クラスで浮いてるあの子は俺と性行為の練習をしている 作:黒宮魚
この前の「練習」から一週間が経った。正直またすぐにでも機会が欲しかったが、月本の都合で来週に、ということになった。つまり今日がその約束の日ということだ。
「あ」
朝の登校時間。俺はいつも結構ギリギリに来るのだが、今日は少し早めに来た。断じて放課後が楽しみだったというわけではない。
校門から校舎までの生徒達でにぎわう道。その中に見慣れた姿をとらえた。
月本香澄だった。が、隣にもう一人いた。あまり多くないだけで月本も友達の一人や二人いるんだな、と思った、が。
「あれって……」
日出純也だった。俺のクラスメイトであり、俺の隣席の男子生徒。
男に免疫があるのかないのかわからない月本だが、男子と並んで歩いているのは意外だった。
というか割と楽しそうに話している。普段の澄まし顔でなく、この前俺と話していた時に見せてくれたような柔らかな表情だった。
別に日出は誰とでも話すやつではある。俺にだって話しかけてくるんだから。
でも、よくわからないけどもやもやする。そういえば月本が「練習」をするのは好きな人がいるからとか言っていたが。
「お前って友達とかいるのか?」
放課後。約束通りまた空き教室で俺と月本は二人で会っていた。昼過ぎから降り出した雨で、室内は薄暗かった。
「友達? あーうん、いないんじゃない?」
「なんで他人事なんだよ」
相変わらず空気感が独特なヤツだ。机に座った月本は脚をぶらぶらと揺らしながら答えた。
「どうして聞いたの?」
「いや月本って一人でいるけど、コミュニケーションできないって感じはしないから」
「そうかな? 何考えてるかわかんないってよく言われるよ」
それは俺も同意ではあるが。
「月本なら俺と違ってうまくやれそうにも思えるけどな」
「そうでもないでしょ。あなただって普通に喋れるのにこうやって私と練習してるじゃない」
鋭い指摘に「それはそうだ」と気づいた。
「近藤くんは友達いないの?」
「いないな」
「即答だね」
多少話すクラスメイトはいる。だけど友達と呼べるような人間は一人もいないし、俺のことを友達と思ってるヤツもいないだろう。
あまりにきっぱりと言い切ったので、月本は面白そうに笑っていた。
「中学校の頃の友達とか、いないの?」
「え? あー……」
自分の表情が固まったのがわかった。瞬間、あまり思い出したくないことが頭をよぎる。
「いねーな。俺、中学は隣の県だし」
「あ、そうなんだ。高校入るときに引っ越してきたの?」
「ああ。まあ家の都合で。この辺はめちゃくちゃ治安いいって聞くしよ」
母親が言っていたことだ。確か、犯罪率とか事故件数がかなり低いらしい。
そうして引っ越してきてから半年以上経ったが、未だ友達がいない。
「ま俺のことはいいんだよ。月本は友達とか作ったほうが楽しくやれそうだけどな」
「楽しいことばっかりじゃないでしょ」
珍しくネガティブな月本。わざと勇気づけるように冗談っぽく続けた。
「そりゃ友達作ったことないからそう思うんじゃねーの? 好きな人とか以前にさ」
俺だって中学生のころは友達の一人や二人はいた。それなりに楽しかった思い出だってある。それを月本だって知ってもいいんじゃないかって思った。
でも、そこで呼吸一つ分テンポが遅れた。ヘンなことを言っただろうか。そう思ったのは遅かった。
「それは先のことを考えずに楽しめる人の決めつけだよ」
一瞬、教室内の音が消えた。雨音を切り裂くような、静かだがナイフのような声色だった。
月本の顔を見る。澄ました顔をしているが、その目には強い意志が見えた。
「あ――ごめ、そうだよな。嫌なことだってそりゃあるよな、悪い」
間違えたと思った。月本の地雷を踏んだ、気がした。
でも何がいけなかったのか、誤魔化すように頭をかいたところで何もわからなかった。
「ほら、私はいいよ。これってあなたが話せるようになる練習、でしょ?」
次に目線を合わせた時には、もう表情が戻っていた。
