しばしの後。
二人は二階建ての無人寮の一室にやって来ていた。
扉を開けて中に入るとまず電気をつけ、
それから机の上に持ってきた飲み物を置く。
壮樹が濡れた作業着の上を脱ぐと、
水菜がそれを受け取ってハンガーにかけた。
「ちょっと壮樹くん。
上着の肩、すごい濡れてたよ。」
「そりゃ、傘はお姫様ファーストだからね。」
「馬鹿、風邪ひくよ?」
「大丈夫だよ。
これからお姫様と一杯運動して、体温めるからさ。」
「ホント、馬鹿。」
「それより水菜。
お腹、触ってもいい?」
「あー、いいよ?」
ベッドの縁に座る水菜にベッド下から縋りつくように身を寄せると、
そのお腹を撫で、また頬ずりをする。
壮樹は水菜の仄かな香りに包まれ心地よく微睡む。
こうしていると母の胎内に還った気分になれるのだ。
「壮樹くん、本当に好きだよね、これ。」
水菜はぶつぶつと言いつつも、壮樹の頭を優しく撫でる。
「そこに還れるとしたら、それは壮樹くんじゃない。
壮樹くんの赤ちゃんだよ?」
「わかってるよ。
俺の生命の一部が水菜の中に還る。
それで十分すぎるほど幸せになれるさ。」
「……。
水菜のこと、妊娠させたい?」
先程と同じ問いかけ。
吐息混じりの声で耳元に囁く。
「ああ。」
間近で見つめ合う二人。
顔を寄せ、唇を重ねる。
その勢いのまま、ゆっくりと水菜はベッドに沈められてゆく。
「ねえ、壮樹くんは水菜のどこがいいの?」
「どこがって?」
「水菜なんかより可愛い子、たくさんいるよね?
なにがいいの?
簡単にえっちさせてくれるとこ?」
「いや。
聖水で目隠しすることもなく、
僕のことを意識してくれるとこかな。」
「意識はたしかにしてるよ。
でもさ、何度も言ってるけど、好きなわけじゃないんだよ?」
「いいんだ。
ピエロの恋でも。」
「……あぁん。」
大きな手が伸ばされ、細い太ももを撫でまわす。
きめ細やかな肌はすべすべとしていて触れるだけで気持ちがいい。
そのまま手をずり上げるとミニスカートがめくれてパンツが覗く。
ツンとした猫のプリントとアルファベットが散りばめられた
グレーの愛らしいパンツだ。
「あっ、今日の、可愛い。
ねこさんパンツだね。」
「壮樹くんってさ。
こういう可愛い系が好きなんでしょ?」
「え?」
「だって前回、
レースの大人っぽいの付けてたら、あまり反応なかったし。」
一瞬、呆けたような表情をしたあと、壮樹はぱぁっと顔をほころばせる。
「水菜、そういうの意識しててくれたんだ?」
「ちょっとぐらいはね。
だって、好きじゃなくても一応ダンスパートナーだし。
興奮させて気持ちよくいっぱい出させてあげたいって思うでしょ?」
「……」
「えっちな魔都のお姫様としては、さ。」
「ああ、水菜……マイプリンセス❤」
壮樹はまたキスを重ねてゆく。
何度も何度も。
今は水菜が可愛くて仕方がなかった。
「あーもー。
今日の壮樹くん、キスしすぎ。
今日はもうダメ。」
「えー。」
「というか、別にしたければしてもいいけど。
水菜、壮樹くんのおちんちんおしゃぶりするからね?
そのあとでもよければ。」
「う……」
「ほら、壮樹くんも横になって。」
上下交代。
今度はズボンとトランクスを脱がせた壮樹をベッドに沈ませると、
その股間に水菜が真横から顔を寄せる。
「でも水菜ってさ。
結構、しゃぶるの好きだよね?」
「うん?
まあ、そうかも?」
「教え込んでおいて言うのもなんだけどさ。
その、汚いとか臭いとか、思わないの?」
「別にそんなに汚くも臭くもないよ?
