※この作品はR-18です。

霧の牢獄   作:宇藤百足

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八尾涼花②

 

それから、しばらく時が過ぎる。

 

誠司は自分の担当の日が来るたびに説得を試みるが、

涼花は決して首を縦に振らず、ただただ疲弊していくだけだった。

 

そして、また誠司の日がやってくる。

 

 

「では、涼花さん。

 リトリスの乙女として、よく導くように。」

 

 

普段なら用務員を伴いやってくるグレタは、

しばらくおつとめの様子を見守ってから退出するのが通例だ。

 

だが、今日は誠司を連れてくると涼花の健康状態だけを確認。

 

誠司に何やら目配せをして早々に部屋を出てゆく。

 

 

「え、なに? 今日はあの人、すぐ行っちゃうんだね?」

 

「ああ、今日は俺に任せてくれるってさ。」

 

 

その上、今日は誠司の声のトーンがいつもより低い。

 

得体の知れない緊張感が涼花の不安を煽った。

 

 

「な、なによ。なんか、今日は少し感じが違うね? 陣野さん。」

 

「……」

 

 

機嫌を窺うような目つきで見上げてくる涼花をベッドに座らせ、

自分も隣に腰かけると誠司は大きく一息を入れた。

 

 

「……涼花。」

 

「なあに?」

 

「やっぱり、執行部に頭を下げるつもりはないのか?」

 

 

語り掛ける言葉は、ここ最近、毎回のように口にしていたものだ。

 

当然、涼花の返事も変わることはない。

 

黙って首を横に振る。

 

誠司はそれを飲みこんで次の言葉を繋げる。

 

 

「なあ、涼花……

 正直、お前のその『絶対許せない』という判断は

 子供が意固地になっているだけのように、俺には見える。」

 

「だ……だって、子供だもん。

 まだ十五歳だよ? 私……」

 

 

突然の子供扱いに少しカチンと来たのか、眉を顰めて視線を外す涼花。

 

 

「なによ。

 私がもう少し大人だったら、違った判断をしてたかもっていいたいわけ?」

 

「そうだ。」

 

「でも、そんな急に大人になんてなれないよ。」

 

「俺なあ……最近、ずっと涼花のことばかり考えてた。

 そしたら、ちょっと嫌なことに気づいちまったんだ。」

 

「嫌なことって?」

 

「執行部がお前に与えた選択肢だよ。

 あれ、三つじゃなくて……本当は最初から四つあったんだってな。」

 

 

首を傾げる涼花。

 

従順に従う、聖水を使う、自殺する。

 

前者二つは解放された際に、後者一つは永遠に帰れなかったという事実が、

他の新一年生たちの見せしめとして機能することは理解していた。

 

だが、“もう一つ”がわからない。

 

 

「四つ? 四つ目って、何?」

 

「お前が今、まさに取っている行動だよ。

 ――抵抗し続けることだ。」

 

「え……?」

 

「一応、執行部に確認も取った。

 お前はこのまま抵抗し続けていても、いつかは解放されるだろう。」

 

「でも、それじゃ、他に比べて見せしめとして弱くならない?」

 

「ならないさ。

 解放されて仲間たちの元に戻された際、

 お前の体に“目に見える変化”が起きていれば……な。」

 

「あっ……」

 

 

そこで漸く思い至る。

 

ここで抵抗を続けるということは、毎日おつとめをさせられるということだ。

 

否応なく重ねられる性行為の果てにあるのは――“妊娠”という逃れられない結果。

 

長い拘束からやっと帰って来た女生徒がもし妊娠していれば、

それは周囲の者に対してこれ以上ない見せしめとなるだろう。

 

結局、執行部の搦め手から逃れる術はないことを思い知らされる。

 

 

「そんな……じゃあ、私、一体どうしたら……」

 

「なあ、涼花。

 もうこんなこと続けるのは馬鹿らしいと思わないか?

