※この作品はR-18です。

霧の牢獄   作:宇藤百足

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◇倉重 シエラ(くらしげしえら)
 女性 十五歳(一年生)
北の大国の血が入ったハーフの少女。

◇浅賀 ほとり(あさかほとり)
 女性 十六歳(二年生)
優しくもしたたかな性格の持ち主。

◇畑中 勝久(はたなかかつひさ)
 男性 三十五歳(用務員)
ガタイのいいニキビ面の男。



倉重シエラ①

 

深夜。

 

霧の遊歩道をゆく用務員と女生徒の二人連れがある。

 

がっしりとした筋肉質の肉体だが、

ニキビ面でどこか陰気な雰囲気のある

用務員の男は畑中勝久(はたなかかつひさ)。

 

一方、人目を惹くブロンドヘアの女生徒の方は

一年生であることを示す赤いラインの名札に

倉重シエラ(くらしげしえら)とあった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

興奮していて鼻息の荒い勝久は委縮するシエラの肩を抱き込み、

ニタニタ顔でしきりに頬ずりをしている。

 

こうした光景。

 

おつとめを終えた女生徒を用務員が

女子寮エリアまでエスコートするのは、ままあることだった。

 

 

「ウフフ、ドゥフフ……

 シ、シ~エラちゃんっ❤」

 

「……は、はい。

 お、お兄さま……」

 

「今日は遅くまでガンバっちゃってごめんね。

 でも、シエラちゃんのダンスが可愛すぎるから悪いんだゾ。」

 

「そ、そのようなこと。

 恐縮、ですわ……」

 

「ドゥフフ……

 本当に可愛いんだから~。

 早くボクのお嫁さんにしちゃいたいっ❤」

 

「あ、はは……」

 

 

それはまさに獲物と捕食者の図だった。

 

目には涙すら浮かべつつも、

それでも勝久の機嫌を崩すまいと

どうにかぎこちない笑みを作って笑いかけるシエラ。

 

そんな献身的でどこか被虐的にも見えるシエラに勝久はすっかりご満悦。

 

鼻息は荒く、目など脈打つハートマークになりっぱなしだ。

 

ふと勝久は肥えたミミズのような指で

シエラのブロンドヘアをベタベタと触る。

 

 

「でもシエラちゃんの髪、とても綺麗だね。

 ハーフなんだっけ?」

 

「はい。

 お父様が、北の大国出身ですので……」

 

「そっかそっか~。

 そのお父様とお母様は優しいのかい?」

 

「はい。

 それはもう、蝶よ花よといった感じで……

 シエラのことを大切に大切に育ててくださいました。」

 

「そっか、でもそれは感謝感謝だなぁ。

 そんな大切に育てた娘さんに、

 今日ボクは本気の子作りを挑ませてもらえたんだから。」

 

「ほ、本気の子作り、ですか……」

 

 

そうして歩いている二人の行く先、

霧の中に複数の照明が固まっている場所が見えてくる。

 

藤棚に備え付けられた照明に、ジュースの自販機の照明。

 

そして少し離れた場所には公衆トイレの中から蛍光灯の明かりが漏れている。

 

遊歩道の各所に点在する休憩所だ。

 

 

「おっ。

 ねえシエラちゃん、喉乾かない?

 なにか飲んでいこうよ。」

 

「あ、はい。」

 

 

連れ立って休憩所の自販機前へとやって来る二人。

 

勝久から『お先にどうぞ』と促されたシエラは、

おずおずと前に出て『とろとろピーチ』のボタンを押す。

 

ガランガランと夜中には大きすぎる音を立てて落ちて来た缶を取り出し、

両手で大切そうに持つ。

 

これをすぐに開けて飲んだりはせずに勝久を待つのがシエラだった。

 

どんな状況でも、どんな相手の前でも、淑女の振る舞いは忘れない。

 

 

「あっ、それ!