毛のモジャモジャが口に入るのはちょっと嫌だけど。」
水菜は髪をかき上げて『あむっ❤』とやる。
口内に入ってくる大きな異物、そこに舌を這わせてゆく。
よく洗ってあるとはいえ、それでも幾らか残るペニスの臭いは
その幾らかが鼻腔へと抜けてゆく。
水菜はうっとりと目を細めた。
それは生々しい臭気でありながら、不思議と牝を酔わせるのだ。
「ンアァァァ……❤」
壮樹は熱い湯船に浸かった時のような声を漏らす。
口内の熱い空気の中でペニスが弄ばれる感触は
決して射精へと至るような強烈な快楽ではないが
メインディッシュを期待させる前菜としては悪くない。
何より好きな異性が小さなお尻を振りながら自分のペニスに
むしゃぶりついているという絵面が男の満足感を刺激するのだ。
自然と手が伸びた。
それは肩から腰へ、腰から尻へと伝いながら撫でてゆく。
尻へ到達すると今度は指が昆虫の足のように動き出し、
トロリとした甘い樹液の滴る穴にたかってゆく。
そこがクチュクチュといやらしい音を立て始めると、
おしゃぶり中の水菜の鼻息がちょくちょく乱れる。
どこか楽器を奏でているようだった。
「水菜。
僕も舐めたいな。」
「……っ、ん?
あ、いーよ?」
すぐに我慢できなくなる。
壮樹がシックスナインを要求すると、
水菜はパンツを脱ぎ、壮樹に尻を向けて顔に跨る。
二人はいったん行為を仕切り直した。
「ねえ、水菜。」
「ん、なに?」
「このねこさんパンツ、ちょうだい?」
「別にいいけど、そんなのもらって何に使うの?」
「お守りみたいなものさ。
いつでもどこでも水菜の温もりと一緒にいられるのって、
僕にはすごく幸せなことだからさ。」
「はぁ、壮樹くんったら……
ホント好きなんだね、水菜のこと。」
たとえ特別な好意を抱いているわけではない相手であれ、
男性からここまで熱烈なラブコールを受けるというのは、
女子としては決して悪い気分ではない。
呆れた風を装って言葉を発してはいるが、
その口元には隠しきれない緩みがあった。
「ハハッ、ホントなんでだろうね。
水菜が可愛くて可愛くてたまらないんだ。」
壮樹は頭を持ち上げると
すぐ眼前にある愛らしい穴に鼻先を寄せる。
いい香りがした。
それは海水から生臭さや塩っ辛さなど
嫌な要素だけを全て取り払ったような香り。
『母なる海』という言葉があるが、
実際に女性の胎内には小さな海があり、
新たなる生命はそこから生まれてくる。
そう実感させられるような香りだ。
「可愛いよ、水菜。」
「……壮樹くん。」
そこからは二人とも無言になる。
口をしゃべること以外に使うから仕方のないことだ。
しばらく小さな水音と吐息の音だけが室内に響き続けた。
「ねえ、壮樹くん。」
「……、うん?」
「そろそろ欲しいかも。」
水菜はすっと腰を逃がすとボソリという。
壮樹を見るジトッとした目に少し熱が籠っていた。
「じゃあ、水菜。
今日はベランダで踊らないか?」
「ベランダで?」
言われて水菜は窓の外を見やる。
降りしきっていた雨はほぼ止み、
また立ち込めていた霧も薄まってきていた。
「……。
壮樹くんがそうしたいなら、いいけど。」
「なら決まりだね。」
壮樹は水菜の手を引き、ベランダへ出る。
靴下のままフローリングからタイル床へ降りると、
ひんやりとした冷たさが足裏に伝わってきた。
「後ろからだよね?
