※この作品はR-18です。

懸賞金カンストRTA   作:アホホア

7 / 10
バレット救出作戦

 ニカはビッグマムを見ていた。あくまでニカはビッグマムの傘下の海賊。最終決定権はマムにある。別に反対されても計画を止めるつもりはないが一応の義理立てだ。

 

「おれのトットランドの理想は、あらゆる種族が一堂に集まって食事をすること。だが、ホールケーキアイランドは巨人族にとって狭すぎる気がしていた。特に古代巨人族にとってね」

 

 リンリンはポツポツと独り言のように話す。

 

「もともともう少し島を増やす予定はあった。もしくは巨人族限定でトットランドに居住するのではなくエルバフとの交換留学という形にするか。おれのマザーがやっていたみたいにね。だが……」

 

 リンリンはしばらくうつむく。

 

「おれが新世界政府の頂点となり、お茶会に各国の王が集まる。このアイディアは悪くないねえ……」

 

 リンリンはシュトロイゼンを睨んだ。

 

「シュトロイゼン、なぜ今まで気づかなかったんだい?」

「……」

 

 シュトロイゼンは何も喋ることができなかった。

 

「おい、リンリン。なんでてめえが新世界政府の頂点なんだ?」

「おれはニカとだから同盟を組んだんだ。てめぇの下に着く気はねえぞ」

「あん……?」

 

 代わりにロキとカイドウが挑発的な笑みを浮かべながら発言する。リンリンは一気に不機嫌になる。

 

「お茶会の日は暴れたくないが、こういう日もあるだろう。ちょうどいい、お前達に立場ってもんを分からせてやる」

「おおっ、やんのか!?」

「安心しろ。人間相手に本気は出さねえからよ」

「ほざけぇ!」

 

 この日、リンリン、カイドウ、ロキの間で激しい戦闘が行われ、ホールケーキアイランドの1/3が廃墟となった。最後に立っていたのはロキだったが、人間相手に本気を出さないという有言実行のためか、それとも赤子の前で母親を攻撃することに躊躇したのか。リンリンにトドメは刺さず、参ったと言って勝ちを譲った。リンリンはロキに怒り「負けたのなら従え」と言って結婚を迫るようになった。

 

 

――――――

 

 

 はい、というわけでお茶会終わりです。

 後片付けとかなわばりの防衛部隊の作り直しが必要になったのでバレットの救出は一週間遅らせます。特に問題はありません。リンリンは島の防衛役があるので救出に参加しません。バレットがニカの養子と言っても形だけで、実際には金で雇っている個人的な部下ですからね。リンリンとはほぼ無関係です。

 

 バッキンに聞かれたことでインペルダウンの警備が厳重になる可能性はありますが、そもそも現在の政府にはカームベルトを安全に航海する船がありません。なので何日もインペルダウン周辺に停泊して防衛を敷くようなことは不可能。ニカ達は海中から侵入するので侵入のタイミングを完全に見極めるのも不可能です。ベガバングであればそのような発明品を作ることも可能でしょうが、彼は複数の仕事が溜まっている状態なので突然1週間で作れと言われても身体が足りません。サテライトでも作らない限り。

 というわけで予定通り魚人部隊を連れてカームベルトの深海を進みます。インペルダウンのエターナルポースは闇市で買いました。高かったですがニカは国を複数運営しているようなものなのでそれほど痛手でもなく買えます。

 

 ロキ、カイドウ、魚人と共に魚人島まで移動し、そこで別れます。ニカは魚人達ともに先行します。少し遅れてロキとカイドウも出航予定です。こちらが遅れた場合に待てと言われて待つようなやつらじゃないので急ぎます。と言っても移動はRTAに不要なので急いで泳ぐという設定だけしておいてスキップです。

 

 はい、インペルダウンが見えてきました。

 仲間の魚人達は、ジンベイ以外は体力が半分くらいになっています。急いで泳いだので疲れたのでしょう。それに、何度か海王類に襲われたようですね。包帯を巻いている魚人が複数人います。

 が、あまり長居すると海王類に囲まれるので、休憩なしでインペルダウンに攻めますよ。

 

 おっと、ブルゴリがたくさんいますね。外壁を掘るのは魚人に任せ、ニカはブルゴリを倒しましょう。ブルゴリは知性が高いので群れで襲ってきます。武器も持ってますし並みの魚人では勝てません。一方で知性が高いので勝てないと分かれば逃げるようになります。ニカの本気で瞬殺して力の差を思い知らせます。

 

