「はー」
「まったくついてませんなぁ」
ため息をつく佐藤君、不運を嘆く田中君-だった筈だ。
「まあついこの間から値下がり始まったし、不幸中の幸いってとこじゃね?」
慰めるように鈴木君が情報を告げる。なんの話だろうか?下校時間の昇降口、足取りもおぼつかない状況にも関わらず、三人の声が気になった。
「駅前まで出ますか?僕としては機体よりも当日の録画データの方が痛いですが」
「俺もそれは同じだよ。二人して実質機体全損とか、厄日かなぁ」
「僕はその日は飛ばしてなかったからなぁ、ってなんだあれ」
飛ばす、機体、全損。ああ、そうだった。増大するテレパシーにどうにか対応しながらそれもあったかと認識する。自分のせいだと言う訳にもいかないが。そして鈴木君が見た先を私も見る。何故か人だかり―正確には校門近くで遠巻きに一人を見る人々が目についた。一人の、ウィッチだ。
ごちゃごちゃと荷物を背負った「ブルーウィンド」がそこにいた。彼女はまわりを囲む、または過ぎ去っていく生徒たちには目もくれず、ぼうっと校舎を見上げているように見えた。
「ウィッチ、ですね」
「おいあれ、背負ってるのドローンじゃね?」
急に彼女がこちらを見る。
「ああ、やっぱりここだった」
私を?ゆっくりとした足取りでウィッチがこちらに来る。
「これ、君が最近使ってる奴だったよね」
声をかけられたのは田中君だった。
「確かに僕のです。すみません、一度ならず二度までも」
「その二度目がやばいことにならないように持ってきたんだ。で、頼みがあるんだけど」
「なんでしょう?」
「君のツテで他の持ち主にも声かけられないかな?ご覧の通り、持てるだけ持って来てはみたんだけどさ」
とりあえず見つけた機体は旧首都外縁に集めてあるけど、連絡先を探しようがないとウィッチは言った。
「あのー、ブルーウィンドさん」
「なんだい?」
「こんな感じのやつありました?」
佐藤君が屈みながらスマホの画面を彼女に向ける。男子と並ぶと彼女は背の低さが際立つ、私よりも背が低いな。
「…似たようなのが2、3機あったね。ただ、覚悟して欲しいんだけど」
これを見て、と背負っていたドローンの一つを皆に示す。落下によると思われる破損の他、外装の一部が焦げて穴が開いていた。
「電源系の部品だと思うけど、内部からの爆発で外装が壊れてる」
「広域の電撃系マジックで墜落したんだと思う。どれも回路は全損と見た方がいい」
「マジかー」
佐藤君が肩を落とす。
「あと墜落でバッテリーが燃えたっぽいのも何機か」
「仕様的にそうなるよなぁ」
鈴木君が彼女の言葉を肯定する。大容量バッテリーとなると大体がリチウムイオン電池だ、強い衝撃で発火する事も多い。
「そういうのも回収だけはするから、確認してちゃんと諦めて欲しいんだ。言っておくけど、君らも連中の標的だからね、食欲的な意味で」
「マジすか」
「だからこの数で落ちた機体を探しに行こうとかされると、フォロー仕切れないから、廃墟には絶対に入らないで」
「肝に命じます」
「SNSで連絡してみます」
お願いするね、と言うと彼女は残りのドローンを背負ってそのまま立ち去る。
「はー」
「データだけでも確認ですかな」
再び落胆する佐藤君に、気を取り直したらしい田中君。
「なあ、あのウィッチさ」
鈴木君が疑問を口にする。
「学校、行ってんのかな」
下校時刻の自分たちの所に「探しに来た」のだ。もっと早い時間から活動しているのならば。
「…非常に言いにくいことですが、彼女は平日の昼間にも活動していることが多いですね」
「おまけに動画とかは普通のサイトじゃ見られない。大体削除される」
内容が過激になりすぎるんだよ、と佐藤君が理由を説明する。
「マジか、探してみるか」
「飯時はやめろよ、しばらく肉食えなくなるぞ」
