【完結】もし衛宮士郎がメディアリリィを拾ったらというお話 作:ふりかけ@木三中
キャスターと2人、町外れの山道を歩く。
ザクザクと砂利道を無言で突き進み、俺たちの間に言葉が交わされることはない。
「…………」
向かう先はキャスターが占拠したと話をしていた柳洞寺だ。
キャスターは一級の霊地であるその場所を乗っ取っており、召喚したアサシンや洗脳した桜と慎二もその場所にいるのだという。
「…………」
気まずい沈黙の中チラリと後ろを歩くキャスターを見る。
その顔はどこか虚ろで表情は読み取れない、とりあえず今のところは大人しく俺に従ってくれてはいるが……
先ほどの路地裏でのやり取りを思い返す。
キャスターの本当の名前を教えてもらえば彼女のことを理解できるかとも思ったが……ますます持って分からなくなってしまった。
ただ、過去も未来もどうでもいいと吐き捨てて……人の意思すらも軽んじる彼女とはこの先一緒にやっていけるとはとても思えない。
かといって、セイバー達の下へ帰る勇気もキャスターを切り捨てる覚悟も俺にはなかった。
そうして俺はキャスターの行いを確かめるという名目で、半ば現実逃避をするようにこうして柳洞寺を目指している。
「っ…………」
途中でかつてキャスターを助けた薮の近くを通ったが、何となく意識をしたくなくて慌てて目を逸らした。キャスターも俺のそんな態度には気づいていただろうが、何も言うことはなかった。
そうしてしばらく歩いて、柳洞寺の山門へ続く石階段までやってきた。
何度かこの寺には来ているが、この階段の長さは毎回うんざりさせられる。
「確か、この階段を登った先の山門にキャスターの召喚したサーヴァントがいるんだったな」
俺の言葉にキャスターはコクリと頷く。
クラスはアサシンという話だったが……さて、どんなサーヴァントなのやら。これ以上厄介ごとは抱え込みたくないし、まともな奴ならばいいが……
「不正な召喚をしたせいか、正規の英霊は召喚できませんでしたからね。あまり戦闘力には期待しない方がいいですよ」
そんなキャスターの説明を受けながら階段を登り切る。
古ぼけた……しかしよく清掃された山門、その前に陣取るように男が立っていた。
結った長髪に群青の羽織、背には長尺の刀を背負っている。
見た目的には侍って感じだが……この男がキャスターの召喚したアサシンなのだろう。
「アサシン、門番の任ご苦労様です。何か異変はありませんでしたか?」
「いやはや、全くもって平和そのもの、これで温かい茶と団子でもあればこの退屈な見張りも精が出るのだが」
「……あまり遊ばれては困りますが、食事については一考しましょう」
アサシンは軽い調子でキャスターと言葉を交わす。
サーヴァントがサーヴァントを召喚したというイレギュラーな主従関係だが、特に反乱の兆しも見せずキャスターに従っているようだ。
「して、そちらの御仁は?」
アサシンがスッと目を細めて俺を見る。
殺気や敵意を感じるわけではないが……その瞳にはどこか得体の知れないものがあった。
よく見るとアサシンの立ち振る舞いも一見したところでは隙だらけに見えるが、その実として達人のようなさりげない呼吸や足遣いを感じる。
キャスターは戦闘力は大したことないと言ってたが、とてもそうとは思えない。
「衛宮士郎……一応、キャスターのマスターってことになってる」
アサシンに対して底知れなさを感じながらも自らの名を名乗る。
キャスターのマスターと名乗る資格があるのかは分からなくて声が小さくなってしまったが、少なくとも契約上はそうなっているはずだ。
「ほう、おぬしが……」
あらかじめアサシンもキャスターから俺のことは聞いていたのだろう。キャスターがどう話したのかは知らないが興味深げにアサシンが俺に視線を向けてくる。
「アサシン、あまり不躾にシロウ様を見ては失礼ですよ……さっシロウ様、参りましょう……」
先を促すようにキャスターが俺に対してそっと手を伸ばす。
けれども、俺はキャスターと手を繋ぐのはなんとなく躊躇われて、ポケットに手を入れると無言で歩き出した。
