◇八尾 涼花(やおりょうか)
女性 15歳(1年生)
負けん気の強い女生徒。
学院に強く意見したため執行部に監禁される。
◇掛原 かげり(かけはらかげり)
女性 15歳(1年生)
少し神経質な女生徒。涼花の幼馴染。
◇グレタ
女性 25歳(執行部)
黒衣を纏い白い半仮面をつけた金髪の修道女。
涼花の再教育担当。
◇陣野 誠司(じんのせいじ)
男性 34歳(用務員)
グレタから涼花のおつとめ相手を任せられた用務員三人の一人。
煩悩にまみれた用務員たちの中では比較的理性的な男。
美しくも恐ろしい黒衣の修道女たちが出入りする聖リトリス女学院――執行部棟。
この建物は一階が受付やロビー、二階が事務所や資料室となっており、
地下一階には保健室や応接室がある作りだが、更に地下二階以降が存在する。
この『関係者以外立ち入り厳禁』のプレートがかかった下り階段の奥。
そこに足を踏み入れたことのある者は執行部以外では極めて少ない。
だが、“そこに何があるのか”は女生徒たちの間ではよく知られていた。
◆
酷く鬱屈とした地下の閉鎖空間。
鉄格子窓付きの鉄扉に固く閉ざされた薄暗い室内には、
薄暗い明かりや重い空気、時間の流れさえも封じ込められ、
ただ重く沈殿しているかのようだ。
あるのは四方を取り囲む灰色の壁と水道口とベッド、
そして――剥き出しの便器だけ。
そこは『再教育室』とは名ばかりの、独房。
この聖リトリス女学院で校則違反を犯した女生徒の内、
死を以て処断されなかった幸運な者はここに送られることとなるのだ。
陽の光が一切差し込まないこの部屋には、昼と夜という概念は存在しない。
強いて言うのなら“そこに静寂があるかないか”だけが時間の切り替わりを告げる。
今は後者のようだった。
――ばちゅッ❤ ばちゅッ❤ ぶちゅッ❤
「ヘッ! 欲張りなおケツちゃんだッ♪
こんなに可愛いクセして、俺から一体何発搾り取れば気が済みやがるッッ♪」
「うぐっ、あっ……
やめてっ! もうアツいの、入らないから……っっ!」
狭い室内に籠るかのように男と女の声、そして牡と牝の音が響いている。
そこでは全裸の女生徒が用務員の男に上半身を壁に押し付けられ、
バックからの肛門性交を挑まれていた。
後ろ手にかけられた手錠が痛々しく、
それが一方的に強いられた行為であることを示している。
「へへッ♪ アツいのは涼花のおケツの中だってよォ!
ッオ、オホォ……ッ❤
牡の欲望に、ガンガン火ィつけてきやがるッ♪」
(いや……誰か、助けて……)
この女生徒は今年入学したばかりの新一年生で、
名を八尾涼花(やおりょうか)という。
否、『入学したばかり』と言うのは語弊があるかもしれない。
なぜなら、彼女は入学式の途中で連れ出され、以来ここに監禁されているからだ。
(ああ、なんでこんなことに……)
もし涼花に罪状というものがあるとすれば、
それは“校則に対して異を唱えた”ことだ。
彼女は入学式での壇上の話が『おつとめ』の詳細に触れた途端、
『そんなの聞いていない!家に帰らせてもらう!』と声を大にして抗議した。
実際、そんな内容は入学前には学院側から一切説明されておらず、
正当性は涼花側にあるはずだった。
だが、有無を言わさずそれを封殺したのが執行部の修道女たち。
彼女たちは一体何をしたのか、涼花を瞬時に気絶させて連れ去ったのだ。
それからというもの、涼花は“再教育”の名目でここに閉じ込められ、
毎日のようにおつとめをさせられていた。
「おらおらッ❤
ここまで七発も注ぎ込んだ無駄撃ちザーメンを
クッチャクッチャと掻き混ぜられるのは気持ちいいだろッ?」
「ああ……いや、いやっ……
言わないでぇ……っっ。」
「ヘヘッ、やっぱり可愛いなあ、涼花は!