「ウィルスにも注意ですね。予備の端末があるならそちらで見た方がいいですぞ」
どうしてもアンダーグラウンド寄りのサイトにアクセスする羽目になる、セキュリティ的に問題が生じると2人して警告する。
「普段気にもしてなかったしな、ちょっと見てみるわ」
「まあその前にSNSとかに告知出すか」
「そちらが先ですね」
「駅前も寄ってそのドローン見てもらおうぜ、ダメもとでさ」
「待ち時間中に打ち合わせもしますか」
「そうすっかー、部品取りくらい出来ればいいんだけどなぁ」
わいわいと3人は歩いていく。それをぼーっと見ていた私も、とりあえず帰ることにした。
コンクリートと露出した土壁が混在する地下道を走る。旧首都―東京の地下の一角、インクブスどもの拠点と化した地下空間だーだった。暗闇の先からわずかに聞こえる喧騒と悲鳴-野太い悲鳴と断末魔。既にインセクト・ファミリアが襲撃中である。
「見つかった?」
『いいや、それらしい姿はない。エナの反応もだ』
地上にいる相棒に聞くも、ファミリアの主の姿は無し。この手の拠点への攻撃では彼女―シルバーロータスは手は抜かない、必ず現地におもむき被害者の有無を確認する筈だった。ゴブリンの死体を運び出すアリとすれ違いながら、無造作に壁に短剣を投げつけて走り続ける。オークらしい影が支道に逃げ込んだように見えたと思ったらその後に他のアリたちが殺到していく。それら一群をやり過ごして支道の手前の壁と、通り過ぎてすぐの壁に連続で短剣を投げる。夜目で見える程マシな暗さではないが、半分はエナの感知で補えば生きているものと死体くらいはおぼろげに確認可能だ。むしろ構造物の方が見えないくらい。そうして短剣を壁や床、天井に投げながら走り回って数分、それが聞こえた。女-少女の声だ。
「いるね。そっちは?」
『いないー私の位置は分かるな?ここから私の直下30m、多分君の位置から10m右斜め前だ』
立ち止まって通路の先を見る。何体かのアリ、それに天井を這うクモが多分そこに向かっているようだ。その脇を小走りに走り抜けると十字路を右に曲がり、続く通路と複数のエナの気配から走って左にある空間に駆け込んだ。おそらくは地下資材倉庫の類、連中のねぐらにはうってつけの場所だったのだろう。殺戮は現在進行形、かつ異常事態も発生中だった。
アリやクモにたかられているインクブスと、ジリジリとまわりをファミリアに囲まれている少女、おそらくはウィッチ。拙い視界でもプロポーションがはっきり見え過ぎている、まあ全裸だねこりゃ。その少女相手に本来は人間に無関心な筈のインセクト・ファミリアが包囲している。そこにゆっくりと割って入ると、アリが威嚇するように首を振り上げた。
「ひっ」
アリの威嚇か、それとも至近に入り込んだ僕の影に驚いたか、少女が悲鳴にならない声を上げる。それに反応してアリたちが更に首を振り上げカチカチと口を鳴らし威嚇する、まずいな。
「逃げるよ」
「え」
生成したマントを巻き付けて横抱きに抱え上げる。「人の声」がすると思わなかったのか事態についていけてないようだが、こっちも事態についていけてない。何故ウィッチがインセクト・ファミリアにマークされるのか。暗闇を逆のルートで走り始めるが、後方で複数のアリがこちらを追い始めたらしい音が耳に入る。
「あんたは!?」
「ブルーウィンド。いるか分らなかったけど来て正解だった」
繰り返すが暗闇だ、普通なら走るのも大変だし当然帰り道さえ分からないー来たルートに僕の短剣がなければ。頭の中には短剣の位置がもう浮かんでいてそれを辿れば少なくとも帰ることは出来る、追跡者がいなければだが。
『ブル、少数だけどファミリアに追われてる。マークされてるのは多分被害者』
ついてきている足音からして3匹くらいか、他のファミリアとの連携がない。
