少女×ふたなり習作集 作:エリマキトカゲ
一応次話の前書きにあらすじを書くので、スケベだけが見たい場合は飛ばしてください。
私の通う白百合学園は、中高一貫の女子校だ。中等部までは家や下宿から通うことになるが、高等部からは全寮制に切り替わり、学友との共同生活の中で自立していく、という方針をとっている。
この白百合学園、何よりも面白いのは、女子校でありながらふたなりの入学を認めていることだ。
ふたなりというのは男でも女でもない、第三の性別だ。その数は世界人口の約10%、最新の統計では12%との噂もあるが、それは重要じゃない。
年頃の若者にとって重要なのは、ふたなりがどれほど優れた存在かという部分だ。
まず、彼女らは両性具有だ。外見は殆ど女性だが、性器が両方ある。外見に関しては人間の発生過程では女性型から始まるから、なんて説明を受けたことがある。
性別は男でも女でもない。けれども、身体構造は殆ど同じ。だから、全員にとって同性であると同時に異性なのだ。
それだけで恋愛に憧れる思春期には眩しい存在だ。ラブコメ漫画を見て入れば、『最初は同性の友達のように思っていたのに異性として見てしまって……』なんてのが定番だ。
最近は多様性の関係で異性同性という表現は減りつつあるが、それでも王道であることには変わりない。
更に、ふたなりは性格が安定している。ホルモンバランスが安定しており、温厚な人はいつでも温厚だし、明るい人はいつでも明るい。その安心感はかなりのものだ。
ホルモンバランスに関連して言えば、ふたなりは全体的にスペックが高い。手先は器用で、筋肉は付きやすく、頭は右脳も左脳も性差による偏りが無い。
流石に通知表オール5なんていうのは厳しいが、それでも周囲の羨望を浴びるのには十分だ。
その優秀さは近年の突然変異などではないから、ふたなりというのは"優性"として扱われてきた。良いとこのお嬢様が女子校という温室で学びつつ、ふたなりとの関わりを通じて社交性を身に着けたり、良い嫁ぎ相手を見つけたり……まあ、そういう思惑もあったのだろう。
だから、今では世にも珍しい広義女子校という存在になっている。色々なドラマや漫画のせいでラブコメの舞台として見られがちだが、その歴史に見合った良い学校でもあるのだ。
そういうわけで、このあたりの学生でそれなりの頭や推薦を得る何かがあれば、白百合学園を目指すことになる。東大のように世間的に褒められるほどではなくとも、地元で白百合に受かったと言えば、それなりのどよめきが生まれる程度にはすごい。
私も、周囲に半ば流されるようにここを志願して受かった。中等部を3年間過ごし、無事に高等部に進級した。
寮母さんから鍵を受け取り、先に来ているらしい同室の為人を想像しながらノックする。
優しい人だと嬉しいな。知り合いだったら面白いな、なんて。柄にもなく浮かれた気持ちで扉を開け、絶句した。
「うそ、同室って桜!? よかった、よろしくね!」
「はる、か……?」
ふたなりの定番ファッションであるゆったり長ズボンに、私より十センチ以上高い身長と人懐っこい笑顔。小さいころに送ったヘアピンで軽くまとめられた前髪は、寮室のシーリングライトに照らされてつやつやとしている。紅茶の茶葉のような焦げ茶の髪は幼少期から変わらない、ちょっと珍しい地毛。
そして何より、素材の良さを無駄にして仕方ないダサいTシャツ。なんだよ邪悪なエビって。エビルエビってか。やかましいわ。
眼鏡を外して付け直し、瞬きを三回。見間違えるはずがない。中等部の頃もかなりの頻度で顔を合わせていたし、休日に会うことだってあった。
私の幼馴染である
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今目の前に居る春香も、世間的には珍しいふたなりの一人だ。
このアホはモテる自覚が無い。繰り返しにはなるが、ふたなりは男女関係無くモテる。というか、モテうる。
なのにこいつは全員を同性だとでも思っているのか、距離が近いし、少し頼られれば喜んで手伝いに行く。
考えてもみてほしい。人懐っこくて、欠点らしい欠点の無い異性が、一切の打算や下心無く、困っているところを助けてくれる。
運動部に居れば高確率で助っ人として悪くない活躍をしてくれて、文化部に居れば荷物を運んでくれて、改めて礼を言えば「趣味みたいなものだから気にしないで!」。
バカか? バカに違いない。
けれども、どれだけ悪態を吐こうと、私もそのバカに落とされた側で、今なお諦めきれていないバカの一人なのだ。
荷解きを進めながら考える。
同室が幼馴染というのは、どちらかと言えば喜ぶべきことだ。いくら中等部の三年間があると言っても、私のような陰キャに友人なんて呼べる存在は少ないわけで。関係をイチから築く必要も無いし、それどころかある程度熟知した状態でスタートできる。
多少料理を失敗しようが、夜更かしをしようが、多少のやらかしだって問題は無いだろう。
じゃあ何が問題なのかといえば、春香に絶賛片想い中なのが問題だ。
好きな人と一つ屋根の下で共同生活? 私の生活の隣に春香が居て、日常の細かな不便にも気を遣ってもらって、夜は同じ部屋で少し距離を開けただけのベッドで眠る?