遅れて気のない返事をする。こちらの動揺が伝わったのか、月本が視線を外した。
「俺は……そうだな。上手くやれないんだよ。言わなくていいこと言ったりとか」
まさに今それをしたんだろう。
「距離感の詰め方、みたいな?」
「ああ、うん」
しかし月本は、俺が言ったことに他人事みたいな反応をした。やっぱり何を考えているかわからない。
「どっから距離詰めていいかとかわかりづらくねーか?」
「何となく近づいた、って感じたらじゃない?」
「それが難しいんだよな」
いつも通りのやり取りに戻る。残るものがあるような気もするが、それに安心する自分がいた。
「そうだね……じゃあ今あなたと私の距離感はどうなの?」
「え、俺と月本かよ」
言い淀む。正直俺たちはちょっと特殊だと思う。
「顔と名前知っててそこそこ話す、くらい? でもそれより他のこともしてるから、一言だと表しにくいっていうか」
「それはそうかも。私の練習にも付き合ってもらってるしね」
月本の練習、その言葉に心臓が跳ねた。
正直、今日この教室に入ってくる前からずっと期待はしている。迷ったが、興味には勝てない。
「……今日は、そっちの練習はすんのかよ」
「したい?」
俺の言葉に驚きもせず月本は言葉を返す。今日は主導権を握りたかったのに、たった一言で逆転されてしまった。
「したいんでしょ。なんか今日目線がやらしーよ」
月本の目つきが変わった。見透かすようなその瞳に唾をのむ。
彼女の指摘は本当、なんだと思う。期待から、月本の白い首元や脚を組みなおす時の動きに注目してないといえば嘘になる。
「ああ、したいね。でもそう言うってことは月本も同じなんじゃねーの?」
「そうかも」
くすりと笑う月本は、誘惑しているようにも思えた。言われる前に腰をあげ、また月本の前に立つ。
「今日は何がしたいの?」
「それを決めるのは月本だろ」
「んー……この前は私が決めたから、今度はあなた」
ごくりと唾をのむ。何をしてもいい、と言われたような感じだ。
机に後ろ手をついて無防備な身体をさらしている月本。あれやこれやと妄想と欲望が頭の中を走る。
それが顔に出ていたのか、月本が興味深そうな目で俺を見ていた。
「じゃあ今日はお前のことイかせてやる」
「へえ」
一瞬、月本の瞳が大きく開いた。
「また私のこと触るってこと?」
「そう。……あ、でもそっちが俺の触るのはナシにしてくれよ」
俺の言葉に、月本は意味ありげな笑みを浮かべて「いいよ」と答えた。それは了承と同時に、始まりの合図だった。
この前みたいにはしたくない。多少は調べて知識もつけてきた。
「ん……」
彼女の上着のボタンを外す。緊張で震えそうになる手を抑えながら、それを脱がせた。
ぱさ、と床に落ちる。拾う余裕はなかった。
「っあ」
月本の口から小さく息が漏れた。
両手で彼女の膨らみを包んだ。ずしりとと伝わるその重さに一つ鼓動のスピードが早くなる。一度経験したくらいじゃ耐性なんか付くはずもなかった。
「ん……今日はいきなり触るんだ」
「悪いかよ」
「んーん。えっちだなって」
「こんなこと頼んでるお前だってそうだろ」
そうだね、なんて月本は余裕そうに言った。置いてかれてる気がして悔しいけど、興奮が勝ってしまっているのも確かなことだった。
ゆっくりと手を動かす。ブラウスに包まれた緩やかな双丘が、俺の手で歪められている。女らしい弾力が手に伝わって、どうしようもなく興奮させられる。
「は……」
耳を澄ませなければ聞こえないほどの吐息。それが少しずつ月本の口から漏れだす。
些細な音でしかないのに、空気を変えるには十分すぎる。薄暗いこの一室が、どこか禁忌的で密やかな空間に切り取られたようだ。
「月本、脱がしても」
「ちょっと、なら」
躊躇いがちな声。だけど嫌がっているわけではなさそうだった。
膨らみの頂点のボタンを手にかけ、ぷちぷちと外していく。一つ外したところで見える素肌と水色の下着。それがより期待を煽る。
いくつかを外し終え、手を放す。乳房だけを外にさらすようないやらしい格好。