 果汁たっぷりで美味しいよね。」

 

「はい。

 シエラ、昔からこれが好きなんです。

 部屋の冷蔵庫にもいつも入れてあるんですよ。」

 

「でも、シエラちゃんのトロトロおまんこジュースは

 も~っと果汁たっぷりで美味しかったけどね。

 ドゥフフ❤」

 

「あ、はは……」

 

 

そんなことを言ってまたシエラを引かせつつ、勝久は自販機のボタンを押す。

 

再び周囲にガランガランと大きな音が鳴り響いた。

 

 

「さ、飲もう飲もう。」

 

「は、はい。」

 

 

勝久のご機嫌を伺うかのようにチラチラと横目で見つつ、

少しずつジュースを飲むシエラ。

 

その視線の先には、

勝久が一気にゴクゴクと煽る小さな瓶が映っていた。

 

その黒い瓶には蛇のイラストが描かれたシールが貼られており、

チラリと見えた商品名は『俺のマムシ』。

 

わかりやすく精力剤だ。

 

その上、シールは精力剤らしく赤地に金縁という派手なカラーリングだが、

それは一年生を示す赤と妊娠中を示す金という嫌な組み合わせでもあり、

どこかシエラの不安感を煽るものだった。

 

 

「お、おミルクの補充、ですか?」

 

 

不安で浮足立っているからなのか、

少々迂闊なことを口走るシエラ。

 

 

「なんせ今日はシエラちゃんのラブリィおまんこに

 ドプンドプンと六発も撃ち込んじゃったからねェ。

 ボクの濃厚孕ませミ・ル・ク❤」

 

「あ、はは……

 そう、でしたわね……」

 

 

不都合な方に話題を振ってしまったことにあせあせしつつ、

わかりやすく視線を泳がせるシエラ。

 

とろとろピーチを一気に飲み干すと

空き缶を持ってゴミ箱前まで『ととと…』と逃げる。

 

だが、無意味。

 

背中を見せて逃げる獲物を追うのは捕食者の本能だ。

 

勝久もそのあとに続く。

 

ガコッと音がして空き缶と空き瓶がゴミ箱に消えた。

 

 

「ドゥフフ……

 ねえ、シエラちゃん。」

 

「は、はい……

 なんでしょう、お兄さま?」

 

 

間近で向かい合う二人。

 

見上げるシエラと勝久は見下ろす。

 

不安そうに勝久の顔色を伺う眼差しと、

胸の前で祈るように両手を重ねる、か弱い姿。

 

それはこれまた捕食者の本能に訴えかける

絶好の獲物アピールとなってしまっていた。

 

 

「ドゥフフ……

 今、シエラちゃんとキスしたら……

 甘ぁ~いとろとろピーチの味がするのかな?」

 

「え、あ……

 た、試して、みますか……?」

 

 

また、そんなことを口走る。

 

それはどこか倒れかかったドミノに

そっともう一押し加えているかのようにも見えた。

 

 

「……ん、んむっ、んぅ❤」

 

 

シエラの上から覆いかぶさるように唇を重ねる勝久。

 

大きなナメクジのような舌を差し入れると、

白桃の味が残るシエラの唾液をネロリ、ネロリと味わう。

 

白濁色の陶酔。

 

文字通りの甘いキスは何度も何度も続けられた。

 

 

「さ~て、シエラちゃん?」

 

 

やがて勝久はシエラの頬を両手で捕まえたまま、

その顔を上から覗き込む。

 

 

「ここで一つ、シエラちゃんに問題です。」

 

「問題、ですか?」

 

「今夜、シエラちゃんのおまんこが受け止めた

 ボクのショットの数は――何発でしょうか?」

 

 

それは少しおかしな問題だった。

 

何故なら、つい先程自身で答えを口にしたばかりなのだから。

 

 

「ろ、六回……ですよね?」

 

 

少しだけ怪訝な顔でそう返すシエラの前で、

勝久はニタァといやらしい笑みを浮かべる。

 

 

「ファイナルアンサー?」

 

「えっ?」

 

 

よくわからないといった顔をするシエラ。

 

少し考えるそぶりを見せた後、おぼつかない声でこう答える。

 

 

「ふぁいなるあんさーでお願いします。」

 

「……」

 

「……」

 

 

すると、鬱陶しくもお約束通りの『溜め』に入る勝久。

 

愉しんでいるのは自分だけであるにもかかわらず、

しきりにニタニタしながら無言でシエラを覗き込む。

 

やがて長すぎる沈黙の後、勝久はついに口を開いた。

 

 

「残念!