こんなのオタクの妄想じゃねえか!
うっかり握り潰したスカートの皺を伸ばしつつ、冷静になるために思考を巡らせる。
私は朝弱い。春香が居るというのは、目覚ましが二倍ということだ。なんて便利。
……え? それって毎朝起こしてもらえるってことですか?
料理の腕は、私の方が上だ。というか家事全般は負ける気がしない。勉強だって文系科目は私の方が上だし。春香が色々助けてくれたとしても、それはお互いの助け合いでしかない。
助けられてキュンとするのだって、返礼を期待しないような振る舞いが良いだけであって、私を都合よく働かせるためだと思えば良い。
……え? お互いに対等な助け合いの関係が日常に? 夫婦やん。
雑念を振り払い、荷物を全て片付ける。春香はもう少しかかりそうだ。
「春香」
「どうしたの?」
「しばらく話しかけないで」
「マジでどうしたの!?」
困惑する春香を他所に、自分のベッドに飛び込む。
三年間、正気と理性を保てるのか。胸中に渦巻く心配は、アンプでも通したみたいな鼓動に飲み込まれていった。
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心配そうな春香を宥めたり必死に冷静さを取り戻したり――あれ、大体私が悪いな?――しているうちに、時刻は夕方の五時となった。
夕方まで部活や勉強をしてからでも自炊に取り掛かれるように、学園の購買はちょっとしたスーパーマーケット兼薬局くらいの規模と品揃えを誇っている。
お米を五キロと調味料、ちょっとした野菜にお魚、その他食料品。かなり長いレシートの下に刻まれた合計金額は、割り勘でなければかなり痛かった。
春香という荷物持ちの存在と今日から自炊という緊張感もあって、少し買いすぎた気もするが……まあ、無駄にはならないのだから良いだろう。
「ごめんね、持たせて」
「桜を抱っこしてても余裕」
荷物をゆさっと揺らして、春香が誇らしげに笑う。
お米を抱えている方の腕は特に力が入っているのか、若干筋肉が浮いている。ふにふにと柔らかそうな薄い脂肪と筋肉のコントラストはふたなり特有の光景だ。なんとも眼福である。
話題らしい話題も無く、高等部の授業について話し合ったりしながら部屋に戻って、夕食時。
今日は焼き魚にお味噌汁という純和風定食だ。
見てわかるくらい幸せそうな春香を見ていると、頑張って作った甲斐を感じる。
「お味噌汁美味しいね。お味噌の量が丁度いい」
「給食のが濃いって言ってたじゃん」
「小学校の? うわ、懐かしい。わかめブヨブヨだったよね」
口が滑った。
あの頃の私は純粋だったのだ。毎日お味噌汁を作る側になる日を信じて、料理の練習やらなんやらをするくらいには。
問い詰められたらどう応えよう、なんて心配は杞憂だったようで、それ以上の質問は無い。
それでも同じ話題が続いているような感覚が心臓に悪くて、目についたものに話を切り替える。
「そ、そういえば、お米の量は大丈夫だった?」
私のものより一回り大きいお茶碗を指差す。少し盛りすぎたかと思ったが、既に半分以上が胃袋に入っている。
春香は身体が大きい。ふたなりの平均である百七十センチをやや上回る程度だから、特別大きいというわけではないが、それでも十センチ以上小さい私と比べればちょっとした姉妹か親子に見えるくらいの差だ。
加えて筋肉もあるし、そもそも性別が二つあるというのは精細胞が倍ということなわけで。そこに育ち盛りの高校生という条件も加えれば、お茶碗にこんもりと盛り付けても良いくらいにはお腹が減るのだ。
「丁度いい感じ。ありがとうね」
「よかった」
果たして、返答は期待通りだった。緩みそうな頬を引き締め、お味噌汁の豆腐を口に運ぶ。
心なしか、さっきまでよりも美味しく感じた。
食べるペースを合わせてくれたのか、それとも元から同じくらいなのか。どちらかは分からないけど、夕食を食べ終えるのはほぼ同時だった。
片付けもお風呂も終わり、あとは眠るだけ。同じ部屋で暮らす上でのルールも決めておきたかったが、今日はかなり疲れている。ひとまずは休憩を最優先にということで、意見は一致した。
そうして消灯後、時刻は十一時。
実家と違うベッドがなんだか落ち着かず、かといってスマホを見て日付を跨ぐのもなんとなく癪で、ぼんやりと天井を眺めていたとき。
春香のベッドから、ゴソゴソという音と、眠たげな声が聞こえてきた。
「さくら、まだ起きてる?」
「起きてるけど……」
「そっち行ってもいい?」
「まだ克服してないんだ。いいよ」
春香は昔から、環境が変わると寝られないタイプだった。安眠に欠かせない抱き枕はなんと忘れたらしい。
うちでお泊り会をしたときも、こうやって添い寝していたっけか。
過去を思い出しつつ掛布団を持ち上げ、のそのそと歩み寄る春香を迎え入れた。
上手いことベッドに二人分の体を捻じ込み、春香の腕の中に私が収まれば、ようやく寝る準備は整う。
胸で窒息する趣味は無いからバックハグのような姿勢だが、それでも懐かしい感覚だ。
口調でなんとなく察していた通り、大分眠かったらしい。数分と経たずに聞こえてきた寝息をBGMに、私も瞼を閉じた。
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朝五時。少し起きるには早い時間に、尿意によって叩き起こされた。
同室で幼馴染である春香の腕を押しのけ、問題無くトイレを済ませて。SNSをチェックしながらベッドに戻って、ようやく私は冷静になった。
私、とんでもないことしたな?