 はい、ブルゴリ10体殺したあたりで生き残りは逃げ始めました。これでニカも外壁の破壊に参加できます。海王類に負けず残っているだけあってさすがに硬い外壁です。ダルマッシュの牙やニカの覇気チョップをもってしても、最初の部屋に到達するまで1時間はかかるでしょうか。スキップします。

 

 はい、最初の部屋に到着しました。と同時にカイドウのホロブレスが門を破壊しました。作戦ではカイドウの到着はもう2時間くらい遅れるはずでしたが、時間を守る気はなかったようです。

 

 え~、看守長はとても強いです。原作のマゼランほどではないですがかなりの強者に設定されています。並みの中将より遥かに強く、大将より僅かに弱いくらいの実力はあります。ですが、ニカ、ロキ、カイドウが相手では万一も起こりませんよね。救出までの戦闘はスキップします。

 

 はい、バレットが救出されました。剣や槍がそこら身体中にぶっ刺さってますし、目が片方潰れてますが、血はほとんど流れていません。問題なく動けるようです。相変わらずおかしな耐久してますね。カイドウほどではないですが。

 

 カイドウが看守長と仲良く戦っています。バレットの護送はロキに任せて、ニカは強い囚人を物色しましょう。マニュアル操作にします。

 

 

――――――

 

 

「ニカ! ニカ! 来てくれるって信じてた……!」

「あなたは、デルリン王女!」

 

 懐かしい声が聞こえた。

 ボロボロの服と髪、痩せ細った身体にはそこら中に拷問の後。血筋を考えると女性器も機能停止させられているだろう。だが、甘えた表情は昔のままだった。

 ゴッドバレーの姫。デルリン王女。まさかの再会だった。

 

「デルリン王女、あなたがいるということは、もしやお笑い海賊団のメンバーも……」

「ごめんなさい。それは分からないわ。私達はよく分からない肉球の力で色んな場所に飛ばされたから」

「なるほど、クマの……」

「クマ……? 確かにクマのような手でしたが」

 

 バーソロミュークマのニキュニキュの能力。軍子の治療で立ち寄ったことで、あの場にクマがいたことと、多くの民間人を飛ばしたことは聞いていた。

 

「王女、魚人の背中に乗って急いでお逃げください」

「嫌よ! 私はあなたといたい! せっかく出会えたのよ!」

「ジンベイ、王女を連れて先に逃げろ」

「わしは構わんが……ええんかい?」

 

 信じられないという顔で絶句する王女。運命的なボーイミーツガールの結果としてはあまりにも非情だし非常識。だが、ニカはやれる男。王女にやさしくキスをして、抱き寄せた。

 

「あっ」

「我がままを言わないでくれ。君を庇ったままでは敵と戦うことができない。そうなれば全滅だ」

「ご、ごめんなさい。私のために言ってくれていたのね。私、この魚人の方と共に行きます……!」

 

 ニカは王女を見送り、別の囚人を探す。強くて、世界政府を恨んでいている、有能な囚人を。

 

「三つ目族……! リンリンが喜びそうだな!」

 

 真ん中に第3の目がある老人を発見した。全身に拷問の後があり、第3の目も潰されているが、生きてはいる。

 

「お前はもしや……、噂に聞くルナ―リア族か?」

「噂に聞く……? もしや三つ目族にもニカの伝承が?」

「ほほっ。ニカとは太陽神のことかね? 子供の頃に長老が歌を口ずさんでおったよ」

 

 60歳近そうな3つ目族。若くてイケイケのリンリンは果たしてこのお爺さんと子作りするのだろうか。ともかく、3つ目族は確保して魚人に運ばせる。

 

「古代巨人族! 船を作れるだと!?」

「自然系能力者!? モリモリの実!?」

「天竜人を逆レイプした性欲化け物人魚!?」

「空白の歴史を知ってしまったメモメモの実の能力者!?」

 

 さすがに政府にとっての禁忌を集めたインペルダウン。すさまじい大物が何人も紛れていた。

 

 

――――――

 

 

 いやぁ、最高ですね。インペルダウンの囚人は本当に平均値が高い。この時期の囚人は全員ランダムですが、ランダムゆえに未来の大将の自然系能力者だって混ざり込めちゃうんですねえ。大量大量。まあ、原作前に死ぬように老人設定にされてますが。死んだ後に実を確保すれば戦力は確保できます。

 さて、有能な囚人はあらかた集めたので撤収します。雑魚囚人を隅々まで探し回って全員乗せたりはしません。時間の無駄ですからね。大将や神の騎士団に来られても困りますし。

