仕事はなんだかんだで見つかった。人手なんてずっと不足してるから。みんな日があるうちしか働けないし、残業なんて危な過ぎて出来ないし、雇う側もさせられないから。夜勤とか休憩時間に迂闊に外に出たらそれだけで「消えちゃう」し。だからともかく人手を集めるか、人数に合わせてその日の仕事を減らすかしかない。無理をしたら人が消えちゃうから。
だから今だって日があるうちに帰れちゃう。なんだか良く分からない電子機器の組み立てだけど、1日5時間くらいなのに随分ともらえるし。そういえば前の職場、なんか監査入ったみたい。わたしの勤務実態、大分まずかったらしいとか担当の人が言ってた。
何より夜道を歩くのはもう嫌。あの狼が歩く夜も。朱くて暗い夜も。
みんなとはぐれて、あいつらがいて。大勢で走って逃げたあんな夜道は。
”そのまま走って!”
ああ、なんだ、あの子いたじゃん。言われるままに国道まで走って列に加わって。何で忘れてたんだろう。違うか、あんな子どもが勝てるなんて思えなくて、それなのに見捨てて逃げたからか。
「わたしってなんか、最低だな」
人がいそうなのに人の気配がない住宅街を歩く。不安を紛らわせようとなんとなく髪をいじる、ボブだったのにあいつらのせいでマッシュに切る羽目になった髪。もう日は傾いてるし、すぐそばの公園は管理しきれてないのか半分林みたいになってて結構怖い。足早に通り過ぎようとして、
「へえ、当たりじゃん」
「他所もんじゃね?ここらの奴は通らねえからなぁ」
公園の門柱のと陰から二人組が出て来た。浅黒い肌の髪を金に染めた奴と、黒髪を逆立て気味に固めた男が。
「…人間?」
行く手を塞がれてつい口に出る。
「おいおい、ご挨拶じゃね」
「まあ結果は同じようなもんじゃね?いい世の中になったもんだぜ」
あそぼうぜ、と踏み出してくる男たちに後ずさる。「あそぼうぜ」と聞こえた気がした。狼の鋭い爪、ちがう男が手にしたナイフが―転がる石がこつんとヒールに当たった。
「あ」
二人組の更に後ろ、道の先に子供がいた、女子―中学生?眼鏡の、髪の長い、おとなしそうな。
「あん?」
「なんだガキかよ。まあ数あわ」
言葉の途中で金髪がいきなり倒れて―引き倒されて喉元に刃物を突き付けられていた。呆気に取られた直後にもう1人が叫ぶ。
「な、なんだてめぇ!」
返事は怒声だった。
「ふっざっけんな人間じゃねーかっ!首落とすとこだったぞっ!」
青い髪に青い目、簡素な服に皮サンダルとマント。引き倒した男に剣先を突き付けていたのはあの子だった。
「…ウィ、ウィッチ…」
「まぎらわしい真似してるんじゃねえっこのドサンピンがっ!」
とっとと失せろ唐変木どもと叫ぶ彼女に蹴りを入れられて、男たちが逃げ出す。はーとため息をついたあの子がわたしと女の子を交互に見る。
「お二人さん、この通り空き家しかないから使わない方がいいよ」
あいつらも何度か出てるし、と追加で言われてこくこくと首を縦に振る。
「それじゃ僕はもう行くから」
何か言おうと思って、何も思いつかなかったところですれ違いにあとでいく、と小声が届く。角の一つにあの子が消えて行くのを見送ったまま立ち尽くしていたら、声をかけられた。
「あの、あっちが、大通りです」
「あ、はい」
その後会話もなく通りを出て、そのまま居合わせた学生と別れてアパートに帰った。
「やあ」
一瞬息が止まった。いつもの様に鍵を開けて、キッチンとバスルームに挟まれた廊下の先に入ったら声をかけられたものだから。
「…驚かすと言うより忠告のつもりで中で待ったんだけどね。鍵を外に隠して置くのはやめた方がいいよ」
僕もやってたけどねと先程別れた彼女が、リビングのカーペットに座り込んでケラケラ笑う。
「あとさっきも言ったけどあの通りはマジで危ないから。僕も2度はインクブスを倒してるし、他のウィッチも監視のファミリアを置いてるくらいだから」
「そんなに」