なァ……いっそ俺のケツ穴女房になっちまえよォッ♪」
「だっ、誰がそんなッ……うぅっ、あんッ! ふあぁぁぁんっ❤」
極太の肉棍を幾度となく打ち込まれる直腸内では、
大量のネバついた精液が豪快に掻き混ぜられて
茶色く染まりながらプチュプチュと泡立つ。
排泄穴の中で料理でもされているかのような羞恥は
嫌がる心に反し否応ない快楽となって涼花に襲い掛かる。
「ハッハーッ! 出すぞぉ、もう一本ン~!
特濃ザーメン浣腸、ドップリとぶち込むからなッ!」
男の腰振りが一段と荒くなり、涼花の背中に覆いかぶさるように密着する。
牡の吐息が耳元にかかり、全身を震わせるほどの熱気が伝わる。
「ひっ……! いやっ! もう……無理だからぁっっ!」
悲鳴に近い拒絶の声までもが監禁され、誰の耳にも届くことはない。
「くおォォ~ッ❤ 締まるゥゥ~ッ❤
くっそ❤ 俺のチンポ、食い千切るつもりかよッ❤」
肛門括約筋がキュゥッと締まると同時に絶頂寸前の痙攣を起こす。
それは決して涼花の意志ではない。
魔都の姫君の肉体が、本能が、牡の欲望を受け止めるために暴走していた。
「だ……ダメなのにぃッ!
私ッ、また……! あ……あああッッ!!」
刹那。
――ドクンッ!!
灼熱のマグマが涼花の直腸内に炸裂した。
「ケツ穴で天国にイッちまえッ❤ おらッ❤」
「あッ! はあぁぁッッ❤」
八度目の直腸注入。
そして、それに伴う強制絶頂に襲われる。
心が幾ら拒絶しても、肉体はそれを受け入れてしまう。
「……ぅ……ぁ……」
内側から牡の熱を帯びて桃色になった尻をプルプルと震わせ、
涼花は禁断の肛門快楽へと堕ちてゆく。
漸く男の手による拘束から解放されると、
パクパクと半開きで痙攣を続ける肛門から
ブジュブジュと無様な音を立てて中身が漏れ出してゆく。
しかし、すっかり体力を使い果たした涼花は何もできず、
ただもたれかかった壁伝いにゆっくりと崩れ落ちるのだった。
◆
やがて。
大満足の肛門射精を愉しんだ男が身なりを整えて出てゆくと、
代わりに黒衣に白い半仮面の修道女が独房に入ってくる。
彼女はグレタ。
涼花の再教育を任されている執行部メンバーだ。
「はい。今日もお疲れ様でしたね、涼花さん。
お相手の方も、大変満たされて帰られたようです。」
抑揚のない口調。
そこには誰かを労うような温かみは感じられない。
手錠をかけられたまま床に倒れている涼花に一瞥くれると、
グレタは挨拶もほどほどに体液や排泄物で汚れた部屋の掃除をし始める。
慣れた手つきで手際よく進められてゆく作業を、
涼花はぐったりとしたまま眺めていることしかできない。
自分の排泄物を誰かに処理されるという屈辱に顔を歪めるが、
ここで何を訴えても通らないことは、もう理解していた。
「ふふっ、美味しそうなミルクチョコレートですけれど……
これは流してしまいましょうね?」
「……っ。」
便器の水が勢いよく流される音が重い静寂の中に響き渡ると、
最後に掃除されるのは――涼花自身だ。
熱い濡れタオルで全身をくまなく綺麗に拭かれた後、手錠を外される。
漸く自由になった両手の感覚を確かめるようにグーパーをする涼花だが、
それは老人のようにプルプルと震えて力が入らない。
度重なる肛門絶頂にごっそりと奪われた体力は、まだ当分戻りそうになかった。
「ふふ、お尻でのご奉仕も大変でしょう?
ですが、殿方から救いを乞われれば大いなる慈愛の心を以て応じるのが
リトリスの乙女としてあるべき姿ですよ?」
そんなことを言うグレタに手を取られてベッドに座らされる涼花。
グレタを見上げるその瞳には、ありありと抗議の色が滲んでいた。
「――いつまで、こんなこと続けるつもりなんですか?