『…可能性としてだが、インセクト・ファミリアはインクブスのエナに反応する。消耗したウィッチは本人のエナは希薄だ。残存する奴らのエナの方が強い、と感じる程度には』
「そういう事かよクソッ」
「なに、なんなの」
僕のボヤキに少女が動揺して声を上げる。走り続けてはいるが3匹のアリの足音も消えない。対抗策は、あるにはある。
「ひどい目にあったところで悪いけど」
「何よ」
「指、突っ込むよ」
「なにいってんの、あんたなにいってんの!」
髪を振り乱して腕の中で彼女が激しく身をよじるが、落としたらそれこそ(彼女が)一巻の終わりなのでがっちりとホールドする。まあこれから犯すぞって宣言したんで正常な反応だけど。
「後ろの奴を振り切れない、あいつらはインクブスのエナに反応してる。僕の浄化は治癒の転用だけど、直じゃないと効果がない程度に弱い。おっけー?」
ちなみにもう一個浄化方法はあるけど「ギリシャの火」なんで「火刑に処す」ことになるから当然使えない。
「…もうどうにでもして」
投げやりな言葉が返ってきた瞬間、遺憾ながらまずマントを消す、という手順で彼女を剥いた。いきなり裸に逆戻りしたことで彼女は悲鳴を上げる。続けて背からチュニックを突き破って腕を追加、2本目の左腕を脇から回して手で「彼女」に触れる。もう2本の腕でトップヘビーになったため速度が落ちるが、指先は濡れたままのクレヴァスに入り込んでいた。
「っなにこれっ!だれの手!?」
ついでに右脇から2本目の右腕で彼女をさらに支える。「伸ばした指」で「内側」から「ヒール」で浄化を実行する。突然の青い光に抱えた裸体が浮かび上がる。発光元は左手と彼女の「繊細な臓器」に入り込んだ人差し指なんでかなり、相当に、いやどう考えてもどうかしてる絵面だ。
「いやこんなライトアップやりとうなかったわ」
まず青がまずい。プレイだったらせめてピンクとかオレンジでしょ。
「あ゛ん゛た゛か゛や゛て゛ん゛て゛し゛ょ゛」
涙声だがまあそうなる。散々インクブスになぶられた後で味方にまでヤられた挙げ句の発光プレイだ。
「お゛ね゛か゛い゛ぬ゛い゛て゛」
「そうしたいんだけどね」
足はもう止めてるし、追跡のアリも一時停止しているけど、
「まだこっちを見てるな」
「み゛な゛い゛て゛」
いやこっちを見てるのはアリだって。これで浄化出来てる筈だからもう関心を引くものはない筈だし、ネックはインクブスのアレがエナに分解されたんで指を抜くのに少し苦労しそうってことだ。あ、
「ごめん、もう1本だわ」
2本目の腕の左の薬指で下の「出口」に触れる。
「ま゛っ゛」
「ごめん」
制止を拒否してスターフィンガーする。ぬるぬるした感触の中を伸びた指が突き進み、多分湾曲部に行き当たったのでここでもう一回ヒール。感覚的にぬるぬるが相当消えたんで、多分連中のアレだったんだろう。
「あ゛ん゛ま゛り゛た゛あ゛」
完全に泣かしたけど、ファミリアが引き返して行くのでこっちとしては結果オーライ。残りの経路を歩いて戻る。走ると潤滑のなくなった局部を傷つけそうなんだよね。指を抜こうにも同じ理由で無理っぽい。泣き声に呻き声も加わる。ゆっくりとはいえ歩く振動とかで刺激しちゃうわけで、
「…ぬ゛い゛て゛よ゛」
「そうしたいんだけど、無理に動かすとケガさせそうでちょっと」
「ひ゛か゛り゛け゛し゛て゛」
「さっきから歩くだけで擦れてるってば。止めたら中で傷になる」
視覚的にどこまで入ってるか一目瞭然なんで正直止めたいんだけど。ない筈の「モノ」がイライラする。
『もうすぐ出られるけど、誰もいない?』
『平日だからな。あともう少しテレパシーを絞ってくれ。存在しない器官の感覚がだいぶきつい』
『…そこまで解像度高く伝わってる?』
こっちとしてはおぼろげなレベルなんだけど。
『増やした指の分とセットなのでな。生々しさがきつい』