警察とかが通行止めにしないのかしら、と疑問に思った。それはさておき、ハンドバッグと買い物袋を背の低いテーブルに置く。
「ごめん、先にシャワー浴びていい?」
「ここは主は君なんだから、どうぞお構い無く」
「一緒に浴びる?」
「…もう少し危機感持った方が良くない?」
一応不法侵入してる不審者の立場なんだけど、と彼女は言うけど、
「それを言ったらわたしも似たようなものじゃなくて」
これみよがしに人差し指で自分の唇をなぞる。あの夜とついでに明け方の別れでも要求した唇の感触は、はっきりと覚えている。ウィッチの実年齢の平均とか知らないけど、多分まずい筈だ。
「…やっぱり後にするわ」
わたしの言葉に素足の彼女が首を傾げる。テーブルの向こう、窓の前に座り込む彼女の前でジャケットを脱ぎ捨ててスカートを落とす。部屋の西を占拠するベッドに歩きながらワイシャツも投げると、ベッドに座っていい加減締め付けが鬱陶しいストッキングに取り掛かった。
「なにしてんの」
「いや、放り出したままは良くないでしょ」
仮置きのままの衣装かけのハンガーに、彼女はジャケットとスカートを掛けると、手にしたワイシャツもキッチンに移動して、多分洗濯かごに放り込んでまた戻ってきた。おかあさんかあんたは。つい脱いだストッキングを投げつけた。
「王子さまになってくれるんでしょう、わたしのピーターパン」
「判断早くない?単純に同性でも大変なのに、僕相手だと色々歪むよ?」
ジャストミートで片方が頭から顔にかかってるのに、まるで動揺しないのがなんかむかつく。
「とっくにおかしくなってるわよ!さっきのでもう無理ってわかっちゃったから」
チンピラとはいえ人間を、あいつらと見間違えた。
「…狼野郎と見間違えたのは、君のイメージが伝わったからか」
狼、の言葉に身を固くする。彼女はストッキングを放り出すとトーガとベルトを解いて落とし、チュニックも捲り上げて脱ぎ捨てた。
「ブラ、しないの?」
わたしのもとに上がってくる彼女に聞く。
「ウィッチの服だと、不要判定になっちゃうサイズらしくてね」
意識して創るのも面倒でさ、とどことなく皮肉っぽい笑みを彼女は浮かべる。
「きて」
両手を天井に向けて、小さな王子さまを迎え入れる。えらく普通なショーツ一枚の彼女は求めに応じて体を重ねて、細い腕をわたしの背に回す。
「んっ」
「ちょっと、まだ何もしてないわよ」
いきなり声を上げた彼女に抗議する。
「いや、直だとこんなに敏感なんだなと」
まだ脱いでいないわたしのブラの生地で刺激してしまったらしい。と、いきなりホックを外される。
「結構手慣れてる?」
「僕だってマシなやつ持ってたさ」
ノーブラだと透けるじゃん、と彼女が言葉をこぼしながらブラを抜こうとする。それに逆らわずに腕を上げて、ブラが放り出された後に目の前の頭を抱えた。
「いひなりなには」
抱えたままでしゃべる彼女の口の動きが少しくすぐったい。
「前のお返し。これが本物ってやつよ」
「…先に、と言うにはもう遅いけど、僕の頭の中は大体男子だって言っとくね」
「んなもん今さら言わなくても分かってるわよ」
元からなのか歳のせいなのか、それともあんな奴らを相手にしているせいか分からないけど、無意識にせよ意図的にせよ、男の子の様にこの子は振る舞っている。狼どもの時だってもっと羞恥心ってものがありそうなものなのに、まるで気にせずわたしの心配ばかりしていた。こないだの夜だって足を広げて前後逆に椅子に座ってて、馬鹿話してる時の男子みたいな感じだった。
「わかってないね」
するりとシーツと背の間から彼女の腕が抜けると、彼女を抱きしめている二の腕を小さな手が掴む。
「なに?」
されるがままに腕を開かれてシーツに押し付けられ、唇を奪われた。望み通りなのに体が必死に腕を動かそうとしている、でも彼女の手はびくともしない。柔らかい唇に安らぎを覚えながら、覗き込む蒼い瞳から目を逸らす。温かさがわたしの上を覆っているのに、冷えた自分を知られたくないみたいに肩や腰が逃げようとする、でも絡められた脚はそれを許さない。