 不正解!!」

 

「え、え?

 でも、たしか……?」

 

 

勝久は弱々しく反論を口にするシエラの両肩を掴むと、

そのままクルリと方向転換。

 

鼻歌でも出そうなご機嫌顔で背中を押して、

トイレの外壁の前へと連れてゆく。

 

 

「ドゥフフ……

 正確には、これから『不正解』にしちゃいま~す♪」

 

「……あ。」

 

 

シエラは促されるままに壁に手を着くと、

またあのご機嫌伺いの眼差しでおずおずと勝久を振り返った。

 

 

「お、お兄さま?」

 

「いいからいいから♪」

 

「でも……

 今日はもう六回も撃たれているのですよ?

 いくらお兄さまでも、これ以上はお体に障るのでは……」

 

「愛だよ、シエラちゃん。

 ボクのシエラちゃんへの愛を信じて♪」

 

「で、でも……」

 

「い・い・か・ら♪」

 

 

多少戸惑う素振りはあっても、

求められれば抵抗はしない。

 

パンツを下ろして白桃のような尻を差し出す。

 

更に勝久の前で何度か両足を踏ん張り直して

スムーズに繋がれるよう位置調整までするシエラ。

 

 

「どうぞ、お兄さま……」

 

「そうそう。

 そうこなくっちゃ♪」

 

「シ、シエラのダンス……

 心ゆくまでお愉しみ下さいませ。」

 

「ドゥフ、ドゥフフ……」

 

 

今、勝久の目の前にはつま先立ちの華奢な下肢がある。

 

大きく背を反らして持ち上げられた小さな尻には、

今日六回もの大仕事をこなして疲れ果てた牝穴。

 

そこは先程まで、勝久がしこたま吐き出し続けた白濁を

時折カニが泡を噴くようにプチュプチュと吐き出している。

 

勝久は取り出したペニスをそこにあてがうと、

じっくりと味わうように少しずつ埋めてゆく。

 

こびりついた液体が外気に触れてか冷え切った入り口。

 

しかし、媚肉のうねる膣内まで突き入れると

今度は信じられないほど狂おしい熱が包み込んでくる。

 

ドロリとした濃厚な快楽が、そこには充満していた。

 

 

「ドゥフフ❤

 シ、シエラちゃん。

 またボクと繋がれて、嬉しいでしょ?」

 

「え……」

 

「嬉しいよね? ね?」

 

「あ、はい。

 シエラはまたお兄さまと一つになれて、

 とても嬉しいですっ。」

 

 

その言葉を言い終わると共に、勝久は腰を大きく引いて、ズンと一突き。

 

たっぷりと溜まった膣の内容物が豪快に潰され、掻き混ぜられる。

 

結合部の隙間からは、白濁の泡がまたプチュッと吐き出される。

 

 

「くあぁんっ❤」

 

「行くよ、シエラちゃんッ!

 愛してるからねッ❤」

 

「あっ、あっ、お兄さまっ❤」

 

 

小さな膣はキッツキツに締め付けてくるが、

ヌルヌルの愛液とグヂュグヂュの精液とで潤滑油は十分だ。

 

無数のヒダが止め処なく絡みつき、

ペニスを絞り上げる感触に満足げな吐息が漏れる。

 

生々しいピンクと白濁が混ざり蕩ける十五歳の秘窟を

勝久は思いの丈を込めて突き上げていった。

 

 

「ンォオッ❤

 来てる来てる、アガって来てるよッ❤

 シエラちゃんを妊娠させる、ボクの欲望がッ❤」

 

「はぁっ、はーっ……

 シエラを妊娠、ですかっ?」

 

「そうだよッ!

