※この作品はR-18です。

霧の牢獄   作:宇藤百足

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二階堂佳緒里②

 

「ねえ……

 誰かさんのせいで体起こすのも手一杯なんだけど。」

 

 

忌々しげにそう言うと佳緒里はどうにか上半身だけを起こし

廊下の壁に背中をもたれかける。

 

荒れた呼吸はまだ戻らない。

 

先ほど心身が悲鳴をあげるほどの激しい行為の最中、

佳緒里の肉体は失神という形でショートを起こした。

 

それは本来脳が肉体に強制的に休憩を取らせるための措置だ。

 

しかし、斗真がそれを認めずに行為を続行したため、

蓄積された疲労は限界を大きく超えるものとなっているのだ。

 

 

「しゃーねーさ、カオリ。

 俺たちは新たな生命を創造してるんだぜ?

 そんな楽なはずがねえよ。」

 

「なんで、そんなに赤ちゃんにこだわるの?」

 

「ははっ……まァまァ……

 そこは一つ、男のロマンってことで理解してくれよ。」

 

 

そこに続く『サイテー』という言葉をひらりとかわすように

斗真は持ってきたバッグをガサゴソとやり始める。

 

取り出したのは栄養ドリンクによくある120mlサイズの小瓶だ。

 

斗真は蓋を開けて一本煽ると、もう一本を佳緒里に投げ渡す。

 

 

「なによ、これ?」

 

「いいから、いっとけ。」

 

「……??」

 

 

飲めという斗真の言葉をスルーして、

まずはいぶかしげな顔で瓶のラベルを確認する佳緒里。

 

 

「……『RAGNAROK』?

 だから、なによ、これ?」

 

「なにって精力剤だよ。

 一体何を混ぜ込んでるのかは知らねえが……

 速攻で効くんだぜ、魔都のメーカー製のはよ。」

 

「ちょ……ちょっと。

 まさか、まだやるつもり?」

 

 

ギョッとした顔をする佳緒里に斗真は力強くサムズアップ。

 

果てしなく大きなため息のあと、

コクコクと液体を飲み干す音が続いた。

 

 

「……あとさ。」

 

 

胸元まで降ろされた髪を指でクルクルと弄びながら、

ジロリと斗真を見やる佳緒里。

 

 

「お兄さん。

 なんか毎回私の髪を解くけど……なんなの?」

 

 

佳緒里の髪型はいつもサイドポニーテールだ。

 

これは高校デビューの際のイメージチェンジの一環で、

髪型にもワンポイント入れて尖がらせようと思い立ったモノ。

 

そのため、彼女にとってはちょっとした決意の表れでもあった。

 

だが斗真はなぜか行為の際、どさくさに紛れて毎回これを解く。

 

それがなぜなのかと聞いているのだ。

 

 

「なによ?

 私のポニー……可愛くない?」

 

「あっ、いや……

 そんなことはねえよ……

 カオリは、可愛いさ……」

 

「……」

 

 

普段は少々横柄とも言える態度なのに、今は酷く活舌の悪い斗真。

 

明らかに何か痛いところを突かれた感じだ。

 

佳緒里はまた目を細める。

 

 

「……お兄さん。

 いつも他の子には目もくれずに私を狙ってくるけど……

 それとも何か関係がある?」

 

「……」

 

「ねえ、お兄さん……

 お兄さんの男のロマンとやらにつきあってあげてる

 可愛い可愛い私にも言えないコト?」

 

 

今度は斗真が大きなため息。

 

頭をポリポリと掻きながら、やがて観念したかのように口を開く。

 

 

「……クッソ生意気だった妹によく似てんだよ。

 髪を下ろすと、特に……」

 

「……妹?」

 

「ああ、初めて見た時は目を疑ったぜ。

 『なんでアイツがここにいるんだ』ってよ。

 ま……つっても年齢は多少違うんだけどな。」

 

「……。

 ……、ふーん?」

 

 

今まで理不尽に自分を性欲の処理に使い倒していた男が

初めて見せた弱み……かもしれないモノ。

 

ともすれば、合理的に反撃ができるかもしれない。

 

佳緒里が少しだけサディスティックな微笑を浮かべるのも

仕方のないことだった。

 

 

「その妹さん、名前は?

 歳は幾つなの?」

 

「……名前は香織。」

 

「えっ、同じじゃん。」

 

「漢字が違う。

 で、歳は……今年で二十になってるはずだ。」

 

「へぇ、名前まで私と同じなんだ?

 歳は四つ上だね。

 この学院風に呼ぶなら『香織お姉さま』ってとこ?」

 

 

一方、佳緒里相手に初めて劣勢に立たされる斗真。

 

一度こうなってしまうと圧倒的なフィジカルも学院のルールも

もはや何の武器にもならなかった。

 

 

「性格は?

 『クッソ生意気』ってことは……

 もしかして性格まで似てたりする?」

 

「に……似てるかもな。」

 

「ふーん?

 じゃあ、本当にそっくりなんだ?」

 

「……ああ。」

 

 

佳緒里は壁から身を起こすと四つん這い……というよりは

女豹のポーズで斗真に這い寄る。

 

 

「ふふ……っ♪

 じゃあお兄さん……

 実の妹を妊娠させたかったんだ?」

 

「~~ッ!」

 

「……ヘ・ン・タ・イ❤」

 

「こ、こいつ……っ」

 

「ヘンタイ❤ ヘンタイ❤ ヘンタイ❤ ヘンタイ❤

  ヘンタイ❤ ヘンタイ❤ ヘンタイ❤ ヘンタイ❤」

 

「~~~~ッッ!!」

 

 

そして完全な攻守交替。

 

調子に乗って責め立てる佳緒里は『カプリ❤カプリ❤』と

獲物の皮膚に愛らしい牙を立てる牝の肉食獣のよう。

 

痛くはないが酷くこそばゆい猛攻に耐えきれず、

斗真は佳緒里を無理やり黙らせるように抱きすくめていた。

 

 

「ふふっ?」

 

「……」

 

「でも、そっかそっか……♪

 なら、『いい』よ?」

 

「『いい』って、何がだよ……?」

 

「私がお兄さんの赤ちゃん……産んであげても。」

 

 

思わぬ言葉に目を見開く斗真。

 

だが会話の流れから、言葉の意図がまだわからない

 

それを計るかのようにチラリと佳緒里の目を見る。

 

 

「どうせここで出産しても赤ちゃんは執行部に取り上げられる。

 その時、お兄さんがどんな顔するのか……

 ふふっ……私、見てみたくなっちゃった♪」

 

 

佳緒里はまたサディスティックな笑みを浮かべるのだった。

 

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