唇が離れる。
「とまあこういうことなんだけど?」
きっと彼女が力を抜けばわたしでも突飛ばせるんだろう、この子はとても軽いから。でも腕も脚も機械みたいにわたしを捕らえて離さない。ひゅっと聞こえた吐息はわたしかこの子か、また唇が触れて呆気なく入り込んだ熱い肉がわたしの舌の裏を撫でる。動き回るそれを押さえようとしたら左ほおの内を舐められた上で、彼女の舌の裏でわたしのが押さえ付けられた。それならと口をすぼめたら、指の様に強い力で舌が上顎の裏を押し上げてくる。たまらず口を弛めるとその舌先が喉奥から上側をざらりざらりと舐め上げて、それだけでわたしの手が空を掴む。ろくに息が出来ない中吸った匂いはお菓子のようで、甘いに違いないと今度は口で吸っていた。じゅぷっ、ずっ、くちゅっと下品な水音で砂糖でもあるまいし、と正気に戻る。
「っんうんっ?!」
言葉に出来ない異常に気付く。咥内を満たした熱い肉が動いている。アレじゃない、アレなら棒だし喉奥に押し込まれるだけ、これは舌に絡んだあげく頬も顎もずるずると内で舐め回しながらみっちりわたしの口に詰まっている。さっきよりも苦しくてえづく様な音がわたしの口から漏れると彼女の瞳-顔が離れてゆく、ずるりと肉の帯を引き出しながら。
「なにそれ」
異常に長い舌がちゅる、と音を立てて引っ込む。
「まあこれも僕のマジックの内でね」
元の長さに戻さないと喋りにくくて仕方ないけど、と彼女が笑う。腕も胸も増やせるのだから、舌を伸ばすのも造作もないと。あんなので掻き回されたら、と想像して息をのむ。
「言っとくけどいきなりこの舌ではしないよ?」
「え?」
「僕だってまあ恋人ごっこくらいはしたいからね」
いきなり人外一直線はいくらなんでもねえ、とまたケラケラ笑う。
「まあ今のはこの間のお返しなんで。なんせ僕、全部が小さいから」
そういってちろりと普通の舌を唇からのぞかせると、またわたしの上に―今度は胸の上に顔をつけた。上目遣いにこちらを見ると、かわいい口がわたしの右の乳首を覆い隠す。さっきのそれが見えない所でわたしの乳首を転がしながら、剣なんて握っているとも思えないしっとりとしたてのひらが左胸を覆い、さわりさわりと表面を撫でまわす。
「…マセガキ」
ついつい悪態をつく。
「そりゃはね、いのひのやりほりしてりゃ、終わった後の興奮で遊んだりもするよ」
舐めるんだかしゃべるんだかどっちかにしてほしいと思ったら口を離してこっちに顔を向けてきた。
「さっき感度の良さだってさ、意識飛ばさないと眠れもしなかったせいだよ」
なんだ、おんなじじゃん。がばりと身を起こして抱きしめる。
「好きにしていいんでしょ?」
「あ、まあご自由に」
「めちゃくちゃにしても?」
「痛いのはちょっといやかな」
「…破っても?」
「一応未経験なんだけど、ばっさり腹から斬り裂かれたことあるんだよね」
煮え切らない答え。
「つまりなに」
「多分何度やっても元に戻る」
「ふうん、じゃ初めてもらうわ」
下に右手を伸ばす。
「あ、ちょっと」
「なに、いや?」
「君が抱くんなら僕が下で、キスからでしょ」
「ほんとむかつくわね」
王子さまって言ってたくせに。いいわよ、女の子として扱ってやるわよ。乱暴に体を入れ替えて伸し掛かってやる。あの夜みたいに喰らい付くように唇を吸い、舌をねじ込む。まるで無抵抗、それどころか彼女の舌がわたしのを引き込んで絡みつく。強引に体の間に割り込ませた左手で右胸の乳首を探り当てて指で挟み潰し、また指の腹で撫でる。舌の動きが緩慢になってわたしの舌がフリーになるので、また咥内を蹂躙してやる。ぶっちゃけ乳首勃ってるじゃん、マセガキもいいとこだわ。わたしの腰を左にずらして、右肘を曲げて彼女の短い胴の下っ腹をおもむろに右手で掴んで唇を離した。お互いに空気が足りないかのように呼吸を再開する。
