「ペアだったのか」
『ご存知なかったので?』
廃ビルの屋上、離れていく自分に似た装束に対しつい口にした。そういうパートナーも知らなかったわけだが、それ以前に引き摺る程のマントにフード、隠蔽優先の装束だ。あれに更に何らかのマジックを使っていてもおかしくはない。
「能力の割りに生き残っている理由はそれか」
戦闘能力に難があっても耐久性はピカ一の前衛、常にアンブッシュで待機している支援担当。生き残る事を優先するなら、手堅い構成だ。ただまあ、
「ファミリアに忌避感がない、というのは有り難いが」
無さすぎるというのもな、と呟く。
『気の迷いでしょう、ええ、そうですとも』
そう言うことにしておいてやれ、と言わんばかりにパートナーは語気を強めた。私としてもその方がいいと思う。あれは薬物の影響下の出来事だ、正気ではない。コマユバチが伝えてきた興奮状態の彼女―欲情した彼女の幻影を振り払いつつそう評した。インクブスの恐怖から逃げ込む先が私のファミリアでは、幾らなんでも救いがない。
「シルバーロータス様」
別方向から戦域に参入していたアズールノヴァだ。
「お疲れ」
「この程度、どうって事はありませんわ」
彼女の実力ならオークごとき差程ではないだろう、通常ならば。
「不意打ちには気を付けた方がいい」
徒歩で廃都に消えていく二人を見ながら、基本単騎の彼女につい忠告してしまう。
「ご忠告、有り難くいただきます」
彼女も去って行く二人を見る。
「ナンバー444のブルーウインド、それにブルファントムですね」
「そんな名前だったのか」
「実力があるとは言い難い方々ですが、ずっと活動していますわ」
成る程、生存特化型の古参か。ある意味気が合うわけだ、必要以上に馴れ合うことなく失っても気にしない、いなくなっても気にするなと。
考えすぎだ、私達は―彼女らは兵士じゃない。
『ブルファントムという方は?』
「そもそも他の方に認識されているかどうか。私も直接会った時にそう名乗られただけですので」
「徹底しているな、それだけ彼女の支援があのペアの命綱なんだろう」
「詮索するのもなんですけど、おそらく転移系でしょう、色々な所でお会いしますし」
確かに、大分遠いエリアのファミリアもそこで彼女に会う時があったな。
「急にファミリアの前をふさいだかと思えば、運べないらしいゴブリンの骸の山を押し付けられた事もあったな。事の運び方が上手いのだろうな」
本当に弱いのなら群れをまとめて退治など困難だろう。
『ファミリアを見かけたので後始末を考えなくていい、と開き直られただけでは?』
「否定はしない」
お互いに利用しているだけ、そう考えればいいだけだ。死ぬのはインクブスだけ。
「なんにしても口外無用だな、口を滑らして味方を危機にさらしたくない」
「同感ですわ」
「青い風、と青い幽霊か」
妹の弁当を作りながらつい一人ごとを漏らす。ほぼ夜にしか目にしないため認識しづらいが、青い髪に青いトーガではあったと思う。
『気になりますか?』
「もう一人に至ってはマントにフードで、何が青いのか分からないしな」
ただの白いフード付きマントだった。ただまあ、
「深い仲ではあるようだ」
言葉を濁す。
『バディですし、当然では?』
どうやらこのハエトリグモは聞き逃していたようだ。それならそれでいい。取り立てて二人の仲について吹聴することもない。
「そう言うことにしておこう」