柵に掴まればいい?」
「うん。」
外に面した鉄柵に両手で掴まると尻を突き出す水菜。
壮樹はそこにバックから繋がってゆく。
「さあ、一つになろうね、水菜。」
「そういう言い方、好きだね。」
十回目のおつとめにもなれば大体わかってくる。
この二人は体の相性がとてもいい。
水菜は壮樹がどう繋がってくるかがわかり、
壮樹は水菜がどう繋がられたいかがわかる。
だから合体は驚くほどスムーズだった。
すぐに『ぺたん』と音がして、腰と腰の距離がゼロになる。
「……ォオッ❤」
「あん❤」
二人から自然と漏れる満足げな声。
壮樹は繋がったまま後ろから顔を寄せ、水菜の横顔を覗き込む。
「なに?」
「水菜、可愛い❤」
「だから、わかったってば。」
「よーし、それじゃ僕と水菜……
おしどり夫婦のらぶらぶ子作りダンスだね。」
「違うってば。」
「ハハ……」
「でもま。
らぶらぶでもおしどり夫婦でもないけど……」
「うん?」
「仲は、良いかもね?」
あしらわれる前提で放ったジョークへのそんな返しに、
壮樹は内心舞い上がっていた。
水菜からの仲良し認定。
これは壮樹にとっては大きすぎる前進だ。
無言で悦びを噛み締めると、ゆっくりと腰を振り始める。
――ぱん、ぱん、ぱん、ぱん……
「ん、んっ、あん。」
ジュワリとした媚肉の摩擦を
大きなストロークでじっくりと愉しむ壮樹。
一回一回一番奥までしっかりと突き込んでくる
逞しい牡の切っ先を水菜もまた愉しんだ。
「でも水菜って、踊ること自体は好きだよね。」
「まあね。
だって気持ちいいし。
壮樹くんだってそうでしょ?」
「まあ、僕もそうと言えばそうだけど……」
「え、何か他にもあるの?」
「水菜が、可愛いから。
それが一番だよ。」
「あー、そっか。」
どこまでも一途に好意を投げかけてくる壮樹に、
水菜は少しばかりの罪悪感を覚える。
おつとめとは『従わなければ殺される』という強迫レイプであり、
それを持ちかけてくる壮樹に本来は憎い相手。
心遣いなど無用だ。
だからこそ『貴方のことは好きではない』と肩ひじを張り続けてきた。
だが、何度も何度も好意を示され、
体を重ねて悦びを共有し合っていると、
そこにあるべき境界線がわからなくなってくる。
現に、今はもう壮樹と一緒にいると居心地の良さすら感じる。
少しだけ困惑する水菜。
『別に許してあげてもいいんじゃないか』という想いと
『戒めとしての一線だけは譲っちゃダメ』という想いが交錯していた。
――ぱん、ぱん、ぱん、ぱん……
「……」
緩やかな攻めが牝の真芯を震わせるのを感じながら、
水菜は肩越しにチラチラと壮樹を見やる。
すると、すぐに向こうからも視線が返ってくる。
壮樹自身も言っていたように
『水菜が可愛くて可愛くて仕方がない』といった視線だ。
「どうした、水菜?」
「んーん、見てるだけ。」
「そっかそっか。
僕は水菜のことが大好きな壮樹くんだぞ~?」
「わかってるってば。」
視線を逸らす。
だが、しばらくするとまた吸い寄せられるように壮樹を見ていた。
「気持ちいいか? 水菜。」
「ん、気持ちいいよ。
壮樹くんは?」
「超幸せ❤」
「そっか。」
自分の一番気持ちいい場所を、
水菜の一番気持ちいい場所にひたすらこすり合わせてくる。
そんな壮樹のピストンからは
『好きな子と同じ感覚を分かち合いたい』という想いが感じられた。
「ねえ、壮樹く――」
そう、水菜が言いかけた時だ。
ベランダの真下に面する道を二人連れが歩いてくるのが見えた。
このエリアにやって来る二人連れなど行為目的の男女以外ありえず、
見下ろしてみればやはり例に漏れずといった感じ。
用務員と女生徒のようだ。
用務員の中年男が片手に閉じた傘を持ち、
もう片手で女生徒の尻をベタベタと触りながら歩いてくる。
「あ、誰か来る。」
「来るね。
どうする?