幾ら魔都警察が性犯罪に関与しないからといって、
こんなことが許されるわけがありません。」
震える声でそう言い切る涼花。
この訴えも通らないことはわかっていた。
だが、わかっていても口にせずにはいられない。
「……『いつまで』、ですか?
涼花さん……何度同じことを言えば理解していただけるのでしょう。
その質問の答えには、もう何度かお答えしたはずですよ?」
「貴方たちの言うところの“リトリスの乙女”として従順に命令に従うと誓うか。
もしくは恐ろしいクスリを使って、強制的に考え方を改めさせられるか。
そのどちらかですよね?」
「涼花さん、これも毎回言っていますね?
あれは恐ろしいクスリなどではありません。
天なるリトリスの慈悲――ありがたい聖水です。」
グレタが手で指し示した先。
ベッドの上に転がる透明な液体の入ったグラスアトマイザー。
それは涼花がここに監禁される際、
自主的な使用を条件にここからの解放を約束されて手渡された聖水だ。
だが、その効能についても“とある人物”から詳しく説明を受けており、
涼花は他の一年生と同様に聖水を“麻薬の一種ではないか”と危険視していた。
「――いいえ! 私、知っているんですよ?
これ、聖水なんて名ばかりの――
“人間の精神に重大な影響を及ぼす薬品”なんですよね!?」
「……」
「女の子を洗脳するための危険な薬品を生徒に使わせるなんて……
この学校は、どうかしてますっ!」
それを聞いて、ふと黙り込むグレタ。
今まで何を言っても暖簾に腕押しだったこともあり、
これは涼花にとっても意外な反応だった。
だが『少しは痛いところをつけたのだろうか?』と次の言葉を探していると、
こんな言葉が返ってくる。
「はて? そのような説明はしていないはずなのですが。
涼花さん。そのような根も葉もない噂――“誰から聞きましたか?”」
「……っ。」
明らかに『しまった!』という顔。
今度は涼花が言葉を途切れさせる。
「答えなさい。涼花さん。」
「……」
半仮面の下から覗く、グレタの青い瞳。
それはどこか相手の瞳を介して脳の中を直接覗いているようで気味が悪い。
視線を逃がしても得体の知れない恐怖からは逃れられず、涼花はギュッと目を瞑る。
「し……知りませんッ!」
咄嗟に口をついて出たのは、簡単に付け込まれてしまいそうな弱気な嘘。
だが――
「まあ、いいでしょう。」
何故かそれ以上の追及の言葉はない。
しかし、代わりにグレタは懐から何かを取り出した。
それを見てヒッと息を飲む涼花。
「涼花さん。
貴方がそう言うのであれば、こちらも少々考えを改めるとしましょうか。」
「なッ……なんのつもりですか!?」
咄嗟に両手を前に構える涼花。
それは首や心臓などの急所を守ろうとする本能的な動きだ。
グレタが取り出したのは、冷たい輝きを放つひと振りのナイフだった。
「――勘違いをしないでください。
これで貴方に切りつけようとか、そういうことではありませんよ。」
「なら……なんだっていうんですか……」
「涼花さん。
どこまでも強情な貴方には、第三の選択肢を与えましょう。」
グレタは鞘に入ったままのナイフをベッドの上に置く。
「これは聖水同様……ここにいる間、貴方に貸し与えます。」
「……」
「もう一度だけ言います。貴方がここから出たいのであれば……
リトリスの教えに素直に従うか、聖水の恩恵をその身に預かるか。
もしくは第三の選択肢です。そのナイフで――」
そこまで言うと、グレタはクスッと気味の悪い笑みを残して部屋から退出してゆく。
「し――死ねっていうんですかッッ!?」
しかし、その背に張り上げた金切り声も、
重い扉の閉ざされる音に搔き消されたのだった。
◆
時の流れさえわからなくなる、この地下室。
涼花に少しでもそれを伝えてくれるのは、
皮肉にも辛いおつとめをこなした回数だけだ。
あのナイフを渡された日から、もう一人おつとめの相手をし、