ああ、指の触覚と存在しないモノの感覚がごっちゃになって、ない筈の快楽が送り付けられてるのか。あー、甘々にレズりたいのになんでこう応急対応ばっかりなのさ。ひぐっ、うぐっと胸元で泣かれてるしほんと最悪。
ザリ、と砂利と瓦礫の混じった足元を踏みしめる。今回の侵入地点、地下駐車場のB2Fだ。回収も出来なかった車両が多数残っているけれど、この暗さではあまり視認は出来ない。
「んっっ」
急に歩みを止めたので刺激したらしい。視線を落とすと青白く照らされた両手が口元を押さえている。僅かに指を動かして思ったより大きく聞こえた水音に失敗を覚る。
「へんたい」
「いきなりそれかい。とりあえず大丈夫そうだから」
「ごうかんまっ!しきじょうきょう!レズおんな!おまえなんかあいつらにおかされてしんじゃえっ」
ひっでぇ、まあヤった事的に言われても仕方ないけど。
「…大丈夫そうだから抜くね」
「ぬくな」
「は?」
罵倒と命令内容が逆になってるんですが、それ。
「今抜かれたら自分でしなきゃならなくなるじゃない!」
いきなり語彙戻ったなおい。
「きっちり最後まで犯してよ!あいつらにヤられまくった挙句我慢出来ないで自分でする女なんて立場絶対にいや!」
ああ、うん。
「そういうことならベッドまで運ぶけど?全部僕のせいって事で」
「やだ」
「おい」
「ここでして。全部ここに閉じ込めて。あいつらの変な薬で狂ったの!」
「あんたに興奮したんじゃない!あんたの指で濡れたんじゃない!全部あいつらのせいっ!」
ああ、ひっどいなぁ。かわいいのに素面で抱かせてくれないとか。
『ブルファントム、上で警戒続けてくれる?休みながらでいいけど』
『大体聞こえてるよ。たっぷり慰めてやれ』
『違うよ。2人とも奴らのクスリで狂っただけさ』
『了解』
ばさりとマシなコンクリートの上に3枚重ねでグランドシートを生成召喚する。彼女を支えていた2本目の右腕をフリーにして、その手に召喚したランタンをシートの一角に置く。中世の「ろうそくランタン」なんだけど光は青いんだな、僕のマジックで生成したから。
「あんた、それ…」
「全部僕の腕だけど?」
またフリーになった第2の右手を彼女の目の前で動かして強調すると、抱えたままシートに座り込んだ。
「ちょっと、おろしてくれないの」
「思ったより痛いよ、ここの床」
3枚重ねでも足りなかったわ、瓦礫等の細かい破片が多い。横抱きにした彼女の腰をあぐらをかいた僕の左ももにのせて、フリーな右手で頭を支えてこちらに向ける。
「え」
何も言わずに唇をふさぐ。ぺしぺしと4本腕の関係で露出してる胸元を叩かれるが弱小クラスとはいえウィッチの力でがっちりホールド。ふははは、エナ切れのおのれのコンディションをうらめー。擦過傷が怖いので第2の左手指は治癒を使用したまま出し入れ。どっちも指一本ずつとはいえ二本挿し、ずちゅくちゅと卑猥な水音が響く。くぐもった呻きは漏れるけど口は塞いでるから声にならなくていいでしょ?と言わんばかりに見開いたままの彼女の瞳を見つめる。観念したのか目を閉じたので指の動きを速める。素の方の左腕で抱えた彼女の脚がピンと伸びて、指が熱い肉に動きを止められる。
プハアッ、と唇を離すとはぁはぁと涙目の彼女が荒い息を吐いた。うんっと呻く彼女を無視してずるりと指を引き抜く。長さも関節も3倍の指が青い光に照らされるのは異様な光景だ。
「…そんな風になってんの…」
ごくりと彼女が喉を鳴らした。
「まだ足りない?」
第2の右手に適当な布を召喚、伸びた第2の左人差し指、薬指の順で水気と「汚れ」を念入りに拭き取ると、布を背に投げて薬指を元の長さに戻す。長いままの人差し指の先をクイと曲げ、その次の関節で逆に曲げるという種無し手品を披露すると彼女はもう一度喉を鳴らした。注ぎ込む種も無いけどね!