 

 

――――――

 

 

※アーロンとバレットの話

 

 

「クッ、さすがにかてえなこの岩盤」

「シャークオントゥース! シャークオントゥース!」

「アーロンのやつ、いつになくやる気じゃねえか。人間は嫌いだったはずだがな」

「バレットともケンカばかりしていたのに、あれで慕っていたのかねえ」

「おい! 無駄口叩いてんじゃねえ! さっさと掘れ!」

「けっ、分かってるよ!」

「シャークオントゥース! シャークオントゥース!」

 

 アーロンは一心不乱に岩盤を噛みつき続ける。彼の脳裏にはバレットと別れた光景が焼き付いていた。

 

 バレットによるヒーロー活動が始まって数年。アーロンは腕に自信のある魚人街の住人としてヒーロー活動に参加していた。だが、人間嫌いのアーロンはバレットが気に入らない。訓練はできるだけバレットから離れた場所で、魚人同士で行っていたし、仕事で腹が立った時はバレットに突っかかっていた。

 

「てめぇ、指示出してるだけのカスの癖になんで俺達より金もらってんだ? 人間様は魚人より偉いってか?」

「金銭の大小を判断したのは俺ではない。雇い主に直接聞け」

「いねえからお前に言ってんだろうが! バカが! 人間は頭の中までサルかぁ?」

「しつこいぞ、クズの癖に」

「なんだとオラァ!」

 

 アーロンはバレットに殴りかかり、返り討ちにあう。いつものことだった。

 

「畜生、なんだって人間ごときがあんな力を」

「しょうがねえよアーロンさん、おれちゃはまだ子供なんだ」

「そうだな。5年後だ。大人の身体になれば実力は逆転しているはず……!」

 

 アーロンは仲のいいはっちゃん、チュウ、クロオビとバレットの悪口で盛り上がる。バレットはゆっくりと立ち上った。

 

「時間だ。作戦を実行する」

 

 ヒューマンショップに売られた奴隷を救う作戦。魚人街の孤児たちはこれを手伝うことで金銭を得ている。人間は好きではないが金のためならやることはやる。アーロンはそういう男だった。

 いつものようにバレットはヒューマンショップを襲撃し、集まってきた海兵を蹴散らす。その隙に、魚人達が鍵を探し、奴隷の首輪を外す。そして、奴隷と共に逃げる。

 

「おい、お前走れねえのか!」

 

 だが、時折走れない奴隷がいる。脚を怪我していたり人魚だったり。無理なら見捨てていいと言われているが。

 

「あ、あなたは! もしやバレットさんの部下のアーロンさん! 私、大ファンなんです!」

「……」

 

 自分のファンだという美しい人魚。身長5m近くあり大きくて目立つ。運ぶのも難しい。

 だが、アーロンはいい気分になった。

 

「ファンなら間違えるな! 俺はアーロン! 誰の部下でもねえ! 金で政府相手の殺しも請け負う一匹狼よ!」

「そうなんですか!? ごめんなさい! 私バカで!」

「無駄口叩く暇があったらとっとと逃げるぞ! うらぁ!」

「あっ、ありがとうございます!」

 

 人魚を背負って走ったアーロンは、いつもより速いくらいに走れた。やる気の力とは恐ろしい。時間が余ったので人魚と会話をしていた。

 

「てめぇ、なんだって奴隷になっちまったんだ? 人間の国は危ないと知っているだろう?」

「その、私、ヒーローの皆さんを近くで見たくて……」

「バカ野郎! こいつは遊びじゃねえんだ! 危険な仕事なんだぞ!」

「ご、ごめんなさい! そうですよね、私みたいな弱い人魚は捕まって奴隷にされるだけですよ! バカでした!」

「ったく調子狂うぜ……」

「でも私、実は就職決まったんです。しばらくこっちに帰って来れなくて。だから見たかったんです」

「あん? 就職だと?」

「はい。ぽかぽか遊園地に」

「なんだってぇ!?」

「ひぃい!?」

 

 アーロンは怒った。あそこで働くということは、男にいいようにされるということだ。

 

「ダ、ダメなんですか!?」

「当たり前だ! 俺達は至高の種族なんだぞ! 人間なんかに尻尾振ってんじゃねえ!」

「ええっ、でも、私、力も弱いですし。できることなんてそれくらいしか……」

「簡単に諦めんじゃねえ!」

「えっ」

「いいか! てめぇはヒーローに憧れてるんだろ! だったらヒーローになれ!」

「な、なれるんですか!」

「当たり前だ! お前にも至高の種族の血が流れているのだからなあ!」

 