俺は我慢なんて効かず、そのまま鷲掴みにした。
「っ、あ………」
ぴく、と月本の身体が震えた。指に少し力を入れるともう一度震える。でも俺を拒みはしなかった。
手のひらには水色のブラの無機質な感触。そして指先には柔らかな人肌。その先の行為を止めることなんてできない。
外側から包み込むように手を動かす。そうやって彼女の女たる象徴の感触を思いきり堪能する。
「ん……胸、好き?」
「好きっていうか……まあ、好きだよ」
「そ。……ふふ」
誘惑的な笑みを浮かべる月本。だが、いつも漂っている余裕さが引っ込みかけている。
もっと余裕のない顔にしたい。獣じみた欲望が湧き上がってくる。
俺は彼女の素肌を守る最後のその布を、下からぐいと押しのけた。
「あっ……」
月本の驚いたような小さい声。
それと同時に、ふるん、と露にされる彼女の二つの乳。本能的に美的感覚と生殖本能をくすぐる形と大きさだ。
彼女の顔や手と同じ白さの肌と、膨らみの頂点の薄い桃色。突起部分は可愛らしく俺のほうを向いていた。
「近藤くんって、ほんとにえっち……」
はぁ、と熱い吐息を吐きながら月本が言う。
名残惜しくも膨らみから目線を月本の顔に移動させて、やっとの思いで口を開く。
「月本、のこんな綺麗な身体触ってたら、俺じゃなくたってこうなるよ」
「ん……褒めてくれてるのかな」
柔らかく微笑む顔が赤みを帯びている。
「触ってよ。気持ちよく、してくれるんでしょ?」
「言われなくても」
挑発されるがまま、月本に触れた。なんの技巧もなく、思い切り広げた手で双丘を包む。
こっちが掴んでいるのに、逆に包み込まれるような感触だった。制服も下着も何もない生の乳房は、病みつきになりそうな柔らかさを与えてくる。
「っ、あ……ん」
ふと耳に届く月本の吐息。それは、先ほどよりも僅かに、でも明確に色気が混じっていた。
気づくと、手のひらへの固い感触がより芯を持っていた。くい、と可愛い力で彼女の小さな乳首がその存在を主張していた。
俺は手をほんの少しズラして、親指でその突起を軽く撫でてみた。
「あっ……!」
明らかに反応が違った。
続けて親指で何往復かしてやると、悩ましげな吐息が漏れ始める。
「は……っ、ぁ、あ……」
この距離じゃなきゃ聞こえないほどの声。だけど、それはチョコレートのような甘さで俺の脳みそにとろけてくる。
少しやり方を変えて、人差し指でかりかりとひっかくようにしてみる。すると、びくっ、と月本の身体が跳ねた。
「月本……これ、気持ちいいのか」
「ん……っ、うん、わかんないけど、ぞわぞわする」
俺を見つめる瞳が熱を持つ。もっと、と期待しているみたいに見えた。
両方の乳首をかりかりと刺激する。月本の色っぽい吐息とともに、少しずつ乳首も勃起してよりひっかきやすくなっていく。
身体と声で明確な反応を見せてくれる月本に、頭が熱を持ってまともな判断ができなくなっていく。
「月本っ……!」
片手を離して、代わりに自分の顔をうずめる。それだけのはずもなく、固くなったその乳首をぱくりと口に含んだ。
そして欲望のまま、舌でべろりと固い桃色を舐めあげた。
「あっ!」
びっくん、と大きく跳ねる月本。漏れ出たはしたない声に、慌てて口をふさいでいた。
そんな彼女に手加減もせず、好き勝手に乳首を転がす。そうすると明らかにさっきよりも反応がよくなった。
「んっ、ぁ……ふっ、ぅ……こん、ど、くん……ぁ、それ、いい……っ」
月本も気持ちよさを自覚している。その事実に支配的な欲を掻き立てられる。俺が月本を好きにできるんだ、と。
片方の手で乳首をきゅ、と摘まむ。それだけでも月本は扇情的な声で反応したが、そのままねちっこく擦り上げてやる。
「っあ、あっ……ン、はーっ、はー……あっ、なんか、ヘンなっ……かんじ……っ」
月本は荒い吐息を漏らしながら、びくびくといやらしく身体を震わせている。高まっている、と誰が見ても明らかだ。
俺は片手で摘まんだ乳首を擦りながら、口の中のものも激しく舐めまわす。おまけに吸い上げて舌と乳首を密着させながら。