私も春香も高校生。一応、"間違い"が起こりかねないお年頃。
そんな二人が、幼馴染とはいえ同衾。
ああ、いけない。流石に不純すぎて、少女漫画から青年漫画になってしまう。
ちょっと言い訳をさせてほしい。私たちは幼馴染で、春香は私を同性の友人だと思っている。
昨晩の私もなんだかんだと忙しい一日が終わり、すぐに眠れるほどでなくとも眠気はあって。慣れない環境で張りつめていた意識が、幼馴染の前で緩んでいたのだ。
だからそう、昨日の同衾は、あくまで幼馴染として普通のこと。同性の友人間でハグをするような、微笑ましい一晩でしかない。
不純なことなんて何もない。単なる添い寝だ。幼馴染同士、間違いなんて起こるわけが無い。
これ幸いとばかりに言い訳を済ませ、春香の腕に潜り込む。
温かい。そういえば、春香は体温が高い方だった。
無防備な寝息は穏やかで、きっと良い夢を見ているのだろう。そこに私は登場しているのだろうか。
そうだったらいいな。
腕は力強くて、私なんかじゃ敵いそうにない。この腕で押し倒されたら、きっと為す術無く……
色ボケし始める思考を振り払い、限界まで輝度を下げたスマホで
それでも、タイムラインの内容は目を滑っていく。私の頭は春香のことでいっぱいで、ついにはスマホを閉じてしまう。
春香は体力がある。私がへばった後も継続されるのだろうか。いや、春香は優しいから、きっとへばったら終わりにしてくれる。
指は私よりも太くて、関節部分はなめらかでありながら少しごつごつしているようにも感じる。この指で触ってもらったら気持ちいいのかな。
ショーツの上から、春香と違って一つしかない性器に触れる。汗のせいか、若干湿度が高いように感じる。
これで良いの、なんて不安げな声で触れてくる春香を想像する。大きな体に包まれて、逃げ場なんて無い状態で。想像の中の私は弱弱しく、あるいは性を教え込むように、こくりと頷いて快楽を享受する。
控えめな刺激から始まって、少しずつ湿り気が気のせいじゃ済まなくなったら、脱がしてもらうのもいい。
くたくたになるまで着古したパジャマを咥え、声を殺す。
実際にいじってもらうときは、膝の上に乗せてもらいたい。片腕で拘束されて、反対の手で弄ってもらって。
今みたいにお尻の下というか、背中側で硬くなった
……今みたいに?
思考に混ざった現実を再認識し、指が止まる。温かいはずなのに背筋が冷たい。
耳を澄ませてみれば、穏やかな寝息が聞こえる。
じゃあ、この硬い感触は? そういえば、男の人とふたなりは、眠っている間に勃つことがあるらしい。これはきっと、それに違いない。
違ってても美味しいし。
今更自覚した背徳感とリスク。その対象である、春香の存在。
遠慮がちに再び動かし始めた指は、さっきまでよりも少し気持ちいい。
背中に当たる感触を意識してしまう。
今から本番だと錯覚しそうになりながら、徐々に近づいてくる絶頂を指で迎えに行く。
「ん、はぁ……春香……はるか、はるかっ」
堪えきれず、名前を口にする。それだけで高鳴る心臓と、加速する勘違い。
少しも力が入ってないのに、体の跳ねを押さえつけるような腕が気持ちいい。
毛ほども残っていない自制心の中、ついに絶頂を迎え……
「……桜?」
恐れつつも心待ちにしていた瞬間が、訪れてしまった。