冬子がやってきたのは何とも不思議な部屋だった。
全体的に上品で高級感がありアダルトな雰囲気でまとめられているが、
その意匠はどこかレトロな西洋屋敷のような雰囲気が感じられる。
設置されているポットやランプなども電化製品なのかどうかがよくわからない。
何より部屋全体が薄暗く、細かいところまでよく見えないのだ。
それはどこか魔女の部屋を思わせた。
「ホットチョコレートでいいかしら?」
「あ、はいぃ……
ありがとうございますぅ。」
台所へと下がってゆくデボラの背中に声を投げかけながら、
冬子は長いソファに腰かけてぼーっとランプの明かりを見つめる。
「……」
『どうやってこの部屋に来たのか。』
冬子はそれを何故か覚えていない。
そもそもこの建物の外観すらわからない。
朧気ながら記憶に残っているのは
ただ異様なほどに深すぎる霧の中を
デボラに導かれるままついてきたことだけだ。
黒魔術にかかったかのような感覚に陥るが、
それは冬子にとってはむしろ好ましいものだった。
不思議な物語の世界に迷い込んだ気分になるのだ。
「はい、どうぞ。
温まりますよ。」
そこにデボラが戻ってくる。
テーブルの上に置かれたカップに並々と注がれているのは
とろみのあるホットチョコレート。
そこには上からココナッツミルクもかかっており、
ふわりと甘い香りが鼻をくすぐる。
だが、薄暗い部屋の中で見るそれは、
今の冬子にはまた別のものも思い起こさせてしまう。
――ミルクのかかった、とろみのある、茶色いモノ。
それは男たちに散々肛門を弄ばれた末に産み落とした、
大量のブレンド精液交じりの排泄物だ。
「……」
手元に持ってきたところでカップが止まる。
冬子はそれをじっと見つめた。
なんとなく、デボラに試されているような気がしているのだ。
本当に物語の世界に踏み込んでくる覚悟はあるのか、と。
「……」
この仄暗い闇の中で見つめ続けていると、
目の前にある甘いホットチョコレートが
本当に排泄物のドリンクのように思えてくる。
そして、視覚の認識が揺らぎ始めると、
それに引っ張られて嗅覚の認識も揺らぎ始める。
鼻をつく、あの独特の異臭が、
そこにあるはずもないのにじわりと蘇るのだ。
今。
冬子の認識下では、カップの中身の一割程度は
ホットチョコレートではなくなっている。
「さあ、冷めないうちにどうぞ。」
だが、それでもさほど迷いはしなかった。
「……はい。
デボラお姉さま。」
ゆっくりと口をつけ、すする。
するとそれは口の中を焼かないちょうどいい温度であり、
ドロリと流動体は舌の上を、喉を、滑り落ちてゆく。
かすかなチョコレートの苦味と、それを包み込む甘さは、
試練に打ち勝った冬子を祝福するかのように口の中に広がった。
「うぇひひ……
甘くておいしいですぅ。」
「うふふ。
お口にあったならよかったです。」
「私ぃ……
こ~んなに優しくしてもらったの、初めてですぅ。」
「あらあら、そうなのですか?
冬子さんはこんなに可愛らしいのですから、
周囲の男性たちは黙っていないと思うのですけど。」
「そんなことないですよぅ……
私なんか、誰も……」
両手でカップを持ったまま俯こうとする冬子の額に、
デボラの冷たい手がそっと触れる。
顔を隠そうとする前髪をゆっくりとかき上げる。
そして、そのまま額にスゥッと溶けてすり抜ける。
指先が頭の中へと沈んでゆく。
「……えっ?」
冬子は脳の奥で大きな瞳が開いてゆく感じがした。
デボラに記憶を覗かれている。
そう感じた。
しかし、特段嫌な気分ではない。
少しだけ眠くなる感じがするだけだ。
――パン、パン、パン、パン……ッ❤
引き出されてゆく記憶に蘇るのは数時間前の光景だ。
遊歩道脇にある公衆トイレ、男子トイレの中。
一番奥の個室だけが『使用中』として閉め切られており、
扉の前には用務員の男たちが順番待ちの列をなしている。
また鍵のかかった個室からは
牡の腰が牝の腰を貪る音が常に続いている。
「オォ……ッ❤
マジでよく締まるなァ、便器ちゃん。
こりゃ~、極上のケツ穴だぞッ❤」
「うぇ、うぇひひぃっ……
あ、ありがとうございますぅ……んぉ゛っ❤」
列の先頭の男が冬子の肛門を堪能しているのだ。
「しっかし、このケツ穴ン中……
ザーメンとクソがかき混ぜられてベッチャベチャじゃねえか。
ハハッ、きったねえなあ。」
「んっ、うっ、んんっ❤
ご、ごめんなさいぃ……」
「まあいいか、それより出すぞ……
一体何発目なんだァ、これ?」