疲れ果てて泥のように眠ってから、また起きる。
そして、また次のおつとめ相手を迎える。
それだけの時間が経過していた。
――ぐちゅっ、ずちゅっ、ぢゅぷ……っ❤
「あっ、うっ、あっ……あんっ❤」
天井の照明の落とされた独房の中、
修道女の持つランタンだけが闇の中を照らす。
手錠をかけられた女が男の上で腰を振るシルエット。
それが揺れる炎の明かりでゆらゆらと壁に浮かび上がる様は、
どこか魔女たちのサバトを彷彿とさせた。
「フーッ……フーッ……❤
いいぞ、涼花……とても魅惑的で綺麗なダンスだ。
今宵も俺を導いてくれ。」
「んっ、んんふ……っ❤」
「さあ、もっと腰を使って。
可愛く踊ってくれよ?」
「ふっ、んっ、あ……っ❤」
闇の中には男の囁く声と、切なげな女の歌声。
すると、それまで静寂を纏っていた修道女・グレタが声を挟む。
「――では、涼花さんはリトリスの乙女として、彼をよく導くように。」
ランタンの光が離れ、部屋を出ていく足音。
鉄扉が閉じられると、天井の薄暗い照明がつけられる。
そして、しばらくすると鉄扉の向こうから人の気配が完全に消えた。
「……」
「……」
すると、男女は不意にすっと動きを止める。
それは示し合わせた動きだった。
「ねえ……あの人、行ったみたい。」
「……そのようだな。」
男は上半身を起こして女に軽くキスをすると、
腰に手を回して対面座位の形に抱え込む。
先程までよりはだいぶ明るい室内にいるのは八尾涼花、
そして陣野誠司(じんのせいじ)という用務員だ。
「ちょっと、このままなの? 離してくれないの?」
「嫌か?」
「……。別に、いいけど。」
グレタが涼花のおつとめ相手として連れてくる男は三人いる。
毎晩一人ずつローテーションであてがわれる三人のうちの一人が、この誠司だった。
「涼花、勘違いはしないで欲しいんだがな……」
「なによ?」
「俺は確かにお前の味方だ。少しでも助けてやりたいとは思ってるさ。
でも、全部……下心だからな?」
「ちょっ……そういうこと本人を前にして言う?」
「嘘ついたって仕方ないだろ?
俺は……可愛い涼花ともっと仲良くなりたいし、妊娠させたい!」
「バッ!? バッカじゃないの!!??」
「ばばば、馬鹿! 声がでかいって……ッ!」
思わず顔を真っ赤にして大声を張り上げる涼花の口を抑える誠司。
グレタの足音が戻っては来ないかと、二人はそのまましばし耳をそばだてる。
十秒……二十秒……
沈黙という名の人為的な静寂が漂うが、
外の足音はいつまで経っても聞こえてこない。
「……大丈夫っぽい。」
「……だな。」
『それと……』と涼花は付け加え、あっかんべーをしてみせる。
「陣野さんの赤ちゃんなんて、絶対妊娠してあげませんよ~だ。ばーかっ。」
「うんうん。そういうとこだ❤ そういうとこだぞ、涼花❤」
この狭い部屋に延々と閉じ込められ、
グレタと用務員たちの計四人としか顔を合わせない今の涼花にとって、
こうしてこっそり気遣ってくれる誠司は唯一無二の特別な存在だった。
またおつとめで体の関係になっていることもあり、
監視の目のない時はこうして素の自分を出せるぐらいには心を許していた。
「ところで陣野さん。
今日、あの人から何か言われなかった?」
「執行部から? いや、なにも?
なにかあったのか?」
「聖水の話、陣野さんから詳しく聞いたじゃない?
あのこと、ちょっと、口を滑らせちゃって……」
聖水のことをこっそり教えていたのも誠司だ。
誠司はこんなところに監禁される涼花を哀れに思い、
できる限り力になろうとしている。
だが執行部の持つ絶対の権力を前に用務員ができることなど限られていた。
「そうか……
恐らく話したのが俺だということは、もう感づかれてるだろうな。
今のところは見逃してくれてるだけなんだろう。」
「ご、ごめんなさい……」
「気を付けてくれよ?
