「僕は、今から自首しにいく」
彼はネクタイを丁寧に締め、鏡もないのに身なりを整えた。
俺を拉致した狂信的なファンでも、淫らな動画を撮影する鬼畜カメラマンでもない。
そこには、一人の「飯島(仮名)」という男としての尊厳を取り戻そうとする、哀れな社会人が立っていた。
「……君の動画は、僕が持っているマスターデータはすべて消去する。ネットに流れたものは消えないかもしれない。けれど、君がこれから『普通の女の子』として生きていくための手助けは、司法の場で精一杯するつもりだ」
「バカなんですか……!? 自首なんてしたら、一生、刑務所ですよ!? 下手したら死刑……いや、そこまではいかないだろうけど、人生終わるんですよ!?」
俺の必死の呼びかけに、ブヒ山は今日一番の、穏やかで美しい微笑みを浮かべた。
「終わるんじゃない。君への愛を、形にするんだ。……さようなら、八重ちゃん。僕の、たった一人の……女神様」
彼はそう言い残すと、出口へと向かった。
コツ、コツ、と革靴がコンクリートを叩く、小気味よい音が響く。
「待って! 行かないで、ブヒ山! ご主人様ッ!!」
全裸のまま這いつくばって叫ぶ俺を振り返ることなく、彼は廃ビルの重い扉を開けた。
朝焼けの光が、ビルの内部を無慈悲に照らし出す。
そこには、散乱したアダルトグッズ、使い古された撮影機材、そして……欲望の果てに置き去りにされた、一人の美しい「元男」だけが取り残されていた。
「……あ、あいつ、マジで行きやがった……」
数分後。
遠くでサイレンの音が聞こえ始めたような気がした。
俺は、ぐちゃぐちゃになったマットレスの上で、膝を抱えて震えた。
自由。
それは、俺にとって最悪の絶望だった。
あんなに尽くして、あんなにエロい身体に仕上げてやったのに。
「お前が始めた物語だろ……ッ! 最後まで、責任取れよバカぁッ!!」
俺の涙と叫びは、虚しく廃ビルの中に消えていった。
スーツを着て警察署の門を叩くブヒ山の姿を想像し、俺は激しい憤りと、そして……ほんの少しの、言いようのない喪失感に涙をこぼした。
こうして、俺の「監禁調教ハッピー⭐︎ライフ」は、最悪の『バッド・ハッピーエンド』で幕を閉じたのである。