それを続けて一分もしないうちにそれは来た。
「あ……んっ、あ、クる、っ……あ、近藤くん、イく、あ、あっ、あっ!」
ぎゅ、と俺の肩を掴んだかと思うと、激しく身体を痙攣させながら甘い声を上げた。
「はっ、ぁ……はー、ぁ、はーっ……」
荒い吐息を漏らしながら月本の身体が脱力する。それに合わせて俺も口と手を離した。
月本の顔を見ると、焦点の定まらない目で俺を見ていた。それを見てやっと、彼女が絶頂したという事実を実感した。
「こんどーくん、気持ち、よかった……」
ぼうっとした声でうわ言のようにつぶやく月本。頭が回ってきたのか、俺と目が合う。その瞬間、その目が妖しく細められた。
「月本……これで満足、じゃねーだろ」
月本は答えない。ただ微笑んだまま俺を見ているだけだ。
何を考えているのかわからない。だからこそ、本能が彼女から目をそらすことを許さない。
「あ……」
片手で太ももに触れると、月本の陶然とした声が聞こえた。
いつかのようにすう、と手を滑らせる。月本は拒まない。もう躊躇なんかなかった。
「っん……」
彼女の下半身を守る薄い布。その中へ手を入れた。
淡い茂みを通り抜け、その先の湿地帯へ。くちゅん、という小さな音が漏れた。
そこは、それまでと全然違う感触だった。とろりとした湿り気と、柔らかい粘膜。熱く濡れた秘所は、どうしようもなく月本の性欲を伝えていた。
「っ、近藤くん……」
不意に俺の肩をつかんでいる手に力が込められた。手を止めて顔をあげると、月本と目が合った。
汗ばんだ顔は軽く紅潮している。だがその表情にあったのは不安だった。
「入れる、の? 指」
「えっと、ああ、うん。そのつもり、だった」
俺の言葉に、月本は目を伏せた。
「……それは、ちょっと怖い」
彼女らしくない、弱々しい声だった。反対に、俺の肩をくしゃりと掴んだ手はぎゅっと縋るような力強さだった。
「――あ」
さっと血の気が引く。調子に乗って月本を怯えさせてしまった。
慌てて彼女から手を離した。
「ごっ、ごめん月本。いきなりすぎた、よな」
「ううん、なんか急にそう思っただけ。こっちこそごめん」
視線を横に向けて、戸惑ったように月本は言った。
なんというかちぐはぐな印象だった。さっきは怖がっていたようだったのに、その目には迷いのようなものが見えた。
「今日はもう止めにすっか。その、ちゃんと一区切りついたっていうか」
一歩彼女から下がってまくしたてる。
途中までいい空気だと思ったのに、俺の行動で壊してしまった。後悔で変な汗が出る。
「あ……えっと、そうだね。うん」
乱れた服を直しながら、月本が答える。
怒ったり怖がっている様子はない。それが逆に不安だった。
「ちゃんと止めてくれて、安心した」
「えっ」
不意に月本が口を開いた。
顔を上げると、和らいだ表情の彼女と目が合う。
「あなたって思ったより優しいんだね」
「いや……優しいヤツは怖がらせるようなことしねーって」
気まずくてすぐに目をそらした。
俺は優しくない。言いすぎたりやりすぎたりとか、そんな失敗ばかりだ。月本に知られたくない秘密だってある。そして今日もまた一つ失敗をしたんだ。
「月本が嫌ってことはやんないようにするから。だから、ごめん」
だからせめてそう口にした。どちらかというと自分に言い聞かせるように。
月本は俺の言葉に「ありがと」と短く答えた。それで少しだけ、救われた気がした。
「近藤くん」
月本に名を呼ばれて目を向けた。
「あなたとなら、友達になれるかもしれない」
月本らしいすました笑顔だった。いつもと変わらないはずなのに、なぜか少しの間目を奪われた。
「って、思った。それだけ」
ふふ、と笑う。自己満足なのか、よくわからない言葉と表情だった。でも、俺にはそれがどこか特別な言葉に聞こえた。
「なんだそれ」
なんと答えていいかわからず、思わず笑ってしまった。やっぱり何を考えているかわからない。でもいいヤツなんだと、そう思った。