 シエラちゃんのお腹ッ……

 ボクの赤ちゃんでパンパンにしちゃおうねッ❤」

 

「シ、シエラのお腹にっ……

 お兄さまの赤ちゃん、ですかぁっ?」

 

「そうだよッ!

 シエラちゃんのお腹にッ……

 シエラちゃんそっくりの可愛い赤ちゃんをォッ❤」

 

 

牡と牝の生命力が気炎をあげる。

 

じわりと汗ばんだ尻に爪を食いこませ、

勝久はごつごつした自らの腰に鞭を入れる。

 

『パンッ、パンッ❤』と打ち鳴らされる音が微かに濡れる。

 

腰と腰が打ちつけられるたびに

ふるふるっと悦びに打ち震えるシエラの尻と乳房。

 

狂おしく牡を求める牝のフェロモンがムンと香った。

 

 

「なッ、七発目だけど、

 シエラちゃんに情けないところは見せられないッ!

 全力で、撃ち込むッッ❤」

 

「あっ、あぁん❤

 おに……さまっ、お兄さまっ❤」

 

「出すよッ!」

 

 

ペニスの先端を子宮口に強く押し当てると、

グツグツ煮立つような欲望を勢いよく注ぎ込む。

 

最奥の姫君と血の騎士の待ち受ける神秘の宮殿に、

無数の生命の欠片たちが雄叫びをあげて攻め込んでゆく。

 

聖域を侵される危うい悦びに絶頂を迎え、

シエラはたまらず声を漏らした。

 

 

「あっ、あっ、出てるっ❤

 お兄さまあああああっっ❤❤」

 

 

だが、勝久は止まらない。

 

そのままピストンを再開する。

 

射精直後で敏感になった亀頭で容赦なくこすりあげてゆく。

 

 

「ま、まだまだァッ!

 絶対にシエラちゃんを妊娠させてみせるッ!

 八発目、発射準備いくぞおおおお!!」

 

「あ、あっ、そんなっ……

 そんな、お兄さまっ、無茶ですぅっ!

 いやあぁ~~~ん❤」

 

 

一度灯ってしまった本能の炎は容易に消すことはできない。

 

また求められれば応えてしまうシエラのスタイルもあって、

行為はその後、なんと九回戦まで続けられたのだった。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

魔都の夜も更けに更け、

渦巻く霧と夜闇が世界をとっぷりと呑み込んでいる。

 

蠢いていた欲望の獣たちも可憐なる獲物たちも、

その多くが巣へと帰り、あとは静寂だけが支配している。

 

そんな中、シエラは勝久に寄りかかりながらへたへたと歩いている。

 

その眼差しに生気はなかった。

 

今日、勝久から合計九回もの膣内射精を受けさせられ、

そのたびに激しい絶頂を迎え続けたことで体力をごっそりと削ぎ落されたからだ。

 

 

「ドゥフフ……

 シエラちゃん、今日は九回出したよ、九回。

 これはもう絶対妊娠したよね、ドゥフ、愉しみだなぁ……」

 

「……」

 

 

一方、それだけの精を吐き出しきった勝久だが、

げっそりはしていても、どこか意気揚々ともしている。

 

自らが強靭な牡であることを牝にアピールできた悦びが、

大きな達成感や自己満足感を生み出しているのだ。

 

 

「もうおしゃべりする元気もなくなっちゃったか。

 腰もだいぶフラついてるよね。

 子作り、ガンバらせすぎちゃって、ごめんね。」

 

「……。

 い、いえ……」

 

 

俯いて力なく答えるシエラ。

 

その目元には透明な雫が街灯の明かりを照り返し、

キラキラと儚げに瞬いている。

 

 

「……」

 

 

それをチラチラと見やりながら、

勝久は得も言われぬ多幸感を感じていた。

 

今日の獲物となった一年生、シエラ。

 

魔都の姫君としてのプライドからか、

相手を選ぶことなく礼を尽くす性格のシエラは

小さなお尻を一生懸命振って自分とのダンスに臨んでくれた。

 

だが、それは当然、おつとめという

恐ろしい規則があるため仕方なくのこと。

 