キャスターは少し寂しげな笑みを浮かべたように見えたが、伸ばしていた手を引っ込めて俺の後ろをついてくる。
「…………」
アサシンは腕を組んでそんな俺とキャスターのやり取りを見ていたが、口を出してくることはなかった。
◇
そうして、柳洞寺の境内へとやってきた。
だが入ってすぐに何となく違和感を覚えた、その違和感の理由を少し考えてすぐに気づく。
あまりにも静かすぎるのだ。
このお寺にはそれなりの人数の僧侶が住んでいて、いつも賑やかなものなのだが……今はシーンと静まり返っている。
「お寺にいた人達はどうしたんだ?」
「あぁ、安心してください。危害を加えるような真似はしていませんよ、魔術で大人しく眠ってもらっています。見ていきますか?」
案内されて本堂の中に踏み入る、そこには白い布団がズラリと並べられていた。20名ほどの男性が、それぞれの布団の上で静かに眠っている。
おそらくここの住職達なのだろう。
「一成……」
その中に見知ったクラスメイトが眠っているのを発見してそばに寄る。
顔を近づけて見ればスゥスゥと小さな寝息が聞こえてきて本当に眠っているだけのようだ。
そのことにホッと安堵の息を吐く。
「あれっ?葛木先生?」
ふと、隣の布団を見るとそこには見知った顔が眠っていた。
俺たちの学校で倫理を教えている男性教師……葛木先生だ。
「キャスター、この人もこの寺にいたのか?」
「はい、ここで眠っていた人はこのお寺に住んでいた人達です……お知り合いだったのですか?」
「あぁ、まぁ、ちょっとな」
キャスターの話からするに葛木先生は柳洞寺に居候してたのだろう。どういう経緯で葛木先生がここに居候していたのかは知らないが、今の彼は魔術によって深い眠りの中にある。
彼がこの聖杯戦争に関わることも、俺やキャスターと言葉を交わすことも今後ないはずだ。
「そういえば……桜と慎二はどこにいるんだ?」
洗脳された桜と慎二がここにいると言う話だったが、布団の上に眠っている者たちの中にその姿は見当たらない。
「サクラさん達はお寺の掃除や雑用をしてもらっていたんですよ。今、お呼びしますね」
キャスターがパンパンと柏手を打つ、そうしてしばらくすると襖を開けてそっと人影が入ってくる。
「桜……慎二……」
よく見知った2人の男女がそこに立っていた。
数日ぶりの再会なのになんだか随分と久しぶりに感じる。
「……本当に人形みたいに洗脳されているんだな」
前もって聞いてはいたが、桜たちは魔術で意識を刈り取られて意志のない人形にされているらしい。
俺が名前を呼んでも反応を返すこともしない。
焦点の合っていない瞳で虚空を見つめ、ピンと背筋を伸ばして直立不動のままキャスターの命令を待っている。
2人とも、俺が最後に見た記憶の通りに穂群原学園の制服を着ている。
桜はある日突然に家の用事があるからと言って姿を見せなくなり、慎二はライダーが倒された後は見かけていなかったがその裏でキャスターの傀儡にされていたのだろう。
「……あぁ、どうせならサクラさんにはエッチな衣装でも着せた方がシロウ様は嬉しかったですか?黒いボンデージとか桜さんには似合うと思うんですよね」
「嬉しいっていうか……あぁ、もういいや」
じっと桜達を見ている俺に対して頓珍漢なことを言い出したキャスター、もう突っ込むのもめんどくさくなって投げやりな態度を取る。
基本的にキャスターの行動は全て俺のためにやってくれているようなのだが、どうにもいちいちズレているんだよな。
「そんなことより早く、その洗脳を解いてくれよ。見知った相手がこんな人形みたいになってるのを見るのは気分が良いもんじゃない」
キャスターがどういう意図で2人を人形のように操っているのかは知らないが、俺としてはさっさと解放してあげたい。
「……いいんですか?桜さん、洗脳を解くと死んでしまうかもしれませんよ?」
だが、突然キャスターが物騒なことを言い出した。
「はぁ?まさか、そんな反動が大きい魔術を桜たちにかけたのか?」
「あぁ、いえいえ違います。洗脳を解くのは簡単ですよ。けれどこの洗脳は黒い聖杯の汚染から桜さんの精神を守るためのものでもあるので」
黒い聖杯?