「やっぱマセガキじゃん。なにこの濡れ方」
右手の中指はするりと吞み込まれた。
「だからひとりっあそんっ、してたっって」
指を動かすたびに彼女の声がはねる。いい感度してんじゃん、ほんと随分遊んでたんだね。そのくせわたしの指をきゅうきゅう締め付けてくる。親指の腹で入口の上の突起も軽く押す。うんっとかわいい声の高さが跳ね上がる。人差し指を追加で潜り込ませて2本の指先が狭くなっているところに突き当たる。
「いくよ、覚悟はいい?」
「ちょっとまって」
「怖気づいたんなら」
「違うよ、ちょっと手の向きをね」
横目で見ると横に広げた手のひらを下に向けてシーツを掴んでる。
「背中のひっかき傷くらい気にしないけど?」
「背骨折れ゛っ」
不意打ちで手加減なく突き込んだ。たかだか指2本、男のモノに比べりゃどうってことないしこの期に及んでわたしを「弱い者」として扱ってるのが気に入らなくて。今あんたを―年端もいかない少女を犯してるのはわたしだって理解してんだか。突き込んだ指にさらにぬるりとした感触がまとわりつく。
「けっこう…いたい」
「それでどう?わたしの時はマシになるまでけっこうかかったけど」
この子ったらシーツをぎゅっと握って耐えてるわ、乙女か。いや今乙女終わらせたんだけど。ぐっちゅぐっちゅと容赦なく指を動かしていると、随分弱弱しい声でギブアップを宣言される。
「やっぱりこれ、むりかも」
凛々しい王子さまどこ行った、女一時間目で早退?
「いったん抜くわ」
するりと指を引き抜くと、確かに血で濡れていた。
「なんか痛みの質がちがった。あとね、また手前まで触ってもらっていい?」
「はいはいかわいい「お姫さま」、仰せのままに」
血も拭かずにもう一度突き入れるとやっぱりするりと2本の指を呑み込んで…呑み込んで、突き当たる。中央はまあ開いてるんだけど、突き破ったはずの部分が
「あんたこれ、すっごい苦労するわよ。中でイけないじゃん」
ヤるたんびに痛い思いして、下手すりゃヤってる最中に塞がるんじゃない?
「あー、やっぱりかー。どっかのキャラと一緒だわ」
「なにそれ」
「フィクションだけどさ、吸血鬼とのハーフなせいで再生しちゃうってのがあってさ」
「そういうの知ってたから、自分もそうじゃないかって思ってたのが当たっちゃったと?」
「うん、そう。でも戦闘よりもなんか痛いなぁ。まだじんじんする」
「でも血は出るのよね。ほら」
顔の前に血濡れた指を突き付ける。
「そうやって見せられるのもなんだか変な感じ。普段も派手に流血してるのに」
見せつけた指に舌を這わせると、んしょっと可愛いけど野暮ったい掛け声で彼女が身を起こしてくる、腰はいう事聞いてないみたいで両肘で上体を支えてるけど。指ごとキスされて反対側から舌が指と唇を舐めるのを、こっちも負けじとその舌に舌をぶつけて絡める。指が2人の唾液でたっぷり濡れて、垂れた雫がうっすい胸に滴り落ちた。そのままキスしてまた上から伸し掛かる。ぐちゃりと水音があたしとこの子の胸の間でして、ぬるぬると互いの乳房が、てかほぼわたしのだけがこの子の薄い胸板の上で滑る。左手で手を掴もうとして失敗、彼女の右手の甲を掴んでシーツに押し付ける。まただ、わたしの手を握り潰すとでも思ったのかな?じゃあどこまで痛めつければわたしを怖がってくれる?私の下っ腹は彼女のほっそい右の太ももを押さえてる。股に割り入れたわたしの右ひざと右の太もも、そこに濡れた2本の指を滑り込ませてまた熱い肉の中にねじ込んだ。
びくりと彼女の手と腰が震えるけどそれ以上に微動だにしない。わたしはさっきよりも激しく指を動かす。塞いだままの口の下でくぐもった呻きが唇に伝わる。目の前の青い瞳の、まなじりにつゆが溜まり始める。逃げなさいよ、痛いんでしょ。なんで耐えてんの。ぐっちゅぐっちゅとひどい淫猥な音が耳に響く。
なあにあんた、痛いのに濡れてんの?
