◇文井 水菜(ふみいみずな)
女性 十五歳(一年生)
やや内向的な女生徒。
◇鳥居 壮樹(とりいそうき)
男性 二十八歳(用務員)
水菜と仲のいい用務員。
◇石東 沼子(いしとうぬまこ)
女性 十六歳(一年生)
水菜のクラスメート。変人。
パラパラと雨の降る日。
週末の放課後、北の遊歩道。
用務員の鳥居壮樹(とりいそうき)は、
一年生の文井水菜(ふみいみずな)と歩いている。
相合傘というには距離が近すぎるほどに、
壮樹の手は水菜の腰を抱き寄せていた。
ギュッと触れ合う体。
少し歩きづらそうにしながら、
水菜はジーッと壮樹を見上げる。
陰キャ特有のジト目だった。
「言っとくけど。
水菜、別に壮樹くんのこと、好きなわけじゃないからね?」
「わかってるよ。
でも、こうしてお誘いには乗ってくれるんだ。
それだけで十分さ。」
「そう。」
この二人のおつとめは今回が初めてではなかった。
少し前に水菜が初めて狩られて以降、
水菜の教室前で待ち合わせて会うようになり、これが十度目になる。
「ねえ、壮樹くん。」
「うん?」
「昨日と一昨日って、別れた後どうしてた?」
昨日と一昨日は二人は顔は合わせるもおつとめはなかった。
というのも、水菜は金曜日の今日、面倒なテストがあり、
水曜と木曜の放課後を勉強にあてたかった。
だから、壮樹を呼び寄せるもおつとめはせずに、
女子寮エリアまでエスコートさせてから一人で帰す、
ということをしていたのだ。
これはその用務員と女生徒との間に
ある程度親しい関係がないと成り立たないことだ。
そういう意味では、この二人はやや歪ではあるものの
この霧の牢獄におけるカップル関係であると言えなくもなかった。
「他の子を捕まえて、おつとめさせてたの?」
「いや、してないよ。
寮に帰ってゲームやってた。」
「そうなんだ。」
「僕は水菜が好きだからね。
精液は全部水菜のおまんこに注ぎ込みたい。
だから、他の子になんか興味はないよ。」
「ふーん?」
「というわけで、三日分バッチリ溜めて来たからさ。
今日は子作り、ガンバらせてね?」
「いいけど。」
水菜は壮樹に対して好意的というのかどうかはわからないが、
少なくともこうして望まれることは大抵素直に許容していた。
今まで、縁はないが興味だけはあった性行為。
それをおつとめとして実際にやらされてみたら、
密かに期待していた以上に気持ちのいいものだった。
理由はそういうことだ。
「でもさ、壮樹くん。」
「うん?」
「壮樹くんって、なに?
水菜のこと、妊娠させたいの?」
「そりゃ、そうだよ。
水菜のこと好きなんだから。」
「ふーん?」
壮樹は霧の牢獄に来てから三年目になる。
これまで幾人もの女生徒とおつとめと称して体を重ねてきた。
しかし、そんな中でも水菜はある意味で特別な女生徒だった。
男のロマンとも言える『都合のいい異性』。
嫌がることなく欲望を受け止めてくれる異性は、
聖水の力を頼るなら簡単に作り出すことができる。
だが、その手合いは得てして作るのがイージーである代償に、
向こうからもイージーな扱いしか受けることができない。
取るに足らない相手や仕方なく番う相手といった風に、
特別な意識を持たれることがほとんどないのだ。
そこらへん、水菜は自分に特別な好意こそ寄せてはくれないものの、
ある程度特別な相手としては見てくれる。
それが壮樹には新鮮で嬉しいのだ。
それだけでも特別な好意を抱くには十分な理由だった。
「好きだよ、水菜。」
「うん、わかってるよ。」
「水菜、お腹触ってもいい?」
「ダメ。
雨に濡れちゃうもん。
向こうついてからね?」
水菜に些細なちょっかいを出して、
その反応が返ってくるだけでも嬉しい。
十歳以上も年の離れた少女に壮樹は夢中だった。