 その日、任務を終えたアーロンはバレットに対して独立を宣言。助けた人魚を見習いにして、ヒーロー家業を始めた。だが、代理で魚人街を治めているジンベイはアーロンを金で雇ってくれなかった。

 

「お前はまだ未熟だ。独立は早すぎる。そもそもヒーロー活動に金を払っておるのはニカであって魚人街じゃないわい」

「ケッ、裏切りもんが!」

「なんじゃと!」

 

 アーロンはジンベイとケンカになり、ボコボコにされる。

 そして、全身あざだらけで見習い人魚の元に戻った。

 

「ど、どうでしたか……?」

「あいつは裏切りもんだった。他を当たるぞ」

「は、はい……!」

 

 アーロンは街中を歩き回った。夜遅くまで歩き回った。

 だが、アーロンをヒーローとして雇ってくれる人はいなかった。そもそも高額のヒーロー活動に金を支払える魚人は魚人街にいないのだが。

 アーロンはショックを受けて立ち尽くしていた。金がなければ何もできない。腐った街では何もできない。おれ達は人間に従うしかないのか? そんなはずがない!

 

「おい、アーロン」

「あん? てめぇ、この俺を笑いに来やがったのか?」

 

 そこに現れたのがバレットだった。アーロンはバレットにつかみかかろうとしたが、バレットから出されたのは反撃の拳ではなく金だった。

 

「うちから独立したやつが露頭に迷ってたんじゃあうちの評判にも傷がつくからな。この俺が雇ってやる」

「バ、バカ野郎! それじゃあ独立した意味がねえだろうが!」

「まあ聞けよ、アーロン」

 

 バレットはアーロンの隣にどっかりと座り込み、自分の過去を話し始めた。

 物心ついた時にはバレットは兵士としてガルツバーグに売られていたこと。先輩にイジメられながらみじめに泥をすすって生きたこと。人をたくさん殺して英雄と呼ばれるようになったこと。ガルツバーグがニカに支配されたこと。ニカに雇われヒーロー活動するようになったこと。魚人を部下に持つことで人を育てる難しさを知るようになったこと。感謝されることで不思議な感情が芽生えるようになったが、それを素直に受け入れられないこと。

 

「アーロン、お前はまだ間に合う」

「あん? 間に合うだと?」

「俺は、心を失った鋼鉄の人形だ。自分でもつまらん男だと思う。だが、お前は違う」

「あ、当たり前だ! 俺はてめぇみたいな鉄仮面やろうじゃねえよ!」

「ふっ」

 

 バレットはにやりと笑った。

 

「お前にはやりたいことがあるんだろう? だったらやってみろ」

「なぜてめぇがおれにそれを言う?」

「おれにはないからだ。その感情が何なのかを知りたくなった」

「バカにしてんのか?」

 

 アーロンは結局バレットを理解できなかった。バレットにお金をもらったので、ヒーロー活動は再開した。

 だが、アーロンに兵士の心構えはない。ただのケンカっ早いちんぴらだ。彼我の実力差をわきまえず大勢の海兵に挑み、苦戦している隙に見習いの人魚を攫われ、自身も海兵に捕らえられた。その後、アーロンはバレットを釣る餌として利用された。

 

 海軍大佐がアーロンを護送する傍らで、一般兵に偽装した大将センゴクが構える布陣。そこにバレットが現れた。そして、バレットはセンゴクと激しい戦いを繰り広げ、アーロンを何とか逃がしたが、自身は捕まってしまったのだった。アーロンはもちろんバレットを助けようとした。

 

「バレット! 今助けるぞ!」

「バカ野郎! お前まで捕まったら誰があの人魚を逃がすんだ! あいつはてめぇの部下だろうが!」

「だが! お前はこの街の希望だ!」

「へっ、ありがとよ。だがなアーロン。俺はいつも金を多めにもらってんだよ。部下の失敗の責任は上司が取る。そのための金だ!」

「なっ!? 何を言ってやがる!」

「てめぇも上司を名乗るなら、部下の心配をしやがれ!」

「ぐっ!?」

 

 バレットの気迫に押され、アーロンは逃げた。見習いの人魚を回収してそのまま全力で走った。センゴクは部下にアーロンを追わせなかった。

 

 このようなことがあったため、アーロンはバレットの救出に人一倍のやる気を出していたのだった。なおバレットを最初に発見したのはアーロンではなくニカだった。感動的なやり取りもなかった。

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