冷めながらわたしは興奮している、あの化け物どもを葬り去るいかれた存在が、わたしの手の中で鳴いている、泣いている。痛い痛いと泣いている。もっともっとって鳴いている。だってすっごいぬるぬるしてる。普通なら血で滑りが良くなってるって思うじゃん、感触違うもん。指の抽送は止めないし、ひねりも加えてこそぎ落とすように内壁をえぐる。上を下を、右を、左を。どうせ元に戻る?上等っ全部こそぎ落としてやる、シーツが汚れたって構うもんか、あんたを征服したって証に残しておいてやるわっ!
いきなり上に押し上げられた、彼女の腰が、下半身がはねて危うく手首をひねるところだった。ぎゅっとしまった膣で指が動かない。ああ、イっちゃったのね。指が抜けそうにないので唇を先に離す。涙目の彼女の顔が僅かに右側に傾いて荒い息をつく。
「ひどいひと。すっごいいたかった」
「うそね、今も放さないじゃない」
だって笑ってるじゃない。
「わるいひと。すっごいきもちよくなっちゃった」
「そういうあんたは悪い子ね。こんなので気持ち良くなっちゃうなんて」
いちいち掛け合いみたいな言い回しで、あんたまだ余裕あるな?
「余裕ありそうね、3本目加えてもっかいいっとく?」
「その前に洗濯しようよ、血が落ちないよ」
「卒業記念に残しておいてやるわ、あんたがあいつらにヤられてもわたしのところに帰ってくればいいのよ。わたしが初めての女だって確認できるから」
「ハルって前世はヨーロッパ貴族?初夜で証明する奴じゃん」
「年端もいかない子に手を出すなんて悪徳貴族ね」
「囲ってくれる?」
「何、ヒモになりたいの?」
「一応住所不定の職業不詳だからなぁ」
「害獣駆除専門業者じゃなくて?」
「国が報奨金出してくれるならそれでも通るんだけど」
まあ国にもそんな余裕ないでしょ。
「で、いつまで締めてんの。それともまだ口寂しいの?」
下の口の話だけど。
「締めてれば逃げられないよね?」
ずるっと彼女の頭が体ごとがわたしの乳房までずれて、わたしの右ひじも伸ばされる。彼女の右手が跳ねて押さえつけてた左手が振り払われた。右手の指は下で咥え込まれたまま、左側から背に彼女の右腕が回されて下からホールドされた。わたしは行き場のない左手をシーツの上につくしかない。
「ちょっと」
わたしの制止に胸の谷間から上目遣いで彼女が答える。
「ヤられっぱなしってのも嫌だし、僕、まだハルの中に入ってないよね?」
完全にフリーだった彼女の左手、その指がわたしの中に入り込む。ぶっちゃけ短いのだけど、武器を握ってるとも思えない指が思いのほかその、滑らかな感触で。
「んっうっ、あんたの指いったいなによ」
「僕を犯してすっごい濡れたんだね、ハルってば」
多分人差し指と中指、さっきのお返しと言わんばかりに縦に突き込まれてぐいぐいと根元の関節くらいまで入ってる。見えないけど会陰をぐりぐり押してるの親指でしょ、なんでこんなにしっとりしてるのズルよズル、若さっていうズルだわきっと。
「あったかい」
「あんたのも熱いわ、体が子供過ぎでしょ」
憎まれ口もどきを言ったら指が開いて内壁を撫でまわされた、ちょっとあんたの手首この姿勢でどんだけ動くのよ、ひねってない?