 どう抗っても意味がないなら、素直に従うべきだとは思わないか?」

 

「……っ!」

 

 

苦しげに目を細めて俯く涼花。

 

何度も逡巡する。

 

だが幼さゆえの浅慮の成せる業か。

 

溜まってゆくのは、このどうしようもない理不尽さに対する怒りばかりだった。

 

 

「――嫌。

 許せない……やっぱり、そんなの許せないよ……っ!」

 

 

返答は変わらない。

 

だが誠司にはこれも予想の範疇だ。

 

『そうか』と短く呟く。

 

 

「なら……すまない、涼花。

 俺は執行部側の思惑につくことにする。」

 

 

冷たく言い切られた言葉。

 

そこには何か覚悟のようなものが感じられた。

 

誠司はポケットから何か液体の入った小瓶を取り出すと、

ゆっくりと手を開いてそれを涼花に見せる。

 

瓶に貼られたラベルには『Hi-Hi♡Baby』とあった。

 

 

「な、なにこれ?」

 

「魔都で子供を欲しがる夫婦が使う薬だ。

 薬局で買うと一本一万円以上する代物だが、

 執行部に頼んでみたらあっさり手に入ったよ。」

 

「え、それって……」

 

「排卵誘発に血の騎士の抑制、それに強壮効果に媚薬効果もある。

 女性の肉体にエンジェル・デーに近いコンディションを作り出す薬だ。」

 

 

性犯罪都市として悪名高い魔都では、各種セックスドラッグも発達している。

 

精力剤はもちろん排卵誘発剤や媚薬なども値は張るが市販されており、

しかも一般人が安全かつ有効に服用できるパフォーマンスを実現している。

 

性犯罪に使われることも多いが、それを問題視しないのが魔都という街だった。

 

 

「今後、俺の日は、これを飲んでから踊ってもらう。」

 

 

涼花がハッと目を見開く。

 

浅い呼吸、頬が熱を帯びてゆく。

 

 

「本気なの……?」

 

「わかってくれ、涼花。

 お前が執行部への従属を頑なに拒む以上、

 ここから助け出す方法はもうこれしかないんだ。」

 

 

『それに……』と付け加える。

 

 

「今までも冗談めかして何度か言ったがな。

 涼花を妊娠させたいと思っているのは――本心だよ。」

 

 

そう真剣な眼差しで告げられた言葉を、涼花は不思議と嫌とは感じていなかった。

 

だがまた強情な子供の心が少しだけ意地を張ってしまう。

 

 

「嫌よ。

 どうしてもっていうなら、陣野さんが飲ませて。」

 

「――わかった。

 じゃあ、それでいいんだな?」

 

 

コクリと頷く涼花の前、誠司は瓶を開けて薬を口に含むと、

それを何度かに分けて口移しに飲ませる。

 

口内に注がれる液体を抵抗することなく飲み干してゆく涼花は、

次第に意識がぼーっとしてゆくのを感じていた。

 

 

「~~っ!」

 

 

――ドクンッ!

 

薬は即効性らしく効果はすぐに現れ始めた。

 

全身がカッと熱くなる。

 

 

「ぅぷッ❤

 ……え、体が……熱くなってきたかも……」

 

 

膣粘膜に滲んだ蜜が潤沢すぎるくらいに陰唇から滴り落ちてゆく。

 

強制的な昂ぶりに身悶えする涼花を誠司が優しく抱きしめた。

 

 

「大丈夫だ。

 あとはいつも通り、じっくりとダンスを愉しんでいこう、涼花。」

 

「う、うん……」

 

 

乳房と乳首を擦られるとゾワゾワッとした波紋が広がる。

 

キスをされると脳天がピリピリするような痺れが起きて意識が朦朧としてくる。

 

下腹部を中心に脈動する熱が全身を蝕んでゆくようだ。

 

 

「……なんか、お腹の中……キュンキュンしてきてる……」

 

「子宮が疼いてきてるんだ。

 その疼きも二人で鎮めていこうな。」

 

 

頬を染めた涼花が頷きを返すと、ついに始まる二人の舞踏。

 

汗が散り、淫猥な音と嬌声が閑散とした独房に響き渡ってゆく。

 

 

「ふぁっ! あぁんっ❤ あっ、あぁぁ~ッ!!❤❤」

 

 

誠司が腰を引き、深く突き込む動きには容赦ない。

 

涼花の細い腰をがっちり掴んだ掌に力が入り、逃げることを許さない。

 

 

「あっ❤ あっ❤ あぁんっ❤

 陣野さんのおちんちん、すごいところまで刺さってきてる……ッ❤」

 

 

子宮頚部を『ズンッ!』と叩かれると甘い電流が脳天まで駆け抜ける。

 

媚薬に侵された体は最奥まで到達するペニスを歓迎するように収縮し、

膣壁全体が吸盤のようにまとわりついた。

 

 

「よしっ、いいぞ!