僕らの仲良しダンス、魅せつけちゃう?」
「えー。」
相変わらずゆっくりと腰を振る壮樹の前で、
眼下までやってきた男女をジッと見下ろす水菜。
すると、ベランダ上で行われる行為に気づいたのか、
向こうも立ち止まり見上げてきた。
「おっ、先客がいるようだな。」
中年男のそんな声に少し遅れて、女生徒も顔を上げる。
そして水菜と目が合うと、その顔は『うげっ!』とひきつった。
二人の女生徒の間に漂うおかしな空気。
それに壮樹も気づく。
「誰? 友達?」
「沼子。
友達じゃないけどクラスメート。」
その女生徒は赤いラインの名札に
『石東沼子(いしとうぬまこ)』とある。
通常、新一年生が用務員に捕まれば、その後に何をされるかを考え、
絶望するか、そうでなくとも暗い顔くらいはするだろう。
だが、沼子は幾らか緊張こそしてはいるものの
その表情は『あちゃー』といったものにとどまっており、
あまり緊張感のない性格であろうことが伺える。
だからこそ、そんな沼子が壮樹と踊る水菜を見上げる顔も、
『うわぁ……』といった表情。
自身もこの後同じことをさせられるのに、
それを棚上げしてのドン引き顔だ。
それは水菜を無性にカチンとさせた。
「ねえ、壮樹くん。」
「うん?」
「魅せつけよ。」
「えっ?」
「『おしどり夫婦のらぶらぶ子作りダンス』、なんでしょ?
沼子の馬鹿に魅せつけてやろ?」
イマイチ事情が掴めない壮樹。
だが、水菜に変なスイッチが入ったことだけはわかる。
ならば水菜との行為を愉しみたい壮樹としてはそれに乗るだけだ。
「オーケィ、マイプリンセス❤」
『さあ、ショーの始まりだ』とばかりに、
壮樹は俄然張り切って腰の動きを荒々しくしてゆく。
――パンッ❤ パンッ❤ パンッ❤ パンッ❤
ペースアップした突き上げにほんのりと頬を染め、
モロに上からといった眼差しで沼子を見下ろす水菜。
小さくピースサインをゆらゆらさせたり、
壮樹とのキスを魅せつけたりしての挑発も忘れない。
要は『自分はおつとめを恐れてなんかいない』
『自分は貴方なんかより遥か先のステージにいる』と
先程のドン引き顔の仕返しにマウントを取りに行っているのだ。
そして、そんな女生徒同士のレベルの低いつつきあいは、
壮樹の目にはとても微笑ましく愛らしいものに映る。
「アァッ、可愛いよ水菜ッ❤
愛してるッ❤」
ぷりっと適度に引き締まった水菜の尻をしっかと掴み、
雄々しさアピールするような激しいピストンで攻め立てる壮樹。
突き込まれるまま火照りを増してゆく膣内には、
奥から止め処なく溢れ出す牝の果汁がよく絡む。
剥き出しの牡の肉と牝の肉がこすれあうたびに
ヌッチャヌッチャとえげつない音を立てて聴覚を刺激、
強烈に射精を促してくる。
「くっ、そろそろ出そうだッ❤ 水菜ッ❤」
「んふっ、いーよっ?
大当たり、出るといいね❤」
水菜のウィンク。
小さな尻が愛らしく弾む。
変なスイッチが入っているせいか、
いつもよりサービス精神旺盛な水菜に
壮樹の快感のテンションはすぐに天井を叩いていた。
「おッ、大当たりッ!
水菜の妊娠ッ!
うおォおおおおおォ~~ッッ!!❤❤」
――ドポォッ❤
――ブビュゥッ❤ ビュルルルルッッ❤❤
「あっ、はぁん❤ 壮樹くぅんっっ❤」
クラスメートの見守る中、大量の精液を膣内に注入され、
水菜はめくるめく高みへと到達する。
あまりに刺激的な光景に思わず見惚れている沼子に一瞥をくれると、
また壮樹と唇を重ねて悦に入る。
しばらく間近で見つめ合いながら呼吸を整えると、
手を引いて室内へと導いた。
「さ、壮樹くん。
今日はとことん踊ってあげる。
もう、中に入ろ。」
ダンスショーが終わり、メインキャスト二人が舞台裏へ引っ込むと、
場にはギャラリーの二人だけが残される。
しかし、沼子も興奮した男に手を引かれ、
同じ無人寮へと引きずり込まれるのだった。