「こども特有の柔らかさでーす」
「ちょっとむかつく」
位置はそのままなのにさっきと逆の立場で中を蹂躙されてる。ほんとに柔らかいの?よくあるフィクションみたいに関節外してない?刺激されまくっててじたばたするところ腰を押さえられてるし、手も首も宙に浮かせてられないから額と左手をシーツに突く。唇を塞げないので声は漏れ放題って隣とかに聞こえてない?ぶっちゃけ通報とかされない?あ、ダメ。
「っむ~」
唇を巻き込んで声をどうにか抑える。指の動きが止まってるのにわたしの膣が押さえてるんじゃなくて、繰り返し締めなおすようにうねってるのが分かって多分今顔がーいやさっきからとっくに真っ赤な顔の筈、ヤりまくってたんだから。
「ハル、すっごい綺麗でエッチな顔してる」
下から上目遣いで彼女がそんなことを言ったせいで、もっかい中がうねって連続でイった。
「っぜはっ、はあ、はぁ。そのナリでいちいちくさいセリフ吐くな」
「ハルは甘い吐息を吐いててね!」
「あんたそのお菓子みたいな匂い、どうなってんのよ」
「え」
気付いてなかったのかこの子。
「あいつらあんたに負けたけど、あんたが負けてたら犯されるより食べられてたんじゃない?」
「ハルは食べたい?」
「そんなもったいない、抱けなくなるじゃない」
また彼女がケラケラ笑った、吐息が乳房の表面を撫でてつい腰に力が入る。
「それよりいい加減弛めなさいよ、指抜けないじゃない」
「はいはい」
先に彼女の指がわたしから出て行って、それから彼女の下の口が弛む。わたしが抜くよりも早く彼女の体がまたずれて、わたしの右手が自由になった。
「あんたどんだけ締めてたのよ、ちょっと白くなってるじゃない」
再び戻ってきた彼女の顔と自分の顔の間に持ってきた指。べっとり赤いものがついてるのに指自体はふやけて白い。その抗議も、わたしの背から外された彼女の右手でわたしの右手をひったくられて、彼女はその指を口に含む。
「ん」
血と露で濡れた指はちいさな口に隠れ、指に舐めとる舌の感触が伝わる。ともすれば唇の外に出た舌先がわたしのてのひらさえ刺激する。
「あんたねえ」
わたしの指を男のモノと勘違いしてんじゃない?と、わたしの目の前に彼女の左手が横から突き出された。
「はんっ、いいわよ」
彼女の指で乾き始めていたわたし自身の愛液を舐めとってやる。短い2本の指を舌で包んで絡めて、唇で押さえて口全体で吸って下品に音を立ててやる。
「っぷはぁっ」
息が続かなかったのかそれ以外か分からないけれど、先に彼女が音を上げた。でも無視して開いた口に指を、手を突っ込む。
「うんむっむうぅっ」
喉奥に指先が触れて少し撫でまわしてから手を引き抜く。
「げはっけほっけぇほっ…ひどいや」
涙目の癖に笑って彼女は抗議する。
「咥えたかったんでしょ?」
彼女の指から口を離して、ことばで責める。
「実質的に女の子1年生にイラマチオもどきとか」
「それもわたしが初めてってことでいいよね」
うへえと変な声を上げる耳年増。
「この辺でお開きかなぁ。調子に乗ってるとお尻までぐちゃぐちゃにされそう」
「あんた墓穴掘るの好きね。今度掘ってやるわ、さすがに道具使うけど」
「やぶへびっ!?」
脇の下に両腕を通してごろんと横に転がる。シーツに左側頭部を傾けて付けた彼女の首元に、顔を近づけて匂いを嗅ぐ。
「ああ、いい加減お腹すいたわ。ほんと食べちゃいたい」
「ピロートークのところ引き戻して悪いけど、明日は?」
「毎日日曜日のあんたは分かんないだろうけど、驚け今日は金曜日だ」
「花金だね!でもご飯は食べなきゃね!」
いつの言い回しだ。見た目のわりにほんと言葉遣いが色々ごっちゃだわこの子。急に脇に腕が絡んできて。
「は?」
