少女×ふたなり習作集 作:エリマキトカゲ
「まさかクラスまで同じとはね」
「ね、びっくり」
始業式が終わり、クラス発表や課題の配布なども無事に済んだ。そんな夕方。
寮で制服から部屋着に着替えながら、私と春香はのんびりと話していた。
無事に家事の割り振りなども決まり、細部は困ったり不満だったりしたら話し合うということに。やっぱり、幼馴染というのは便利だ。
今日の料理当番は私だから、料理に混入したりしないよう髪を括っていると、不意に春香から視線を感じた。
「どしたの? ご飯のリクエストはもう打ち切ってるけど」
「ご飯ではないんだけど……桜、今日の夜さ。その、しない?」
「……春香のベッドでね」
何を、なんて無粋な質問はしない。振り返ってすぐ目に入る恥ずかしそうな表情は、つまりそういうことだ。
嫌ではない。むしろ嬉しい。性欲自体はそこまで強いタイプじゃないけど、承認欲求とは別なのだ。春香から求められたというのが、物凄く嬉しい。
こくりと頷き、緩みそうな顔を隠すためにキッチンに向かった。
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ベッドに横たわり、膝立ちでこちらを見下ろす春香にアイコンタクトを返す。
うるさいくらい荒れ狂う心臓を隠すように枕を抱きしめれば、思った以上に緊張していることを自覚してしまう。それでも無防備な身体を晒すよりは心強いから、抱き寄せるしかない。
お尻の下から脚の方に向かって敷いたバスタオルも春香のものだ。ちょっとごわごわしているけど、肌が痛むほどではない。
春香のベッドで、春香のタオルの上で、春香とえっち。春香尽くしの贅沢な時間だ。
「じゃあ、触るよ?」
「おねがい」
軽い確認を終え、春香の右手が太ももの隙間に触れる。
手つきは遠慮がちで、少しくすぐったい。興奮というよりは、手の温度にゆっくりと融かされるような気分だ。
色々注文を出しながら、真剣な瞳を見上げる。
こうして触り方を教えているのは、春香の頼みからだ。初めての日から少しずつ知識を付けようと調べている最中に、パートナーに対する不満をまとめたサイトを見てしまったらしい。
そんなことを馬鹿正直に話すあたりが春香らしい。それでも冷めたり萎えたりしないのは、私がぞっこんなのか懐が深いのか審議の余地がある。
「ん、良い感じ……気持ちいい」
「ほんと?」
「覚えるの、早いね」
「でしょ」
春香の手は私よりも大きい。自分で触るときは"弄る"という感じなのに、春香の手だと"覆う"とか"包む"とか、そういう印象を受ける。
誘導が要らないくらいまで慣れてきたあたりで、口を枕で隠し、快楽を享受する。
相当集中しているのだろう。春香の口数が減っていく。代わりに与えられる快楽が少しずつ強くなって、もどかしさも薄れていく。
本当に、憎らしいくらい覚えが良い。私の反応から良い弄り方を知りたいと言っていたし、望むところではあったけど、まさかこんなに早いとは。
ペースが握られてしまう。声を聴かれないために抑えようとすると、余計鼻に掛かったような声が出て恥ずかしい。
そういえば、犬がお腹を見せて寝転がるのは服従のポーズだと聞いたことがある。
今の私もそういうポーズだ。枕を抱えている分まだ無防備ではないけど、それも申し訳程度。全て、春香に見られている。
ぞわぞわと気持ちいいのが来る。呼吸が荒くなって、快楽で頭がぼんやりしていく。
「桜、きもちい? ……ふふ、よかった」
問いかけにも頷くことしかできない。嬉しそうな微笑みは可愛くて、かっこよくて、妖しい魅力も持っている。
いつもはイきそうになると脚を閉じてしまうのに、今はそれすらもできない。
完全に力が抜けている。枕ももはや体に乗せているだけだ。
そんな状態で。前よりも冷静な春香に観察されながら。自分じゃ管理できない快楽に蕩かされて。
ああ、これは本当に良くない。甘えたくなってしまう。求めてしまう。
私が何かを口走る。春香が嗜虐的な笑みを浮かべて、何かを言う。
何を言われたのかは分からない。それでもきっと良いことだと信じちゃって。
だめだと分かっているのに、聞き返すべきだと理解したまま、コクコクと頷いてしまった。
「もっと桜のこと見たいな。枕、どけるよ?」
恥ずかしいのに、ババ抜きでもするみたいに枕が抜かれるのを眺めることしかできない。
半ば本能的に身体を隠そうとした両手を握って止められながら、春香の顔を見上げる。
暗い光の宿った、目の前の私を獲物としか見ていないような。ゾッとする視線だった。
身体がくねる。
逃げようとしているんじゃない。ゆっくりと挿入された春香の指を、もっと味わおうと。あるいは誘うために、身体が動いてしまう。
口から出たのがどの単語か分からない。みっともなくおねだりしているのか、強情に抵抗のふりを続けているのかは分からない。
どっちにしろ春香に伝わる意思は同じで、与えられる快楽はどんどん強くなっていく。
……そこから先のことは、覚えていない。
目が覚めたら春香の抱き枕にされてて、股座には溢れた精液。ベッド脇には飲んだ覚えの無いスポドリ――確か、春香が部活の助っ人のときのために常備してるやつだ――が置かれていた。
体は重いを通り越して動けないほど怠い。
どれだけ抱かれたんだろう?
期待半分、呆れ半分。最初にしたときは、すぐ冷静になってしまったのに加えて体力も足りず、あまり回数は出来なかった。
呑気な寝顔を眺める。妖しさは無い。悩みとは無縁そうな、昔と変わらない可愛い寝顔。
今の関係が不健全なことは分かっている。今からでも、ちょっと不釣り合いなカップルになるべきだ。
それでも、春香が私の前でだけ見せる表情が、私にだけ向ける性欲が、そして春香にだけ見せられるそれらが、どうしようもなく心地よくて。あと数日、あと数回くらいなら良いかな、なんて。
そんな風に判断を先送りにしてしまうのだ。
春香視点も仕上がり次第投稿します。