本心ではどれだけ嫌がっていようと、

それを必死に押し殺して従順に振舞う。

 

これこそが一年生の妙味だ。

 

怯える獲物に頬ずりをし、その柔肉を心行くまで堪能する。

 

そんな嗜虐的な悦びは聖水を使ってしまった女生徒たち、

即ち傷つくことがなくなった女生徒たちからは、

決して得ることのできないモノなのだ。

 

 

「ドゥフフ、シ~エラちゃんっ❤

 ぐったりしたシエラちゃんも可愛いなあ……

 ホント、可愛いなあ~❤」

 

 

だから、傷つけて可哀そうだとは思っても、ついついやってしまう。

 

いじめてしまう。

 

か弱い牝が更に弱った姿が可愛くて仕方がないから。

 

 

「ドゥフフ……」

 

「あっ……」

 

 

シエラの瞳からほろりと零れた涙。

 

それをネロリと舐め取ると、

勝久は口の中で味わうように転がすのだった。

 

 

「お、見えてきたかな?」

 

 

やがて、霧の中から女子寮エリアの門が姿を現す。

 

シエラにとっては漸くおつとめから解放される場所だ。

 

だが、そこには先客があった。

 

大きく開いた門の前、霧に包まれて若い用務員と抱き合う女生徒の姿。

 

胸の名札には二年生を示す緑色のラインが引かれている。

 

捕食者を前にして微塵の陰りすらも見せない、不自然に優雅すぎる眼差し。

 

それは聖水常用者特有のものだ。

 

 

「お兄さま、大変お疲れ様でした。

 今宵もいつにも増して素敵なダンスでしたわ。

 また、お兄さまの下でお尻を振らせてくださいませ❤」

 

 

そう言ってクスッと微笑む女生徒を

若い用務員は強く抱きしめたまま離そうとしない。

 

主導権が女生徒側にあるカップルなのだろう。

 

 

「お兄さま?

 今宵はもうだいぶお疲れのご様子。

 お部屋に戻ってゆるりと休まれてくださいな?」

 

 

少し困った顔で諭すような目を向けると、

若い用務員は漸く拘束を緩めて女生徒を解放した。

 

その後、名残惜しそうに何度も振り返っては手を振る若い用務員を見送ると、

女生徒はちらりとシエラたちの方を見やり、門の中へと消えていった。

 

 

(……)

 

 

その視線に何かしら引っかかるものを感じたシエラだが、

それが何であるのかは、いまいちピンとこない。

 

すぐに脇から勝久が視界に入ってくる。

 

 

「ドゥフフ、シエラちゃん。

 今日は本当に可愛かったよ。

 おつきあい、ありがとうねェ……」

 

「は、はい……

 お兄さまもどうぞ、お気をつけてお戻りください。

 送っていただきありがとうございました。」

 

「……、シエラちゃん?」

 

「……、はい……?

 ……あっ……」

 

 

『忘れ物だよ』とばかりにキス。

 

そして、勝久も振り返ることなく夜闇の奥へと去ってゆく。

 

やがて視界から動くものが完全に消えると、

そこで漸く訪れる『ひとりきり』という安寧の時間。

 

シエラは今日一日で酷使した腰をフラつかせて門をくぐった。

 

 

「……」

 

 

目の前には幾重にも折り重なる霧。

 

その奥に聳え立つ寮はまさに霧の要塞といった様相を醸し出している。

 

 

――クスッ……

 

 

霧の中に笑い声。

 

嚙み潰したような笑い声。

 

シエラは俯いたまま自分の暮らす寮へと歩き始める。

 

 

――クスクスクス……

 

 

シエラが歩を進めれば、笑い声も同じだけついてくる。

 

何か含んだような笑い声。

 

夜魔を思わせるような邪な笑い声。

 

それはどこまでもシエラを追いかけてゆく。

 

 

「……」

 

 

やがて、寮の入り口までやってきたところで笑い声はピタリと消えた。

 

ガラス張りの自動ドアに映り込むのは、

辛いおつとめを終えて憔悴しきったブロンド髪の女生徒の姿だけだった。

 

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