ごろ寝がいきなり起きてりゃ頭も混乱する。
「あ、ダメだ」
中腰みたいな半端な姿勢のわたしはまたベッドにべたりと座るけど、立ちかけていた彼女はいきなりころんと転がって、
「あいた」
ベッドの下に落ちた。音も軽いなこの子。
「なにやってんのよ」
「腰抜けてるよ、すごいねハルってば。ウィッチの僕が足腰立たないや」
「とっとと姿勢変えなさい。おっぴろげで丸見えよ」
「動きたくないなぁ」
「飲み物、あんたのにしようかしら」
くるりと姿勢を変えた上にいつの間にかショーツ履いたわこの子、でも最初と違って横が紐なの?解いて吸ってやろうかしら。
「流石にやめて。砂漠で要るってんならするけど、まっとうな飲み物があるんなら僕のそれとか血とかはちょっと…でも濡れたのとかは飲んでというか舐めて欲しいかも」
「わたしの飲ませようかしら」
んぐっと言葉に詰まって悩み始めるおバカ。
「そっちもちゃんと拒否しなさいよ、何迷ってんのよ」
ベッドから降りて放り出したままの弁当を袋から出す。シャワーは後でいいわ、どうせ引っぱり込むからまた長くなるし。レンジで温めつつ、冷蔵庫から缶ビール2本とミネラルウォーターその他適当につまみっぽいものも取り出す。チーズとかカット済みのサラミとか。
「…つまみ、あんたのもいいか」
「ねえ、あたまフィクションのローマ貴族みたいになってない?」
「そこはナポレオンの名前出しなさいよ。まああんたはシュガーだけど」
「ほんとにそんな匂いするのかね、僕ってば」
「いいからこっち来て付き合いなさいよ。どうせ酔いもしないんでしょ」
レンジから弁当を取り出してテーブルに置いて、動かない彼女を強引に引っ張ってわたしの左に抱き寄せる。その上で缶を彼女の頬に押し付けた。
「マジでもったいないからこれは取っといた方がいいよ」
わざわざ押し返してくるけど、
「いいから付き合え不良少女。そんな顔して要らないとか説得力ないわ」
缶を見て目の色変えた癖に我慢してるんじゃないわよ。諦めたのか受け取ってプルタブを引く彼女。わたしはわたしでテーブルに缶を押し付けながら右手でプルタブを起こした。互い缶を開けてそこで一度止まる。
「えーと、なにに乾杯しようか」
「生還と退院と就職、それとあんたの初めて祝いに決まってるじゃん」
「抗議するともっと恥ずかしいことで祝われそうだからそれで」
「「乾杯」」
一口二口含んで少し置く。ゆっくり飲み込んで久し振りのビールを堪能する。
「はは、16年ぶりになるのかな。ちょっと今の舌じゃ分かりにくいや」
横で馬鹿な子が馬鹿なことを言っている。ま、そうなんだろうね。女の子の癖に男の子。ちょっと強い能力でニューゲーム、まあ相手は軍隊でも対処仕切れない連中でこの子でも難しいと。唐揚げを口に放り込んで、もう1個を箸で挟む。
「ほら、こっちは?」
「2年ぶりかな。どっちの母さんも得意だった」
コンビニ弁当だから多分冷凍ものだろうけど、もいけるってもんよ。躊躇するその口に強引に突っ込む。
「うん、こんな味だった。遅くなってコンビニで買ってさ。世間じゃ不景気だなんて言ってた頃さ。金融屋が馬鹿やってね」
この子の記憶にはない筈の事を喋っているんだろう。
「それでも電機部品は動いてて。売れないって喚いたところでインフラは動かさなきゃならないんだから」
わたしが産まれたかどうかって頃の不景気の話を吐き出しやがる。それさえも今に比べりゃ好景気だよね。
「馬鹿言ってないで飲みなさい」
こんな時でも工場は動かさなきゃ、そう言った今の職場の人と同じ目だ。お互いにもう一口飲んで、今度は玉子焼きを押し付ける。
「駄目だよハル、君が食べなきゃ。僕はもう食べなくてもいいんだ」
冗談じゃない、あんた死人のつもり?