「た、たぶん十四発目ですぅ……
ど、どうぞ……っ❤」
「よっしゃ、十四発目イクぞッ❤
ビチグソたっぷりのケツ穴でイけおらッ❤」
――ブビュルルルルルルルッッ❤
――ンドプドプドプッッ❤
「うあッ❤ またお尻でイグッ❤
んぉ゛お゛ッ❤ お゛ほぉぉぉッッ❤」
それは献身的な肛門性交だった。
連戦に連戦を強いられてクタクタであるにもかかわらず、
アクメに達する時は必ず自らアピールして男を悦ばせる。
男が射精をすれば肛門をぐにぐにと締めてこねくり回し
最後の一滴まで気持ちよく吐き出させてやる。
そして、中に入りきらなかった内容物をボタボタと溢れさせ、
時におしっこショーを挟みながら、また次の男の相手をする。
そのキャラクター故に女生徒内にも仲間がおらず、
聖水を使っているとはいえ寂しさには勝てない冬子は
こうして男に媚びることで少しでも自分を満たそうとする。
そんな悲しい性格の持ち主だった。
「……。
やはり、頑張っているみたいですね。
多くの迷える子羊たちが……冬子さん、貴方に救われています。」
「うぇひひ……
いえ、そ、そんなことは……」
「冬子さんの肛門は懺悔室への扉なのです。
子羊たちは皆、
そこに自らの罪を吐き出すことで赦されたがっているのですよ。」
「わ、私のお尻が……懺悔室……」
そう言われて冬子は自分の下肢に視線を落とす。
すると、何故か視界にデボラの下肢も映り込んでくる。
対面で別のソファに腰かけていたはずのデボラが、
文字通り瞬く間に隣に移動しているのだ。
「え、え……?
デボラお姉さま……?」
「うふふ……」
冬子の尻とソファのクッションの間に白い手が差し込まれる。
不気味なほどに細長い指先が到達したのは、
そこに一番はっきりと存在する窪み、肛門だ。
冬子はビクリとするが、それ以上身を守ろうとはしない。
「デボラお姉さま……
そこは今日、おじさま方に何度もミルクを注ぎ込まれて、
とても、敏感になってます、からぁ……❤」
デボラの指先が窪みを優しく突く。
瞬間、そこから身を震わす波紋のようなものが
じわぁっと広がる感覚があった。
「……二十七回。
すごいですね、冬子さん。
貴方は今日、二十七もの罪を、この穴で受け止めたのですか。」
「うぇひっ❤
デボラお姉さまは、何でもお見通しなんですねぇ……」
「どうですか?
牡たちの罪は重く、そして絡み・纏わりついてくるでしょう?
私が軽くして差し上げましょう。」
「うぇ、ひひ……❤」
そこからしばらく会話はなかった。
目と目のコンタクトだけで意思がやり取りされたのだ。
冬子はデボラの誘導に従い、ソファの上で四つん這いになる。
スカートがまくられ、汚れたショーツが降ろされると
そこにキュッと締まった肛門が姿を現しる。
覗き込むようにデボラが鼻先を寄せた。
「うふっ、本当に可愛らしいですね。」
そのまま幾人もの男たちを優しい奈落へと導いた穴に口をつけ、
あの真っ赤な舌先を奥へと滑り込ませてゆく。
そこでどうやって動いているのか、
舌先は穴の裏側を丁寧に舐め回し始める。
今まで数えきれないほどの絶頂を迎えている肛門は
既に冬子の主要性感帯としての開発が完了されており、
中で舌先がうねうねと蠢くたびにピンク色の波動が広がる。
甘い吐息が漏れてしまう。
「あぁん❤
デボラお姉さまぁ……❤」
腸壁にこびりついた冬子の穢れや牡たちの欲望をネロリと舐め取る舌先は
時折穴からズルリと引き抜かれて口内に戻ると、
そこでたっぷりと唾液をまぶしてまた突き入れられる。
そして、どんどん腸の深いところへと舐めるポイントを移してゆく。
明らかに人間では届かないような場所まで舌先が伸ばされるのだ。
その深度が深まってゆくにつれて、
冬子は優しい快楽に包まれ意識も遠のいてゆく。
ゆっくり、ゆっくりと眠りに落ちてゆくかのように。
「あ……あぁん……❤
イくぅ❤ イきますぅぅ~~❤
~~~~っっ❤❤❤❤」
酷くスローリーに訪れた肛門絶頂は、
やがて直腸内部の重さと共に冬子の意識を奪い去った。
「さあ……
今はゆっくりとお眠りなさい、冬子さん。
献身的な貴方に……我らの加護を。」
次に目覚めた時、冬子は女子寮の自分の部屋にいた。
そこから始まったのはやはり冬子にとって試練に変わりはなく、
女子寮に親しい仲間はおらず、用務員たちには肉便器にされる日々。
だが、人非ざる隣人のおかげでもう寂しさを感じることはない。
その特徴的な粘液質な笑みは、どこか満たされていた。