「ご希望なのでもう一度狂いまーす」
入れようとする直前に妙に脚を動かすので素の左腕を緩めると、この暗さでも眩しい太ももが少し開かれる。ふむ、と少し考えて肩関節をばきぼきと作り直して第2の左手を上から回す。
「ちょっとなに今の音」
「左肩の関節をちょっと組み替えてね」
上から白いお腹を指先でつつくと、すっと大事なところまで滑らせていく。わずかに開くももの間に手を割り入れて指で先程の入り口にまた触り、指先の腹で撫でる。
「んっ」
敏感な肉の芽の愛撫はおざなりにまた濡れた中へと指を潜り込ませていく。少し入ったところでくいと上に曲げてポイントを刺激すると、右耳に熱い吐息がかかり、視界の右半分を落ち掛かる彼女の髪が塞ぐ。僕の首に絡む両腕の感触にもっとゆっくり楽しみたかったけれど、その動き自体が急なものだったから指を一気に押し込む羽目になった。そこまでではないにしても僕のよりは女の子らしい乳房が、腕を増やすためにはだけた胸に部分的に押し付けられる。
「急に動くと危ないって。伸ばすと折れやすいんだよ」
僕の方はともかく、解放骨折するような折れ方しちゃうと彼女の中が傷つく。もう押し込んじゃったしと関節をしっちゃかめっちゃかに曲げると、こっちの首を折る気じゃないかってくらいにかけられた両腕の力が強まった。
「うねうねって、中でうねうねってうごいてるっ」
「気に入ってくれたようでうれしいよ」
考えてみりゃ今のとこ出くわすインクブスに、触手とかの特殊性癖タイプいねえなぁ、と気付く。彼女の吐息はもう耳元にほぼ直でかかっているし、嬌声混じりの囁きが僕を煽る。
「そのまっぅ」
「仰せのままに」
「なでてっ、ぜんっぅさわっ」
「お望みのままに」
「くちっ」
「おっと失礼」
お嬢様のおっしゃるままにと唇をまた重ね、指の動きも加速させる。たまらずといったところか両ももが閉じて左手を拘束するけど伸縮自在なんでね、指は止まらない。息が苦しくなったのか彼女から唇を離すけど、快楽に耐えられずに腕でぎゅっと密着してくる。はっはっはと荒い吐息が耳にかかりそれが急に止まる。
「~っ」
流石に全力で絞られたので指が止まるけど、すぐに肉壁は緩んだので今度こそ終わりでしょ。まあ随分と要求された意趣返しに色々と曲げた形のまま引きずり出してダメ押しで鳴かせた。
「っひっいっ」
抱き着くだけじゃ飽き足らず僕の右頬に無意識に唇を押し付けてくる。イったばかりのところでこんだけやりゃもうおしまいでいいよね?指も腕も戻して彼女をシートに横たえる。
「っ…もう、おしまい?」
半開きの唇がもっと、と動いたように見えたけれど、
「君がどれくらいあそこにいたか分らないし、続きをお望みでも休憩を挟まないとね」
また適当な布を出して色々と濡れた部分を拭きながら、相棒と繋ぐ。
『ブル、今から』
『「在庫」から持ってきたぞ』
準備が良くてたすかるわぁ。無地の白いトゥニカ(膝上までのほぼ側面開放型半袖シャツ、つーか布!)を召喚して上体を起こした彼女に被せて、帯で腰の部分を留める。
「あの」
「次はこれ」
スプリガクルム、実質的に紐ビキニの下みたいなもんだけどこれは自分でやってほしい。いそいそと下を覆い隠して紐を結ぶ彼女の横で、ひざ下までのゆったりとしたダルマティカ(袖の広い丈長のチュニック)と底の厚いカリガ(古代ローマ軍サンダル)を召喚する。