 やっぱり涼花のダンスは最高に可愛いなッ❤」

 

「やふっ、んんっ❤ ……陣野さん……っ❤」

 

 

それは他の用務員とのおつとめでの無理やり与えられる快楽とはまるで異なる。

 

誠司の雄々しい猛りに貫かれるたびに湧き上がる純粋な悦び。

 

媚薬に支配される体は理性の枷を解かれ、

本能が求めるままに激しい歓喜の歌を奏でてしまう。

 

 

(ああっ、気持ちいい……❤

 私のおまんこ勝手に悦んじゃって、全然言うこと聞かなくなってる。

 陣野さんの熱いショット、本気で欲しがってるんだ……)

 

(……陣野さん、か……

 この学院では、かげり以外で唯一の私の味方……)

 

(その陣野さんに、ここまで求められるのなら……

 いいの、かな……妊娠しちゃっても……)

 

 

ダンスの悦びに流されてゆく魔都の姫君としての本能。

 

対して魔都の牡の本能も燃え盛っていた。

 

 

「ハァッ! ハァッ! 涼花……ッ!!❤

 俺だけの、可愛い涼花……ッッ!!❤」

 

 

――恋い焦がれる異性を孕ませたい!

 

――自分の種で腹を膨らませたい!

 

――涼花が欲しい!

 

 

 

叫び出したくなるほどの想いの奔流が全身を駆け巡る。

 

睾丸の中にたっぷりとつまった精液をグツグツと煮え立たせてゆく。

 

すると、みるみる整えられてゆく発射のコンディション。

 

その危険なボーダーはあっさりと突き破られる。

 

 

「……アッ!」

 

――どぴゅっ! どぴゅっ!!

 

「んんんんんっっ!!❤❤」

 

 

唐突に始まる牡の噴出。

 

肉棒の根本から亀頭の先までを昇ってゆく熱いマグマが十五歳の膣内、

その一番深い所に勢いよく撃ち込まれる。

 

 

「あッ……出てる! 出てる……っっ❤

 陣野さんの、いっぱい……んあぁぁッッ!!❤❤」

 

 

瞬間。

 

内なる世界では何億という白濁色の軍勢が雄叫びを上げ、

我先にと最奥の宮殿へ雪崩れ込む。

 

そこで待ち受けるは結界を張り巡らす最奥の姫君と、

その前に立ちはだかる屈強なる血の騎士。

 

かすっただけで即死という剛剣を見事搔い潜り、

聖なる結界を突破した一人だけに新たなる生命として結実する栄誉が与えられる。

 

そんな壮絶な戦いが始まると、

その狂おしい熱気は目も眩むような快楽となって主を襲った。

 

 

「あぁんッ、あつぅッ!❤

 おっ、お腹が、熱いよぅ……ッッ!!❤❤」

 

「はっ、孕めッ!

 涼花、妊娠してくれぇぇ――ッ!!」

 

「はぁああぁ~んっっ❤」

 

 

結合部分からは互いの分泌液と射精量が多すぎて溢れ出した白濁が混ざり合い、

薄ピンク色の卑猥な混合液となってダラダラとシーツに垂れ落ちる。

 

だがそこに絶頂直後の静寂は訪れない。

 

誠司は荒い吐息を吐きながらも涼花の体をひっくり返し、

今度はバックから繋がってゆく。

 

 

「ハァッ……ハァッ……!

 涼花、まだまだいくぞ!

 今度は後ろから愛してやるッ!」

 

 

肩越しにちらりと誠司を見やると、コクリと小さく頷く涼花。

 

両足を開いて踏ん張り直し、背を逸らして尻を持ち上げる。

 

牡の攻め込みやすいポージングを魔都の姫君は本能的に知っているのだ。

 

抽送はすぐに再開された。

 

 

「あッ❤ あッ❤ あッ❤ あッ❤」

 

 

パンパンパンパンと尻肉を打ち据える音がリズムよく響く。

 

 

――ぶしゅッ! ぶしゅッ!