「あんたも食べるのよ、食べて生き返りなさい。死人の振りなんて止めてさ」
誰かが言ってた、ゾンビがウィッチの振りをしてるって。
「それなんて逆ヨモツヘグイ?」
「それとも何?わたしは骨でも抱いたってわけ?」
「あったねえ、そういう怪談。僕は細いけど肉はあるよ」
ついでにもっと肉付けろ。抱き枕にしたってもっと抱き心地良くしなさいよ。
「だったらちゃんと飲み食いして生きなさいよ」
ぐいぐいと口に玉子焼きを押し付ける。腰はがっちり左腕で押さえて逃がさない。観念したのか口を開けたのでまた突っ込んで強引に食わせる。ご飯も申し訳程度についてるサラダも仲良く2人で半分こ。
「むう、からか」
逆さにした缶からの雫を舌で受ける。どうせ気ままな独り暮らしだ、お行儀など気にする事もない。
「こっちのはまだあるよ」
「それはあんたの分なんだから、あんたが飲みなさい」
でもねえ、とまだ渋るので缶を引ったくって口に押し付ける。さすがに無駄にする気はないのか、彼女は口に流れ込むビールをそのまま飲み干した。
「もう。強引だなぁ、酔わせてナニするのさ?」
「酔わなくてもするけど?」
いちいち煽ってくるわね。ビールは打ち止めだけどツマミを口に放り込んで黙らせる。最後にミネラルウォーターでおしまい。色々とごねそうだから胡座をかいた上に横抱きにするように座らせて、授乳するみたいに飲ませたわ。
「ハルさあ、もしかして抱く方が好きとか?」
「あんたのサイズが手頃すぎんのよ」
記憶違いでなければ、2年前に見た時とサイズ感が変わってない。わたしでも羽交い絞めにしてそのままバンとかに連れ込んで攫えそうな背丈と軽さで、攫いたくなるこの甘い匂い。それじゃデザートといきますか、と口を近づけたところで人差し指で止められる。
「がっつきすぎだよ。これじゃどっちが男の子かわかりゃしない」
「だってあんた夜中には出てっちゃうでしょ」
「仕方ないなぁ、今週末はハルにあげる。月曜には2人でそれぞれの仕事場に出勤でいいかな?」
「今回だけ?」
「僕だって色々あるさ」
「色々、ねえ?まあそれで騙されてあげるわ」
週末はどこに消えたのか、そんなセリフも映画か何かにあったと思う。月曜日である。
「ほーら、起きてってば」
「あと5分」
「そういう定番のネタはいいから、起きて仕事行く!」
「いきたくないなぁ」
「ちゃんとお仕事行かないと、僕を連れ込む先もなくなるよ?」
「じゃ、キスして」
そう言ったら毛布ごと抱えられて、物理的に立たされた。
「いってらっしゃいのキスはしてあげる、だから着替えて朝ごはんたべなさい」
いつの間に用意したのかテーブルの上にはトーストと目玉焼き、それにコーヒーときた。
「お帰りのキスもしてくれる?」
「君がちゃんと頑張ってればね」
「じゃあそうする」
まだふわふわした感じのまま毛布を投げ出して着替えを手に取った。
「あ、鍵」
合鍵、渡さないと。
「僕は要らないよ?もう鍵を「見た」からね」
マジックでどうとでも出来ると彼女は言う。
「…寝込み襲い放題?」
「バカ言ってないでさっさと準備!」
追い立てられるように着替えて朝食も口に突っ込まれる。顔も洗って歯も磨いて、メイクもオッケー。戸締まりも終えて閉めたドアの前に立つ。
「なんかここも人気ないね」
出勤時間だってのに人の出てくる気配がない。わたしがいない間に引っ越しちゃったのかな。それはさておき、かがんで彼女の唇を食む。なんならがっつりハグして、見掛けだけは華奢な肢体も服越しに楽しむ。舌先が彼女の唇に触れたところでお開きになったけど。
「じゃ、行ってらっしゃい」
抱き締められたままの彼女がいう。
「…行ってきます」
名残惜しいけれど、小さな体を解放する。頑張ってね、と手を振るあの子を何度も振り返って、わたしは数日やっていた筈のルーチンになんとか戻ろうとする。階段を降りてアパートの敷地を出て、普通の道路に。もう一度振り返るとまだあの子は見ていてくれた。だからわたしは前を見て歩く。
踏み切るような強い音を聞いた、遠ざかるように何度も。わたしは振り返らないし、引き返さない。今戻ってもあの子はいないから。今帰っても独りで部屋にいるしかないから。
ほんの数時間のことじゃない、きっと大丈夫。あの子はちゃんと迎えてくれる。あの子はちゃんと「帰ってくる」
二人とも帰るとこなんてもうないんだから。