「んじゃこれ履いて、立てるよね?そしたらこっちの長袖の着て」
カリガを履かせてダルマティカを被せる。肩より少し長い髪をダルマティカの首元から出して少し手櫛で整えてから、最後に金に見えるだけの月桂樹のティアラを頭に載せて終わり。
「え、これ」
「言っとくけどエナで構成したパチモンだからね。価値はないよ」
まあお見舞いの品という事で全部進呈するよ、とだけ告げると拾い上げたランタンを右手にし、左手で彼女の右手を引いて歩き出す。B1Fも通過しないといけないから明かりなしだと厳しいからね。エレベーターは当然動いていないし、狭い階段は避けてお互い無言で車道を歩く。B2F同様多数の廃車が残ったB1Fも通り過ぎて車用の地上出口に直接出た。日は傾き始めているけれど、ウィッチが「出勤」してくる程の時間じゃない。急に斜め後ろの彼女が僕の背後に身を隠すけど、僕の背じゃねえ。彼女の背の方が20cm近く高い。
「こっちへ来てまず座れ」
ブルファントムがマントにフード、アガメムノンの金色仮面でそう告げる。先程同様グランドシートに小さなクーラーボックスと数本のペットボトルが置かれている。
「拘束期間が分からないからね、ともかくまず水からだよ」
サンダルのままシートまで歩くとべたりと彼女は座り込む。500mlのミネラルウォーターを手にするが握力が戻っていないようで開けられないので、横に座って代わりに開けてやる。
「ありがと」
彼女がそれを口にしたのを見てから視線を上げて相棒に問う。
「状況は?」
「インクブスもファミリアも増援なしだ」
「変だね。インクブスは一種の孤立状態だからまだ分かるとして、ファミリアは後詰めが居る筈なんだけど」
単体のインクブスに対する攻撃量も、こっちに対する追跡も統制が取れていない感じだった。
「ファミリアだけ行かせたところで、救助対象が自力で地上に出るのは困難な場所だ。人質の有無も確認したのかも怪しく感じるな。突発的な遭遇戦から状況がこじれたならまだ話は分かるが、らしくない」
「そうだね。今夜あたり聞いてみるかな」
気付くと静かだったのでちらりと横を見る。彼女がこちらを凝視している。日の光の下で見ると随分色白に感じる子だな。目は大きめ、髪は肩までのストレートで深めの黒。次は風呂上がりで抱きたいね、などと腹黒参謀みたいな思考が頭を掠める。
「2人は」
「最初に言ったけどブルーウィンドだよ」
「ブルファントムだ」
「…わたしは、フィサリス」
フィサリス…サイサリス、つまりGP-02か。なお、サイサリスという読みは誤読だそうで。
「水は飲めたな?気持ち悪くなってはいないか?」
ブルが彼女の状態を確認する。エナだけで保っていた可能性もあるからなぁ。
「…とくには」
「よし、なら次はこれだ」
クーラーボックスからゼリー飲料のパックを僕に投げてくる。蓋を開けてフィサリスに渡す。んぐんぐと両手でどうにか吸っているがなかなか食べづらそうだ。
「適当なポーチを出してくれ。もう1セット彼女に持たせた方がいい」
「それもそうか」
ベルト付きのポーチを召喚すると、どうにか飲み終わった彼女を立たせて腰にベルトを回して留める。水のペットボトルとカロリーメイトをポーチに入れて作業は完了。
「では送るとしよう」