不穏な単語に思わず眉根を寄せる。
「そうですねぇ、少し複雑な話なのですが……バーサーカーとの戦いで私が見せた魔術を覚えていますよね?」
キャスターが言っているのは、バーサーカーを倒してみせた黒い泥や影の魔術のことだろう。
アレのせいでセイバーがキャスターが裏で暗躍していることに気づき袂を分かつこととなったのだ。
「そういえば、あの魔術を発動させた異常な魔力量は魂喰いで賄っていたんだろうけど、あの奇妙な泥そのものについては話を聞いてなかったな」
「あの黒い泥は呪いの塊……汚染された聖杯なのです」
「聖杯が……汚染?」
「はい、当時の経緯までは流石に分かりませんが恐らく過去に開催された聖杯戦争において、どこぞの悪神でも召喚した者がいたのでしょう。そして聖杯に焚べられたソレは本来無色であるはずの聖杯の魔力をドス黒く染め上げた……」
詳しい理屈は分からないが……確かにあの泥からは凝縮された悪意のような酷く嫌な気配を感じた。悪神を取り込んだ聖杯が汚染され、そのせいであんな泥を産み出すようになったということか。
「推測するに前回の聖杯戦争においてこの街を焼いたという大火災もこの泥によるものなのでしょうね。サーヴァント達の魂を注がれて溢れ出た泥が厄災となってこの街を襲った」
その言葉にハッと息を呑む。
確かにあの泥を見た時にかつての地獄を思い出したが……そんな繋がりがあったのか。
「それって……ヤバいんじゃないのか?今もまだ聖杯は汚染されたまんまなんだろう、このまま戦争が進めばまた10年前みたいなことになるんじゃ……」
「落ち着いてください、私ならば聖杯を正常に使用することも可能です。もっとも、戦闘に使用するならばあの泥の方が使い勝手がいいのでサクラさんを通じて利用させてもらいましたが」
「……桜を?」
唐突に出てきた桜の名前に首を傾げる。
どうして汚染された聖杯と桜が結びつくんだ?
「前もって言っておきますが、これに関してはわたしの仕組んだことではないのですが……」
そう前置きをして、キャスターがチラリと桜を見る。
「彼女の体には聖杯のかけらが埋め込まれています」
キャスターの言葉に目を見開く。
体に聖杯のかけらだと?一体どういうことだ?
「おそらく、かつての戦争で使用された聖杯なのでしょう。そのカケラを埋め込むことで此度の聖杯に不正にアクセスをして戦争を優位に進める……そんな算段をしていたのでしょうね。そうすれば膨大な魔力を得られますしあの泥の力も使えますから」
「けど……誰がそんなことを、まさか桜本人がそんなことをするとは思えないし……」
桜は魔術に関わっていたのだろうか?