もし俺が担当から外されて、他の二人みたいなのが後釜になったら……
涼花の味方が本当にいなくなっちまう。」
「……う……」
涼花は思わず身震いする。
誠司以外の用務員二人は酷いものだった。
女の肉体を精液便所としてしか見ないような相手とのダンスは、
血の通わない性欲処理の作業に他ならない。
その上、それ以上に悪質なのがグレタだ。
二日前、グレタから貸し与えられた悪意の象徴とも言えるようなアイテム。
それは今、部屋の片隅に転がり、冷たい存在感を放っていた。
「ところで涼花、あのナイフはなんだ?
あんなもの、前回来た時はなかったよな?」
「あの人が置いていったの。
どうしても従いたくないなら自殺しろってことだと思う。」
「……チッ! あいつら、なんてことを……!」
誠司は小さく舌打ちすると、両手で涼花の頭を抱き込んだ。
激しい憤りを感じさせる呼吸が一つ挟まれる。
「本当なら、そんなもの俺が取り上げたい。
……だが、それをすれば今度こそ担当を外される恐れがある……」
「うん。」
「だから涼花――絶対に使うなよ?」
「わかってるよ。こんなところで死ぬなんて、絶対嫌だもん。」
「くそ……くそっ……!」
心を通わせた少女の危機。
だが男として立ち上がることは許されない。
そんな状況に誠司は苛立ちを抑えきれない。
この霧の牢獄で長年執行部のやり方を見てきたからこそ、
力なき者の抵抗は更なる悲劇しか生まないと理解しているのだ。
それに二十近く年の離れた子供の前で、自分が取り乱すわけにはいかない。
誠司は一つ深呼吸をすると、静かに語り始めた。
「……実はな、涼花みたいな子は毎年出るんだよ。」
「私みたいなって?
入学式でおつとめに意見して捕まる子?」
「ああ、あれな……
執行部もわかっていて、わざと新一年生たちの反発を煽るんだ。
毎年恒例の行事なんだよ。」
「行事って……なんで、そんなこと……」
「わからないか? ――見せしめだよ。」
「あ……っ。」
すっと腑に落ちる。
入学式といえば、新一年生全員が一堂に会する希少な機会だ。
その場で反発心の強い者一人を炙り出して厳しく罰することで
残る全員に抵抗の意思を失わせる――従属の意思を植え付ける。
それは今後、彼女たちを理不尽な校則の奴隷とするため、実に理にかなった行動だ。
その“一人”に自分が選ばれてしまったことに、涼花は改めてショックを受けた。
「だから、従順に従う……聖水を使う……自殺する……
執行部の連中からすれば、解決方法はどれでも構わないんだ。」
「そっか……
長い監禁から帰ってきたら反抗心の強い人が嘘みたいに従順になってたり……
もしくは二度と帰って来なかったり……」
「そうだ。
そういった噂は恐怖と共にすぐに伝播する。
それを以て“第二の見せしめ”が完成するってわけだ。」
「……」
黙り込む涼花に、誠司は続ける。
「なあ、涼花。
本当はこんなこと言いたくはないんだが……」
「……なに?」
「執行部に頭を下げる気はないか?」
「犬みたいに従順に従え……ってこと?」
「自分の信じる正義を譲らない涼花は立派だよ。
だがな……ここでは権力への抵抗は意味をなさない。
そういう世界なんだ。」
悲痛な面持ち。
口にした言葉は、そのまま自分にも刺さる刃となる。
だが涼花を救うには、結局その考えを曲げさせる他ない。
その辛い事実に誠司は行きついてしまう。
「頼む、涼花。
俺はお前を失いたくないんだ、どうか頼む――!」
ちっぽけなプライドをかなぐり捨てて懇願する。
そんな誠司に思うところがあるのか、涼花はその目をじっと見返した。
「ありがとう、陣野さん。
そんな風に言ってくれるのは、正直嬉しいよ。」
「なら……!」
「でも――嫌。」
一瞬変わりかけた流れは、無慈悲に断ち切られる。
「私、そんな邪悪な人たちは絶対許せない!
そんな汚い思惑になんか従いたくないの――!」
結局、誠司の想いは届くことなく、その夜は過ぎ去っていくのだった。