 

 

肉の杭を打ち込まれると同時に牝の泉から淫水が噴き出し、

その刺さり具合を示すように卑猥な音が爆ぜる。

 

 

――ぐちゅっ、じゅぽっ! ぐちゅぐちゅんッ❤

 

「オァッ❤ アッ❤ アッ❤ アァッ❤」

 

 

額に汗して腰を打ち付ける誠司。

 

ギュッと掴んだ尻肉が潰れて盛り上がるように形を変える。

 

そのたびに牡の射精欲求がムクムクと鎌首をもたげてくる。

 

 

「涼花……お前が好きだッ!」

 

「……陣野さん……」

 

「お前をここから連れ出したら、外で一緒にやりたいことが沢山あるッ!

 ここはお前たちにとってままならない世界だけど、楽しいことは絶対あるッ!

 だから、どうか俺を信じて、委ねてくれ――涼花ッッ!!」

 

「うん……来て、陣野さんっ……!」

 

「お……オォォォォッッ!」

 

 

誠司の体内で再度精巣から精嚢へと流れ込んでゆく濃厚なミルク。

 

それは瞬く間に男根内の運河を登り詰め、

そして亀頭の先端から弾け飛んでゆく。

 

 

「くっ……ゥォォッ! で……射精るッ!!」

 

――ビュクッ! ビュルルルッ!!

 

「ふああぁぁ~んっっ!!❤❤」

 

 

圧倒的な量のミルクを迸らせる渾身の射精は、

発射する方も受け止める方も凄まじい快楽を伴う。

 

二人の脳髄は沸騰し、心は天にも召されたかのような幸福に支配されるのだった。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

あれから更なる激しいダンスを交わしたあと。

 

誠司は退出し、しばらくしてまたグレタがやってくる。

 

 

「はい。今日もお疲れ様でしたね、涼花さん。」

 

 

扉の開く音が聞こえると、涼花は疲労した上半身の力だけで体を起こす。

 

覆うもののない股間からは『ぷちゅり……』と生々しい水音が立った。

 

 

「どうやら今日は一層立派におつとめを果たせたようですね。

 ふふ……見ていなくともわかるんですよ?

 室内に濃厚な生命のマナが充満していますから。」

 

 

涼花の肌に付着した牡と牝の体液を熱い濡れタオルで拭きながら、

そんなことを言うグレタ。

 

そこに薄気味の悪さを感じつつも、涼花は珍しく自分から口を開く。

 

 

「あ、あの……“グレタお姉さま”。」

 

「……」

 

 

『グレタお姉さま』

 

それは涼花が今まで何度『そう呼ぶように』と指導されても、

決して口にしない呼び方だった。

 

その小さいながら決定的な変化に、半仮面の下にニタリと笑みが浮かぶ。

 

 

「はい、なんでしょう?」

 

「わ、私……考えを、改めます。」

 

 

沈痛な面持ちで、しかしはっきりと言い放たれる。

 

それは先程までの誠司とのダンスの中で決めた涼花の覚悟だった。

 

 

「ほう? どう改めるのでしょうか?」

 

「もうこの学院に抗議はしません、従います。

 ですから……どうか、ここから出してください!」

 

 

その言葉を聞いたグレタはゆっくりと歩み寄り、跪いて涼花の顎をクイと持ち上げる。

 

底の見えない青い瞳が、また心の奥を覗き込む。

 

 

「それは今後は誠心誠意、敬虔なリトリスの乙女として振舞う。

 そう誓うということですね?」

 

「……はい。誓います。」

 

「――よろしい。

 では、心を入れ替えた証に反省文を作成していただきますが、

 それが通り次第、他の仲間の元へ戻ってよいとします。」

 

「……ありがとうございます。」

 

「では、すぐに取り掛かってください。

 今、必要なものをお持ちしますね。」

 

 

部屋を出てゆくグレタの後姿を見送ると、涼花はふと虚空を見上げる。

 

すると暗闇の中にこれまでの辛かった出来事が

走馬灯のように浮かび上がっては消えていく。

 

 

(あーあ……私は、負けちゃったんだ。)

 

(でも、今はそれでいい。

 そう思えるだけのものを、きっと陣野さんがくれるから……だから、いい。)

 

(かげり、もうすぐ会えるからね……)

 

 

こうして、今年見せしめとなった女生徒は解放された。

 

だが、彼女の口から体験した恐怖と苦痛は仲間に語られ、

それは今年も執行部の支配体制を盤石なものにするのだった。

 

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