だが、そうだとしても汚染された聖杯のかけらなんて物騒なものを自分の体に埋め込むとは思えない。
「マトウゾウケンという人物です。サクラさん達のお爺ちゃんだったんですかね?きな臭い雰囲気は早々に感じていましたので既にわたしの方で処理済みですが、随分と外法に手を染めていたようですよ。気持ち悪い蟲を使ってきたので本体ごと焼き払ってさしあげました。彼はもう……この世にはいません」
それについてはもう済んだ話だとキャスターが断言する。
桜のお爺さん……俺は面識はないが、キャスターはいつのまに対峙していたのだろうか。
「話を戻しますが……サクラさんは汚染された聖杯のかけらを埋め込まれていて、その力を使うことができます。ですからわたしはサクラさんの体を操って、その肉体を中継することであの泥の力を使っていたんです」
桜を魔術を使用するための道具のようにのたまうキャスターの言い分は気に入らないが……これであの泥のカラクリは分かった。バーサーカーを倒したあの力は元々は黒く染まった聖杯の力だったのか。
「面白いことにあの泥は原初の混沌に近い性質を持っていて使い手によってその形を変えるんですよ。サクラさんが使ったら全てを呑み込む影に、私が使えば全てを焼き尽くす漆黒の光線という風に」
「……その辺の話は聞いてもよく分からないし別にいいよ。それよりも洗脳は桜の精神を守るためと言っていたが、その泥の影響から守ってるってことなんだな」
「はい、あのままでは呪いに侵されてサクラさんは発狂していたかもしれませんから……その前に私の洗脳下に置くことで防壁を築いたと言った感じですね」
なんとも、ややこしい構図だな……洗脳などと言った本来許されない行為ではあるが、それは桜の精神を守るための防壁にもなっていると……
「そんな状態であの泥の力を使って桜に悪影響はなかったのか?」
「わたしの洗脳下にある状態なら一度や二度の使用では問題ありません。けれど、流石に連発すれば聖杯との結びつきが強まって影響が出るでしょうし、今の状況でいきなり洗脳を解いてもアウトでしょうね」
「……確かにそれなら桜の洗脳を解くわけにはいかないか。話は分かった、けどもう二度とあの泥の力は使うな。桜に悪影響が出るかもしれない」
「…………えぇ、シロウ様がそう望むなら」
俺の言葉にキャスターは素直に頷いたが、その返答に少し間があったな……恐らく追い詰められたらまたあの泥の力を使うつもりだろう。なんとなく、キャスターが嘘をつく時の癖が分かってきた気がする。
「桜に関してはひとまず置いておくとして、慎二の方は別にそんな複雑な事情を抱えているわけじゃないんだろ。そっちだけでも洗脳を解けないのか?」
「うーん、それもあまりオススメはしませんよ?シンジさんはシロウ様やサクラさんを随分と恨んでいたようですし、今ここで洗脳を解けば暴れ出して厄介な事態になるかもしれません」
慎二……ライダーを倒された後に俺のことを友達と呼び、感謝の言葉すら口にしていた。思えばアレもキャスターがその体を操って腹話術の人形のごとく喋らせていたにすぎないのだろう。
「ああっ……くそっ……!」
思わず悪態の言葉が吐きこぼれる、キャスターは俺の知らないところでどれほどの悪行を重ねていたのか……
本当ならここは荒れることを覚悟の上で慎二の洗脳を解くべきなのだろう、だが今の俺にはキャスターのことで手一杯で慎二のことまで気にかけている余裕はなかった。
「分かった……なら、せめて、こんな意識を刈り取って人形みたいにこき使うんじゃなくて寺の人達と同じように眠らせてくれ」
迷った末に結局俺はキャスターにそんな指示を出した。
無理やり眠りにつかせることだって十分に非人道的な行為だが、今はこうして逃げるような方法を取るしかない。
「そうですか、雑用係にちょうどいいと思ったんですが……」
キャスターは不満げに唇を尖らせつつも指をクルクルと回す。
その動作がなんらかの指示だったのか、瞬きもせずに直立していた桜と慎二がキビギビとした動作で動き出すと布団を敷いてスッとその上に横になる。
まるで人を人形扱いしているかのようなキャスターの魔術。
