極悪エロバラエティ、始まるよ!
八宮めぐるは不安だった。
「……? これに、名前を書くんですか……?」
差し出された書類についてスタッフたちは繰り返し説明してくれているのだが、めぐるには難しい言葉が多すぎる。
プロデューサーの許諾は得ている、と嘘をつく彼らに違和感を覚えながらも、めぐるは分かったような分からないような表情。
「――あの……」
分からない、と言おうとするが、めぐるを囲む大人たちは明らかに苛立った様子。
(……!)
その冷ややかな視線に晒されて、めぐるは慌てて顔を下げる。
目の前の書類の意味は分からない――でも、これにサインすることが、彼らの助けになるのなら。
そうして、めぐるは出演承諾書にサインした。
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白瀬咲耶は犠牲になった。
「誰かが出なければいけない……ということですね?」
恐ろしい番組内容を前にした咲耶の問いに、スタッフは無慈悲にうなずく。
(でも、こんなもの……)
目にするのも恐ろしい文字列が並ぶ企画書に、咲耶は静かに唇を噛む。
だが、誰が出演するかはここで決めねばならないとスタッフは言い、会議室のドアは閉ざされて開けることはできない。
手荷物は別室にあるからメンバーと連絡を取ることも不可能……ならば、取れる道は一つだった。
「……分かりました。私が出演します。――他のメンバーには、このことは……」
スタッフに口止めをして、咲耶はその書類を手に取る。
そうして、咲耶は出演承諾書にサインした。
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杜野凛世は動揺していた。
スタッフから告げられたのは、プロデューサーが結婚したこと。
「プロデューサー……様が…………?」
嘘ではないと証明するように、プロデューサーと見知らぬ女性が親しげに腕を組む写真を見せられて、赤い瞳が揺れる。
舞台稽古中に人手が足りず、プロデューサーが恋人役の代打をした時の写真である――というのは、凛世には秘密のこと。
背景がレッスンルームであることにも気づかず、凛世は目の前でいちゃつくプロデューサーと女性を見つめるのみ。
「このような……ことが……」
呆然とする凛世には、差し出された書類をよく読む余裕もない。
言われるがままに、凛世はペンを動かす。
そうして、凛世は出演承諾書にサインした。
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大崎甜花は混乱していた。
「あ……あぅ……ごめんなさい……?」
仕事の打ち合わせ中、お偉方を何か怒らせてしまったことだけは分かった。
あらゆるメディアに口利きが出来るお偉方はカンカンで、アルストロメリアの今持っている仕事を全て干す、と宣言する。
「それは……しないで、ください……」
同じユニットのメンバーの明るい前途が閉ざされる可能性を前に、甜花は首を振る。
「そのお仕事……受ける、から……」
そうして、甜花は出演承諾書にサインした。
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黛冬優子は激怒していた。
(――何よこれ、こんな契約無効でしょ……!)
とあるタイアップ仕事の契約違反を告げられた冬優子だが、突き付けられた契約条項は常識外れのもの。
他の契約条項がまともだから、仕事が多かったから気付けなかった非常識な条項に違反したとして、冬優子は多額の違約金を課せられた。
(……そう、そういうことね)
そのうえで、先方は書類を差し出す。
この番組に出れば違約金はチャラ……そんな甘言と共に突き付けられたバラエティ番組の内容は凄絶なもので。
(いいわ、今は乗ってあげる。――あんた達の非常識さ、暴いてやるんだから)
そうして、冬優子は出演承諾書にサインした。
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市川雛菜は偽計に晒された。
「やは~! よろしくお願いします~!」
目の前には契約書。
お気に入りのアパレルメーカーとのコラボ案件に雛菜は上機嫌でサインをすると、先方はああ、と顔をしかめる。
「すみません、さっきの書類、書式が違ったみたいで……内容は同じなんですが、こっちにもサインをお願いできますか?」
「は~い!」
書類のすり替えに気付くのは、もうしばらく後のこと。
そうして、雛菜は出演承諾書にサインした。
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七草にちかは迂闊だった。
「っ……でも、本当にやってないんでー……」
言い返しながらも声は震え、目の前に置かれた写真から目が離せない。
どこぞのクラブで遊んでいた時の写真だ。
にちかは飲酒もしていないし、不埒な遊びもしていない。
だが、にちかの周囲の人々はアルコール飲料を手にしているし、画面の端では乳繰り合うカップルが写り込んでいる。
誤解ではあっても、ゴシップが出回れば悪評は立つ。
(そうなったら、SHHisは、美琴さんは――)
大切な人の顔がよぎって、にちかは差し出されたペンを取る。
そうして、にちかは出演承諾書にサインした。
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鈴木羽那は恐慌状態だった。
「やっ……だめ、二人にひどいことしないで!」
慌てて言って、羽那は男が差し出すスマートフォンの画面から目を背ける。
画面に映るのは、斑鳩ルカと郁田はるき。
二人は血だらけで床に倒れて動かない――ポタポタと垂れる赤い雫が恐ろしく、羽那は端正な顔を青ざめさせる。
「これを、書けばいいんですよね……?」
突き出された書類をじっくり読む時間も与えられない。
見せられた映像が合成だとは気付きもせず、羽那は書類を受け取る。
そうして、羽那は出演承諾書にサインした。
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彼女たちは、それぞれのユニット衣装を着てスタジオに集まった。
安っぽい装飾に彩られたセットの中、283プロ以外の出演者は女性司会者ひとりだけ。
けばけばしいギャルメイクに安っぽくテカテカした布地のスーツを着た彼女は、283プロの面々が揃っていると見るや、だしぬけにカメラに笑顔を向ける。
「は~い! 本日も『スワップ・ファック・アウト』が始まりましたぁ! 司会はアタシ、ぽゆちがお届けしま~す!」
馬鹿みたいに明るい声を張り上げる司会者・ぽゆちは、隠しもせずカンペを見やって。
「本日は283プロの各ユニットから一人ずつ選抜して、二人一組で色んなことにチャレンジしてもらいますっ!」
チャレンジの組み分けはくじ引き、チャレンジ内容はルーレットで決める。
そんな説明に合わせて、アイドルたちの前にくじ入りの箱が差し出される。
くじには1から4の数字が書かれていて、スタジオに運ばれたルーレットは四等分になっている。
ルーレットの的にはAからDのアルファベットが振られた紙が貼りつけられている。ルーレットでそのアルファベットが出ない限り、チャレンジ内容を見ることは出来ないのだ。
アイドルたちがくじを引く間に、ぽゆちはルーレットに手を掛けて。
「ではではぁ~、1番を引いたお二人のチャレンジは――こちら!」
そして、ルーレットが指したのは――。