ブルがフィサリス(非変身)を横抱きで抱き上げると、僕は空容器も回収してクーラーボックスを付属のベルトで担いで腰の後ろに回し、左手にラウンドシールド、右手にスパタを召喚して前を走り出す。次いでブルファントムも走り出した。2人とも時速にして40kmくらいだ、もう少し早く走れるけど彼女を振り回すことになるので、それは避ける。
「これからについてだがまずエナのコントロールに注意を払う事だ。パートナー無しだとなかなかに制御が難しい」
ああ、返事はしなくていいぞとブルがフィサリスの口を止める。まあ走っている僕らはともかく、抱えられているだけの彼女は結構揺らされてるからね、舌を噛むと危ない。
「感覚が掴みにくいようなら私が手伝うことも可能だ。エナ制御の補助は私の能力の一つでね」
「ともかく焦らないことだ。一月か、半年か、それとも一年か。それなりに時間がかかるものと覚悟してくれ」
あっという間に対応する子もいるようだがね、などとともすれば焚き付けるような事を言う彼女。それに僕は釘を刺す。
「無茶はやめてよ、せっかく助けたんだからね」
ろくに訓練もしないで再戦とかだと、今度こそ「この世界から消える」かそれとも今日みたいにファミリアの餌食になる確率まで出てきたのだ。
「また…会える?」
「君の方から声をかけてくれないと気付かないと思うけどね」
僕はフィサリスのウィッチとしての姿を見ていないから。
「だから出てくるなら、ちゃんとコンディションを整えてよ?完全だったら今度は僕をおもちゃに出来る子が大半の筈だから」
能力次第だけど筋力強化も、普通のウィッチは僕と同等以上な子が大半だ。つまり復帰出来たら僕をファック出来るってわけさ。
崩れた高架や砲撃跡の大穴を回避しつつ、でかい道路を走ること1時間。通行を遮断するフェンスが見えてきた。プラスして逆にこちらに歩いてくる数人のウィッチとすれ違う。速度を落としてフェンス手前で止まる。少し後ろを振り返れば何人かが怪訝そうにこちらを見ているが、問題ないとばかりに手を振ると興味を失ったように彼女らは廃墟の奥へと歩いて行った。
「さて、あとはお前が送っていけ」
「随分過保護じゃない?」
おいおい、ウィッチだぞ。
「自分の感覚で考えるな。エナ切れのウィッチなんぞ、獲物に数える奴はいくらでもいるぞ。人間であってもな」
「…そうだった、インクブスもどきもうろついてたね」
「なんなら護身用の武器くらい持たせてやれ」
「ダガーナイフがいいとこかなぁ。盾だと重いし」
クーラーボックスをブルファントムに渡し、剣を鞘に納めると再び地に立ったフィサリスの手を引く。手順を省略して彼女のベルトに鞘ごとダガーを追加すると彼女は急に感じた重みに腰を見て目を丸くした。
「それは僕が作ったベルトだからね、物を追加するくらい簡単さ」
じゃあ行こうか、と数日ぶりに彼女が戻るであろう街へと足を踏み入れた。
前話でも書いたけど原作主人公のEMP攻撃余波の話を色々でっちあげ。田中くん以外のクラスメイトも捏造、原作キャラも含めてもう数話いけるネタ。
んで偶然にもフォローにまわれた、という状況を描写。なおブルーウィンド(飛葉カオル)は身長135cmを想定、140cm台のシルバーロータスよりも低い。武装の多様さはあっても、近接戦闘においては手足の長さ的にゴブリンと同級になってしまう。