その姿を見てライダーの今際の言葉を思い返す。
『あの魔女には気をつけなさい……』
思えばライダーは直球の警告をしてくれていたのに、俺はそれを無視したわけだ。
「ライダーのことも、こうやって洗脳して操っていたのか?」
他のサーヴァント達と戦った今なら分かるが、あの時のライダーは明らかに手を抜いていた。ろくな魔術を使えない俺でも渡り合えるほどに。
「ん?あぁ、いえいえ、流石にサーヴァントを意のままに操るとなると専用の宝具でも用意しないといけませんからね。サクラさんを人質に取って言うことを聞かせていたんです」
そう説明しながらキャスターはどこからか古ぼけた羊皮紙を取り出して見せる。
何か小難しい異国の言葉……おそらく古いギリシャの文字で書かれていてその内容は読むことはできないが、察するに人質の無事を保証する代わりに自分に服従しろというようなことが書かれた誓約書なのだろう。文の終わりにはキャスターとライダーのものと思われる血印が押されている。
桜とライダーの詳しい関係は分からないが、ライダーはその命を賭けるほどに桜のことを大切に思っていたのだろう。
「……ライダーも馬鹿ですよね。こんな契約を信じるなんて」
嘲笑うような冷たい声、キャスターの手にはいつのまに取り出したのか、ジグザグに折れ曲がった奇妙な刀身をした短剣が握られていた。
そうして誓約書にダンッとその短剣を突き立てる。
「こんな紙きれなんて何の意味もないのに!そんなものの為に命をかけるなんて!」
恐らく魔術的な強制力を持った誓約書だったのだろうが、キャスターはそんなことはお構いなしにビリビリと羊皮紙を細切れにする。
彼女に取って契約や約束なんて何の意味もない言葉なのだろう。
「……なんで、俺とライダーを戦わせたんだ?俺に経験値を積ませるためか?」
ライダーがキャスターに人質を取られて逆らえない状態にあったことは分かったが、何故その場で倒さずに俺にぶつけるような真似をしたのだろうか。
「あぁ……あれはこの聖杯戦争の最中は少しでも英雄気分を味わってもらおうかとライダーをけしかけたんです。最終目標は聖杯の力でシロウ様を正義の味方にすることでしたがサーヴァントの一体ぐらいは自分の手で倒した方が気持ちがいいでしょう?もっともシロウ様があそこまで魔術を使えないとはわたしとしても驚きましたが」
そういえばあの戦いで俺は強化魔術に失敗して、トドメもキャスターに刺してもらったのだったか。
「ははっ……」
なんだそれは、思わず笑いが漏れる。
まるで子供のヒーローごっこに付き合う母親だな、そして俺はそれを真に受けて英雄気取りで舞い上がっていた。
用意された舞台の上で人形相手にはしゃぎ回る道化だったと言うわけか……俺は。
「キャスターは……初めから俺のことを信じてなかったわけだな」
初めから俺が正攻法でこの戦いを勝ち抜けるとは思っていなかったわけだ。
「俺への言葉も本気じゃなかったわけだ……」
今までの俺を褒め称えるような言葉の数々も、ただ耳触りのいい言葉でおだててその気になる様を見ていたにすぎないのだろう。
「正義の味方になれるとも思ってなかったわけだ……」
素敵な夢だと言ってくれたのに……内心で俺のことを嘲笑っていたわけだ。
「だって……そんな夢、叶うわけないじゃないですか」
そう言ってキャスターが困ったように笑う。
サンタを信じる子供に何と言ったらいいかと迷う大人のように。
微笑ましいものを見るような、憐れなものを見るような。
そんな目を俺に向けてくる。
「…………嬉しかったんだ、キャスターが俺の夢を認めてくれて」
嬉しかった。
キャスターが素敵な夢だと言ってくれたことが。
その理想を応援すると言ってくれたことが。
俺は嬉しかったんだ。
なのに、それは……全部嘘だったわけだ。
「…………少し、1人になりたい。余計なことはせずに大人しくしててくれ」
それだけ言い捨てると、ヨロヨロとした足取りでキャスターの前から立ち去る。
「どうしたらいいんだ……俺は……」
俺は、もう……目指すべき理想も、キャスターとの向き合い方も……とうの昔に見失ってしまっていた。